【インタビュー】ベン・ハーパー「最高の音楽を常に更新し続ける」

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※ベン・ハーパー・アンド・イノセント・クリミナルズの来日公演は、新型コロウイルス感染症の感染拡大防止、及びお客様の安全確保考慮により、開催中止となりました(2020年2月28日20時発表)。


1990年代よりソロで活躍し、デビュー当初は「新世代ブルースの担い手」としてベックやGラヴなどとともに注目を受けたベン・ハーパーだが、21世紀に入ってからはジャック・ジョンソンらと共にサーフ・ミュージック・ムーブメントを築き、現在では多様なギターを駆使し、魂に訴えかける音楽を発信しているアーティストである。

2016年にはフジロックに出演していたものの、単独としては実に14年ぶりとなる来日公演が間もなく迫ってきた。ライヴにかける思い、また30年近くに迫ったキャリア、グラミーも多数獲得しているが、その先にある音楽的展望を語ってくれた。


──日本には2016年のフジロック出演以来、単独では14年ぶりとなる来日公演が目前です。改めて、日本でパフォーマンスすることに対する思いを教えてください。

ベン・ハーパー:自分自身もそうだし、イノセント・クリミナルズのメンバー全員も、また日本でパフォーマンスできることになって本当にエキサイトしているんだ。日本での単独公演は、本当に久しぶりになるんだけど、リハーサルを続けながら日本のオーディエンスと再び繋がることを本当に楽しみにしているよ。

──今回はイノセント・クリミナルズのオリジナルメンバーとのセッションですが、ステージにどんな違いや変化がありますか?

ベン・ハーパー:確実に変化した自分たちを見せられると思う。現在は1995年に初来日をした際と同じバンド・メンバーでツアーをしているんだけど、進化した姿と同時に、あの頃と変わらない4人のつながりもステージの上で表現できる気がする。

──日本のファンのために何か特別なパフォーマンスは考えていますか?

ベン・ハーパー:もちろん。今回のステージのために現在、ジミ・ヘンドリックスの「アー・ユー・エクスペリエンスト?」(1967年発表)のリハーサルをしている。また、現在今年の秋にラップ・スティール・ギターを駆使したソロ・アルバムをリリースしようとしているんだけど、そこからの楽曲も披露したいとも思っているんだ。今回のステージでは、アコースティックとエレクトロニック・ギター、そしてソロなど、さまざまな要素をミックスした見ごたえのあるものになるはずだ。

──あなた自身、グラミーを獲得したチャーリー・マッスルホワイトとの共演作のほかに、母親であるエレンやバンド・リレントレス7など、さまざまなプロジェクトに携わってここまで到達したわけですが、14年前の単独公演から大きく変化したことはどのような点ですか?シンガーソングライターとして、ギタリスト、そして人間的な部分など、さまざまな視点で教えていただきたいです。

ベン・ハーパー:これまで経験してきたコラボレーションは、どれもクリエイティヴでミュージシャンとしてだけでなく人間としても大きな刺激を与えてくれた。自分自身への挑戦でもあるし、シンガー、ギタリスト、ソングライターとして挑戦するための導管になっているんだ。

──その一方で、どの作品も音楽やギターに対する真摯な姿勢がストレートに伝わってくるものですが、ずっと変わり続けないことは何ですか?

ベン・ハーパー:ありがとう。ずっと変わらないことは、ラップ・スティール・ギターを持ち続けていること。また、自分の政治や社会的考察に関しても、一貫したものがあると思う。その一方で、常に本能を超えた部分で浮かぶ発見や洞察を大切にしているところもある。


──最新曲「Uneven Days」は、ギターではなくピアノとストリングスで構成されていますよね。なぜギターではなくピアノを手にしたのでしょうか。

ベン・ハーパー:ピアノはギター同様に5~6歳の頃から慣れ親しんでいる楽器のひとつだ。実家にはアップライト・ピアノが真ん中にあって、それを弾きながら成長したと言えるくらい身近な楽器なんだよ。最近ではソロのアコースティック・ライヴの際にはピアノ・パフォーマンスも採り入れている。「Uneven Days」は、それを駆使した楽曲であり、「3部作」のひとつでもあるんだ。ここでは、物語の序章であり何も起こらない日々を綴っている。年内には、残りの2曲を発表するつもりだよ。次の楽曲は「Dont Let Me Disappear」というタイトルで、ANTI-レーベルよりリリースする予定になっている。

──この楽曲では「喜びと悲しみは常に不均一に訪れる」ということを歌っていますが、どういうきっかけでこの歌詞が生まれたのですか?

ベン・ハーパー:楽曲を制作することというのは「自分のやり方で誠実な姿勢を表現すること」だと思っている。独創的な考え・他にないやり方・プロセスを珠玉のやり方でね。この「Uneven Day」は、それを表現できた作品になったよ。

──現在はギターに拘らない楽曲制作をしているのでしょうか。現在のギターとの向き合い方について教えてください。

ベン・ハーパー:ピアノでも曲作りをすることはある。ただメインはギターやラップ・スティールなのは変わらない。

──あなたの楽曲は力強さだけでなくメランコリックで人間の弱さにも正面から向き合った楽曲が多い印象ですが、ソングライティングにおいて大切にしている部分なのでしょうか。

ベン・ハーパー:ソングライティングに関しては、自分の考えをそのまま表現することもあれば、そうじゃないこともある。また楽曲制作が自分の考えの道標になることもあるんだ。だからリスクを恐れず、思い浮かんだ考えをそのまま表現することを大切にしている。そして他人の音楽と決して比較はしない。これまでの人生の中で最高の音楽を常に更新し続けることを目標にしているからね。

──あなたがソロとして作品を発表してから30年近い月日が経過しようとしていますが、そのことに思いを馳せる瞬間はありますか?

ベン・ハーパー:あと30年やる準備ができているよ。

──これからどんな音楽を奏でて行きたいと思いますか?

ベン・ハーパー:新しい音楽を創造し続けていくだけだ。自分がそう感じられるものを。ああ、レゲエもいいかもしれないね。

──プロデューサーとしての顔も持っていますが、今後、音楽、そして音楽シーンとどう関わっていきたいですか?

ベン・ハーパー:実は年内に3枚のプロデュース作品がリリースされる。2枚はすでに発表されていて、ひとつはBirdthrowerというミュージシャン。NYのマンハッタンでパフォーマンスをしている姿を見て、これは世界に紹介しなくてはいけない存在だと感じたんだ。2組目は、Christopher Paul Stellingの「Best Of Luck and It」でANTI-から発売されたばかりだ。そして3組目はHey King という女性デュオ。まだタイトルは決まってないけど、彼女たちの作品はこれから発表になるから楽しみにしていて欲しい。今後、もっとプロデュースをするかどうかはちょっとわからないかな。すごく難しい作業だし、いろいろなことに心を配らないといけない。それにあまりお金にもならないしね。

──最後に日本のファンへメッセージを。

ベン・ハーパー:長年にわたって日本をツアーする機会を得ることができて本当に光栄に思っているんだ。日本は最高の思い出しかない。僕らの音楽を聞いてくれて本当に感謝しているよ。日本のファンに会えることを本当に楽しみにしているんだ。ありがとう。

写真:Mathieu Bitton


<Ben Harper & The Innocent Criminals来日公演>

2020年3月2日(月)
@BIGCAT
OPEN 19:00/START 20:00
2020年3月3日(火)
@名古屋ダイヤモンドホール
OPEN 19:00/START 20:00
2020年3月5日(木)
@豊洲PIT
OPEN 19:00/START 20:00
https://smash-jpn.com/live/?id=3283

◆「Uneven Days」視聴サイト
◆ベン・ハーパー・オフィシャルサイト
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