【インタビュー】TENSONG、新曲「A HAPPY RAINY DAY」に最初の志「アーティストになるということ」

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■今の僕らはアーティストではない
■聴いてくれる人の背中を押すことが正解


──今のエピソード然り、初ワンマンライブのタイトルが<アーティストミマン>であったこと然り、TENSONGは“アーティスト”に対して並々ならぬ思いをお持ちの印象があります。

たか坊:アートって形のないものじゃないですか。でも、形も正解もないものだけど、できる限り正解に近づきたいんです。だからこそ芸術と呼ばれるものを突き詰め続けられたらと思っているし、僕たちはそれでごはんを食べていこうとしている。それでも死ぬまでにアーティストの正解に辿り着けるかというと、たぶん無理で…。ということは、今の僕らはアーティストではない。でも、自分たちの音楽においては、聴いてくれる人の背中を押すことが正解であるってことがはっきりしているんです。

──なるほど。

たか坊:だから、自分たち以外の人からアーティストと呼んでもらうことで、アーティストになれるのかなと思っています。


▲拓まん(G)

──TENSONGがアーティストであるかどうかは、あくまでも聴き手が判断することであると。

たか坊:足りないところがたくさんあることを自分自身わかっていて。だからこそ、自分たちをアーティストだと断言できないというか。今の自分たち自身を「アーティストです」って言うのはカッコ悪いなと思うんです。僕らは小さい頃から音楽をやっているわけでもなく、大学の同級生がたまたまちょっとSNSに音楽を投稿して、それをたくさんの人に観ていただいたおかげで47都道府県ツアーも初ワンマンもできた。だから、聴いてくれるみんなと一緒に進んできた感覚があるんですよね。

拓まん:もちろん真剣に音楽をやっているとはいえ、周りにはすごい人たちがたくさんいるので、自分たちの実力が伴ってないと感じるんです。だからこそ俺らは“アーティストミマン”というか。

アルフィ:アーティストって、自分が作った作品を世界でいちばんいいと言えるような人だと思うんです。自分はまだまだ自分のDJや作るトラックがいちばんいいとは言えない。だから自分のことをアーティストとは言えないんですよね。

たか坊:ただ誤解してほしくないのは、自分の作品をいちばん愛しているのは俺ら3人で。

アルフィ:うん、それはもちろん。

たか坊:自分の作品が悪いと思ったことはないし、音楽をやっていることに後ろめたさがあるわけでもない。もっともっと突き詰められると思っているからこそ、「俺たちはアーティストだ」と堂々と言えないんですよ。初ワンマンが終わって、やっとスタートラインに立てた感覚もあるし。自分たちが少しでもアーティストの正解に近づけるように進み続けるから、みんなにも一緒についてきてほしいんですよね。


──“自分たちなりに真剣に音楽をやっていくんだ”という当時の強い思いが込められた楽曲が、「A HAPPY RAINY DAY」ということですよね。この曲は、サビで拍子が変わったり転調したり、展開が特徴的ですが。

たか坊:サビとサビ以外の部分は、もともとは別々の曲だったんです。

拓まん:サビを聴いたとき、本当に驚いて。「これ、どうやって曲にするん?」と聞いたら、たか坊が「「A HAPPY RAINY DAY」にくっつけようかな」って軽い感じで言っていて。その発想すげえなと思いました。

アルフィ:うん。聴いたことのない感じの曲だったので、とても衝撃的でしたね。“うわ、これすごいな”っていう感情がまず湧いて。

たか坊:それも技術の無さからなんですよ。拓まんが大学の広場で弾いたギターフレーズはめちゃくちゃ良かったけど、そのキーとコード進行でサビを作れんくて。当時の自分が唯一弾けたのがカノン進行(クラシック音楽「カノン」に由来するコード進行)で、それがうまい具合にハマったんです。そのときは3拍子とか2拍子とか4拍子とかも知らなかったんで、サビが3拍子になったのも本当に偶然なんですよね。

拓まん:転調するならキーの上げ下げは1度とか3度でやらないと、あまりうまくはまらないんですよ。当時のたか坊は音楽理論も全然わかってないのに、しっかり3度で作ってたんです。その直感がすげえなと思いました。あと、“馬鹿にすんなよ”ってサビの歌詞も、どんな時代を生きた人でも、若い頃に必ず一度は大人に対して思うことで。メロディにも歌詞にもたか坊の強みが出ているし、キャッチーさもある。そのふたつをガチンとひとつにして、細かいところを修正していったんです。

たか坊:サビ部分は本当に衝動的に作ったものなんですけど。バカな自分なりに一生懸命考えた結果、それに対する答えが出ないし、全然晴れ間が見える気配がないから、ああいう曲が作れたんだと思います。追い込まれていたからこそ作れたんだろうなって。今、同じような曲を作れと言われても、100%無理ですね。

──では、この曲に綴られているのは過去の感情?

たか坊:いえ、もちろん今も心に残ってます。でないと歌えないので。これは最近気付いたことなんですけど、「A HAPPY RAINY DAY」はすごく感情に左右される曲なんですよ。いつも同じ感覚で歌っているつもりだけど、そのときの精神状態で全然歌い方が変わる。たぶん気持ちが沈んでるときのほうが、ガツンとくる歌になる気がします。実は、先日の初ワンマンでこの曲を披露したとき、2番Aメロで歌詞を飛ばしたんですよ。

──そうだったんですね。

たか坊:この曲は絶対にミスりたくなかったから、その瞬間にすっごく萎えて。でも、萎えたけど慌てなかったんですよね、ミスった瞬間。冷静な気持ちで“ここからサビで挽回するしかねえ”と思えて、急にゾーンに入った感覚があったんです。それでガツンと前に出る歌になったのかなと思います。

拓まん:この曲は通しリハーサルを2回して、そのときも歌詞は間違えんかったのにね(笑)。

たか坊:ところが本番で歌詞を飛ばすっていう(笑)。ミスりたくはなかったし、結果論かもしれないけど、ミスって良かったのかも。ミスがなかったらうまく歌おうと頑張っただけで、あそこまでの感情は出せなかった。今まででいちばんいい状態であの曲を歌えた。でも、ミスをせず、いつでもどこでもこの感情を引っ張れてこそプロですよね。そういうパフォーマンスができるよう精進していきます。

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