【音踊人 55】「今までとこれから」すべてが繋がり円になる!オメでたい頭でなにより〜ザ・ベストライブ〜(つかさ かなで)

ツイート



ライブは逃げだという意見がある。現実のしんどいことから逃げるための場所だと。例え自分がどんな状況であっても、自分の居場所を作ってくれる日本一オメでたいバンドのライブについて書きたいと思う。

2017年11月5日、川崎クラブチッタにてオメでたい頭でなによりのワンマンライブ「オメでたい頭でいっぱいです!〜ザ・ベストライブ〜」が行われた。オメでたい頭でなにより(以下:オメでた)のワンマンライブとしては過去最大規模の会場。現メンバーで制作した楽曲を全て披露するという趣旨の「ザ・ベストライブ」と銘打った今回の公演である。

今回のライブから遡ること約一年前、2016年8月29日に行われたライブにて「オメでたい頭でなにより」というバンド名を発表。同年12月3日に行われた<骸骨祭り>という大型イベントに参加したことが、バンドにとってとても大きな転機となった。それから現在に至るまでワンマンライブ、対バン、サーキット出演など積極的に活動し、着実にその名を広めてきた。今回のライブは昔からのファンだけではなく、活動を続けていく中で新たにオメでたを知り、ライブに参加してくれるようになった人達も含めてその場にいる全員が楽しめるようにというスタンスが伝わるものだった。

現メンバーでの活動を予兆した思い出のSE「準備運動のテーマ」が流れ、一曲目の「えんがちょ!」へ。この曲は悪い縁を絶ち、良縁を繋げていこうという決意の曲だ。いわゆる黒歴史と呼ばれるものは誰にでもあると思うが、それをキッカケに存在を知ったファンにとってはアーティスト本人から過去を否定されると悲しくなることもある。しかしオメでたは黒歴史すらネタにしてしまうバンド。この「なかったことにしない」スタンスは、オメでたにとって軸となるのではないかと感じる。そうすることでそのときの私達の想いも守ってくれることになるからだ。

続く「あれこれそれどれ」「憂き浮きウォッチング」ではフロアとのコール&レスポンスによる熱量の応酬。「wosushi〜ウォールオブ寿司〜」ではフロア上手をシャリ、フロア下手をネタに見立てて左右に分かれる、オメでた流ウォールオブデスが見どころ。オメでたのバンド名が記された法被に袖を通した寿司職人や、ワサビに扮した緑の全身タイツもオメでたのフロアには欠かせない光景である。これは前述のバンド名を発表したライブにて、ファンが率先して企画し、フロアを楽しませてくれたものである。「ザ・ベストライブ」という今回の趣旨に添った光景をここでも見ることができた。私はこのようにその場を全力で楽しみながら周りも楽しませてくれるオメでたのフロアが大好きだ。

「海老振り屋」ではボーカル・赤飯の第二の故郷である名古屋にスポットを当てたオメでた流ご当地ソング。一斉にタオルを振り回す光景は、数々のフェスで場数を踏んだからこそオメでたのライブにも反映できたのではないだろうか。「ぼよよんラウド」ではオメでた流ウォールオブデス第二弾、フロアを東西に分けてぶつかり稽古が行われた。軍配を持った赤飯が行司となり、一見怖い、危ないと思われがちなライブでの光景をオメでたく変化させてくれる。この曲ではハードコアモッシュも、四股を踏む「シーコーモッシュ」に姿を変えて思い思いに楽しむ姿が印象的だった。

「ダルマさんは転ばないっ」で見られる「ダルマさんは転ばないブレイクダウン」は転ぶとオメでたくないから、という理由で名付けられたものである。赤飯の歌に合わせて演奏と共に全員ストップ。メンバーとフロアの絶秒な駆け引きと笑顔溢れるハートフルな時間がとても心地良い。

バンド名を発表する前に現メンバーで制作した曲である「大河アッパーカット」「P.R.P.」「Fight for your right」はメドレー形式で久しぶりのお披露目となった。曲調に合わせてメンバーが光るサングラスをかけたり、曲の間奏中にメンバーがフロアに降りて物販を行うなど、当時行っていた演出の復刻版だった。セットリストに留まらず演出面でも「ザ・ベストライブ」と呼ぶに相応しい光景に懐かしさを覚えた。「さくらんぼ」は某有名曲をオメでた流に大胆アレンジ。通称「みんなが歌える新曲」は、オメでたの持ち味である「楽しい」「激しい」が共存した世代を超えて参加できるハッピーチューンである。

「七夕リアン☆リターンズ」は唯一のバラード。前述の曲中物販で登場したサイリウムが、この曲ではフロアを照らす星空の一部となった。90年代トレンディードラマのオマージュとも取れるフレーズが登場するが、聴けば聴くほど謎の感動を与える名バラードである。赤飯の熱い言葉と、優しく切ないメロディーにフロアは胸を打つ。

そしてライブも後半戦、ここからは「SHOW-GUTS」「あられ雛DANCE!!」でオメでた流の正月〜雛祭りを披露した。楽しみながら季節の行事に触れることができるのもオメでたのアプローチの武器になっている。「C'mon!こいこい猪子課長」はサラリーマンのエレジーをテーマにしている。楽曲になぞらえて、入場時に配布された名刺にあらかじめ自分の名前やアカウント名などを記入しておき、それを周りの人達と交換するというパートが設けられる。この名刺交換をキッカケに輪を広げ、交流してほしいというオメでたの目指す光景をここでも見ることができる。

誰にでもあるオメでたい日、誕生日をみんなで祝おう!という「VIVA!ハピバ」。「今日誕生日の人!」という呼び掛けにはなんと5人の該当者。メンバーからもフロアからも「オメでとう!」の声が飛び交う、最幸にオメでたく温かい時間となった。赤飯の「生まれてきてくれてありがとう!」という言葉には、フロアに対する「ここにいてくれてありがとう」という想いも込められているような気がした。

オメでたは2017年8月13日にワンマンライブを行ったが、様々な経緯で中断し、中止となった。そのときの悔しさを込めたのが最新楽曲である「スーパー銭湯〜オメの湯〜」。


前半に披露された「あれこれそれどれ」は赤飯が動画投稿サイトで主に活動していた頃に発表したものだが、その時期の赤飯はいわゆるヘイトを吐き出して歌やライブで消化していた印象だった。今のオメでたの活動スタンスとは真逆である。そのときしか見ることができない尖ったかっこよさがあったし、その表現の仕方だから伝わったものもある。恐らくそれは赤飯にとっても糧になり、今のスタイルに繋がったはずだ。8月13日のライブで中止が決まったときも、悔しい、悲しいという想いが確かにあったが、フロアのみんながその場を全力で楽しもうとする気持ちを持って参加してくれていて、いつも自分達が伝えていた想いが届いていたんだと実感できたからこそ生まれたのがこの曲だと赤飯が話してくれた。オメでたがいつも守ってくれている私達フロアへの想いと、ネガティブをポジティブに変換してくれるバンドの志を感じることができる。悔しいままで終わらせず、ポジティブな音楽で発信することでその事実をなかったことにしない決意が伝わる。ちなみに、2018年8月13日には中止になったライブのリベンジ公演ともいえるワンマンが決定している。

「WAになってともに」ではフロアに大きな円が生まれ、肩を組みながら回る笑顔溢れる景色はとても感動的だった。バンド名を発表した最初のライブで、赤飯は「どんどん笑顔になる奴が増えていって、どんどんオメでたい奴が増えていって、最高に幸せな集団になろう。それが、俺が心からお前らと一緒にやりたいことだ」と話してくれた。その願いが、今目の前にある気がした。

「生霊の盆踊り」はフロアに降りてきた赤飯をリフトし、櫓(やぐら)に見立てて円を作って回るというターンがある。この日は赤飯だけではなく、ぽにきんぐだむ、mao、324もフロアの円に入り4つの櫓を見ることができた。「みんなで手を取り合って」という歌詞に合わせて、隣同士手を繋ぐ光景も輪が広がる瞬間だ。

本編ラストの「オメでたい頭でなにより」。バンド名と同じこの楽曲は、まさにオメでたのテーマソング。ダブルピースで笑顔いっぱいの光景と、赤飯の声かけからここでも大きな円が生まれる。肩を組んでラインダンスをして、見渡す限りの汗だくの笑顔。これが、オメでたが見せてくれる「守りたい場所」である。

アンコールはSE「オメでたい後光が射すとき」から始まり、「ふわっふー」、ラストとなる「宴もたけなわプリンセス」へ続く。終わり良ければすべて良し、今の彼らだからこそ言えるメッセージだと感じる。前を向いて走っている最中だが、きちんと「今まで」を振り返り、「これから」を見ている。そんな景色をたくさん見ることができたライブだった。

さて、ライブは逃げだろうか。その先の扉を開けて、そこに広がる景色。きっと一人一人違う景色であり違う想いを抱えているかもしれないが、同じ時間を共有したときに記憶に刻み込まれたその音楽や景色は何度でも蘇る。オメでたのライブでは「居場所」がとても大切なキーワード。赤飯を始めとするバンドメンバーそれぞれ、ここに辿り着くまでに様々な経験を積み、悔しい気持ちを噛み締めてきたこともあったという。その想いがあるからこそ、今オメでたというバンドで笑顔が溢れるライブを見せてくれているのではないだろうか。そして参加するフロアの私達も、一人一人が自分の居場所を求めてここに集まって同じ空間を共有できている。一緒にその空間を作り上げているという一体感は、それぞれの居場所があるから生まれるものだ。

赤飯が以前MCで「これからもオメでたはこの輪を広げていきたい。そのとき、あなたにここにいてほしい」と話してくれた。存在を肯定してくれる言葉と、「ここにいたい」という意思が交差する。それはメンバーの存在を証明する気持ちでもある。楽曲やバンド名からは一見ネタばかりで騒いでいるような印象を与えてしまうかもしれないが、彼らの根っこにある強い意志と高い演奏力、歌唱力を是非たくさんの人に知っていただきたい。

例え逃げ場だとしても、あなたにここにいてほしい。どんなときでも必ず笑顔にしてくれるフロアに、あなたの居場所が待っている。

アルバム『まとめ盤 オメコレクション』

2018年1月1日(元旦)発売

<オメコレクション レコ発ツアー「真剣2マン 遊VIVA!」>

2018年2月2日(金)を皮切りに8公演

◆アルバム・ツアー特設ページ
◆オメでたい頭でなにより オフィシャルサイト

   ◆   ◆   ◆

■音踊人(Odoru-Beat)とは?

音踊人は、みなさんの「音楽体験」を募集しています。

ライブレポートやディスクレビュー、お気に入りアーティストの紹介や、お勧めライヴハウスの紹介など、音楽にまつわるモノならなんでも構いません。

あなたの「音楽体験」で新たな音踊人が増えるかもしれません。BARKSと一緒に音楽を盛り上げましょう。

   ◆   ◆   ◆


この記事をツイート

この記事の関連情報

*

TREND BOX

編集部おすすめ

ARTIST RANKING

アーティストランキング

FEATURE / SERVICE

特集・サービス