【インタビュー】VALSHE、近現代文学がテーマの作品に「痛烈な問いかけがある」

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■今回はとことんイキきったものを作れて良かった
■時代を超えて読み継がれる文学をもとに作った曲たちが繋がっていく

▲『ジツロク・クモノイト』Musing盤

──では、宮沢賢治の「注文の多い料理店」からインスパイアされた「MANY ORDER」を作ったときのエピソードは? 原作はワクワク感がありつつ、ちょっと怖い話でもある。

VALSHE:小さい頃から大好きで何度も読んでいた話です。動物たちが経営しているレストランに2人の人間が招かれてあやうく食材として食べられてしまいそうになる物語がおもしろおかしく描かれているんですが、子供の頃は“楽しいな”というふんわりした感想を抱いていたのが大人になって読んでみたら、この話の裏には“なぜ人間の命だけが尊いのか?”という痛烈な問いかけがあるんじゃないかと。ただ、その答えを出すのは、ほぼ不可能だと感じたので、サウンド面は作品の表層から感じられる印象を全面的に取り入れ、「MANY ORDER」は流行りのEDMをふんだんに取り入れたポップな曲になりましたね。

──いちばん明るい曲調ですよね。

VALSHE:そうなんですよね。明るい曲調を12~13歳ぐらいのコが歌っているようなイメージ。一見、ノリのいいポップな曲ですが、歌詞をよくよく読むと「おやっ?」って思う二重構造になっていると思います。

──確かに曲で描かれているパーティに招待されたディナーを食べたらどうなるんだろうって怖さがありますよね。

VALSHE:リリースされる3種類の盤の中の【Musing盤】にはCDのほかに絵画短編集が付いているんです。各楽曲に対して1つずつ短編小説を執筆していて、アナザーストーリーだったり、楽曲にちなんだストーリーだったり、切り口はいろいろですが、「MANY ORDER」は小説を読んで歌詞を見ていただけたら何が言いたいか明確にわかるようになっているので、リンクさせて楽しんでいただくのも面白いかなと思います。

──踊れるポップチューンに続く「暗い夜の行き路」は憂いのあるバラードで、最後にふさわしい名曲ですね。

VALSHE:嬉しいです。

──この曲だけ作曲がVALSHEさんですね。

VALSHE:はい。志賀直哉氏の「暗夜行路」をモチーフに選んだのがminatoということもあり、作詞をminatoが手がけています。前回、自分が作ったのは明るいサウンドの曲だったので、真逆な曲にしたくて、どこまでも救われない曲を作りました。

──鍵盤や弦を入れたかった曲ですか?

VALSHE:ピアノで始まって最後もピアノでフェードアウトするイメージがあった曲です。そこにアレンジが加わり、歌詞や歌とあいまってどこまでも堕ちていくような、想像していた以上に陰のある作品になったことに非常に満足しています。

──“辛く長い路は この先も続くのだろうか”っていう歌詞があまりにも悲しい。

VALSHE:“穏やかな悲劇”というテーマがあった曲で、ボーカルは平熱に思えて、その実かなり力がこもった歌になっていると思います。自分でも出来上がったあとも何度も聴いているぐらい好きな曲です。ひとりで聴くより、人が大勢いる街中や、電車の中で聴くとまた違った感覚が芽生えるんじゃないかなと。これからも救いのある曲やハッピーな曲も作っていくと思いますが、人間、落ち込むときは落ち込みますから、今回はとことんイキきったものを作れて良かったと思っています。

──今回、VALSHEさんがモチーフにした文学は10代の人にとっては授業の中で取り上げられる作品だったりもしますしね。

VALSHE:そうですね。聴いてくださっている方は中・高校生が圧倒的に多いので、彼、彼女たちにも聴いてほしいし、今、抱く感想と大人になってから作品を読み返したときの感想は異なっているかもしれない。自分自身もそうかもしれないし、時代を超えて読み継がれてきた文学をもとに作った曲たちがいろいろなところに繋がっていくと思うと楽しみですね。

──今後の予定としては7月5日にZepp Tokyoで〈storyteller 歌劇演舞~the final chapter~〉と題したコンサートが行なわれますが、この内容というのは?

VALSHE:ファンクラブ限定ライヴとして2回目のコンサートになります。『storyteller』、『storytellerⅡ 〜the Age Limits〜』という過去にリリースした2枚のアルバムをリアルに上演するのがテーマですが、VALSHEがストーリーテラーとなっていろいろな物語を読み聞かせた昨年のライブと異なるのは、朗読なのか演劇なのかミュージカルなのか、はたまた通常のライブなのか、あらゆる方法を用いて作品を実演する内容になるということです。デビューアルバムからの流れを完結させる意味合いもあるので、深い部分を知りながら応援してくださっている方にこそ優先的に見てほしくて、今回はファンクラブ限定にしました。

──『ジツロク・クモノイト』をライブで見られる機会はあるんでしょうか?

VALSHE:せっかく、こんなにコンセプチュアルなアルバムができたので、なんらかの形で表現できたらと思ってはいます。それとシングル「君への嘘」からVALSHEの5周年は始まっているので、これからどんどん新しい情報がアップされていきます。アニヴァーサリーイヤーにみなさんの応援は不可欠なので、一緒に駆け抜けていただけたら嬉しいですね。

取材・文◎山本弘子



3rd mini ALBUM『ジツロク・クモノイト』

6月24日(水)発売
【初回限定盤 CD+DVD】JBCZ-9014 ¥2,800(税抜)
<特典DVD>
・「ジツロク・クモノイト」MUSIC VIDEO
・Making of 「ジツロク・クモノイト」
【Musing盤 CD+絵画短編集】JBCF-9004 ¥5,000(税抜)
絵画短編集(イラスト+ショートストーリー)※A4サイズ
・5つの楽曲に基づいたストーリーをVALSHEが作成!
・白皙のイラストがストーリーを演出!
・楽曲解説
・デビュー5周年に向けてのメッセージ
※音楽ポータルサイト"Musing"のみでのお取り扱いとなります。
【通常盤 CDのみ】JBCZ-9015 ¥2,000(税抜)
<収録曲>全タイプ共通
M1. ジツロク・クモノイト
作詞 : ViCTiM 作曲 : minato(芥川龍之介「蜘蛛の糸」)
M2. 破戒の枝
作詞 : VALSHE 作曲 : 小内喜文(島崎藤村「破戒」)
M3. 人間失覚
作詞 : VALSHE 作曲 : minato(太宰治「人間失格」)
M4. MANY ORDER
作詞 : VALSHE 作曲 : minato(宮沢賢治「注文の多い料理店」)
M5. 暗い夜の行き路
作詞 : minato 作曲 : VALSHE(志賀直哉「暗夜行路」)
<封入特典>
●リーディングVALSHEトレカ(歌詞をモチーフとしたボーナスボイストラック)
※全5種類のうち1枚をランダム封入
・各5種類それぞれのトレカの裏面にダウンロードIDを記載!専用ページにアクセスしIDを入れるとリーディングVALSHEの音源がダウンロードできる!(全5種類)
●連動応募特典
●3形態全て購入した方全員にMusing盤に掲載のショートストーリー全5話の朗読音源をプレゼント!
●2形態ご購入の方の中から抽選でプレゼント!
特典A:サイン入り複製原画(額入)×10名 
特典B:VALSHE画伯がアナタの似顔絵を書きます!×5名

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