【インタビュー】ボカロPのn-bunaが語るメジャー1stアルバム『花と水飴、最終電車』とDAWソフト「SONAR」の魅力 Vol.1

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VOCALOIDによるボーカルをエッジの効いたギターサウンドに乗せ、ロックからバラードまで情景描写と心理描写が交じり合った独特の世界観を描き出す。ニコニコ動画への投稿作品で10代を中心に圧倒的な支持を集めるボカロP、n-buna(ナブナ)が、待望のメジャー1stアルバム『花と水飴、最終電車』を7月22日にリリースした。作詞・作曲からギターの演奏、バックトラックまで楽曲制作を1人でこなすn-bnunaの制作環境に興味を持つクリエイターも多いはず。n-bunaがDAWソフトとしてSONARを使用しているという縁から、今回のインタビューはSONARの国内販売元であるティアック/TASCAMの小泉貴裕氏、加茂尚広氏とともに同社のショールームであるGibson Brands Showroom Tokyoで敢行。アルバムの音作りからn-bunaのパーソナルな部分、制作環境までじっくり話を聞いた。

■海辺の街の夏を描いた『花と水飴、最終電車』
■音楽経験はアコギから


──「花と水飴」って夏ですよね。ものすごい夏な感じがしましたけど。

n-buna:はい。好きなので。やっぱ夏を詰め込もうとは思いましたね。せっかく作るからには。

──アルバムの曲の流れにもそういうのも感じたりして。僕はランニングのお供によく聴いてます。

n-buna:ありがとうございます(笑)。

──さっそくですが、音楽を始めたきっかけは?

n-buna:母親からもらったノートパソコンでDTMを始めたことがきっかけです。そこから徐々に初音ミクとかを使ったりしながら作ってきた、っていう感じですね。


▲「初音ミク」はクリプトン・フューチャー・メディアが2007年に発売したボーカル音源ソフトウェア。n-bunaは拡張音源の「初音ミク・アペンド」とともに使用。

──DTMがスタート?

n-buna:そうですね。ギターはその前から兄や祖父の影響で軽く弾いてたりしたんですけど。じいちゃんがアコギをずっとやってて。

──その頃、DTMを周りでやってる人はいましたか?

n-buna:まったくいなかったですね。周りにバンドとかをやっている人もいなかったんで。田舎だってことで。

──夏と言ってもいろんな情景がありますよね? 僕は不思議と海よりも山というかプールというか祭りの雰囲気もそうなんですけど、他のアーティストが取り上げない情景を感じました。

n-buna:ああ、そうですね。僕、情景から曲を作るタイプなので。故郷の夏の状況を思い浮かべてから、今回のアルバムを作っていったんですが、僕の故郷には海がなくて。アルバムの舞台として思い描いたのは海辺の街でしたが……。結果的にそういう感じはあるかもしれませんね(笑)。

──アルバムは既存の人気曲も含め15曲が収録されています。区切りが昔のLPレコードのA面、B面、C面、D面みたいだなと思いました。夏の2枚組。「昼青」からセミの声とか続きますよね。あれは自分で録ったんですか?

n-buna:いや、素材ですね。あと、素材だったら1曲目と「着火、カウントダウン」のサンプリングボイスはNASAが公式で配布してるアポロ11号のカウントダウンボイスをそのまま使ってて。「ピューン、パンッ」ってのは花火の素材を使っています。

■プロスタジオでのミックスを
■がんばって吸収しようとしていました


──今回のアルバムでは、プロのスタジオでミックスした曲が3曲収録されていますが、これまでご自身でやってきたのと変わったな、新しい体験だったな、ってのはありましたか?
(※ミックスはT.M.Revolutionをはじめ浅倉大介の作品を多く手がけてきたミキシングエンジニア大里正毅氏)

n-buna:そうですね。やっぱ音の広がり方が違うんですよね、プロの方がやったミックス曲って。そこらへんをがんばって吸収しようとしました今回のアルバムは。

──エフェクトの使い方? それともバランス?

n-buna:バランスだけじゃないと思います。やっぱリバーブとかのかけ方がうまくて、前に出すものと出さないという使い分け方がちゃんとわかってらっしゃる。で、それが自分の曲でもできるように、ちゃんと考えてこのアルバムでもやったっていうのがあります。ミックスの勉強ってギターとかベースとかとか楽器の音作りにも直結してくるから、やればやるほどちゃんとわかりますね。あと、エンジニアの大里さんに「ギターの4弦の音がずれてる」って言われて……。「あっ、ばれてしまった」って(笑)。そこ、すごいと思いましたね。あと、なるほどなと思ったのが、「無人駅」っていう曲のバッキングギターを2つとあと1つウワモノのギターを全部テレキャスのリア(ピックアップ)で録っていて……。テレキャス特有のハイ(高音)の出方があるんですけど、それが3本とも同じピックアップだから、音が集って一部分だけヒュッって(耳に)痛い音が混ぜた時に絶対共鳴して出てくる。だから、そこを無くすために「ピックアップを変えるかギターを替えるかした方がいいよ」って言われて。すごいなるほどなって思って。共鳴まで気にしてなかったからすごい勉強になりましたね。

■若い子のためにCDの価格は2,000円
■「お願いします!」って


──次の予定とかあるんですか? まだ言えない?

レコード会社担当者:まだ、ぜんぜん具体的な日程とか。むしろ新しい曲が……(笑)。

n-buna:でも、僕やっぱ日常の息抜きとして作曲があるので、普通に生活してる中で。どんどん作っていきたいですね。なんか仕事っていう感覚がぜんぜんないので……。これからがんばろうと思います。今回のアルバムもぜんぜん入れる曲が決まらなくて……。僕、たくさん曲を作るタイプで。だーって曲が並んでいる中で、この曲とこの曲とこの曲にしようっていう感じで仕上げていったので。

──15曲入りはお得ですよね。

レコード会社担当者:「値段上げさせて」って言ったら上げさせてくれなかったんですよ(笑)。

n-buna:僕の(曲を)聴いてくれてるファンの方とかって若い子が多いんです。若い子がCDに3,000円とか4,000円とか出せないと思うんですよ、おこづかいの中から。僕も実際数少ないお金をやりくりしてずっとCDを買ったって感じだったので、リリースするとしたら、2000円だなって。

──この話を聞いたらファンの方は喜びますよね。

n-buna:「この価格でお願いします!」って。そしたら、レコード会社の担当者が上司とバトルしてくれて(笑)。

◆インタビュー(2)へ
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