【BARKS編集部レビュー】カスタムIEM選びのA to Z、歌を聞くならWestone ES30

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というのもES60の登場によって、ES50のサウンドはどうしてもES60の劣化版に聞こえてしまうから。全体的にはバランスの良さが美点だが、ES60の登場によってそのサウンドには陰りが見える。あくまでピンポイントに比較した場合の話だけれど、ボーカル部分の中域の解像度が低いのと、高域の伸びが足りないように聞こえてしまうため、ES60はあらゆる点でES50の上位互換であるという印象が拭えない。価格差は4万円にも及ぶけれど、ES50を積極的に選ぶ理由が見当たらないのだ。実際私は、ES60を手にしてからES50(正確に言えば、私の所有モデルは一世代前のES5)に手が伸びることがなくなってしまった。

その点、ES30は確固たるサウンドの個性を持ち、ES50/ES60とは明らかに別軸を向いたコンセプトの違いが感じられる。オーディオとしての帯域の広さはES60のほうが格段に上だが、だからといってES30の魅力が揺らぐわけではない。使用目的に応じての個性がES30の存在感を際立たせている。

ES30のサウンドは、簡単な言葉に置き換えるならば「音楽のすべての帯域をギュッと中央に寄せて耳の横に凝縮させ、中域の美味しさを前面に押し聞かせる、とっておきのボーカルホン」であるといえる。ことES30で聴くJ-POP、R&Bは、無理なく歌が飛び込んでくるので、電車や飛行機、雑踏にまみれた環境でも自然に音楽身を任せることができるような楽しさがある。中低域にあるキックのアタックなども前にガッと出てくるので、低域不足を感じることもない。ロックやEDMでもストレスを感じることがない。
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