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音楽に深みを求める人にとって、'80年代初期のヘヴィメタルのシーンは寒々と荒れ果てた世界だった。安っぽいロックをがなり立てる、下品なルックスだけのバンドに支配されていたシーンでは、分厚いギターで飾り立てたサウンドとつまらない歌詞が横行していた。

そんなさなかに登場したMetallicaは、MegadethやAnthraxといった仲間達同様、シーンを支配するバンドとは異なる心構えを持っていた。音楽は荒々しく直接的であれ、というパンクの原則に影響を受けた彼らは、歌詞の内容も暗い理想主義に満ちたものだった。かくて、彼らはヘヴィメタルが新しい時代へと踏み出すための土台を築き上げたのである。

デビューアルバム『Kill'em All』を出した頃から、Metallicaの長所はあきらかだった。視野の定まった激しいプレイ。精密な曲作り。まるでゴシックのようなスタイルさえ漂う野心的なテーマ選び。暗く呪われたようなその雰囲気は文字どおりねじ曲がってひねくれたような感覚があった(とはいうものの、それは彼らがテーマに選んだJohn DonneやErnest Hemmingwayのせいではない。“For Whom The Bell Tolls”の大変動を予感させるようなムードは、後の“One”の先触れのようなところがある。ちなみに、『...And Justice For All』に収録された“One”は、Dalton Trumboの有名な反戦小説『ジョニーは戦場へ行った』を見事なまでにロック化した曲だ)。

さらに、彼らには全編に渡ってみなぎるハードコアパンクのエネルギーさえあった。『Master Of Puppets』は、こんな彼らの初期のサウンドの集大成といえる作品だ。天才的なスピードメタルのプレイが展開されている純粋なロックアルバムがこれなのだ。

しかし、'91年にリリースされた『Metallica』アルバムはバンドにとって重要な分岐点となった。彼らがこれまで展開してきた方法論をさらに精製した形で提供したこの作品は、その一方で“自分自身で何でもやる”精神の持つ力を高らかに宣言するものでもあった。彼らのファン層は、MTVや一般ラジオの助けを借りず、それまでの過酷なツアーや妥協することなきその音楽性によって築かれてきたものだったが、『Metallica』アルバムがあまりに巨大な存在となってしまったため、一般のマスコミも彼らを無視する訳にはいかなくなってきた。

結局、このアルバムは数百万という数を売り、これまでの作品の売り上げをもすべて100万単位に引き上げた。そして、彼らにとって3つ目となるグラミー賞までもたらしたのである。

高まる期待の中、『Metallica』アルバムに続いてリリースされた作品は、みんなを驚かせた。これまで、最高にしたたかで洗練されたメタルをぶつけてきた妥協知らずの彼らの歴史を考えると、『Load』はショッキングな内容だった。エコーの効いたギターに繊細な間奏、そして全体を覆うなんとなく薄汚れた雰囲気にショックを受けた人々もいたのだ。

新たに取り入れたものの中にはうまくいったものもあれば、いかなかったものもあった。しかし、1つだけはっきりしているのは、彼らも他の偉大なるミュージシャン達と同じ心の持ち主である、ということだ。彼らもまた、常に前進することを求め、新しい世界へと没頭していく、おそれを知らぬ心の持ち主なのである。

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