【インタビュー】来日直前!ルーファス・ウェインライト単独独占インタビュー

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来日公演が東京、大阪で開催されることが決定したルーファス・ウェインライト。全編がピアノによる弾き語り。高いレベルの演奏と歌声を楽しめる究極のソロ・パフォーマンスが実に楽しみなアーティストだ。来日に先立ち、ルーファス・ウェインライトに話を聞くことができた。近況、そして来日公演に対する意気込みを、ぜひ楽しんでほしい。

◆ルーファス・ウェインライト~画像~

――まずは、日本に来てくださるということでありがとうございます。

ルーファス・ウェインライト(以下、ルーファス):こちらこそ!僕もすごく興奮しているんだ。前回行ってからしばらく経つし、また日本に行けるのを楽しみにしているよ。

――今回はベスト・アルバム『Vibrate: The Best of Rufus Wainwright』に伴うツアーの一環になります。この前にボックスセットの『House of Rufus』を発表し、『Vibrate~』をコンパイルして1年間キャリアを総括するツアーをしてみて、デビューから15年を経た自分の立ち位置を確認できたようなところはあるんでしょうか?

ルーファス:っていうか、15年どころじゃなくて、もっとずっと昔に始まったんだけどね。ちっちゃい子供の頃から歌っているから。母は偉大なシンガーだったし、父も然りで今も現役だから、脈々と続く歴史がある。でもとにかく『Vibrate~』をリリースしたことと、オペラ『Prima Donna』のアルバムを9月に発表すること、これらふたつのゴールポストは僕のアーティスト人生において本当に意味深い、重要な出来事なんだ。だから確かにここしばらくは、回顧的な気分になって過去に思いを馳せているんだけど、ほら、グラスにはまだ半分しか水が入ってないからね(笑)。まだまだこれからだよ。

――自分のキャリアを振り返ってみて、一番誇りに感じている部分というと?

ルーファス:そうだな、これまでに多岐に亘る表現に挑んだことかな。例えばジュディ・ガーランドのレパートリーを歌った『Rufus Does Judy』はヴォーカル面のスタミナを試されるパフォーマンスだったし、ポップ・ソングも現在に至るまで常に書き続けているし、もちろんオペラの世界での冒険もあって……一番誇りに感じていることってなんだろう? 音楽を通じて少しばかり注目を得ることができたってことかもね。だってほら、世の中には僕が知っているだけでも、本当に偉大なシンガーやミュージシャンや画家が大勢いて、みんな素晴らしい才能に恵まれて、溢れんばかりの情熱と創造欲を携えていながら、誰にも知られないままに終わってしまうことが多々ある。注目を得られるか否かは、その人の才能の有無とは関係ないんだ。たまたま然るべき場所に、然るべき時にいたか、いなかったかってこと。だから僕は、そういうショウビジネスというジャングルで生き延びたことを誇りに感じているよ。今も相変わらずもがいているけどね!(笑)

――ちなみに、なぜ『Vibrate』をタイトルに選んだんですか?

ルーファス:そもそもは、ペット・ショップ・ボーイズのニール・テナントの提案だったんだ。ニールは僕の親友で、ベスト盤の選曲を手伝ってくれたのさ。もちろん最終的にどの曲を収録するのかは、僕自身が決断を下さなきゃいけなかったんだけど、第三者の視点を交えたかったんだよね。ニールは、その時々に何が流行していて先端的なのかってことを常に把握しているだけでなく、長い目で見て意義深いこと、質の高いものを見抜く審美眼を備えていて、以前からそんな彼のセンスに敬意を抱いていたんだ。そこで、まずはニールにセレクトしてもらって、彼は『Vibrate』がタイトルにいいんじゃないかと推薦してくれた。『Vibrate』という曲は僕のキャリアの様々な側面を要約している曲だから、タイトルに相応しいと思うんだ。ひとつはオペラ的な側面。そしてユーモアがあること。と同時に、悲しみを含んでいること(笑)。オペラティックで笑えて泣ける音楽って、僕がずっと作り続けてきたものだからね!

――その『Vibrate』を収めたサード・アルバム『Want One』はあなたのキャリアを代表する傑作とされ、4曲をベスト盤に収録していますが、自分でも思い入れのある作品なのでしょうか?

ルーファス:お気に入りアルバムを選ぶのは自分の子供に優劣をつけるようなものだから、僕にはできないんだけど、『Want One』の何が素晴らしかったかって、世界中で広く受け入れられた作品なんだ。特にヨーロッパだね。最初の2枚のアルバムも、アメリカとカナダ、それからオーストラリアでもかなり成功を収めた。でもヨーロッパでの反応は鈍くて、『Want One』がようやく僕の存在をヨーロッパに知らしめてくれたんだよ。おかげで今では、ローマやパリやウィーンのゴージャスなホールでライヴができるようになった。つまり、『Want One』は僕に素敵なヨーロッパでのヴァカンスをくれたんだよ(笑)。

――『Vibrate~』の収録曲の中で唯一のカヴァー曲は、レナード・コーエンの『Hallelujah』です。あなたが長年歌ってきた曲ですが、今やレナードと家族の関係にあるわけですから、歌う意味も増したのでは?

ルーファス:そうだね。もちろん、なにも『Hallelujah』を歌い続けたいがために、コーエン家の一員に子供を産んでもらったってわけじゃないんだけど(笑)。それってちょっとキモい話だね(笑)。ただ、僕だけじゃなくてほかのアーティストも大勢この曲を歌っていて、歌われ過ぎているところがあるだろう?それゆえに、素晴らしい曲ではあるんだけど、実は一時は少々飽きていたんだ。その後娘が生まれてからは、彼女のお爺ちゃんの曲を歌っているという意識が強まって、間違いなく新たな意味が加わった。今では非常に感慨深いよ。これだけの年月を経ても、歌うたびに意味を成して、大きな反響が得られるし、畏敬の念を抱かざるを得ないよね。

――次のリリースは先ほども挙がった、BBC交響楽団とレコーディングした『Prima Donna: The Album』です。当初からアルバムの形にしたいと思っていたんですか?

ルーファス:もちろんさ!っていうか正確には、アルバム化が実現したのは色んな意味で、夫のヨルンのおかげなんだ。数年前に『Prima Donna』をヨーロッパと北米で上演して、かなりいい評判を得られたんだけど、コンテンポラリーなオペラを再演するのは難しくて、次の機会は、作者が死ぬまで巡ってこない(笑)。オペラの新作を取り巻く状況って、わびしいものなんだよ。だからいつかアルバムにしたかった。その後、クラウドファンディングのサイトPledgeMusicの主宰者であるベンジ・ロジャーズと知り合って、ヨルンが「PledgeMusicでオペラのレコーディング資金を募ればいいじゃないか」と提案してくれたんだ。なるほど、そりゃ一理あると思った。業界全体が大きな変化の渦中にあるこのご時世、大手のクラシック・レーベルでさえ新作のオペラのアルバム化なんか滅多にしないし、オペラのレコーディングこそファンの手を借りないと成立しないってことに気付いたのさ。途方もなく大掛かりになってしまうし、大勢の人を巻き込まなきゃならないし、最終的に実現した時の達成感も大きいからね。そんなわけで、PledgeMusicのプロセスをひと通り辿って、こうしていよいよアルバムとして送り出すってわけさ。だからヨルンに感謝しないとね。

――しかも名門ドイツ・グラモフォンからのリリースで、あの有名な黄色いロゴを冠したジャケットが本当に美しいのですが……。

ルーファス:ありがとう!

――ここに使われている肖像画の出自は?

ルーファス:僕の親愛なる友人であるデリア・ブラウン(Delia Brown)が描いてくれた作品で、彼女はアメリカでは広く知られているコンテンポラリー・アーティストなんだ。で、モデルはこれまたアーティストのシンディ・シャーマン。シンディは、マリア・カラスが所有していたドレスを身に着けている。というのも、9月にアテネのアクロポリスで『Prima Donna: The Album』のリリースを祝うコンサートを予定しているんだけど、そこでは、シンディがマリアの舞台衣装の数々をまとって撮影したフィルムを上映する予定で、そのフィルムを撮影した日にこの肖像画を描いてもらったのさ。だからいくつもの層から成るプロジェクトで(笑)、仕上がりにはすごく満足しているよ。

――そして現在は2作目のオペラ『Hadrian』を書いているそうですね。

ルーファス:うん。ローマ帝国のハドリアヌス帝の生涯をテーマにしている。今は休暇中だから、あまり考えないようにしているんだ。頭の片隅にあって、忘れてはいないんだけど……実はちょっとさぼり気味なんだよね(笑)。ほら、ビーチでゴロゴロしたりロブスターを食べたり、ダンナとワインを飲んだりしているから!でも部屋の隅っこに猛獣が潜んでいて、遅かれ早かれ格闘しなくちゃならないってことは分かっているんだ(笑)。だから興奮はしているけど、これから戦争に行くような気分でもあって……健闘を祈って欲しいな!

――じゃあ頑張ってください。そもそもはマルグリット・ユルスナール著の『ハドリアヌス帝の回想』にインスピレーションを得たそうですが……。

ルーファス:その本を読んだのはずっと昔のことなんだ。だから随分前に、ハドリアヌス帝をテーマにしたオペラを作るっていうアイデアを思いついたんだけど、当時の僕はまだ若くて、ポップの世界に没入していた。それに、オーケストラのアレンジャーかつクラシックの作曲家としての自分の能力にも、まだ自信がなかったから、ローマ帝国を相手にするなんて、敷居が高過ぎたんだよね。でも以来ずっと頭の中にあって、その後『Prima Donna』のコンセプトを考え付いて、これなら僕にも形にできるかもしれないと思った。ストーリーとしてシンプルだし、ひとりのシンガーの1日を描いていて、僕もシンガーだし、彼女はソプラノ歌手だから音楽もすごくロマンティックなものにすればいい。そんなわけで、技術的な面で僕に不可能じゃないと感じたのさ。で、一旦『Prima Donna』を完成させたら自信が増して、オペラ作品を制作できるだけの作曲とアレンジ力が自分にあると確信できた。ここにきて、ローマ帝国を征服する準備が整った気がしたんだ。

――ハドリアヌス帝の物語のどんな部分に惹かれたんですか?

ルーファス:色々あるよ。まず、彼の物語には今の世界に関連付けられることが少なくない。例えば同性愛者だという要素だったり、中東での紛争だったり。ほら、パレスチナを始め、未だに紛争の元凶であり続けている中東諸国の境界線を引いたのはそもそもハドリアヌスだったってことを、忘れちゃいけない。それから“帝国の崩壊”というコンセプトにも惹かれるし、欲望と権力の終わりのない対立を描き出してもいる。自分が欲しているのは何なのか? 自分がやるべきこと、つまり自分の義務とは何なのか?それって、永遠に答えの出ないクエスチョンだよね。とにかく僕に強く訴えかけた。『Prima Donna』然りで、全く異なる次元に生きるキャラクターたちの想いが、僕の心に響いた。そして作曲家としての僕の役目は、この僕らの世界に彼らを引き込んで、ストーリーを伝えることにある。『Hadrian』の場合は、ハドリアヌスとアンティノウスを始めに登場人物も多いから、彼らと会うのを楽しみにしているよ(笑)。

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