【対談インタビュー】浜端ヨウヘイ×森川欣信(オフィスオーガスタ最高顧問)、幸福な「祝辞」

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2021年9月25日に配信リリースされた浜端ヨウヘイのデジタルシングル「祝辞」。その表題曲「祝辞」は結婚披露宴に招かれた新郎の友人が、新郎の過去をぶっちゃけながら語るという、ユーモラスで親しみやすく、聴いているだけでハッピーになれる1曲だ。

◆ミュージックビデオ/撮り下ろし画像

「祝辞」というタイトルの通り、ウェディングソングではあるのだが、この曲にはそれだけには止まらない温かな思いがあるように感じる。特にこのコロナ禍において「会いたい人に会えない」「大切に思うからこそ会えない」といった、優しさゆえにつらい気持ちを抱える人の心を温めてくれるだろう。

それはきっと、浜端ヨウヘイの深い思いが込められているからこそ。この曲の仕掛け人である音楽プロデュサーでオフィスオーガスタ最高顧問の森川欣信氏と、作った当の本人であるシンガーソングライター・浜端ヨウヘイに、曲に込めた想いや制作秘話をたっぷりと語ってもらった。

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■「親父の一番長い日」「関白宣言」みたいな曲のヨウヘイ版が作れたらいい

──「祝辞」はどのようなきっかけから生まれたのですか?

森川欣信氏(以下、森川):僕自身、これまでに何度か披露宴で祝辞を頼まれたことがあり、祝う気持ちを伝えられる歌があるといいなと思ったんですよ。でも、コロナ禍でみんなに会えなくなって、結婚披露宴もできないという話が聞こえて来るようになって……。そんな時でも祝辞を伝える歌があればいいなと思ったのがきっかけですね。それで誰に曲作りを頼もうかと考えたとき、社会人経験もあるし、浜端ヨウヘイがアーティスト性や人間性で一番バランスがいいんじゃないかと。それで「こんなのどう?」って話してみたら意外にすんなり乗ってくれましたね。

浜端ヨウヘイ(以下、浜端):企画にというより、まず森川さんと何かを作るのは絶対に面白いだろうなと思ったんです。二つ返事でOKしたものの、その後は結構時間かかりましたよね。

森川:結婚ソングって、どんな内容にするかは結構難しいんです。単におめでとうとか、結婚を祝うものではなく、ヨウヘイと作るなら、ヨウヘイらしい曲にしたかった。いろいろと考えていくなかで、披露宴では必ずと言っていいほど友人代表のあいさつがある。ヨウヘイが友人代表で祝辞を述べるかたちで、いろんなエピソードを入れていったら面白そうだねって話がまとまっていきました。


──歌詞に出てくる細かなエピソードはすべて浜端さんの創作なのですか?

浜端:はい(笑)。そこにたどり着くまでが長かったですね。最初は僕が好きな結婚式の曲にならって、歌の主人公がプロポーズするような歌詞を書いていました。でも、なんかしっくりこない。それで、視点を第三者にしてみようと180度変えることにしたんですが、歌詞は紆余曲折もあり時間をかけましたね。

森川:ヨウヘイは根がまじめだから、相手を思いやっちゃうんですよね。でも結婚式の祝辞では、「品行方正でした」と紹介されるより、「ダメなやつだったんですよ」と紹介される方が聞いてるほうは楽しかったりする。本当に気心の知れた親友ならそれも許されると思ったし、変に大仰なものや泣かせようとする曲にならないよう、そのバランスは気を遣いました。さだまさしさんの「親父の一番長い日」とか「関白宣言」みたいな、そんな軽やかさのある曲の、ヨウヘイ版が作れたらいいなという話はしたよね。

浜端:そうでしたね。

森川:曲はわりと早い段階でいいものができたんですが、歌詞に難航して、結局は半年くらいかかりましたね。「祝辞」というタイトルが決まったのは、作り始めてから3か月くらい経ってからだったよね。

浜端:タイトルが決まってからは指針ができたので、わりとスムーズに進められました。このご時世なので、基本的にはメールでのやり取りだったんですが、僕が送ったメールに対して森川さんはすごく長い返信をくれたり。

森川:そうそう。「ふんどしメール」だよな、あれ(笑)。

浜端:ありがたいなと思いました。ただ、森川さんからの長文メールを眺めながら、「これは、歌として流してもらえないエピソードかもしれません」と、僕の方がブレーキ役になることもありました(笑)。

森川:あったね、そんなことも(笑)。

浜端:作詞のクレジットに森川さんも入れたいくらいがっつりと関わってくださいました。最初に想定した以上に楽しい時間になったなと。リアルな会議や打ち合わせでは白熱すると、どこに向かっているか見えなくなることがあるけどメールだとそれはないし、同じ方を見ながら作れている実感が持てました。

森川:そうそう、いま話を聞いていて思い出したけど、山崎まさよしとの制作で、初期のころはファックスでやりとりしてたんですよ。文字にして送るって結構大事だと思います。口頭なら「言ってない」ととぼけられるけど、一度送ったものは取り返せないからね(笑)。


──今回初めて一緒に制作したことで、新たに見えてきたこともありましたか?

森川:ええ、ありました。「祝辞」は印象的なピアノのイントロで始まるんですが、あれを最初に聴いたとき僕はビートルズっぽくてすごくいいなと思ったんです。あと、ヨウヘイは意外に楽器がうまいんだなってことも分かりました(笑)。この曲を制作している時期に、並行して山崎まさよしのレコーディングも手伝っていたんですが、山崎も「ヨウヘイ、楽器うまいんやな」って。

浜端:恐縮です(照れ)。

森川:山崎の「セロリ」って曲は、かみ合わない2人が知り合って……というエピソードが盛り込まれている曲じゃないですか。今回はあの曲なんかもヒントにして、新郎と新婦のキャラ作りをした部分もあって。

浜端:山さんはミュージックビデオにもカメオ出演してくださってます。サビの一番おいしいところで山さんの写真が出てくる(笑)。「祝辞」の主人公は不器用で失敗ばかりのやつ。周りがみんな結婚していくなか、もしかしたら一生独身かもしれない。そう思われていた新郎が、周囲が驚くくらい素敵な女性と結婚する。そうした設定から、いろんなエピソードが浮かんできました。

森川:最後に、ヨウヘイが「祝辞は5分を越えてはいけません」って歌っているんですが、これがすごくいいなと思ってね。実際の披露宴で長い祝辞って、いやですもん(笑)。

浜端:なので、曲もぎりぎり5分で収めました。そうするために、間奏もアウトロもなしにして、ずっと歌ってます(笑)。

◆インタビュー(2)へ

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