【インタビュー】Mary's Blood、初のカバー盤『Re>Animator』完成「コスプレと近しいところがある」

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■いつか師匠と対等な立場で歌える
■ヴォーカリストになりたいと思ってきた

──いえいえ。ただ、どの曲も曲としてのキャラが濃いし、原曲の歌い手の皆さんも歌い方のキャラが濃い。EYEさんはそこでの取り組み方というのも難しかったんじゃないですか? どうしてもオリジナルの歌い方をなぞってしまいそうになるだろうし、そこで自分らしさを出し過ぎてしまうと全然違うものになってしまい兼ねないし。

EYE:そうですね。ただ、自分がおたくだからわかるんですけど、原曲は神なんですよ。これまでいろんなアニソン・カヴァーとかも聴いてきましたけど、やっぱり原曲に敵うものはないっていう気持ちがあるんです、どこかに。でも、ヴォーカリストとして、ミュージシャンとして、それじゃいけないなっていう気持ちもある。そこでの葛藤の末にみつけた自分なりの“ここだ!”っていう着地点は、そのアニメの新作の主題歌を手掛けましたよ、という感覚で取り組むということで。だから、それまでの歴史をちゃんと理解して、踏襲すべき部分は踏まえたうえで、リスペクトをもって臨み、より盛り上げていこうっていう気持ちでやるというか。それが最良の判断なんじゃないかなって思いました。そう考えるようにしてからは、わりと吹っ切れたところが大きくて。やっぱり伴奏がメタル・アレンジされたら、音像とか聴きごたえはもちろん、印象が変わるのは当たり前の話ですけど、そこで原曲から離れすぎてもいけない。そういった意識を歌いまわしとかに活かすうえでは、それぞれの曲の主人公が自分に憑依したかのような感じで歌うというか。そういった感覚で1曲1曲、気持ちを入れ替えながらレコーディングとかにも取り組んできました。

▲RIO (B)

──気持ち的な切り替えは必要だったけども、それぞれの主人公になりきる作業はそんなにも困難ではなかったということでもあるんでしょうか?

EYE:そこはやっぱり、コスプレイヤーなんで(笑)。コスプレと近しいところがあるなというのは、ホントに思ったことでもあるんです。実際、二次元のものを三次元の自分に落とし込んで表現するのがコスプレなので。

──なるほど。僕、初めてコスプレというものを理論的に説明されている気がします。

EYE:私も初めて解説してる気がします(笑)。それこそコスプレをする理由って、コスプレイヤーさんによってそれぞれ違うと思いますけど、自分を見せたいっていう欲求と、原作を再現したいっていう欲求、創作したいっていう気持ち……その人が重きを置くポイントというのはそれぞれ違うと思うんですけど、結局、自分が表現するものであることに変わりはないわけですよね。そういう意味では、たとえばアニメのこのシーンを再現するには表情もこうやって変えなきゃとか、こういうポージングじゃないとこのキャラクターになれないなとか、そういうのを研究しながら撮影したりしてるわけです。歌にもやっぱり、それと同じところがあって。この曲の良さってここだよなとか、ここの部分があるからこの世界観が出るんだよなとか、そういった押さえるべきポイントがやっぱり見えてくるんです、いろいろと考えてるなかで。で、そこを残しながら、違うところで自分の声色、違う引き出しを使いながらバランスをとっていくというか。そういうことまで考えたのは、今回が初めてでしたね。

──そうやって新たに考えなければならないこともあったし、だからこそ学ぶべきところも多々あった、ということですね。

EYE:そうですね。たとえば聖飢魔IIの曲とか、最初、閣下の真似をして歌ってみたらすごく楽しくなってしまって、逆にそこから崩すのが大変で(笑)。それも自分のなかでは発見でした。これまで誰かの真似をしたことというのがなかったので。

──その閣下風ヴァージョン、皆さんからの反応はどうだったんです?

EYE:実は、みんなは聴いてないんです。今回、レコーディング作業は各々でやっていたんで。だから、それはしまい込んでありますね(笑)。

▲EYE (Vo)

──いつか秘蔵ヴァージョン集が公開されることを願います(笑)。そして今回、EYEさんは念願をひとつ叶えていますよね。師匠にあたるNoB (山田信夫/元MAKE UP、現DAIDA LAIDA)との共演というか、対決というか。

EYE:ちゃんと対決になってたらいいな、と思うんですけどね、弟子としては(笑)。実は最初の制作会議の時に配られたリストのなかにも「ペガサス幻想」が載っていて、この曲はMary’s Bloodとしてもライヴでカヴァーしたことはあったんです。しかもNoBさんは私の師匠でもあるしということで、じゃあこれは入れようよ、というのが先に決まって。その時点では、NoBさんをゲストでお呼びするとかそういった話は一切なかった。でもまあ、個人的にはずっと、師匠といつか対等な立場で歌えるヴォーカリストになりたいな、ということをぼんやりと思ってきたところもあったし、まず自分のバースデー・ライヴで共演の夢が一度叶ってるんです。お声掛けしてみたら「いいよ!」と快諾してくださったんで、なんか物真似歌合戦の“ご本人登場!”みたいな感じでやらせていただいたんですけどね(笑)。そういった流れもあったので「今度あの曲を音源でもやらせてもらうんですけど、よろしければ是非そちらも」という話をなんとなく投げてみたところ、「ちゃんと依頼してくれるならいいよ」という返答をいただけたので、“よし、言ったね!”と思って(笑)。実は私たちのレコード会社に、その昔、MAKE UPを担当されてた方がたまたまいらしたというのもあって、その方も挟んで改めてご依頼をして……。そうやって、結構いろんな巡り合わせがあるなかで実現したことなんです。だから、いろんな経緯が重なって自分の夢がたまたまかなうことになった、という感じですね。とはいえ、実際やるからにはツイン・ヴォーカルでがっつり並んで歌っててもおかしくないようなものにしなきゃ、というのもあったし、ヴォーカル・パートの割り振りとかハモりのラインとか、そのへんは全部、私に決めさせてもらいました。アレンジャーの方にお任せするんではなく。


──こういう企画があったからこそ思いがけず実現したというのは素敵ですね。計画してもなかなかそういうことにはなりにくいわけで。

EYE:そうなんですよ。「魂のルフラン」についてもそういう巡り合わせがあったんです。この曲の中間部分のコーラスは、2作前のオリジナル・アルバムで共同作詞していただいたリン(・ホブデイ)さんにお願いしてるんですね。英詞とかだけじゃなくコーラスとかのお仕事もされてるということだったので、いつか音源で歌って欲しいなと思ってたというのもあるし、同時にレコード会社側からの提案もあって。で、ご依頼してみたら「その曲、やったことありますよ」と言われて。こっちとしては「はい?」って感じじゃないですか。実は「魂のルフラン」の公式の英語ヴァージョンでリンさんは歌っていて、訳詞もされていて。それも知らない状態でお願いしていたんで、全部あとでそういった偶然を知ったんです。結局、ご本人というか公式の方に歌っていただいた形になって。なんか、いろんな巡り合わせが面白かったですね。

──企画ひとつで思いがけない巡り合わせがあって、それが実を結んでいるわけですね。たとえば新しいオリジナル・アルバムを完成させた直後というのは、達成感があったり、いきなり反省点を見付けたり、次に作りたいものが見えてきたり、というのがあると思うんです。こういったアルバムを作った後というのは、また種類の違う達成感があるんじゃないかと思うんですが、いかがでしょう?

EYE:私、今はコスプレの撮影が明けた時と同じ気持ちですね(笑)。やりたかったいろんなことが作品になって、改めて見返して、“ああ、やっぱ最高だな!”って思えてる、というか。そういうやり切った感は、コスプレをやり終わったアフターでみんなでご飯食べてる時の感覚に近いかな(笑)。なんか今日の私、コスプレの話ばっかしてますけど(笑)。

──いや、でも、コスプレとカヴァーの意味の近さ、感覚的な近さというのはこれまであまり語られてこなかったことでもあるし、なかなか興味深くてわかりやすいですよ。

EYE:これが本当にわかりやすい説明になってるのか、自分ではちょっと自信がないんですけどね(笑)。

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