【インタビュー】松尾太陽、ミニアルバム『うたうたい』は心から音楽を愛する男からのメッセージ

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超特急のタカシがついに待望のソロデビューを果たす。「松尾太陽」名義で9月2日にリリースされるミニアルバム『うたうたい』は、彼のルーツである70年代シティポップを彷彿させる楽曲から、現代的なEDMポップまで、幅広い曲調に挑戦した全6曲(iTunesは7曲)。Vaundy、She Her Her Hers、大塚愛など個性的な楽曲提供者に加え、自ら作詞作曲を手掛けるなど、ソロアーティストとしてのこだわりをたっぷりと詰めこんだ充実の1作だ。超特急のファンはもちろん、すべての音楽ファンの耳に向けて投げかける、心から音楽を愛する男・松尾太陽のメッセージをしっかりと受け止めてほしい。

■レコードやカセットって当時の風を感じられるものなので
■昔の時代の空気を感じてみたかったな


――一人でインタビューを受けるのは、やっぱり気分が違いますか。

松尾太陽(以下、松尾):ぜんぜん違いますね。常に自分がしゃべっていることに対しても違和感もありますし、一人なので座る場所が違うのも変な感じですし(笑)。

――今日は、音楽の話をいっぱいしましょう。両親の影響でJ-POPをかなり聴き込んできたと聞いていますけど、最初に記憶にあるものは?

松尾:子供の頃に常日頃聴いていたのは、サザンオールスターズを筆頭に、山下達郎さん、シュガーベイブ、ナイアガラトライアングルとか、そのあたりですね。物心ついたころからそういう音楽が流れていました。僕世代の人はMDから入ると思うんですけど、カセットやレコードが普通に家にあったので、それで聴いていましたね。昔のものって、昔のものと一言で片づけられないほどかっこいいものが多いんですよ。僕は本当に思うんですけど、今の時代にソロ活動ができて本当にうれしいんですけど、もっと昔の時代の空気を感じてみたかったな、といううらやましさも正直あります。それぐらいレコードやカセットって、当時の風を感じられるものなので。

――何なんでしょうね。生まれる前の時代の音楽なのに「わかる」と思っちゃうのは。

松尾:何なんでしょうね? もちろん今の時代の楽曲にも良いものが多いですけど、それとは違った色があるし、今聴いても「新しいな」と思うものがたくさんあるので。うまく説明できないのがもどかしいですけど、小さい頃から聴いてきて、自分がリフレッシュする楽曲は、シティポップと呼ばれるジャンルだったりします。

――でも、友達と話、合わなかったでしょう。

松尾:ぜんぜん合わなかったです(笑)。当時流行っているものも聴いてはいたんですけどね。


――96年生まれ。中学校に入るのが2009年だとすると、インターネットも普及して、YouTubeもあって、ボカロとかも出てきて。

松尾:そんな時代ですね。ボカロは、周りに好きな人が多かったです。みんなが聴いているから僕も聴きましたけど、ボカロや電子音楽は、僕のルーツからすると、YMOから進化してできたものなんだろうなという解釈です。ハイブリッドにハイブリッドを重ねて、いろんな実験をした結果こうなったみたいな感じがします。

――23歳にそういう的確なことを言われるとビビりますけれども。じゃあ松尾太陽に多大な影響を与えたアーティストを、あらためて挙げるとすると?

松尾:山下達郎さん、サザンオールスターズと桑田佳祐さん、海外で言うとマイケル・ジャクソン。いろんなものを切り開いていった人たちじゃないですか。でもお三方とも名前はみんな知っているけど、ちゃんと調べて聴く人はそんなに多くないと思っていて、でも僕はいろいろ調べたくなるタイプなので、さかのぼって聴いていきました。プリンスも好きです。あと、同じ日本でかっこいいなと思うのは忌野清志郎さん。めっちゃ好きです。

――かっこいいですよね。

松尾:小さい頃から聴いていたわけではなくて、聴いたのは亡くなってからでした。もちろんその前から知ってはいたんですけど、ドラマや映画にも出ていたので、俳優さんだと思っていました。亡くなったあとにいろんな特集番組を見て曲を聴いて「かっこいいなこの人」と。こんなに派手な服や化粧がかっこいいと思ってもらえる大人になりたいなと思いましたね。その流れで言うと、沢田研二さんも好きです。


――いいですね。いま、23歳と会話していると思えないですけども(笑)。

松尾:沢田研二さんはあの当時、いろんなパフォーマンスをしていたじゃないですか。派手なファッションとか、カラコン付けたりとか。あの当時にカラコンってたぶんないですよね。僕はあれを、あの時代に見たかったんです。今あれをやっても当たり前だと思うんですけど、当時はすごい衝撃だったと思います。清志郎さんもそうで、もともとはフォークバンドから始めている方で、そこからいろいろジョブチェンジをしていってああいう形になっていったのが、調べていくとわかるんですよ。そうやってみんな苦労に苦労を重ねて上り詰めていくんだなという、バックボーンを知っていくのがすごく楽しいし、僕はただシンプルに音楽が好きだから聴いていたんですけど、調べていくともっと好きになる。音楽好きな人って、みんな調べるじゃないですか。その気持ちがちょっとわかるような気がします。

――今名前を挙げた人って、いろんな音楽スタイルの集合体の上に、オリジナリティを作っていった人だと思うんですね。それはすごく奥の深い入口で、その人を通していろんな世界が見えてくる。

松尾:自分もいろんな要素を取り入れたいなと思っているし、そういった気持ちも込めての今回のミニアルバム『うたうたい』だったりするので。今挙げさせてもらった方は、こうしてしゃべらせてもらうのがおこがましいと思うレベルでリスペクトする存在です。

――そんな、ソロデビュー第一作となるミニアルバムが『うたうたい』。まず目を奪われるのが楽曲提供の豪華さで、すごいセンスを感じる人選です。一体どうやって集めたんですか?

松尾:本当にそうなんですよね。「誰にお願いしようか」という話になった時に、まず誰がこれを引き受けてくれるんだろう?と。だから自分が名前を言うというよりも、潔くチームのみなさんに委ねようと思ったんですよ。それでお願いしてみたら、すごい人たちが集まっていてびっくりしました。


――せっかくだから、1曲ずつしっかり紹介しましょう。1曲目は「mellow.P」。楽曲提供は、なんと大塚愛。

松尾:本当に、こういう形で関われるとは思いませんでした。この「mellow.P」という曲は、曲調で言うとけっこうポップなんですけど、タイトルの通りにメロウ感を大事にしたい部分もあって、この曲の中でしか生きてこない浮遊感みたいなものを大事にしました。デジタルさもあるんだけど、ちょっとノスタルジーな部分もあったり、それがこの曲の印象としてありました。

――不思議な、幻想的な世界観ですよね。

松尾:実物を見たことがないような情景という気がしました。自分では、肉眼で見たことがある世界観を書くことが多いんですけど、こういう何とも言えない、何か宙に浮いているような、その「何か」を表現していることがすごいなと思いました。

――2曲目「The Brand New Way」は、作詞・浅田信一と作曲・堂島孝平という、ポップスマニアのベテランコンビ。

松尾:浅田さんと堂島さんがタッグを組んで作ってくださることへの驚きがあって、名前を見た時に「えっ!」と思いましたけど、これこそ僕が聴いて育って来た音楽の太い芯のようなものですね。「mellow.P」とは打って変わって、小説を読むかのようにすらすらと読める歌詞で、見るというより読むというほうが正解だと思います。そういう世界観はすごくいいなと思いますし、一つの作品という感覚がします。高品質な感覚があって、スピーカーは木製のもので聴きたいとか、そういう感じがします。

――これはまさに、山下達郎につながるようなシティポップの系譜を継ぐ曲調。歌い方もそうなっている気がする。

松尾:曲を聴いてイメージをふくらませて、その曲に合った自分を探すんです。それはざっくりとしたもので、あんまり決めすぎるとハマらない時に困るので、「こういう感じかな?」というぐらいで臨むと意外と良かったりします。

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