【インタビュー】R.E.M.ピーター・バック「アルバムは、年月を経て記憶に残るものだ」

ツイート

ザ・ローリング・ストーンズのように長きにわたりシーンに君臨するでもなく、U2のように巨大セットに囲まれてスタジアムを埋め尽くしたわけでもなく、ニルヴァーナのようにシーンを激変させる作品を出したわけでもなければ、パール・ジャムのように傷つき怒れる者たちの代弁者に奉られたこともない。それでもR.E.M.は多くのファンに愛され、ミュージシャン仲間に慕われ尊敬され、メディアからも信頼された。

それは、彼らが、素晴らしい音楽を生み出したことはもちろんだが、音楽に対しても、R.E.M.というバンドに対しても誠実であり続けたからだろう。カート・コバーン(ニルヴァーナ)は亡くなる数ヶ月前のインタビューでR.E.M.の話をしている。

「もし俺が、彼らが書いたのと同じくらいいい曲を2~3曲書けたら…。あのバンドがどうやって仕事をしているのか、わからない。とにかく彼らは最高だよ。聖人のように成功を受け入れつつ、素晴らしい音楽を提供し続けているんだから」──カート・コバーン


インディ・デビューから40年、31年続いた活動を止めて10年を経た2021年、『ニュー・アドヴェンチャーズ・イン・ハイ・ファイ』(1996年)の25周年記念エディションがリリースされる。それに伴い取材に応じてくれたのは、「自分たちの作品に対しては、どれも誇りを感じている。最初に頭に浮かぶのはそういう感情かな」と語るピーター・バック(G)だ。

R.E.M.といえば、マイケル・スタイプというアーティスティックかつカリスマティックなヴォーカリストに注目が集まりがちだが、ピーター、マイク・ミルズ(B)、ビル・ベリー(Dr)という3人の作曲家にして音楽識者なくしては成立しなかったわけで、『ニュー・アドヴェンチャーズ・イン・ハイ・ファイ』は、そんなオリジナル・メンバー4人で制作した最後の作品であり、非常にチャレンジングな作品だった。


「あれはR.E.M.のようなバンドが作るべきアルバムだった、と思える点で意義があると思っているんだ。僕らはわずか4~5年という期間で2500~3000万枚近いセールスをあげた(実際には3000万枚以上)。そんな僕らが、ああいうアルバムを作るのは決して楽なことではなかったし、安全策ではなかった。それでも、ほとんど誰もやったことがないようなことをやろうと決めて取りかかったんだ。チャレンジだったけど、僕らの立場でやるべきチャレンジだったと思う」


1995年、R.E.M.は前年秋に発表した『モンスター』を携えて、5年以上ぶりのツアーに出た。『アウト・オブ・タイム』(1991年)と『オートマティック・フォー・ザ・ピープル』(1992年)というアコースティック寄りのアプローチをとった、いわゆる“ロック然”としていないこの2作は、彼らがツアーに出ることなく大ヒットした。その反動もあり、グランジ/オルタナ・ムーヴメントの影響もあり、『モンスター』では大きな音のギター・ロックを鳴らしツアーに備えた。そして彼らは、これまでやったことのないことをしたい、とも思った。売れたから、という理由で制限されることは何もない。むしろ、そういう自分たちこそが新しいことにチャレンジすべきだと、ツアー中に曲を書きレコーディングを進めようと目論んだ。


「あの時のツアーは、僕らが経験した最も長いツアーだったからね。時間つぶしという意味もあった。毎晩、サウンド・チェックで新曲をリハーサルをし、その日のステージで試すことができた。1995年のツアーのクレイジーさを考えると、そこからあのアルバムを作れたのはすごいことだったと自負できるよ」

ただでさえクレイジーなツアーをさらにクレイジーにしたのは、ピーターを除く3人それぞれの健康状態悪化を理由に、ツアーが3度にわたって中断されたこと。とりわけビルの脳動脈瘤破裂による手術と入院は、後に彼にバンド脱退を決意させることになった。が、ともあれ、ツアーが終わったときにアルバムは「8割方が完成していた」とピーターは振り返る。

「スタジオでやったのは、3~4曲のトラッキング作業と、サウンド・チェック中やステージで録音した曲に少しオーバーダブで重ねるといった程度だったからね。何をやりたいのか、その思いが自分たちの中で新鮮なうちにやってしまいたかった。すぐにスタジオに入って完成させたおかげで、曲は新鮮なものになり得たんだ」


かくして完成した『ニュー・アドヴェンチャーズ~』は1996年9月に発表されるが、本作に伴うツアーは行なわれなかった。R.E.M.においては、ツアーに出ないことも選択肢のひとつとして確立されていた。

「アルバムは、年月を経て記憶に残るものだ。僕らはみんな、ライヴで演奏することは大好きだったけれど、ライヴというのは一度演奏してしまえば、それでおしまい。誰かの記憶だけに残る。ライヴは大好きだったけど、必ずしも、レコードが必要とすること、バンドが必要とすることではなかったんだよ」

とはいえ、ステージ上での生き生きとしたピーターを知っていたら、オン・ザ・ロードの生活が恋しくなることもあったのでは?と思ってしまう。


「いや、僕には他にもやることがいっぱいあったから。アルバムが出てもツアーをやらないとなったら、友達とクラブでやったりと、なんだかんだ忙しかったんだ。今も同じだよ。R .E.M.はもう13年ツアーをしてないわけだけど、僕自身は、年間50~60本はライヴをやっていたよ…2年前までは、ね」

確かに、彼の音楽活動は非常にアクティヴだ。ソロ活動、プロデュース業、友人たちとの複数プロジェクト…、2017年2月には、マイク、R.E.M.のサポート・メンバーでもあったスコット・マッコウイー(ヤング・フレッシュ・フェロウズ)、スティーヴ・ウィン(ドリーム・シンジケート)らと来日、東京と京都で開催されたイヴェント<ICE STATION>に出演している。ミュージシャン、ピーター・バックのモチベーション、音楽を生業とする理由は、40年前と今で変わらないのだろうか?

「10代、20代の頃の僕が音楽に夢中になった理由は、今もそう変わらないと思う。当時の僕は、朝起きたらギターを弾き、曲を書く。それだけだった。そしてそれは今も変わらない。当時ほどの、自分の持てるものを世界に見せてやるんだという気持ちはなくなったかもしれない。でもアルバムを作り、それが5000枚くらい売れて、クラブで演奏できるなら、それで十分に満足なんだ」

ところで、R.E.M.は社会的、政治的な主義主張を表明することに躊躇のないバンドである。アーティストがそのアートを通じて世の中に対してメッセージを発することについて、ピーターはどのような考えを持っているのだろうか。改めて聞いてみたい。

「完全に個人の選択だと思う。自分の周りのことを歌にするのもよし、愛の歌を書くのもよし。人間は誰もがみんな、世界に関わっているわけだから、そのことを歌うバンドはいくつかは出てくる。トランプが大統領に当選した時には思ったよ。『もし僕が25歳だったら、今のこの状況を歌にして、ものすごいアルバムを作ってただろうな!』って。きっと誰かがやるのだろうけど(笑)」

取材・文◎赤尾美香





『ニュー・アドヴェンチャーズ・イン・ハイ・ファイ』

●25周年エディション(初回限定盤)
2021年10月29日発売
UCCO-8044/5 2SHM-CD ¥3,850(税込)
https://lnk.to/REM_NAIHFPR
●輸入盤2CD+Blu-ray限定デラックス・エディション
2021年11月12日発売
https://store.universal-music.co.jp/product/7226397/
●輸入盤180g 2LP
2021年10月29日発売
https://store.universal-music.co.jp/product/7224545/


R.E.M.デビュー40周年記念 初UHQCD(MQA)化

各¥3,300(税込)
●『グリーン』UCCO-46001(1988年リリースの6枚目)※2013年リマスター音源使用
https://store.universal-music.co.jp/product/ucco46001/
●『アウト・オブ・タイム』UCCO-46002(1991年リリースの7枚目)※2016年リマスター音源使用
https://store.universal-music.co.jp/product/ucco46002/
●『オートマチック・フォー・ザ・ピープル』UCCO-46003(1992年リリースの8枚目)※2017年リマスター音源使用
https://store.universal-music.co.jp/product/ucco46003/
●『モンスター』UCCO-46004(1994年リリースの9枚目)※2019年リマスター音源を使用
https://store.universal-music.co.jp/product/ucco46004/
●『ニュー・アドヴェンチャーズ・イン・ハイ・ファイ』UCCO-45003(1996年リリースの10枚目)※2021年リマスター音源使用
https://store.universal-music.co.jp/product/ucco45003/

『ベスト・オブ・R.E.M.・アット・ザ・BBC』

UCCO-2042/3 2SHM-CD ¥3,630(税込)
https://store.universal-music.co.jp/product/ucco2042/

◆ユニバーサルミュージック R.E.M.サイト
この記事をツイート

この記事の関連情報