パンクからキャラソン・アニソンまで、SONARを駆使するパフォーマー&コンポーザー、エンドウ.(GEEKS)の曲作りの秘密を聞く vol.1

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■カセットMTRが今あったら、試しにレコーディングしちゃいますよね

―― その頃のテープってまだあったりします?

エンドウ. もうないですけど(笑)。そうですね、テープMTRの音源はないですね。Singer Song Writerで作ったのはありますけど(笑)、高校生の時の。

TASCAM加茂 うちでもFacebookなどに記事を出すと、カセットMTRはすごく反応がいいんです。

エンドウ. そうなんですか。

TASCAM加茂 で、また作ってくれって言われて……。

エンドウ. 今、カセットの時代がまた来てますからね。ありじゃないですか。

―― 来てるってのは……?

エンドウ. 今、ヒップホップのアーティストがみんな新譜をカセットでリリースしてるんですよ、タワーレコードで。「カセット再注目!」みたいな雰囲気になってますね。いやあ、カセット絶対いいですよ。

TASCAM加茂 盛り上がっていただくのはありがたいんですけど、カセットMTRはもう作れないので、売るってことも……。

エンドウ. そうですね、爆発的に売れることがあるかどうか、危ないですよね(笑)。

―― でも、どう考えてもSNは悪いですよね?

エンドウ. そうですよね。

―― なのになんでカセットに行くんでしょう? 想い出補正もあるかもしれませんが。

エンドウ. なんでかわかんないけど、カセットを見ると「おっ、いいな」って思っちゃいますもんね。僕らより上の世代がレコードを見ると「おっ、いいね」って思っちゃうのと同じだと思うんですけど。


▲ティアックから1979年に発売された「TEAC 144」。市販のカセットテープを使用した4トラックマルチトラックレコーダー(MTR)とミキサーを世界で初めて一体化し、コンパクトなデザインを実現(写真は2014年ニコニコ超会議でのTASCAMブースの展示から)。144のDNAは現在も続くPORTASTUDIOシリーズに受け継がれている。今回のインタビュー中、ネットで見つけた144の写真を見て盛り上がった。

―― (一同、ここでネットで検索したTEAC 144の写真を見る)

エンドウ. これ、なんかで見たことありますよ、このカラフルなツマミ……。これって70年代なんですか?

TASCAM加茂 79年なんですよ。

エンドウ. ええ! すごい。僕が使ってたのはTASCAMのportastudio 414ですね。カセットMTRが今あったら、たぶんモノは試しにそれでレコーディングしちゃいますよね。で、1曲デモ作って遊びで公開しちゃったりとかやりたくなります。ミュージシャンは絶対。やってみようかなあ。

―― ギタリストのレス・ポールっているじゃないですか? あの人、実はマルチ・トラック・レコーダーを発明した人なんですよね。

エンドウ. えっ、そうなんですか? あの人がですか?

―― そうなんですよ。昔のレコーディングってまだテープがない時代だから、レコードをダイレクトカッティングで直接音を入れていくんですよ。レス・ポールはマルチが無い時代も多重録をやってて、まず、バッキングをレコードで録音して、カッティングしたレコードをプレーヤーで再生したのを聴きながら、リードとか上物を入れるんですよ。つまり混ぜたレコード盤を作るんです。

エンドウ. ああ、なるほどなるほど。

―― ということは、たとえば5トラック目で失敗したら、もう1回最初からやらないといけないんです。

エンドウ. すごいですね。

―― で、これはダメだってことで、テープが出た時に録音ヘッドと再生ヘッドの位置を入れ替えて、消去ヘッドを通さずに録音すれば音を重ねられるっていうのをやって、それをAMPEXにオーダーをしたんです。ただ、レス・ポール自身は、昔は手間がかかるダイレクトカッティングの多重録音をやってたせいか、マルチになるとあまりヒット曲が出なかったらしいんです。研究家に言わせると、気が抜けちゃったらしい。

エンドウ. その一発勝負のテイクに込める演奏が違ったんですね。

―― エンドウ.さんがおっしゃるように、今カセットMTRでミュージシャンにやれって言ったら、すごい気合が入ると思います。

エンドウ. 入りますよー。

―― いやあ、3テイクまでだな、みたいな。

エンドウ. 去年やりましたよテープ。なんていうんですか、24トラックのでっかいやつありますよね。あれで久々にレコーディングをして、やっぱ気合入りましたけどね。ミュージシャン達はみんな「行くかあ!」みたいな。


―― 1テイクで行くぜ!みたいな?

エンドウ. 全員で「せーの」みたいな感じで。誰かミスっても細かい直しができないから「ちょっとこれは」みたいな感じで。でも、すごいおもしろかったですね。

―― それは誰がやろうって言い出したんですか?

エンドウ. それ、実は声優さんなんですよ。佐藤聡美っていう声優さんの曲で、僕が作った「恋のメロンソーダ」って曲なんですけど、ツアーの時にレコード盤で出そうって話になって。レコード会社の担当者が「ちょっとやってみたいんですよ」って言って、ミュージシャンたちは「まじかよー」。

―― (一同爆笑)

エンドウ. プレッシャーだなとは思ったけど、ちょっとおもしろい試みだからやってみようって言ってやったんですよ。

―― ボーカルも同録で?

エンドウ. ボーカルもです。

―― すごいですね。

エンドウ. すごかったですね。上手く録れましたけど。

―― じゃあ、今のスタイルで曲は作りつつ、そういう遊び心というか冒険もしつつって感じですか。

エンドウ. やっぱ、レコーディングと曲作りが好きですからね。いろんなことをやりたいなと思ってますね。

※「恋のメロンソーダ」
エンドウ.が作詞・作曲を手がけた佐藤聡美の楽曲。佐藤聡美はアニメ「けいおん!」の田井中律などで知られる人気声優。エンドウ.は2014年の佐藤聡美の初ツアーにギタリストとして参加。その会場限定でアナログ盤「恋のメロンソーダ」がリリースされた。レコードの録音は、アナログテープ1発録りで行われた。

(近日公開予定の第二回に続く)


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