ナイン・インチ・ネイルズ、映画『鉄男 THE BULLET MAN』EDテーマを書き下ろし

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現在ニューヨークで開催中の<第9回トライベッカ映画祭>に、映画『鉄男 THE BULLET MAN』が正式出品され、渡米した塚本晋也監督と主演俳優エリック・ボシックが一般ファン向けのトークイベントに登場した。

◆映画『鉄男 THE BULLET MAN』予告編映像

このトークイベントで、なんとナイン・インチ・ネイルズが書き下ろし新曲を映画エンディングテーマに提供した事が発表された。ナイン・インチ・ネイルズは、2009年の世界ツアーを最後に活動休止を表明、それまで愛用してきた機材さえももう不要であると、オークションで大放出をしてしまったのは、2009年12月1日のニュースでもお伝えしたところだった。

その中心人物トレント・レズナーが、大ファンを公言する塚本晋也監督の最新作『鉄男 THE BULLET MAN』に共鳴。デヴィッド・リンチ監督『ロスト・ハイウェイ』以来となる書き下ろし楽曲「THEMEFOR TETSUO THE BULLET MAN」をエンディングテーマとして提供する事になったのだ。

「『鉄男II』の後にNINのトレント・レズナー氏からファンレターをもらい、ビデオ・クリップの監督依頼を受けたが実現しなかった。しかしこの映画でお互いの20年間の夢がとうとう叶った。しかも『鉄男』という最も理想的な形で彼らと“合体”出来ました。念願叶って『鉄男』で一緒に出来たので、かなり爆発しているという気がします」──塚本晋也

TIMEマガジンもアメリカに影響を及ぼす25人に選んだことがあるナイン・インチ・ネイルズというバンドは、アメリカの90年代を象徴する最重要なロック・バンドのひとつ。1988年に結成以来、全世界で2000万枚以上のアルバムを売り上げ、グラミー賞には12回ノミネート、2回の授賞を果たしている。

そんなトレント・レズナーが20年前にオリジナルの『鉄男』を観て、塚本晋也監督に「自分のミュージック・ビデオを作って欲しい」という非常に丁寧な手紙を書いた理由は、彼の音楽性を知った上で映画を観れば、始まった瞬間に容易に理解できるだろう。怒りを抱えた人間が機械になる、というそのテーマ自体が、トレント自身が最も恐れていたことそのものであるし、そこで鳴り響くインダストリアルな爆音こそ、まるでトレント・レズナーが作ったのかと錯覚するような親和性に満ち満ちていた。監督の映画を観た瞬間に、トレント・レズナーは自分の頭の中が目の前で映像になっていると感嘆したに違いない。

映画『鉄男 THE BULLET MAN』においても、それは同じだ。特に始めの8分間。モノクロがかったヒンヤリした青白い映像といい、そのノイズの入り方といい、隅から隅までそれはまるでトレント・レズナーの世界なのである。

トレント・レズナーは、2009年にNINのラスト・ツアーを完了させた。20年間バンドをやり続けて来た結果「これ以上ライブを続けることに自分が思っている以上に興奮できなくなった」ことが、ツアーを終了させた理由だ。ラスト・ツアーの盛り上がり方は尋常ではなかったが、その後、それまで20年間使っていた機材をすべて売りに出した。しかしNINというバンドは解散したわけではない。制作はこれからも続ける、そう明言もしていたのだ。

そして産み落とされたのがこの『TETSUO』のテーマ、「THEMEFOR TETSUO THE BULLET MAN」だ。

彼としては、20年のキャリアが一区切り付き、次の10年を始めようという時に、この話が舞い込んだのは運命のように思えたことだろう。20年前に果たせなかった夢が、再出発という瞬間に叶うとは、これ以上のはなむけはなかったはずだ。制作には随分時間がかかったようだが、元来の完璧主義者に、それは当然のこと。

まさかのナイン・インチ・ネイルズ、再稼動。今後の動向が楽しみである。

『鉄男 THE BULLET MAN』
配給:アスミック・エース
(C)TETSUO THE BULLET MAN GROUP 2009
5月22日(土) シネマライズ他全国ロードショー
◆『鉄男 THE BULLET MAN』オフィシャルサイト
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