【BARKS編集部レビュー】ハイブリッド・イヤホンの新基準、ハイコストパフォーマンスを誇るDUNU DN-1000

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2011年9月、14万円というセレブ価格で登場しヘッドホンマニアの目をひんむいた高級モデルAKG K3003が発売されてかれこれ2年以上の時が経つ。当初私はAKG K3003のレビュー記事(【BARKS編集部レビュー】超弩級AKG K3003が描き出す~)をしたためたが、そこでは、その素晴らしさを称えるとともに、K3003の次期モデルへの登場を切に願う形で筆を置いている。「音の素晴らしさは認めるが高額ゆえに手が出ない」…そういう潜在的なオーディエンスのために廉価モデルを開発して欲しいという、文末部分のことだ。

◆DUNU DN-1000画像

高級オーディオ機器の生産コストが指数関数的に増加していくことを逆手にとれば、基本設計を保ちながら販売価格を2分の1から3分の1程度まで下げることはもあながち夢ではないし、AKG K3003のメカニカル・チューニング・フィルターのオプション排除や付属品の簡素化など徹底的なコストカットを施せば、基本品質を担保したまま驚異的な低価格を実現させた兄弟モデルの誕生も不可能ではないと思えた。つまりは、それこそが庶民の手に届く市場を席巻するエポックメイクな名機の誕生であると信じた。

▲DUNU DN-1000。ハウジングはシルバーだが、材質は銅。ずっしりと重量感があり、サウンドメイクにも好影響を与えていると思われる。

▲3ドライバー搭載のイヤホンだが、非常にコンパクトで耳が小さめの人でも心配はいらなそうだ。質感も高く、使い心地も上々。

▲イヤーチップを外したところ。ステムには音響フィルターの金属製のアミが被されている。ゴミ混入を防ぐ効果も兼ねているようだ。

▲付属するアジャストリング。3種類の大きさが色違いで用意されている。左に赤のリングを装着したところ。その分イヤーチップが2mmほど飛び出しているのがお分かりだろうか。

▲ふんだんな付属品。キャリングケース、ポーチ、ポリッシュクロス、標準プラグ変換アダプター、航空機用ジャック変換アダプター、イヤーフック、各種イヤーチップ、アジャストリング、紙資料、グラフ。

気付けば2年強もの年月が流れてしまったわけだが、ここにきてついに庶民に手の届く名機と思しきモデルが登場してくれた。ただひとつ、考えの及ばぬ点は、その名機がAKGから誕生するとは限らなかったということだ。それがこのDUNU DN-1000である。AKGとは全然関係のないブランドがこの位置に滑りこんでくるなんて、本当に想定外だったけれど。

とは言えDUNUは、日本上陸前に中国から直接取り寄せてレビューをしたことがあるブランドで(【BARKS編集部レビュー】中国ヘッドホン・ブランド事情、DUNUの実力は?)、安価でしっかりしたサウンドを豊富なアイディアで生み出していく実直な姿勢が素晴らしいブランドであることを実感していた。そのうち名機と呼ばれるようなイヤホンを開発するのだろうなと期待していたこともあり、DN-1000の完成度の高さは偶然でもラッキーでもなく、企業努力の順当な結果なのであろうことは疑う余地もない。そもそも“S”ゼンハイザーの音を“M”モンスターのようなポピュラリティをもって“3”3分の1の価格で提供する“SM3”というスローガンを掲げて邁進してきたブランドなのだ。そりゃ、気合が違う。

DN-1000は、「あれがいい」とか「ここがどう」とか、とやかく語るまでもなく、落ち着きと理知的なバランスを持った、ただただシンプルに「これはいいですよ!」と万人にお薦めできるようなイヤホンだ。構造的にはダイナミック・ドライバー×1発、バランスド・アーマチュア×2発という3ドライバーを搭載しており、奇しくもAKG K3003と同じ構成を持つ。銅を用いた金属筐体で剛性、堅牢性もトップクラス、タッチノイズも目立たず、イヤホンとしての素性は極めて高いモデルだ。

ダイナミック・ドライバーとBAドライバーを同載したいわゆるハイブリッド・モデルは、今では世界中のブランドから数えきれないほど発表されている。高域の微細な表現力はBAドライバーが、実在感のある低域はダイナミック・ドライバーが担うという設計思想がほとんどで、各ドライバーのいいとこ取りをしようという発想である。ただ、ハイブリッドで最も厄介なのは、トーンの整合性もさることながら、ダイナミック・ドライバーとBAドライバーのリニアリティの違いがサウンドに影響を与える点だ。つまり入力信号を上げた時の音量の上がり方がダイナミック・ドライバーとBAドライバーとでは違うため、音量の大小によって各ドライバーの出力バランスが変化してしまい、結果として音の大きさでトーンが変わってしまうという面倒な問題をはらんでいるのだ。

そもそも音を感知する人間側も周波数によって感度が異なるため、等ラウドネス曲線のような特性を抱えていたり、それ以上に個人差の問題もある。ハイブリッドのマルチドライバーで優れたバランスを獲得するのは、困難極まる道程なのだろうとは容易に察しがつく。

その点においてDN-1000の優れている点は、音量変化による聴感上のトーン変化の少なさにある。これは使用環境の違いによる評価のブレが小さいことに直結するもので、多くの人から共通した評価を受けることを意味する。つまりは、世間の評価がそのまま自分にも当てはまってくれる可能性が高いということでもあり、視聴環境がない人にとっては心強いポイントでもあろう。

カスタムIEMまで視野に入れると10万円を超えるイヤホンも多数存在する昨今の状況だけに、何より凄いと騒ぎ立てるつもりもないが、各帯域のバランスが良く低域の沈み込みも安定しており、高品質であることに間違いはない。超低域がすごく出るとかドンシャリで心地よいといった特筆すべき特徴や尖ったキャラがあるわけではないけれど、必要十分な遮音性とハッキリとした定位を描き、几帳面に全帯域を写実的に描く能力には、確かな信頼性がある。とにかく聞いていて心地よく、安心して音に身を委ねることができるサウンドだ。

重箱の隅をつつくような聞き方をすると、低域のタイトさがもう少し高いほうが心地よいと思うものの、高域の伸び方は申し分なく、ボトムの安定感と中域の滑らかさ、そして高域のはっきりとした分離感は、まさにAKG K3003に勝るとも劣らないところ。音楽のメイン部分となる中域もモタれるような重たさがなく、スッキリと軽快で丁寧な鳴り方で、この礼儀正しい感じもK3003によく似た感覚だ。

販売はフジヤエービック、eイヤホンにて2万円強の実勢価格となっており、コストパフォーマンスは抜群だ。この価格ながら付属品も充実しており、キャリングケース、ポーチ、標準プラグ変換アダプター、航空機用ジャック変換アダプターからイヤーフックまで、さらにシリコン/ゴム/低反発といった様々なタイプのイヤーチップも同梱されている。そして最も面白いのが、アジャストリングなる3種類の金属リングが付属している点で、ステムにはめることでイヤーピースの位置を前に押し出すというもの。ハウジングが干渉して耳奥まで挿入できない際に助かる機能だが、鼓膜と本体との距離が変わることで周波数特性の変化も同時に楽しめるとしており、その効果を示すグラフも同梱されている。イヤホンマニアの好奇心を刺激する憎い演出だ。

text by BARKS編集長 烏丸哲也

●DUNU DN-1000
オープンプライス(市場販売価格21,800円)
・ドライバー:バランスドアーマーチュア2基+ダイナミックネオジウム[レアアース]マグネット搭載10mm1基の3ドライバ構成、ネットワーク有
感度:98+-2db
インピーダンス:10Ω
再生周波数:16hz - 22khz
コード:約1.2m OFC線材
プラグ:金メッキ 3.5mm ステレオミニ
重量:26g
ハウジング素材:カッパー(銅メタルハウジング)
主な付属品:金属製ハードケース、レザー調ポーチ、ケーブルバンド、金メッキ6.3㎜標準プラグ変換アダプタ、飛行機用アダプタ、ケーブルクリップ、イヤーピース各サイズ
メーカー保証期間:ご購入日より1年間(使用による断線は含まれません)


◆DUNU DN-1000オフィシャルサイト
◆DUNU DN-1000オフィシャルサイト(海外)
◆BARKSヘッドホン・チャンネル

BARKS編集長 烏丸レビュー(■イヤホン ●ヘッドホン ◆カスタムIEM ◇他)
◆Ultimate Ears Reference Monitors(2013-12-16)
◆Ultimate Ears 11 Pro(2013-12-08)
◆earmo Tune5(2013-12-03)
●オーディオテクニカATH-OX7AMP(2013-11-23)
■音茶楽Donguri-欅(KEYAKI)(2013-11-17)

■オーディオテクニカ ATH-IM01~04(2013-10-27)
◇Astell&Kern AK10(2013-10-25)
●フィリップス Fidelio M1(2013-10-22)
◆earmo Tune4(2013-10-12)
◆Ultimate Ears Personal Reference Monitors(2013-10-05)

◆Sensaphonics 2XS(2013-09-30)
■Earsonics SM64(2013-09-23)
◆LIVEZONER41 LZ12(2013-09-15)
◆Ultimate Ears カスタムIEM全7機種(2013-09-08)
◆null audio Elpis(2013-09-03)

■FitEar Parterre(2013-08-25)
◆カナルワークスCW-L12(2013-08-17)
◆Livezoner41 LZ 4(2013-08-06)
■SHURE SE846(2013-08-02)
■オーリソニックスASG-2 with BassPort(2013-07-28)

■Hippo ProOne(2013-07-21)
◆カナルワークス CW-L51a(2013-07-13)
■EXS X10(2013-06-24)
■音茶楽Flat4シリーズ粋、楓、玄(2013-06-17)
◆LEAR LCM-1F(2013-06-10)

◇Ultimate Ears UEブーム(2013-05-28)
◇Stage93 93PC(2013-05-20)
●Meze Headphones(2013-05-08)
●Fischer Audio Jubilate(2013-04-29)
◇ORB JADE casa(2013-04-21)

◆lime ears LE3(2013-04-14)
◇雑誌「DigiFi 第10号」付録(2013-04-06)
●Ultimate Ears UE 9000、UE 6000、UE 4000(2013-04-01)
■開放型インナーイヤーイヤホンおススメ5モデル(2013-03-19)
◆LEAR LCM-5(2013-03-16)

●フィリップスFidelio L1(2013-02-25)
○スマホが与えた音楽リスニングのモラル変革(2013-02-17)
■Klipsch Image X7i(2013-02-04)
◆LEAR(2013-01-27)
◆カナルワークスCW-L05QD(2013-01-13)

◆earmo(2013-01-02)
◆Westone AC2(2012-12-25)
◇Stage93 93SPEC(2012-12-16)
●California Headphone Silverado、Laredo(2012-12-09)
■音茶楽Flat4-楓(2012-12-03)

◆Stage93 Stage 6(2012-11-26)
●GRADO SR60i(2012-11-19)
◇Astell&Kern AK100-32GB-BLK(2012-11-15)
●オーディオテクニカ ATH-WS99(2012-11-10)
■アトミック フロイドPowerJax+Remote(2012-10-29)

◇VORZUGE VorzAMPduo(2012-10-26)
●ファイナルオーディオデザイン heaven VI(2012-10-16)
●beyerdynamic T 90(2012-10-08)
●GRADO GS1000i(2012-09-30)
●SENNHEISER HD 700(2012-09-16)

◆ACS T1 Live!(2012-09-11)
●オーディオテクニカ ATH-AD2000 ATH-AD1000(2012-09-03)
●GRADO RS1i、SR325is、PS500(2012-08-20)
◆FitEar MH335DW(2012-08-15)
●DIESEL VEKTR(2012-08-07)

◆カナルワークスCW-L51 PSTS(2012-07-30)
●Fischer Audio FA-002W(2012-07-25)
●Pioneer SE-MJ591(2012-07-16)
■GRADO iGi(2012-07-12)
●HiFiMAN HM-400(2012-06-26)

●Klipsch Reference One(2012-06-17)
●GRADO PS1000(2012-06-09)
●ULTRASONE edition 8(2012-06-02)
●PHONON SMB-02(2012-05-28)
■音茶楽Flat4-粋(SUI)(2012-05-20)

●<春のヘッドフォン祭2012>、Fischer Audio FA-004(2012-05-13)
◇Hippo Cricri、Go Vibe Martini+、VestAmp+(2012-05-04)
■ファイナルオーディオデザインheaven IV(2012-04-28)
■フィッシャー・オーディオ Jazz (2012-04-22)
●SHURE SRH1840 & SRH1440(2012-04-16)

■FitEar TO GO! 334(2012-04-08)
◆Unique Melody Mage(2012-03-26)
●Takstar PRO 80、HI 2050、TS-671(2012-03-20)
●klipsch Mode M40(2012-03-15)
■Fischer Audio DBA-02 Mk2(2012-03-07)

◆AURISONICS AS-1b(2012-02-27)
■UBIQUO UBQ-ES503、UBQ-ES505、UBQ-ES703(2012-02-21)
◆Heir Audio Heir 3.A(2012-02-15)
■moshi audio Clarus(2012-02-12)
◆Thousand Sound TS842(2012-02-08)

◆Heir Audio Heir 8.A(2012-02-01)
■CRESYN(2012-01-17)
◆Unique Melody Merlin(2012-01-08)
◆カナルワークスCW-L01P(2012-01-03)
■ファイナルオーディオデザイン Adagio(2011-12-31)

◆LEAR LCM-2B(2011-12-26)
●SOUL by Ludacris SL100、150、300(2011-12-23)
●AKG K550(2011-12-20)
■SENNHEISER IE80 & IE60(2011-12-16)
■DUNU(2011-12-14)

◆カナルワークスCW-L10(2011-12-12)
■オーディオテクニカ ATH-CK90PROMK2(2011-12-09)
◆Ultimate Ears UE 5 Pro(2011-12-06)
■REALM IEM856(2011-12-02)
■ファイナルオーディオデザインAdagio III(2011-11-26)

◇Ultimate Ears用交換ケーブルFiiO RC-UE1&オヤイデ電気HPC-UE(2011-11-25)
●Reloop RHP-20(2011-11-22)
■オーディオテクニカ ATH-CK100PRO(2011-11-14)
■SOUL by Ludacris SL99(2011-11-04)
■Fischer Audio Ceramique(2011-10-25)

■SHURE SE535 Special Edition(2011-10-21)
■JVCケンウッドHA-FX40(2011-10-16)
■BauXar EarPhone M(2011-10-10)
■SONOCORE COA-803(2011-10-02)
◆TripleFi 10 ROOTHリモールド(2011-09-25)

■AKG K3003(2011-09-18)
■Atomic Floyd SuperDarts+Remote(2011-09-11)
■Bowers & Wilkins C5(2011-09-06)
■Westone3(2011-09-02)
◆カナルワークスCW-L31(2011-08-26)

◇ORB JADE to go(2011-08-22)
■YAMAHA EPH-100(2011-08-14)
■NW-STUDIO(2011-08-09)
■NW-STUDIO PRO(2011-08-02)
◆FitEar MH334(2011-07-29)

◆ROOTH SE530×8(2011-07-26)
■Westone ES5(2011-07-21)
●SHURE SRH940(2011-07-17)
◆Ultimate Ears 18 Pro(2011-07-15)
■クリエイティブAurvana In-Ear3(2011-07-06)

◆カナルワークス CW-L01(2011-07-01)
■GRADO GR10&GR8(2011-06-25)
◇SAEC(サエク)SHURE SE用ケーブル(2011-06-21)
■フィアトンPS 20&PS 210(2011-06-17)
■ZERO AUDIO ZH-BX500&ZH-BX300(2011-06-11)

■フィリップスSHE8000&SHE9000(2011-06-03)
■アトミック フロイド(2011-05-26)
■モンスター・マイルス・デイビス・トリビュート(2011-05-20)
■SHURE SE215(2011-05-13)
■ファイナルオーディオデザインPiano Forte IX(2011-05-06)

■ラディウス・ドブルベ/ドブルベ・ヌメロドゥ(2011-05-01)
■ローランドRH-PM5(2011-04-23)
■フィリップスSHE9900(2011-04-15)
■JAYS q-JAYS(2011-04-08)
◇フォステクスHP-P1(2011-03-29)

■Klipsch Image X10/X5(2011-03-23)
■ファイナルオーディオデザインheaven(2011-03-11)
■Ultimate Ears TripleFi 10(2011-03-04)
■Westone4(2011-02-24)
■Etymotic Research ER-4S(2011-02-17)

■KOTORI 101(2011-02-04)
■ゼンハイザーIE8(2011-01-31)
■ソニーMDR-EX1000(2011-01-17)
■SHURE SE535(2011-01-13)
■ビクターHA-FXC51(2011-01-12)

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