【インタビュー 後編】Rayflowerの田澤, YUKI, 都が語るアルバムとツアーが育むもの「昇天ポイントが増えた」

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■都さんがショルキーを弾くと
■僕もテンションが上がります──YUKI

──評価の高いバンドやアーティストはそういうライブをされますよね。では、アルバム『Brilliant Anthology』収録曲をライブで演奏して、プレイヤー個人として感じたことなども話していただけますか。

都:僕もみんなと同じように、テクニックやグルーヴももちろん大事ですけど、それ以前に楽曲の世界観を表現することを大事にしたいという意識でライブに臨んでいます。そういう中でキーボードプレイヤーとして特にこだわっているのは、うちは全員のイヤモニにクリックが鳴っているんですけど、それに合わせて弾く8分音符や4分音符のグルーヴ。クリックだけに合わせると外音を聴いた時に妙な感じだったりするんですよ。かといって自分のタイム感だけで弾いてしまうと、それも違う。なので、どっちに寄せるかとか、音符の長さをどうするかといったことを毎回考えるようにしています。

──たとえば?

都:「Peppers ~孤独な道化師~」のイントロは“カカカカ”とスクエアに弾いたほうがいいのか、“カカカカー”とアクセントをつけたほうがいいのかということを演奏しながら探っているんです。“歌が入ってからはスクエアなほうがいい”みたいなことは、ライブをすることで一層分かるんですね。それに「Prisoner of evolution」の途中でシンセだけが鳴るところとかも、実は僕だけクリックをハーフにしてます。細かく刻むクリックを聴くと、どうしてもキッチリ弾きすぎてしまうから。

▲YUKI(G)

──ライブを観て、都さんのキーボードはリズム楽器としても重要な役割を果たしていることを感じました。それと、“魅せる”ということに関して言えば、ライブ前半からショルダーキーボードを使ってステージ前方でパフォーマンスされていますね。

都:そうです(笑)。ショルダーキーボードはアンコールとかの盛り上げで使うパターンが多いと思うけど、僕は3曲目くらいで前に出るという(笑)。ショルダーキーボードは鍵盤の幅が狭いし、普段とは全く違うフォームで弾くことになるから、中々難しいんですよ。でも、お客さんが喜んでくれるし、メンバーも盛り上がってくれるので、毎回やってます。僕はバンドのキーボーディスト出身なので、魅せるということは昔から大事にしているので。

YUKI:都さんがショルダーキーボードを弾くと、僕もテンションが上がりますよ(笑)。

──ギターに関してはいかがですか?

YUKI:全員がイヤモニを使うようになって、ステージ上の生音が少し小さくなったんです。それに合わせて僕もボリュームを下げたんですけど、そうするとフィードバック (アンプからの出音に弦を共振させて音が伸び続ける現象) がきれいに鳴らないんですよね。以前は音を伸ばしていれば自然とフィードバックしたんですけど、今はフィードバックするポジション (立ち位置) を探さないといけない。ギターソロのエンディングとか曲の最後とかにフィードバックさせたいんだけど、数センチずれるだけで全くフィードバックしなかったり、リハでは大丈夫でも本番になってお客さんが入るとそのポイントが変わったり(笑)。今回のツアーはそういう苦労があります。

都:リハーサルが終わった後も、YUKI君は1人でずっとフィードバックポイントを探しているよね(笑)。

田澤:“ギタリストあるある”やん(笑)。

YUKI:そうそう(笑)。あとは、僕はフレーズ的にはもうあまりトリッキーなこととかはしていなくて、メロウな方向になっているんです。なので、ライブ中の“昇天ポイント”が増えました(笑)。弾いていて気持ち良いのは「MAZE OF LIFE」の最後のギターソロとか「Prisoner of evolution」かな。

田澤:最後に“ギュオーッ!”と上がっていくやつ、いいよね(笑)。

都:曲を作った時点で、絶対YUKI君にそうしてもらおうと思ってた(笑)。「Change your Sight」も好きだな。

YUKI:どれも曲の最後をエモいギターで締めるという。今までもメロディーを大事にしていたけど、特に『Brilliant Anthology』収録曲はいいメロディーをたくさん作れたと思いますね。ギターソロが休憩とかテクニックをみせるんじゃなくて、もうひとつ歌があるという感じにアレンジできたので、それを弾くことを楽しんでいます。

田澤:ライブ中、顔がイッてるもんな(笑)。

──先ほど、“表現に徹する”という言葉もありましたが、ボーカリストとしては?

田澤:歌に関して言えば、今回のツアーは響きを守ることに徹しているかもしれない。特に聴かせる曲が並んでいる中盤のブロックは、それを死守しています。思った以上に曲へ入り込んでテンションが上がると、トーンのニュアンスがズレそうになる時があるんですよ。ほんの一瞬、そこをどうするかで迷うというか。いいやと思ってテンションのままに歌う日もあれば、“いや、伝え切らないと意味がない”と思って踏み止まる日もあるという感じです。

──踏み止まれるというのはさすがですね。

田澤:昔は無理だったんですよ。でも、最近はその場の感覚に任せるんじゃなくて、何を聴かせたいかということのほうが大事な気がしていて。お客さんが音源を聴いて“ここ、いいな”と思ってくれてるのであれば、目の前でやるべき。だから、「サバイヴノススメ」のロングトーンは絶対にやるんですよ。一回だけわざとやらなかったことがあったんだけど、その時に“これは違う。やっぱりやらなアカン”と思ったんです。その瞬間の閃きとか感情を表現していくのもライブだけど、その中にも絶対に守らないといけないことってあるんですよ。

──特に『Brilliant Anthology』収録曲は、そこをはき違えると台無しになってしまう曲が多い気がします。

田澤:そうなんです。バラードの「MAZE OF LIFE」とか「Change your Sight」はフェイクをグイグイ聴かせたいとか、メインのメロディを少し変えたいという気持ちに……十二分になるんですけど、“それは違う”と(笑)。

YUKI:大人になればなるほど、フェイクを入れたりメロディを崩したがる人が多いよね(笑)。

田澤:そうそう(笑)。ただ、その気持ちは分かるんだよね。だから、メロディを変えたりするのは、「悲劇のメシュード」みたいに自分の曲で(笑)。それでもサビは絶対に音源通りに歌ったり、ポイントを決めてます。

──両方の良いところを活かしているんですね。それに、歌の表情やダイナミクスレンジが今まで以上に広がっていませんか?

田澤:それはもうメンバーのみなさんが曲を作る時に、僕の音域を余すところなく使ってくれるからです(笑)。

YUKI:ははははは。今回のツアーの田澤君の歌は、ライブをするたびに、今まで以上に、凄くなっていくなと思っているんですよ。パワー感とか表現力が圧倒的。それを聴いていると伴奏も、よりしっかり弾こうという気持ちになる。

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