【インタビュー】川崎鷹也、自分を支えてくれた人との思い出の曲をカバーしたEP『白』

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シンガーソングライター川崎鷹也が初のカヴァーEP『白』を9月14日にリリース。収録されている楽曲は美空ひばり「愛燦燦」、エレファントカシマシ「悲しみの果て」、竹内まりや「元気を出して」、HY「366日」、玉置浩二「メロディー」の計5曲。すべてが彼が脚光を浴びる前から彼を支え続ける人との思い出の曲である。今作で彼はトレードマークのひとつであるギターを弾かずにシンガーに徹している。なぜこのタイミングでのカヴァーEPのリリースなのか。音楽プロデューサー武部聡志とどのような制作をしていったのか。近しい人物との思い出の楽曲であり、長きにわたり愛され続ける楽曲を、彼はどのようなマインドで歌ったのか。じっくりと話を聞いていった。

■10年、20年と愛される、何十年も色褪せない良い音楽がある
■それを伝える架け橋みたいなものになれたらいいなと思っていました


――今作『白』はカヴァー曲5曲を収録したEPです。“皆さんへ恩返しがしたくて制作した”とのことですが、なぜ恩返し=カヴァーEPだったのでしょう?

川崎鷹也(以下、川崎):この数年でたくさんの人と出会う機会が増えて、たくさんのアーティストさんとライヴをしたり、一緒に歌わせていただく機会が増えるごとに、関わる人と自分の間に思い出の曲があるなと思うようになったんです。今このタイミングだからこそそういう曲を恩返しとして歌いたかったし、カヴァールバムを出すこともひとつの夢ではあったので、それをこの機会に叶えられたらいいなと思ったんですよね。

――その結果『白』には、川崎さんのお祖母さまのお好きな美空ひばりさんの「愛燦燦」、ご自身のマネージャーを務める親友との思い出の曲であるエレファントカシマシ「悲しみの果て」とHY「366日」、事務所の社長のいちばんお好きなアーティストである竹内まりやさんの「元気を出して」、ご自身の音楽人生の大きなきっかけとなる玉置浩二さんの「メロディー」の計5曲が揃いました。関わる人が増えれば増えるほど、本当にご自身に近い方への恩返しがしたいと思われたということですよね。

川崎:そうですね。本当に近い人たちとの思い出の曲を選んだ結果、すごく個人的な選曲になったなと(笑)。でも平たく言うと、どれもよくカラオケで歌っていた曲なんですよね。どれも奥さんとカラオケ行ったときに歌っていたので、たくさんの人と関わるようになる前から僕のことを支えてくれている人との思い出の曲ですね。

――今の10代、20代の弾き語りアーティストさんはカヴァー動画をアップすることが多いですが、川崎さんはご自分の曲でアプローチをし続けてきましたよね。川崎さんにとってカヴァーはどういうものなのでしょう?

川崎:やっぱりカヴァー曲は聴いてもらいやすいので、僕らの世代がよくカヴァー動画を上げているのは、自分の存在を多くの人に知ってもらうためであることが多い気がしています。でも作った楽曲や、スタイルを知っていただいてる状態でカヴァー曲を発表するのは、またちょっと意味合いが変わる気がするんですよね。SNSで僕のことを知ってくれた若い世代に、10年、20年と愛され続ける、本当に良い音楽、何十年も色褪せない音楽があるんだよと伝える架け橋みたいなものになれたらいいなとは思っていました。

――それこそ往年の名曲を歌うことで、世代の違う人たち同士のコミュニケーションも生まれるでしょうし、ご年配の方が川崎さんを知るきっかけにもなると思います。“時代を問わず愛される曲”はアーティスト川崎鷹也の大きなテーマでもありますが、それはどんな曲だと思いますか?

川崎:ね、どんな曲なんでしょうね(笑)。僕も明確な正解はわかっていないし、これから先もそれを探し続けるんだろうなとは思っていて……何十年後かに気付くのかな。でもその正体がわかったら、その曲を書けばいいだけになっちゃいますよね。模索し続けることが大事なのかな……とは思いながらも、この5曲に共通しているのは、そのアーティストさんの人生を歌っている曲であると感じていて。そういう曲が時代を超えて愛されていくのかな……とは漠然と思っています。


――『白』のアレンジは全曲武部聡志さんが担当なさっています。番組などでのご共演やご交流はあったけれど、制作を一緒になさるのは初めてだったんですよね。

川崎:そうです、選曲からご一緒させていただきました。武部さんは数多くの一流ミュージシャンの方々と長きにわたり音楽をやってきた方でありながら、僕みたいな若造にも同じ目線の高さで話してくださるんです。ただの音楽好き同士として楽しく話せることが、僕にとってはすごく衝撃的で。

――以前のインタビューで“レジェンドの方々が僕みたいな若手にも同じミュージシャンとして話してくれる”とおっしゃっていましたが、そこに武部さんも含まれていたんですね。

川崎:そうです。番組で共演させていただくときもすごく楽しいし、一緒に音楽やっていると自分もいつもより良い歌が歌えたりするし、この方と一緒に何かをやると自分の実力以上のものが出るなとはずっと思っていて。それでカヴァーEPを作るにあたって武部さんとこれを作れたらめちゃめちゃ楽しいだろうな、武部さんがアレンジしてくれたらどうなるんだろうな、という思いからダメ元のオファーをしたら“いいよ~”と即答でした(笑)。

――あははは。お茶目であたたかい方なんですね。

川崎:親よりも年齢は離れてるんだけど、一緒に選曲やアレンジをしてるときとか、部活の部室みたいな感じでした(笑)。“ここはこのアレンジしたらめっちゃかっこよくない?”“最高っすね!”みたいにああでもないこうでもないと言いながら、わちゃわちゃ楽しくやりました。僕が言うのもなんですけど、お互いが認め合える、リスペクトし合えるなかでの制作はすごく楽しいですね。より良いものを作るために、お互いが妥協せず、言いたいことを言い合いながら進められました。レコーディングもとても充実していましたね。


――今回川崎さんがシンガーに徹したのはどなたの案なのでしょう?

川崎:僕から言いました。僕は弾き語りでステージに立つことに意味があると思っているし、弾き語りというスタイルはもう皆さんの認識として染みついてもらえたと思うので、新しい面を見ていただけたらというのと、あともともと僕が東京に出てきたのはシンガーになりたかったからなんですよね。“シンガーを目指して東京に出てきたあの時の気持ちを思い出して歌おう”という思いで、ギターは一切弾かずにやりたかった。チャレンジでしたね。

――ギターをレコーディングしないとなると、歌のスタイルも変わりますか?

川崎:全然違いますね。アコギと歌を別々に録音する場合であっても、歌を歌う前提でアコギをレコーディングして、アコギを弾いている状態をイメージしながら歌入れをするんですよ。それこそ歌入れをしながら、アコギを弾いているように指を動かしているんですよね。ライヴをしたときに違和感が出ないようにしているんです。でも今回はギターを弾いていないから100%歌に徹して、武部さんのアレンジに全乗っかり。胸を借りるつもりで歌いました。

――となると、音楽に目覚めてから脚光を浴びる前までの川崎さんという原点が反映された作品であると同時に、新しい挑戦ばかりの作品でもあるということでしょうか。

川崎:本当にそうです。それこそ弾き語りでカヴァーしていたら得られない感覚も多かったですね。たとえば美空ひばりさんの「愛燦燦」は美空ひばりさんにしか出せないニュアンスがたくさんあるなと壁にぶつかって。同じように歌っていても、譜面どおりに歌ってみても、聴いてみるとなんか違う……っていうのが何度もあって。マジむずかったっす。深すぎる。

――美空ひばりさんは、ピッチが取れているとか感情が込められているとかそういう次元ではなく、もっともっと先にいるヴォーカリストですものね。

川崎:しかも美空ひばりさん、レコーディングやライヴ映像のたびに歌が違うんです。どれを参考にしたらいいんだろう!? みんなはどの美空ひばりがちょうどいいんだ!?って――リアルタイム世代ではないとこういうところが痛手ですね(笑)。紆余曲折を経て、いちばん最初にリリースされた音源を参考にしています。ほんっと難しかった。いちばん気を使いました。

――そうですよね。リアルタイム世代の方々、一人ひとりの心のなかに“お嬢”は偉大な存在として生き続けていますから。

川崎:そうですよね。実際に僕の祖母も美空ひばりさんが好きすぎて、家にポスターを貼っていたり、DVDもたくさん持っていて、携帯の着信音も「愛燦燦」のお琴ヴァージョンなんですよ。美空ひばりさんに魅せられている人を間近に感じているからこそ、最初は原曲に超忠実に歌ったんです。でも各所から“これは違うんじゃないか?”と(笑)。それで1週間後に“1回好きに歌ってみよう”とレコーディングし直したんですよね。やっぱりみんなの「愛燦燦」なので……大変でした(笑)。

――これまでにない経験だったんですね。

川崎:不思議な体験でしたね。武部さんも全曲ヴォーカルディレクションをしてくださって、“ここはこういう気持ちで歌うとどうだろう?”とアドバイスをくださったり、自分ひとりでやっていたらそこに気付けないままだろうなと思うことがたくさんあったので、すごく勉強になりました。武部さんと一緒に作った歌でもありますね。

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