【月刊BARKS 横尾忠則スペシャルインタビューVol.5(最終回)】YMO加入未遂事件(?)、そして今後の展望

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▲横尾忠則美術館におけるライヴペインティングより
横尾忠則は日本を代表する美術家であり、さまざまなミュージシャン達の作品のアルバム・ジャケットやツアー・ポスターを手がけるなど、ポピュラー音楽カルチャーと密接な関係を保ち続けてきた。そして、すんでのところでバンドのメンバーになりかけた事件もある。それが細野晴臣との出会い、そしてイエロー・マジック・オーケストラへの加入未遂だった。

◆横尾忠則画像

「ある時、細野くんが僕のところを訪ねてきたんですよ。“僕のこと、知ってますか”と言われて、知らないと言うわけにもいかなくて、“もちろん知ってますよ”と答えました。当時、彼は『はらいそ』(1978年)というアルバムを出した頃で、名前は聞いたことがあったけど、よくは知らなかった。その時、彼とインドの話をしたんです。そしたら“今度インドに行くときがあったら、連れていってくれますか”って。それで一緒にインドに行って、バスの中やホテルで、いろんな話をしたんです。その頃、僕はジャーマン・ロックが好きで、クラフトワークとかタンジェリン・ドリームとか、クラウス・シュルツェを勧めたら、聴いたことがないと言っていた。それで“ぜひ聴きなさい!”って、いろんなバンドの名前を伝えたんです」

「その時、インドで現地の音を録音して、それを編集したものをアルバムにしようって、キングレコードから僕に話があったんです。ちょうどいいタイミングで細野くんが合流したから、僕はコンセプトだけ考えて、アレンジは細野くんにやってもらうことにしました。そうして作ったのが、『コチンの月』(1978年)だったんです。このアルバムは僕が横でわいわい言って、それを細野くんに音にしてもらう形で、あまりに僕の言うことが訳が判らなくて、ノイローゼになりかけていました」

これが契機になって、横尾忠則には思わぬオファーが舞い込むことになる。

「細野くんにジャーマン・ロックのことを教えたことで、彼は僕が音楽に詳しいと勘違いしたんです。実際は彼が知らなかったことをたまたま僕が知っていただけなんですけどね。で、彼が新しいグループを坂本龍一と高橋幸宏と結成するから、僕も入ってくれと頼まれました。楽器なんて出来ないから、と断ったんだけど、演奏には参加しなくていいからと言われて、承諾したんです。ステージには上がれないけど、ライヴで流す映像やビデオを作るとか、レコードのジャケットを作るとか、何らかの形で貢献できると思ってね」

「それで、結成記者会見をやるから、髪をテクノカットにしてくれと頼まれたんです。さらに記者会見には4人揃いのタキシードで出席して欲しいというから、高橋くんがデザイナーだったんで、彼にタキシードを作ってもらった。でも、その当日は仕事の〆切がギリギリで、編集者さんがそばにいる状態なんです。「すぐもらえないと雑誌が出ない」って。どこかの週刊誌だったかな。で、僕はテクノカットでタキシードを着た状態でしゃかりきで仕事している(苦笑)。それでとうとう、記者会見の時間に間に合わなくなってしまいました」

それが運命を大きく分けることになる。

「記者会見に出席せずに、途中から参加したみたいな形になるのは嫌だったんです。やるんだったら最初から、途中からだったらやらない、と思って、YMOには参加しないことにしました」

もし横尾忠則がYMOに加入していたら、どんな音楽が生まれたのか興味が尽きないが、もし実現していたら、幾つものジャケットやポスター、絵画が生まれなかったかと思うと、その選択肢は正解だったのだろう。

「でも、細野くんと高橋くんのCDはデザインしました」

最後に、アルバム・ジャケットを描いてみたいアーティストは?と横尾氏に訊いてみた。その答えは、

「ストーンズのジャケットをやってみたいね」

というものだった。

「彼らと僕が健在なうちに、ぜひやってみたい。やるとしたら、僕にはいくつもスタイルがあるから、何種類か描いてみて、その中からストーンズが選べばいい。きっと最高のものが出来ると信じていますよ」

インタビュー:山崎智之
撮影:有賀幹夫

●横尾忠則がインタビュー出演
「伊藤政則のロックナイト ローリング・ストーンズ50周年スペシャル」
BSフジ 3月17日(日)25:00~25:55

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