【インタビュー】令和に異彩を放つ“きばやし”「死なないでいてくれたら、また私の曲でなんとかしてやる」

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2000年生まれのシンガーソングライター・きばやしが、2nd EP『うつしよ』をリリースした。装飾や余計なギミックのない、ストレートで胆力のある歌を歌うきばやしは、令和の時代に明らかに異彩を放つ存在。昨年11月に発売された1st EP『生活』では、日常の出来事を詩情豊かに表現した歌詞、スケールの大きなメロディ、そして日本歌謡史を彩った歌姫のような凛とした歌声の早熟さに度肝を抜かれたが、“感情”にフォーカスしたという『うつしよ』は、彼女のポテンシャルをより伝える作品である。“うつしよ”とは「現在生きている今この世」を意味し、生きることや人を愛することといった人間のコアを、彼女ならではの純粋かつ鋭い視点から描いた圧倒的な包容力のある全6曲は、同じ時代を共に生きるきばやしから「あなた」へと捧げる願いのようだ。聴く人の心を癒すとともに勇気づける今作『うつしよ』について、そして音楽との関わり方や創作の源など、幼少期からさかのぼり幅広く訊いたBARKS初インタビューを届ける。

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■メラメラ燃える何かが、人よりすごくある

──この時代に出会えるとは思ってもみなかった、加工のない、剥き出しの、生々しい歌を歌うシンガーに出会えて驚きと嬉しさを感じています。きばやしさんがどうやって形成されたのかを知りたいんですが、小さい頃から音楽は身近にあったんですか?

きばやし:親が運転が好きで、小さい頃からオリジナルのプレイリストみたいなものを作って車の中でかけて歌ったりしていたので、音楽が好きな家庭ではあったと思います。だけどどちらかというと、私が“音楽”を意識していたというよりは、音が出るものや、色がある芸術作品が単純に好きで興味があったというか。小さい頃はおもちゃのピアノでテレビのCMを耳コピして弾いてお母さんに披露したり、遊びの一環として楽しかったんだと思います。大きくなるにつれてだんだんできることも増えていくと、歌を歌ったりギターを弾いてみたり色々試していく中で、オリジナルを作っていきたいなって思うようになってここまで来た、という感じですね。

──最初に作ったオリジナル曲って、いつどんな曲を作ったんですか?

きばやし:高校を卒業したあと音楽の専門学校に通ったんですけど、入ってすぐに「望んでたものじゃなかった」って思っちゃって1ヶ月くらいで学校行かなくなっちゃったんですよ(苦笑)。思ったよりもスローペースというか、私はもっと熱中したかったんですけど、初心者の方もいるからそこに合わせいといけなくてもどかしい思いをしたんです。それで、自分が音楽にもっと熱中するにはオリジナル曲がないといけないのかもしれないと思うようになって。最初に作った曲は、高校生の時に付き合ってた彼氏のことを書きました。彼は感情をコントロールするのが苦手な人で、でも私はその人のことが好きだったし、その人と付き合ってた時期が暑い夏だったりしてとっても記憶に残っていて、個人的なことなんですけどずっと書きたくて。「まだ」っていうタイトルの夏の曲です。この曲ができたのが(学校に)入って2ヶ月くらいの頃で、ちょうど学校主催のショーケースライブがあったので初めて披露したら割と講師の方から好評だったので、「やっぱり作ってみようかな」って、そこから色々とオリジナルを作っていきました。

──当時からそれだけ音楽に対するモチベーションが高かったんですね。

きばやし:そうかもしれないですね。学校に通ったことも後悔はしてなくて、担任の先生は「きばやしは才能がある」って私のことを気に入ってくださって、最後まで諦めずにサポートしてくださったおかげで学校は無事に卒業しました(苦笑)。先輩達にライブに出たいんですってめちゃくちゃ言いまくって、卒業した先輩のレコ発に誘ってもらって19歳の時に初めてライブハウスに出演したので、今に繋がることもいっぱいあります。



──当初からライブ志向が強かったんですか?

きばやし:具体的な目標とか以前に、とにかく前に進まなきゃっていう焦りがあって。身近なところから始めていった結果、とりあえずライブに出よう、とりあえず外に出ることが先決かもしれないって思っていました。それでそのライブに出るまでにセトリが組めるくらい曲を作っていったんです。カバーは絶対にやらん!って思ってたので(笑)。

──今はYouTubeでもたくさんカバー動画をアップされてますけど、当初はオリジナルにこだわっていたんですね。





きばやし:私は私の音楽をやりたい、っていう気持ちがまずありました。今は、多くの人に見てもらうためにカバーは必要だし私に合う曲も絶対にあるからカバーもやってるんですけど、その頃は視界が狭くて(笑)。まずは自分の曲で自分の闘い方を覚えたかったんです。

──音楽を通して何か言いたいことがあったんですか?

きばやし:何かのトピックを音楽で伝えて人の気持ちを動かせたならっていう気持ちは今はもちろんあるんですけど、最初は「作りたい!」「出したい!」みたいな衝動のほうが勝ってて。なんて言うか、体力とは別の精神的なエネルギー量みたいなものが人よりすごくある自覚があるんです。メラメラ燃える何かが(笑)。綺麗なものでもないと思うんですけど、それを外に出さないと疲れちゃう自分がいて、逆に何もやる気が起きなくなってきちゃって次のエネルギーが出てこないという感じです。それで最初は、片っ端からとにかくたくさん書いて色んな人に聴いてもらって「いい」って言われたものだけを残していって。そこから、人はこういうものを求めているけど、こういうものは別に求めていないんだなって、なんとなくですけど少しずつわかるようになってきたので、今は、自分が興味のあることを元に音楽で人に伝えることをメインに書いています。

──人から興味を持たれる/持たれないって、どういうものか言葉にできますか?

きばやし:曲によると思うんですけど、私の気持ちだけをぶつけてるものはあんまり共感は得られないというか。いい言葉を使っていいメロディをつければ褒められはするんですけど、共感されたり、いつも聴きたいとは思われないんだなって気づいて、そこからは人の視点に立とうとしてます。この人は何に悩んでるんだろう?とか、特定の人のエピソードを聞いて書くという練習もめちゃくちゃしました。なんでも独りよがりはダメですね(笑)。

──悟るのが早いですね(笑)。じゃあ、歌というものは人に聞かれることが大事だと捉えているんですね。

きばやし:そうですね。聴かれないと、書いた子たちというか書いた曲たちが、無縁仏みたいで可哀想な形で放置されるように思えちゃって。でもだったら、聴かれるための曲を書かないといけない。私に限らず、ミュージシャンが活動を続けていくにはやっぱり人に聴かれないといけないので、そこは大事にしたいと思っています。

◆インタビュー(2)へ
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