【総括レポ】<VISUAL JAPAN SUMMIT>、あの狂乱3DAYSの回想録「もう無敵である」

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3日間、GEORGEと司会でも奔走していた逹瑯。彼がヴォーカルを務めるMUCCが登場したのは、3日目の午後だった。このバンドは自分達が作ったスタイルにも飽き性なのか浮気癖があるのか、作品ごとに大胆に音楽性も変化させている。が、この日は攻めのナンバーを軸に展開していった。それはファンにとってキタコレ感が満載の選曲だ。

「バンドを始めたころ、どうしようもなく衝動をかき立てられた音楽が、この3日間にあったなと思いました。胸を張って、「ヴィジュアル系好きなんです」と言えるようになれたらいいなと思いました。こういうイベント続けていってほしいし、こういう機会を与えてくれたYOSHIKIさんに感謝します。どうもありがとうございます」──逹瑯



そしてラストでのこと。メロディックデスを思わせるイントロで「TONIGHT」へ突入。曲が後半に差し掛かったところで、ハットにサングラス姿のギタリストが、突然ステージの後ろから現われた。一瞬、誰だか分らなかったが、弾いているギター、そしてマイケル・シェンカーやゲイリー・ムーア節も絡めたフレージングを奏でる男、それはL'Arc〜en〜CielのKenだった。突如として起こったことに、ファンは騒然。次には大歓声。何がどうなるのか分からない。単なるフェスの枠をブチ壊しながら突き進む3日間である。そこに来たのが、あのゴールデンボンバー。



「水商売をやめてくれないか」のジャケット写真が大写しになった直後、ステージでスポットを浴びるのは土下座の鬼龍院。寂しそうに「水商売をやめて…」とポツリポツリ言い始めたと思ったら、「やめて、くれないだー!!」と大絶叫。なんと土下座してたのはダミーで、本物のメンバーは袖からステージに走り出てきた。その格好は『BLUE BLOOD』時期のXだ。笑いと絶叫と興奮が一瞬でカオスを作り出す。各メンバーのMCやライヴパフォーマンスもトンチが効いてる。ボンベでCO2をブチ撒けるし、ドラムセットに突っ込んで、破壊したドラムを客席に投げる。うまい棒で作ったギターでソロと称してかじり付き、うまい棒ギターでドラまで叩く。絶対、怒られるぞ。そんな心配も起こるが、目の前でゴールデンボンバーが起こす珍事件の数々に笑うしかない。




さらに大ヒット曲「女々しくて」を、HIDEのごとく「飛べ、飛べ、トベー!」と叫びながらパフォーム。ドラム担当の樽美酒がネタを仕込むため引っ込んだと思ったら、YOSHIKIが貸してくれたドラムセットに舞い戻る。と思ったら樽美酒のお面を付けたYOSHIKI本人じゃないか。お面を外して、「女々しくて」を叩きまくるYOSHIKI。驚きのあまり腰砕けのメンバー達。ホントにこれ、予定外だったんです。でも実は初期の“無敵バンド”のとき、YOSHIKIはギターを持っていたが音は出てなかったということで、元祖エアー・ミュージシャン。時代を飛び越えたエアー同士の神秘なる融合だ。ラストでは、2日目のX JAPANのように、YOSHIKIの合図でXジャンプを決める5人。無謀な夜、しかし、やり切った感が溢れる表情の5人だった。

そのSUMMIT STAGEでは、その後、LUNA SEA、X JAPANのライヴが展開。詳細レポはBARKSでもすでに公開されているので、そちらにお任せするが、LUNA SEAは満月の夜にふさわしい感動的で熱いライヴで圧倒。X JAPANのライヴでは、PATAが「We are…!」と煽る場面も起こった。そして3日間のラストを締めくくったのは、もちろん無敵バンドである。


司会を担当したのはGLAYのTERUとLUNA SEAのRYUICHI。さらにライヴを終えたばかりのX JAPANのTOSHIも加わって、3人で無敵バンドのメンバーを呼びこむ。続々とステージに登場するミュージシャン達を改めて見渡し、TOSHIは「いや、今日は凄いね。そうそうたるメンバーだ」と嬉しそう。TERUによると、LADIES ROOMのSEXX GEORGEが全バンドに「来い」と声を掛けていたという。TERUが客席の上手側に向かって手を振ると、1日目や2日目に出演したミュージシャン達が高揚した表情で手を振り返す。またTERU自身、今日はGLAYとしてのステージはなかったが、この無敵バンドのためだけにメンバー全員で来たという。TOSHIに感謝されると「当然です!」とTERU。愛に溢れまくった一言に、フロアを埋め尽くしたオーディエンスからも歓声が起こった。

その歓声がさらに大きくなったのは「無敵の大将、呼ぶぜ。YOSHIKI! YOSHIKI!」とTOSHIがコールしたとき。おっと、大将、今日はキラーのベースを手にしてるじゃないか。もちろんそれはTAIJIモデルだ。胸熱である。YOSHIKIもステージ上のミュージシャン達と客席を埋め尽くしたファンを改めて見渡す。感謝の気持ちを込めて、この3日間に出演した全バンドを読み上げていく大将。

そしてTHE SLUT BANKSと言ったところで気づいた。ヴォーカルは元ZI:KILLのTUSKであることに。「あっ! TUSK来てるじゃん。ZI:KILLは? 来年、ZI:KILLで出ろよ」と迫る大将。当然、無下に断ることなんてできず、複雑な笑顔をこぼすTUSKだ。なにしろZI:KILL時代のTUSKにとって、大将は育ての親みたいなもの。結成した1988年にYOSHIKIにバンドのビデオを手渡したところ、すぐにHIDEやYOSHIKIから気に入られ、後にエクスタシー・レコードから音源を発表。しかもバンド独自のレーベルまで作ってもらえるほどのかわいがられっぷり。また1989年5月に目黒鹿鳴館で行なわれた<第2回 エクスタシー・サミット>のときには、ZI:KILLにHIDEがヴォーカリストとして加わって“ジキルとハイド”としてセッションも披露。さらに同年8月の<第3回 エクスタシー・サミット>ではPATAがギターで参加した“ジキルとハイド+1”も実現。恐らく対面したのは20年以上ぶりになるはずだが、すぐにあの当時の関係に戻ってしまうのはエクスタシー魂かもしれない。

手にしたキラー・ベースをガシッと握ったYOSHIKI。「HIDEにもTAIJIにも、オマエらの声、聞かせてやれよ! 俺達、みんな無名だった。だけど無敵だった。オマエらも無敵でイケよ! 一緒に頑張っていくぞ。ぶっ壊しちまうぞ。無敵でイケ!」と魂の全てをぶち込んだメッセージが轟いた。曲はもちろん、24年前の<エクスタシー・サミット>でもプレイしたセックス・ピストルズの「ANARCHY IN THE U.K.」と「GOD SAVE THE QUEEN」。3日間で出演したミュージシャンが続々と加わって、ステージの人口密度も凄まじいことに。最後の最後、大将から再び熱い言葉が会場を揺るがした。

「オマエら、明日から頑張っていくぞ! 無敵だぞ!!」──YOSHIKI

ごく一部ではあったが、これが3日間で繰り広げられた熱狂の模様。エクスタシー視線という偏った見方ではあるが、“24年ぶり”や“エクスタシー・サミット”は3日間の共通キーワードのようになっていた。それに3日間とも最後を締めくくったのは、<エクスタシー・サミット>恒例の無敵バンド。純粋にバンドで音を鳴らすことを楽しむミュージシャンの姿しかなかったし、ファンもまた同じような思いだっただろう。そして大将が見せ続けた気合い。

前述の記者会見でYOSHIKIは「ヴィジュアル系というのは、どこにも認められない、ジャンルとしても認められず、何なんだ、というところがあって。それで自分達独自のジャンルを作り上げてしまったんです。(このイベント開催は)大きな希望を与えられる出来事です」とも語っていた。ヴィジュアル系バンドを集めた総括イベントではなく、未来へと繋げていくイベント。その先にはもちろんいろいろあるとは思うが、そこにいた誰もがすでに感じているだろう。もう、無敵である。

取材・文◎長谷川幸信
写真◎VISUAL JAPAN SUMMIT 2016 Powered by Rakuten

■<VISUAL JAPAN SUMMIT 2016 Powered by Rakuten>

2016年10月14日(金)、15日(土)、16日(日)
会場:幕張メッセ国際展示場9・10・11ホール
開場8:00AM/開演9:00AM/終演10:00PM(予定)
※10月16日(日)は終演9:00PM(予定)
※チケット全券SOLD OUT

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