【インタビュー】スリップノット「単なるバンドではなく、もはやカルチャー」

ツイート

<OZZFEST JAPAN 2013>の開催からすでに1ヵ月以上を経ているが、今回は遅ればせながら、その公演当日に行なったSLIPKNOTのインタビューをお届けしたい。BARKSからの取材要請に応えてくれたのは、クラウンことショーン・クラハン。このバンドのコンセプトを支える中心人物である。インタビュー・ルームはステージの真裏にあり、壁の向こうからは、ももいろクローバーZの爆音が聴こえてくる。ごく限られた時間枠での取材ではあったが、クラウンはたっぷりと語ってくれた。

◆SLIPKNOT画像

――まずはこうして日本への帰還を果たしてくださったことにお礼を言いたいと思います。正直なところ、もっと長く待たなければならないかもしれないとも思っていました。

クラウン:ありがとう。実際、それでも前回から5年近くかかってしまったね。2010年にポール(・グレイ/B)が亡くなった以降、俺たちはヨーロッパ・ツアーを行ない、南アメリカやオーストラリア、カナダにも行くことができた。ただ、そうした流れのなかで日本にずっと来られずにいたのは、俺たちとしても残念なことだったな。いろいろな事情が重なっていたからね。震災後の原発の問題もあったし、そういった理由から、「今、日本に行くべきじゃない」という判断をする人間もまわりにいた。だけどこうしてようやく戻ってこられたことについては誇りに思っているし、今は純粋にエキサイトしているよ。

――しかもその機会が、日本初の<OZZFEST>と重なったわけで。

クラウン:うん。その点についても俺たちはとても幸運だと思っているし、祝福されているのを感じるよ。オジーやシャロン、BLACK SABBATHのメンバーや関係者たちからもね。1999年に初めてアメリカで<OZZFEST>に出演したとき、シャロンは彼女が俺たちのためにできることすべてをやってくれた。そして今回も、こうして特別な場に関わる機会を俺たちに与えてくれた。美しい話だよ。すごくハッピーだ。

――自分たちの主宰によるものも含め、これまでに数多くのフェスを経験してきたわけですけど、なかでも<OZZFEST>はやはり特別な存在といえるんでしょうか?

▲SLIPKNOT@<OZZFEST JAPAN 2013>
クラウン:ここは俺たちにとっていつでも特別な場所だよ。1999年、俺たちはあのツアーでたくさんのことを学んだんだ。ケータリングとかの面でも良くしてもらえたし、あの年はセカンド・ステージへの出演で、FEAR FACTORYがトリだったんだけども、俺たちは日によってはえらく早い時間帯のうちから演奏しなければならなかった。だけどそういったことも含めて、バンドにとっていい経験になったと思う。そうやってセカンド・ステージ出演者としてのツアーを経験したうえで、その次にはメイン・ステージで演奏する機会に恵まれたわけだしね。そうやって経験を重ねていくことが、このバンドの歴史においてはとても意味を持っていたと思う。

――<OZZFEST>を通じて経験値を向上させてきた、ということですね?

クラウン:ああ。それは俺たちに限ったことじゃなく、すべての出演者にとって同じことだろうと思う。1999年は確か、ちょうどそのツアー中に1stアルバムがリリースされたんだ。日付まではよく憶えていないけど、アルバム発売直後に演奏したときのことはよく憶えているよ。会場に到着してツアー・バスから降りようとすると、その日にアルバムを買ってくれた大勢のキッズが、バックステージ・エリアのフェンスに押し寄せてきたんだ。ジョーイ(・ジョーディソン/Dr)が俺に目配せをしてきて、俺も目で彼に応えた。あの瞬間、「ああ、アルバムが出たんだ!」と実感したね。しかもすでにみんなそれを手に入れて、俺たちのサインを欲しがっていた。あれは素晴らしい光景だったな。

――病気が広がっていることに気付かされたわけですね?

クラウン:そうそう、伝染が始まりつつあったのさ(笑)。それは日本にも届き、結果、何度かこうして日本に来ることもできるようになった。

――過去のそうしたエピソードにも非常に興味深いものがありますが、未来のことも訊かせてください。ごく最近になって、「2014年にSLIPKNOTが本格的に動きだす」といったニュースが飛び交い始めています。実際のところどんな見通しにあるんでしょうか?

クラウン:まず整理をしておくと、今夜のショウが一連の全6本のショウのうち最初の1本になる。今夜のステージを終えると俺たちは約1ヵ月後にはヨーロッパに飛んで、<ダウンロード・フェス>でヘッドライナーを務める。5回目の出演、3度目のヘッドライナーということになるのかな。さらに他4本のフェスに出て、10月にはブラジルのサンパウロでの<モンスターズ・オブ・ロック>に出る。で、それが終わる頃にはアメリカの音楽市場の動きがクリスマス休暇にかけて緩やかになっていくんだ。ツアーは夏のもの、という考え方が定着していて、そのシーズンが終わってからみんな休みをとろうとするからね。そして俺たちは業界の連中が休んでいる間に曲作りに勤しみ(笑)、クリスマスと新年の休暇をとり、それからスタジオに入る。すべての新しいことに取り掛かり始めるというわけさ。ニュー・アルバム、そして2014年度のワールド・ツアー。それは確約できるよ。

――2014年のいつ、何が起こるということを予告するには時期尚早でしょうか?

クラウン:それはまだ言えない。いつ、誰が、何を、ということはね。今の俺に言えるのは「2014年」ということだけだな。

――具体的な曲作りはこれからであるにしても、次の作品についての願望はあるはず。どんなものにしたいと考えていますか?

クラウン:そうだな……。まず、SLIPKNOTにおいて俺たちは、これまで同じことを繰り返したことが一度もない。常に言ってきたことだけど、各々のアルバムは、それぞれ異なった絵画のようなものなんだ。しかもその絵が飾られているのは同じ壁ではない。だから次のアルバムは、より良いものとか悪いものという以前に、とにかく“違うもの”になる。何故ならいずれのアルバムにも異なった役割があるからさ。ことに次の作品の場合、環境そのものが違う。俺たちはポールを失ってしまったわけだからね。もちろんポールの不在をコンセプトと捉えているわけじゃないが、それがバンドをアルバムへと突き動かす動機のひとつになることは間違いない。なにしろ俺たちはこれまでの人生のなかで、ポールを欠いた状況というのを一度も経験したことがないんだから。

――……ええ、確かに。

クラウン:でも実際、俺はこれだけ待って良かったとも思っているんだ。もっと早く取り掛かることも不可能ではなかったけども…なにしろ俺たちは、いまだにそこに痛みを感じ続けているわけだからね。ただ、今ではこうして事実として受け止めながら話すことができる。目の前にあるこのテーブルをぶっ壊して、次のことを始める準備ができた状態にあるのさ(笑)。もちろんまだ現時点では何ひとつ出来上がってはいない。それはスタジオに入ってからの話だからね。だけど、たとえばジョーイは常に曲を作っている。ポールが亡くなってからもスタジオに入って、悲しみをぶつけるようにしてたくさんの曲を書いていた。コリィ(・テイラー/Vo)についてもそれは同じことだし、みんな常に曲を書いているんだ。まだ全員で輪になって作業をすることもなければ、お互いのアイディアを見せ合ったりもしていない。だけど、すでにこうした感情が各々にさまざまなものを作らせているはずなんだ。だから、さっきも言ったように、ベターな作品であるか否かといったことじゃなく、とても特殊な次元にあるものが出来上がることになるはずだと思う。ポールのことがあったからこそね。

――つまり明確なコンセプトを用意しなくても、過去と異なったものになるのは間違いないし、あなた自身もどんな楽曲が出揃うことになるのかを楽しみにしている。そういうことですね?

クラウン:ああ。このバンドは現在、とても特別な段階にいると思う。みんな年齢も重ねてきたし、さまざまなことを通り抜けてきた。ある意味、これまでのどんな時期よりも危険だともいえる。だけどお互いが本当に、ごく近しい存在になりつつある。SLIPKNOTは常に“バンド”であり続けてきたけども、それ以上に本当に近い関係になっているんだ。たくさんの楽しみを共有してきたからこそね。だけど、過去最大級に楽しみを共有できていたのは、メジャー契約を得る前だったかもしれない。地下室で“いつか、いつの日か”と夢見ていた頃のことさ。飢えていたけども、それが楽しかった。そしてようやく契約を手に入れたとき…俺の言葉の悪さについては大目に見て欲しいんだが、全世界に向けて「ファック・ユー!」と言いたい気分だった(笑)。それはいわゆる普通の“楽しい”という感覚とは違うかもしれない。だけど俺たちは楽しかったし、今でも「ファック・ユー!」という姿勢を持ち続けている。しかもお互いのことを愛しているんだ。

――いわば契約前の精神を保ち続けたまま、各々が成熟した状態にある。

クラウン:うん。SLIPKNOTにおける俺たちのスピリットは、絶対に変わることがない。最後の最後までね。確かに俺たちは年もとってきたけども、そのぶん賢くもなってきた。小賢しくなったわけじゃないぜ(笑)。この音楽を、アートを、よりデンジャラスなものにするうえでの知恵を身に付けてきたんだ。それが俺たちにとっての真摯さってものなんだ。俺たちは俺たちのすべきことについて、いつもシリアスに取り組んできた。そして今、ふたたび最初からやり直すような感覚にも近いものがあるんだ。それはやはりポールが不在だからかもしれないし、他に選ぶべき道がないからかもしれない。

――なるほど。しかしどうあれ「スピリットは変わらない」という言葉を聞くことができて嬉しいです。

クラウン:当然のことだよ。そうでなければ今、俺はここにはいないはずだ。

――ここでもうひとつ今回の<OZZFEST>に関連した質問を。この両日、この場には日本の若いバンドもたくさん出演しています。そのなかには、SLIPKNOTを通じて初めてヘヴィ・ロックに触れたという世代の若者も多いわけですが、そういったバンドたちとステージを共にすることについてはどう感じますか?年を取ったなあと感じます?(笑)

クラウン:まさに(笑)。正直に言うと、誰が俺たちに影響を受けているのかなんて、自分では把握できるもんじゃないし、考えたこともないんだ。だけど今、こうして見渡してみると、自分たちが何をやってきたかが目からも耳からも伝わってくる。それだけ自分たちが音楽の世界においてインパクトのあることをやってきたってことなんだな、と実感させられるよ。ただ、ファンのことはわかっているつもりだけども、他のバンドのことはよくわからない。俺たちは俺たちの音楽を作ってきただけだし、彼らも彼ら自身の音楽を追求してきたはずだからね。だけど、もしもそこにSLIPKNOTから受けた影響が反映されているんだとすれば、それは俺たちにとってとても名誉なことだ。同時にちょっと困惑させられもする。だって俺たちはただの人間だし、誰かに影響を与えるためにやってきたわけではないからね。たとえば俺は、MAN WITH A MISSIONのようなバンドも知っているし、X-JAPANのドラマーも知っている。ONE OK ROCKというバンドもいるよね?まだ誰にも知られていないような未契約の日本のバンドもいくつか知っている。素晴らしい音楽は世界にたくさんあるし、ある意味、12~13年前に近いような感覚でもあるんだ。ロックにとっての新しい夜明けというかね。だからそういう意味で、今はとてもエキサイティングな状況にあると思う。

――最後にもうひとつだけ。今回の<OZZFEST>に駆けつけることができなかったファンに向けて一言いただけますか?

クラウン:俺に言えるのは、ファンのことは一人残らず愛しているということ。みんなに感謝しているし、みんなの存在なしにSLIPKNOTはここにはいない。SLIPKNOTは単なるバンドではなく、もはやカルチャーなんだと俺は思っている。だからこそ人々を巻き込んできたし、明日があるんだ。だからとにかくみんなに届けたいのは“We love you”という言葉以外にはないね。また近いうちに会おう!

pix by by William Hames
取材・文:増田勇一
この記事をツイート

この記事の関連情報

*

TREND BOX

編集部おすすめ

ARTIST RANKING

アーティストランキング

FEATURE / SERVICE

特集・サービス