チープ・トリック、日本上陸40周年に見せた変わらぬ姿勢と新たな息吹

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チープ・トリックの来日40周年を記念した一夜限りの単独公演が、10月11日(木)、東京・Zepp Tokyoにて開催された。

◆Zepp Tokyo公演 画像

日本武道館2公演を含む初来日ツアー、そしてその模様を収めたライブ・アルバム『チープ・トリックat武道館』の発売から40年。チープ・トリックはこの4月に日本武道館での“祝40周年公演”を予定していたが、リック・ニールセン(G)の体調不良で同公演はやむなく延期になってしまった。Zepp Tokyoでのライヴ開催は、彼らの“会場を変更しても、40周年という節目の年に日本公演を開催したい”との熱い思いから実現したものだという。以下、完全ソールドアウトとなったスペシャルな一夜のオフィシャルレポートをお届けする。

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■チープ・トリックが日本初上陸40周年記念公演でみせつけた今なお現在進行形の変わらぬ姿勢と、さらなる可能性

10月11日、チープ・トリックの一夜限りの来日公演が東京は台場のZepp Tokyoにて行なわれた。今年は彼らの初来日公演(1978年4月)と、その際の収録音源によるライヴ・アルバム、『チープ・トリックat武道館』の発売(同年10月)から数えて40周年にあたり、去る4月にはそれを記念しての日本武道館公演が組まれていた。が、その直前にギタリストのリック・ニールセンが急病に見舞われ、2008年以来となる武道館公演は実現不能に。今回のライヴはその振替公演にあたるもので、収容規模が武道館の4分の1ほどしかないZepp Tokyoは当然のごとく完全ソールドアウトの満員状態となった。


開演定刻の午後7時、さまざまな世代のファンがひしめくフロアに流れるBGMはロニー・ウッドの「アイ・ドント・シンク・ソー」。すると突然、場内は暗転。ショウの始まりを告げるアナウンスが終わると同時に炸裂したのは「ハロー・ゼア」だ。1977年発表の2ndアルバム、『蒼ざめたハイウェイ』の冒頭に収録されていたこのコンパクトなファスト・チューンが、彼らのライヴの幕開けを飾る定番曲であることは改めて説明するまでもない。時と場合によってはセットリストに組み込まれないこともあるものの、40年前の春に日本初上陸を果たした彼らがこの国で最初に演奏してみせたのもこの曲だった。

年齢層的にも幅広く、ファン歴の長さも異なるはずのオーディエンスは、2分間にも満たないこのオープニング・チューンの疾走感に束ねられ、すぐさま場内には一体感が。すると続けざまに聴こえてきたのは「カモン・カモン」。さらにはオリジナル・アルバム未収録の人気曲である「ルックアウト」、そして「ビッグ・アイズ」と小気味よく続いていく。その間、いわゆるMCらしいMCは一切ない。例によってリックは曲が変わるたびに自らのコレクション披露をするかのごとく使用ギターを替えていくが、彼がステージ袖へと下がるわずかな時間の隙間は、彼の実の息子であるドラマーのダックス・ニールセンの繰り出すビートが埋めていく。音が途切れないからこそ、その場に渦巻くものが途切れることもない。


そして実は、ここまでの4曲の並びは、前述の『at武道館』の収録順そのまま。40年前の実際の演奏順はこの通りではなく、それは同作の発売20周年を記念して1998年に登場した『at武道館:ザ・コンプリート・コンサート』によっても明らかにされているが、あの伝説的ライヴ・アルバムを聴きまくってきた人たちにとっては、まさにタイムスリップを味わうかのような想いだったに違いない。しかもその感覚は世界共通のものでもあるのだ。リックの口癖には「武道館がチープ・トリックを有名にし、チープ・トリックが武道館の名を世界に広めた」というのがあるが、同作はそもそも日本のみでの発売を想定して制作されたものだったにもかかわらず、逆輸入的な形でアメリカでもヒットし、全米アルバム・チャートでも最高4位を記録。母国をはじめ世界に彼らの名を知らしめる文字通りの出世作となったのだ。

40年前と何ら変わらない。誰もがそんな感触を味わっていたはずだが、ステージ上のチープ・トリックには、過去との明らかな違いがあった。なんとメンバーが5人いるのである。前述の通り、現在このバンドのドラマーは、オリジナル・メンバーのバン・E・カルロスではなくダックス・ニールセンが務めており、まずはその差異もあるわけだが、それに加え、ステージ上手後方に見慣れないギタリストの姿があるのだ。何を隠そうこの若者こそ、このバンドの唯一無二のフロントマンであり、リックに“世界でいちばん好きなシンガー”と紹介され続けているロビン・ザンダーの息子、ロビン・テイラー・ザンダーなのである。リックが病に倒れた際にもステージに立ってきた彼は、いわゆるサイド・ギターとバッキング・ヴォーカルを担当するサポート・ミュージシャン的立場にある。誤解を恐れずに言えば、このバンドのライヴを成立させるうえでどうしても不可欠な立場にあるというわけではない。が、彼の存在によりロビンがギターを抱えずに歌唱に専念することのできる曲が増え、リックのコーラスの負担も軽減される。しかもロビン・ジュニアが父親譲りのほぼ同じ声質でハーモニーを重ねてみせるのだから、これはたまらない。少々大袈裟な言い方であるのは承知のうえだが、チープ・トリックの血を遺伝子レベルで受け継ぐ若い世代の関与が、ただでさえ衰えを知らないこのバンドをいっそう若々しく保っているという解釈もできるのではないだろうか。


ライヴはその後も、40年前と変わらぬ快活さを保ちながら、40年前には生まれていなかった楽曲たちをも散りばめながら続いていった。現時点での最新オリジナル・アルバムにあたる『ウィア・オール・オーライト!』(2017年)からの選曲は「ユー・ガット・イット・ゴーイング・オン」のみにとどまったが、同作発表後に生まれ、この春に配信リリースされた新曲「The Summer Looks Good On You」までも、彼らは披露してみせた。しかもリックならではの「アメリカではチャートを独走したけど日本では全然」という冗談付きで。加えて、すでに次なるアルバムを制作中だとの話を交えながら、ジョン・レノンの「真実が欲しい」のカヴァーを披露したかと思えば(ちなみに去る10月9日はジョンの誕生日にあたる)、多弦ベースの先駆者ともいうべきトム・ピーターソンは、自らがリード・ヴォーカルをとる「アイ・ノウ・ホワット・アイ・ウォント」からメドレーのような形でヴェルヴェット・アンダーグラウンドの「ウェイティング・フォー・ザ・マン」を歌ってみせた。『蒼ざめたハイウェイ』と同様に41年前に世に放たれたデビュー・アルバム、『チープ・トリック』(1977年)からも2曲が披露された。

つまり、あくまで40周年記念という言葉が掲げられた本公演であるとはいえ、そこには40年以上前に生まれていた楽曲や、彼らが影響を受けてきた音楽、80年代や90年代、2000年以降のこのバンドの変遷を彩ってきた曲たちが混在していて、それらすべてがこの記念すべき公演には欠かせないものだったということ。しかも40年前には生まれてすらいなかったロビン・ジュニアまでもがそこに立ち会うという、まさに2018年の現在にしか成立し得ないライヴになっていたのだ。


ショウは「ヴォイシズ」や「永遠の愛の炎」といったメロウな楽曲で緩急をつけながらも、序盤からの小気味よいテンポ感を崩すことなく続き、「甘い罠」からの「ドリーム・ポリス」という黄金の流れを経て一度は着地点へと到達。しかしそこで勿体ぶりながらアンコールに応えるのではなく、ステージから姿を消すこともせぬまま、リックの「ダックスが、もう何曲かやれる時間があるって言うんだけど」という言葉から、「今夜は帰さない」へと突入。最後の最後は「サレンダー」の大合唱を経て、オープニングの「ハロー・ゼア」と対をなす「グッドナイト」で幕を閉じた。全24曲、2時間近くに及ぶ実に密度の濃いライヴだった。

リックは途中、40周年について語りながら「1978年当時の俺とロビンはまだ5歳だった。今はようやく25歳」という計算の合わないジョークを口にしていたが、このバンドのライヴが教えてくれるのは、円熟、熟成というのが、レイドバックや「枯れ」とは必ずしも同義語ではないということだ。そしてグッド・ソングが年数を経ても輝きを失わないのと同様に、どんな時代にもコンスタントに創作活動を続け、ライヴ・バンドとしての呼吸を止めたことのないチープ・トリックもまた精気を失うことがない。記念すべき節目での武道館公演実現が叶わなかったことは少々残念でもあるが、常にツアー活動を続けてきた彼らがこの局面で自己初となるZepp Tokyo公演を実現させたというのも、実にこのバンドらしい話だといえる。そして、ひとつ確かなこと。それは、彼らが次回この国に上陸するのが、初来日から45周年を迎えた時ではなく、次なるアルバムに伴うツアーが行なわれる時だということだろう。


文◎増田勇一
撮影◎KAYAKI YOSHIAKI

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■2018年10月11日(木)東京・Zepp Tokyo公演 セットリスト

(カッコ内は収録オリジナル・アルバム *=『at武道館』収録曲)
1. Hello There/ハロー・ゼア(1977 『蒼ざめたハイウェイ』) *
2. Come On, Come On/カモン・カモン(1977 『蒼ざめたハイウェイ』) *
3. Lookout/ルックアウト(1978 『チープ・トリックat武道館』/スタジオヴァージョンは1stのボートラに) *
4. Big Eyes/ビッグ・アイズ(1977 『蒼ざめたハイウェイ』) *
5. Ain't That a Shame/エイント・ザット・ア・シェイム(1978 『チープ・トリックat武道館』/ファッツ・ドミノのカヴァー) *
6. On Top of the World /オン・トップ・オブ・ザ・ワールド(1978 『天国の罠』)
7. If You Want My Love/永遠のラヴ・ソング(1982 『ワン・オン・ワン』)
8. You Got It Going On/ユー・ガット・イット・ゴーイング・オン(2017 『ウィア・オール・オーライト!』)
9. Voices/ヴォイシズ(1979 『ドリーム・ポリス』)
10. Never Had a Lot to Lose/ネヴァー・ハド・ア・ロット・トゥ・ルーズ(1988 『永遠の愛の炎』)
11. Elo Kiddies/エロ・キディーズ(1977 『チープ・トリック』)
12. Oh Candy/オー・キャンディ(1977 『チープ・トリック』)
13. Gimmie Some Truth/真実が欲しい(ジョン・レノンのカヴァー『イマジン』収録曲)
14. Baby Loves To Rock/ベイビー・ラヴズ・トゥ・ロック(1980 『オール・シュック・アップ』 )
15. The Summer Looks Good on You(2018 5月新曲)
16. I Know What I Want/アイ・ノウ・ホワット・アイ・ウォント(1979 『ドリーム・ポリス』)
17. I'm Waiting for the Man/ウェイティング・フォー・ア・マン(ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのカヴァー)
18. The Flame/永遠の愛の炎(1988 『永遠の愛の炎』)
19. I Want You to Want Me/甘い罠(1977 『蒼ざめたハイウェイ』) *
20. Dream Police /ドリーム・ポリス(1979 『ドリーム・ポリス』)
21. Clock Strikes Ten/今夜は帰さない(1977 『蒼ざめたハイウェイ』) *
22. Auf Wiedersehen/サヨナラ・グッバイ(1978 『天国の罠』) *
23. Surrender/サレンダー(1978 『天国の罠』) *
24. Goodnight Now/グッドナイト(1978 『チープ・トリックat武道館』) *

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