【インタビュー】COUNTRY YARD、葛藤が導いた驚きと豊潤の5thアルバム「壮大だけどきゅっとしている」

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■英語に翻訳する前に書いた日本語詞を
■ふとメロディに乗せてみた

──さて、今回のアルバムは、いろいろ新たな挑戦があると思うのですが、中でも大きな挑戦と言えば、「Umi」「Dokoka」の2曲で導入した日本語の歌詞です。

Sit:たぶん、自分の中でずっとやってみたいと思ってたんですよ。だけど、やらなかったのは理由があって、バンドに一回、持っていったこともあるんですよ。でも、その時は、それをやろうってことにならなかった。COUNTRY YARDと言えば、英語でしょっていう。そのうち、日本語をやりたいという気持ちを忘れて、サウンドや英語の発音にフォーカスするようになったと思うんですけど、『The Roots Evolved』を作ったとき、自分の中で一個出来上がっちゃったんですよ。そこからコロナ禍になって、ひとりになる時間も多かったから、さっきも言ったようにやりたいことを見つけようとしながら、それを表現として、表に出したいという気持ちもずっとあって。自分の気持ちをうまく言葉にできない時は、絵を描いたりしてたんですけど、英語に翻訳する前の普通に書いた日本語の歌詞を、ふとメロディに乗せてみたんです。それがソロの入口だったんですけど、ただ、自分が単純に吐き出したい、日記みたいな言葉を並べて、自分勝手に自分の気持ちを表した歌を作りながら、でも、COUNTRY YARDでやりたいものとは違うという気がして。だけど、それをやらないと自分の中で次に行けなかった。今、振り返ると、それをやって、やって、やって、やりまくったからこそ、COUNTRY YARDで歌いたい日本語がふっと出てきたってことなのかな。「Umi」はまさにCOUNTRY YARDのことを書いているんですけど、ENTHのナオキ(G)が俺達のことを「海みたいですね」って言ってくれたことがあって。客観的につけられるタイトルが思い浮かばなかったから、その言葉をいただいたんですけど、たぶん、あの曲は海って言葉に導かれていると思ってて。完全にタイトルが決まる前にミヤモが弾いた大サビの直前のギターがわおーんって波しぶきっぽい感じで鳴っていて、あの曲は海を感じさせるんですよね。それぐらい適当と言うか、ラフに作った曲だけど、けっこう壮大な曲になったと思います。

──つまり、日本語の歌詞を書くにあたっては、日本語だからと意識せずに自然に自分の中から出てきた言葉を書いた、と?

Sit:そうですね。たぶん、2〜3年前に「Umi」「Dokoka」を歌っていたら、自分の中に照れがあったと思うんですよ。でも、その照れすらもなく、普通にその言葉を必要としていたと言うか、現場でやっていることとか、自分達がこの2年間、やってきたこととかを照らし合わせて、「俺達はこうだけど、みんなはどんな感じ?」と問いかけるような曲だったりするから、「Dokoka」は。


──今後、日本語の歌詞は増えていきそうですか?

Sit:書きたいと思ったらすっと書くでしょうね。でも、日本語にするって、理由があってやってこなかった人間からしたら、自分の内側をオープンにするって意味では、カッコつけられないところではありますからね。書くとしたら、そのままの気持ちを書きたいと思いますね。

Asanuma:でも、自然な流れだとは思いますけどね。20代の頃は日本語の曲なんてやりたくないと思ってましたけど、いろいろ経験してきて、一緒にやっているメンバーが表現したいことがそれなんだったら、そうなんだなという感じですね。もちろん、聴かせてもらったものが素晴らしかったからなんですけど、それはCOUNTRY YARDじゃないんじゃないというのはまったくなくて、そういう固定観念がいろいろなものを悪くしていると思うから、Sitのソロもその前に聴いて、日本語でもすごくカッコいい表現をするってわかってたんですよ。だから自然でしたね。

Miyamoto:もう単純にCOUNTRY YARDにおけるすべてのことを、ヤバいか、ヤバくないかで判断するようになっているから、良かったら何語でもいいでしょうって思います。「日本語を持ってきてみたんだ」って言われて、聴いてみたら、単純にヤバいじゃんってなったし、ちゃんとSitの歌だったし。もちろん、抵抗がある人もいると思うし、新しい挑戦に感じる人もいると思うんですよ。でも、自分的には全然、たいしたことではないと言うか、COUNTRY YARDの新曲、ヤバいよって言えるかどうかがバンドとしてすべてなので、歌のハマりも気持ちいいし、超いい曲だねってさくさくと進んでいったし。だから、あんまり日本語というトピックは自分の中ではそんなに大きくないんですよ。みなさん、そこに着目してくれるけど、いやいや、全体にカッコいいロックですよって、それだけなんですけどね。

──歌詞について、もう少し聞かせてください。今回のジャケットのアートワークは1曲目の「River」からの連想なんじゃないかと思うんですけど、その「River」と2曲目の「Where Are You Now?」の歌詞は、ともに魚の視点から書いていますよね?

Sit:自分達が川の流れに逆らっていると言うか、鮭の遡上をイメージしていたんですよ。「Where Are You Now?」は「River」にひきずられるように書いたんですけど、自分のこの2年を振り返りながら、ファニーに描きたかったんです。絵本の物語みたいにコミカルに描いて、乗り切りたかったんですよ。そこから自分でいろいろなことを決めて、海に出ていくっていうのが、「River」「Where Are You Now?」、そして3曲目の「Umi」の流れなんです。ここ最近の世の中の出来事を川の流れにたとえるならって感じで、必死にヒレをかいて、泳ごうとしていた自分達とか、でも、流されてしまった自分とか。ただ、1曲の中にそれを全部詰め込むのはすげえ難しいんですよね。だから、「Dokoka」で“一つじゃ表せない月日 事”と歌っているんですけど、音楽ってそんなような感じだと思っていて。それを届けるのも住所がある場所じゃなくて、ハートなのかなって。

──「Dokoka」の“届け先は住所ない場所”という歌詞は、そういう意味なんですね。

Sit:最終的に11曲を並べてみると、ちゃんと物語になっている。ホンゴリアンさんもそれをキャッチして、ああいうジャケを描いてくれたんだと思います。

──サブスク時代に敢えてアルバムとしてリリースする意味がちゃんとある、アルバムらしいアルバムになっているわけですね。

Sit:そう、壮大なんだけど、すごくきゅっとしているんですよね(笑)。

取材・文◎山口智男
撮影◎hiro itou

5thフルアルバム『Anywhere,Eveywhere』

2022年10月5日リリース
【CD】PZCA-100 / ¥2,750(incl. tax)
01. River
02. Where Are You Now?
03. Umi
04. One By One
05. Mountain Path
06. Alarm
07. Two Years
08. Life
09. Ghost From The Last Train
10. Strawberry Days
11. Dokoka


■<レコ発ツアー>

10月14日 東京・渋谷WWW
10月29日 栃木・宇都宮HELLO DOLLY
11月04日 香川・高松TOONICE
11月06日 大阪・ANIMA
11月13日 愛知・名古屋RAD HALL
11月20日 宮城・仙台MACANA
11月22日 青森・弘前KEEP THE BEAT
11月23日 岩手 ※会場名後日発表
11月27日 新潟・新潟GOLDEN PIGS RED
12月03日 愛媛・松山W STUDIO RED
12月04日 福岡・福岡CB
12月09日 神奈川・横浜FAD
12月11日 静岡・静岡UMBER
12月18日 東京・渋谷WWW X


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