【インタビュー】Dios、新章幕開けを告げるアルバム『&疾走』に精鋭たちの挑戦「3人で行くべき場所へ向かって」

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■一つの音から引き出せる情景が多い
■歌詞も音に込められた言葉を引き出す感覚


──それでは、曲作りの具体的な流れを教えてください。

ササノ:先にトラックを作って、それに歌を乗せるというのが基本フローです。

Ichika:トラック作りにも2通りあって、“僕がギターから作って、そこにササマリがトラックを乗せるパターン”と、“ササマリがトラックを作って、歌を乗せてから僕がギターを重ねるパターン”があります。そういう作業を各人が自宅で時間をかけて作り込みながら、「これはどう?」と何度かやり取りを繰り返していくので、3人が集まって「こうしようぜ」みたいな感じではないんです。

──じゃあ3人ともDAWを使って、各人で曲を作っていく?

ササノ:そうです。使っているDAWソフトはバラバラで、僕はエイブルトンLive 11を使っています。

Ichika:僕はスタインバーグCubase 12です。

たなか:僕もCubase。ただ僕は単なるマルチトラックレコーダーとして使ってる感じですね。


▲たなか(Vo)

──今年の頭に3人で曲作り合宿を行ったという話も聞いたのですが、その合宿時に作った曲もアルバムに入っているのですか?

Ichika:3人一緒に集まった機会に作ったのは……唯一、「また来世」が合宿で作った曲です。

たなか:その時は単純に、まとまった曲数を一気に作ろうと集まったんです。ただ僕は、2人とは別の部屋で歌詞を書いていたので、“合宿”というよりは“缶詰”状態に近かった(笑)。それでも、バンドっぽいことができたなっていう満足感はありましたね。

Ichika:音楽的には、限られた時間でたくさん曲を作ろうとしたので、シンプルでキャッチーなものが作れました。家で1人作業だと、どうしても細かい部分まで作り込んでしまって。その良さもあるんですけど、結果的に合宿では聴きやすい音楽を作れた気がしています。

ササノ:ラフを作りまくった日だったよね。

Ichika:そう、ラフ作りだね。それを各自持ち帰って、肉付けしていくというフローがいいなと思って。そうやって出来上がったのが「また来世」で、「花束」も同じフローで作っていきました。


──反対に、従来とは違うフローで作った曲はありましたか?

ササノ:「ラブレス」は僕のトラック先行で作っていきました。あと「自由」のスタートは、たなかなんです。

たなか:最初に僕が歌メロを作って。冒頭の頭サビの部分の原型を作って、そこから展開していきました。

ササノ:これがなかなか大変で。たなかから、シンプルなビートに歌を乗せたデモをもらったんですけど、コードもないし、小節の区切り感もすごく自由で(笑)。

たなか:一応弁明しておくと(笑)、あのデモをそのまま使ってくれというつもりじゃなくて、“こんな案があるから、これをいい感じでちぎって使ったり、何ならこのイメージでメロディも作り変えてもいいよ”っていうつもりだったんだよね。

ササノ:うん、雰囲気の提示みたいな感じだったんだよね。でも僕は馬鹿正直にそのままどうにか曲にしようと頑張って(笑)、それに対してIchikaが2~3パターンのアイデアを出してくれて。

Ichika:そういう曲の断片をTAKU INOUEさんに渡して、調理してもらったんです。


▲Ichika Nito (G)

──組曲のように展開が劇的に変わっていくのは、そういう理由だったんですね。

Ichika:「ここで転調して、急にカッティングを挟もうぜ」みたいな話をしたり、サビのパターンを変えてみたりしましたね。

たなか:ラッパーがやる“マイクリレー”のトラックバージョンというか、歌っている人間は同じだけど、セクションごとにビートメーカーが変わるみたいな曲を作りたくて。Ichikaもササマリも主張の激しい音楽家なので、そのあたりをもっとゴリゴリに出して、8小節、16小節ごとに、どんどんビートを変えていこうという意図で作りました。

──タイトル曲の「&疾走」も展開がユニークですが、この曲はそうやって作っていったのですか?

Ichika:ギターです。ナイロンギターでフレーズを作っていって、それを元にNagayamaさんにトラックを作ってもらって。

ササノ:その曲調が自分の中にはまったく無いものだったので、いやぁ燃えました。

たなか:楽しかったね。すごく新鮮で。サビのメロディは僕が作ったんですけど、AメロとBメロはNagayamaさんに提案していただいたものです。自分の引き出しにはないメロディで、いい意味ですごく気持ち悪い(笑)、とてもいい曲に出来たなと思っています。


▲ササノマリイ (Key)

──3人だけで作りながらも、意外な方向に曲が転んでいったようなものは?

Ichika:それで言うと「Struggle」っていう曲が……。

たなか:絶対言うと思った(笑)! これが最後に出来た曲なんですよ。

Ichika:この曲は“ギター vs ボーカル”みたいな形で作っていって、最後にササマリがトラックを付けてくれたんですけど、ササマリに渡したデータがギターとボーカルだけだったから、小節の区切りがわからなかったみたいで。普通、4小節単位で次のセクションが始まるじゃないですか。それがなぜかササマリは3小節目からドラムを入れていて。彼はそこが次のセクションの頭だと解釈して作っていて。

たなか:そう、ズレてたんだよ。

ササノ:もらったデータを聴いた時に、そこ始まりだと思って。“これが一番気持ちいい”と思う形でトラックを作っていったんです。

Ichika:でもギター的な意図とは違ったんだよね。ただ結果的に、他の人が聴いて違和感ないっていう話だったから、そういう面白いことあるんだと思って。

ササノ:そうやって、各々が“これが一番気持ちいい”という解釈で作っていくので、いびつなものにはなるんですけど、それもある種の化学反応で。

たなか:まぁ、そうね。カオスではあるけれども(笑)。

ササノ:そういう意味でも、本当に好き放題トラックを作らせてもらった曲です。ドラムだけで50トラックあるんですよ。流れの中で同じリズムパターンがこないように作っているし、サンプルもめっちゃ使いまくって。今回、いろんな方に制作を手伝っていただいて、そこで僕が得たもの、感じたものを、最終的にこの曲にすべて込められたかなと思っています。


──今の「Struggle」のエピソードもそうですが、例えばデータを受け取った時に、NGやダメ出しをして差し戻すことはないんですか? お話を聞いていると、どんなメロディやトラックが来ても、それを受け入れて、むしろどう生かしていくかという制作スタイルのように感じたのですが。

たなか:もちろん、単純に音楽的にイマイチであれば“良くないな”とは思いますけど、そういうことがあまりないので。2人が作るトラックは音の情報量がすごく多くて、一つの音から引き出せる情景が多いんです。だから歌詞を考える時も、トラックを流しながら“こうかな?”と、音に込められている言葉を引き出していくような感覚が結構あって。それはやっていて楽しいですね。

──なるほど。1枚の絵を3人で交代しながら描いて、完成させていくような感じなんですね。

たなか:ああ、それに近いかもしれないですね。

Ichika:だから自分より前に描かれたものをわざわざ修正することもないし。

たなか:最悪、上から塗り潰して描きかえればいいや、みたいな(笑)。

Ichika:そうそう(笑)。

──そこがDiosならではの音楽性につながっているのかもしれませんね。

たなか:確かに。そうかもしれませんね。

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