【アルバムレビュー】LUNA SEAに起きた、かつてない大変革

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このアルバムの中に閉じ込められたエネルギーはとてもとても尋常な量ではない。

『A WILL』を聞いて、私はぶっ飛んだ。多くの人が大絶賛をもってこのアルバムを受け入れることだろう。ただし、間違いなくLUNA SEAでありながら、今までになかったLUNA SEAだらけでもある。

『A WILL』は「LUNA SEAの13年5ヶ月の結晶」…と一言で言ってしまえば簡単なのだけど、このアルバムの中に閉じ込められたエネルギーはとてもとても尋常な量ではない。通常のアルバムに内包されている潜在熱量とは一桁違うという印象だ。それは、どの曲をもってしても、聴く度に新たな発見を促し、楽曲の解釈をゆり動かしてしまうところにも現れている。「どんな風に聞こえる?(笑)」と、無邪気に悪戯っぽい顔をしてメンバーが笑っているようにも聴こえ、曲が有機的にうごめいているかの錯覚すら覚える。

簡単に言ってしまえば、聴いている側の体調によって身体への浸透度合いが変わってしまうような多面的な表情を持っているという感じか。感度高い体調であれば5人の呼吸が蠢くような艶かしさとなって伝わり、得も言えぬ健康的な色気や艶かしいグルーブが心地良くなる。疲労困憊している心持ちだとLUNA SEA元来の気合と妥協なきエッジがストレートに跳びかかり、疾走感とドラマティック性に心が大きく引っ張られる。

聴くたびに様々な顔をのぞかせるのは、そこに注ぎ込まれた5つのエネルギーが起爆せんばかりの熱量で刻まれているからに過ぎないが、これは、どの曲においても設計図をトレースするような作られ方をしたのではなく、自然発生的に曲が膨らみ、生きているがごとく成長していく楽曲を誘導するようにアルバムに閉じ込めたからに他ならない。その経過で楽曲はメンバーのエネルギーを無尽蔵に取り込んだわけだ。LUNA SEAが曲を生み出すのではなく、曲に誘われてメンバーが擦り寄っていくという力学が働いたアルバムは、かつてのLUNA SEAの歴史には、1枚もない。画一化された完成形に向けて5人がぶつかったのではなく、5人が融合したことによってかつて見たことのない1ステージ上のレイヤーに遷移したのが『A WILL』だ。だから今までになかったLUNA SEAだらけなのである。

ほんとうの意味で5つの才が有機的に融合したのは、LUNA SEAの歴史において、僕の知る限りこれが初めてのことであるし、LUNA SEAにとってもサプライズなどという言葉では言い表せないとんでもないパラダイムシフトだったはずだ。

曲の熟成と化学反応のために5人のエネルギーが一点に注がれ、
その様子を全員が少年のように楽しんでいる様子が伝わってくる。


LUNA SEAというバンドは、RYUICH、SUGIZO、INORAN、J、真矢それぞれが、己の主張をお互いにぶつけあいながら、吸引と反発との間の中でバランスを探り、一触即発の危険な張り詰めたテンションの中、メンバー間で絶妙な間合いを図ってきたバンドである。彼らがモンスターであり奇跡でもあるとしばしば語られるのは、このバランスが奇跡であり、この均衡を保つエネルギーが並みじゃなかったからだ。そこから彼らは過激な実験性と高度な演奏力を武器に、様々な名曲を生み出してきたのは皆の知るとおり。5つの個性は曲によってバランスを変え、5人5様の魅力がLUNA SEA楽曲のバリエーションに豊かな彩りを添えてきた。

しかし『A WILL』でみせた2013年のLUNA SEAは、25年の歴史の中でみたことのないメンバー間の融合を実現させ、誰も知らぬLUNA SEAの姿を生み出していた。曲のコアにメンバーが向かい、5人全員が曲の本質にベクトルを向けることで、自らの主張は完全に影を潜めることになったのだ。曲の熟成と化学反応のために5人のエネルギーが一点に注がれ、その様子を全員が少年のように楽しんでいる様子が伝わってくる。キャリアをもってサウンドがレイドバックしてくるアーティストも少なくないが、これまでになかった興奮のもとに進められたであろうレコーディングで、しっぽりと枯れた作風になるはずもない。むしろ融合LUNA SEAは生まれたばかりの新人バンドのようでもあり、事実『A WILL』のサウンドは若々しく、エネルギーのほとばしるシズル感も特筆すべき新鮮味のあるところである。

肌に触れてピタッと冷えているような緊張感ではなく、
寸止めで制御されたギリギリのスリル感を味わうのも『A WILL』の楽しみ方だ。


元来メンバーが持ち合わせたエッジの鋭さは一切の陰りはないが、香り立つアンサンブルとグルーブはこれまでにないほどの甘さと色気を放ち始めている。剛にして柔らかなトーン、タイトさを基軸に持ちながらうごめいて呼吸をするようなグルーブが息づくアルバムが、日本のロックシーンの中でどれほどあったであろうか。ド派手なEDMやシーケンスに制御されたアンサンブルばかりが響く昨今の音楽シーンにおいて、この生々しい「バンド・サウンド」は驚異的に響く。モンスターに流れる血潮を直接肌で感じているかのようだ。

SLAVEにとって13年ぶりのLUNA SEAの新作が何にも代えがたい最高の宝ものになるのは分かっているが、LUNA SEAを知らぬ人にこそ『A WILL』を手にとってみて欲しい。ロックバンドというものはどういうものか、アンサンブルというのはどういうものか、表現とはいかなるものか、音楽で伝わるものとはなにか…深淵で新鮮な様々な問いと答えを、同時にたくさん与えてくれることだろう。

5人が楽曲というパレットの上で自由に筆を動かし色彩を重ねる。破綻しないのは、ひとえにプレイスキルとバンドマンとしてのリテラシーの高さによるものだ。そこで、蛇のようにうごめき妖艶に響き、時には曲の外縁をトレースするように曲そのものとなり、艶かしく絡みつくSUGIZOのプレイに身を委ねるのもいい。INORANのプレイも切れ味とそのエッジの鋭さに陰りはなく、殺傷力はより強靭となっているものの、そのアプローチは極めてロマンティックで柔らかい。いわば研ぎ澄まされながらも人肌の体温まで温められたナイフのような佇まいだ。肌に触れてピタッと冷えているような緊張感ではなく、寸止めで制御されたギリギリのスリル感を味わうのも『A WILL』の楽しみ方だ。

実力の120%を瞬間発揮するような異常値でパッションを演出したり、根性論で闇雲に表現を積み上げるような愚策は一切ない。5人が集まることでマジックが起こることは2010年の東京ドーム3daysで実証済みだ。お互いの求心力と反発力に注力することをやめたのは、全幅の信頼があってのこと。

バンドは人にあり。この5人が集まればLUNA SEAというモンスターが息づき、鼓動が波打つ。その瞬間、彼らは無敵の表現者となる。その瞬間を何度も何度も楽しめる、『A WILL』はそんなアルバムだ。

文◎BARKS編集長 烏丸哲也



New Album
『A WILL』
2013年12月11日発売
■初回限定盤A PREMIUM PACKAGE(SHM-CD + Blu-ray)
UPCH-9905 ¥5,980(税込)
※ダブルデジトレイ仕様
※52P撮りおろしフォトブックレット付
※書き下ろしリリック掲載
■初回限定盤B(CD + DVD)
UPCH-9906 ¥3,980(税込)
■通常盤(CD)
UPCH-1953 \3,059(税込)
■アナログ盤サイズSPECIAL PACKAGE(CD+DVD)
PDCJ-1064  \4,980(税込)
※数量限定盤 / アナログ盤サイズ豪華パッケージ
※収録内容は初回限定盤Bと同内容になります。
※“ユニバーサルミュージックストア”のみでの販売となります。
※数量限定商品の為、上限に達し次第販売を終了致します。
SHM-CD / CD収録内容
1.Anthem of Light
2.Rouge
3.The End of the Dream
4.MARIA
5.Glowing
6.乱
7.absorb
8.Metamorphosis
9.銀ノ月
10.Thoughts
11. Grace
Blu-ray / DVD収録内容
The End of the Dream Music Video
Rouge Music Video
Thoughts Music Video
乱 Music Video
The End of the Dream & Rouge -TV SPOT-
Thoughts -TV SPOT-
乱 -TV SPOT-


◆BARKS LUNA SEA 特設サイト
◆LUNA SEA オフィシャルサイト
◆LUNA SEA オフィシャルFacebook
◆LUNA SEA オフィシャルTwitter
◆LUNA SEA オフィシャルYouTube
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