今が旬の男達

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Matchbox TwentyのRob Thomasは、まだ駆け出しの自分たちに突如降ってわいた名声について、非常に簡潔な考えを持っている。

2000万枚もCDが売れてしまったら、次の作品を出す時も、出る話題といえば“どうすれば2000万枚も売れるのか”ってことばかりさ。まるでバカのひとつ覚えみたいにね。まったく手におえないよ」とこのシンガーはやや自嘲ぎみに言う。

確かに彼の言うとおりだ。だがこの音楽業界には、経験則というThomasにも否定できない昔からの法則がある。『Yourself Or Someone Like You』のスマッシュヒットでシーンに浮上、続いて'99年最大のセンセーションと言われたあの曲でSantanaとのコラボレーションという非常にスタイリッシュな方向転換を果たし、その年のグラミー賞を総ナメにしたThomasにとって、結果的にMB20のニューアルバム『Mad Season By Matchbox Twenty』が、ニューミレニアムにおける最も話題性の高い作品の1つとなったことも、予想通りの展開なのである。

そう、我々マスコミはまったく愚かである。こうした出来事が、 弦のないギターでJim Croceの曲を弾く真似をしたり、『Footloose』のサウンドトラック盤に合わせてドラムを叩いたりして育ち、 ついこの間までは全く無名であったこの弱冠27歳のフロリダ人シンガーにどれほど大きなプレッシャーを与えているか、推し量ることなど到底不可能なのだから。

今やその最新作によって、Thomasをはじめ、ギタリストのKyle CookやAdam Gaynor、ベーシストのBrian Yale、そしてドラマーのPaul Douchetteもまた、好むと好まざるとにかかわらず、眩しいスポットライトの下に押し出されることとなったのだ。

このアルバムのレコーディングが始まった時、俺たちは不安になることなんて全然考えてもいなかった。周りの奴らから“恐ろしくナーヴァスになるだろう”って言われるまではね」。

ギタリストのCookと共にこのインタヴューに出席したThomasは、彼の言わんとすることを強調するようにジェスチャーを交えながら陽気な調子で語る。

“ナーヴァスになりませんか?”だってさ。 ああ、今はナーヴァスだよ。おかげさまでね

Thomasはバンドの1stアルバムがブレイクするとすぐ、これは社会現象に発展するだろうと予感したそうだ。そしてそのおかげで、皮肉にも彼はその後に来る精神的ストレスを回避することができたのだという。

1stアルバムがあんな風にバカ売れして、かえって色んなことがちゃんと見られるようになったのさ。あれは単なる偶然だった。そう思ったらプレッシャーもなくなったよ

Cookは自分たちの成功によって幾分不安な気持ちが生じたことを認めている。

このコマーシャルな世界では、時として物事が飽和状態を超えてしまうことがあると思うんだ」と彼は言う。

そして、その状態が長く続けば続くほど、人は何か大切なものを失ってしまう。もちろんこうなったのは俺たちの音楽や曲のクオリティが評価されたからなんだけど、でもそのせいで俺たちは全員、次に続くものを作らなきゃいけないというプレッシャーを少なからず感じてしまったのさ

アルバムをリリースしてバカ売れさせるためには、バンドと作品、ライヴ、マネージメント、レーベル、ファン、それから流行を的確にキャッチする感覚が必要だ。それから、自分のバカな姿がSpin誌に載ったりしないよう、神に祈らなきゃならない

Thomasは感慨深げに言う。

毎朝起きたらまず、その日1日を何とか無事に過ごすことを考えるんだ。日常生活の中には、人の運命を変えてしまうような出来事が驚くほど沢山潜んでるわけだからね。確かに、基本的には俺たちはいいアルバムを作ったと思ってるけど

彼はこう指摘する

だけど、それだけじゃ1000万枚も売れないさ。だって、いい作品を作ってるバンドなら何処にだっているだろ

とはいえやはり、MB20の巨大な成功が、単に天から与えられた宿命や適切なマーケティングにによるものだけではないことは明らかだ。音楽自体が一般大衆の心の琴線に触れるものでなければ、デビューしたての新人がこうした驚異的な売り上げを記録するなどということはあり得ないのだから。

そして、次に人々が強く関心を抱いているのは、“彼らの最新作『Mad Season』は、デビューアルバムと比べて音楽的にどうなのか?”ということだろう。それについてのCookの見解は非常に冷静である。

バンドの成長の跡が見られる作品さ。月並みに聞こえるかもしれないけど、俺たちが目指したのはまさにそこだったんだ。俺たちはあの頃より大人になった。俺たちの音楽も大人になった。歌詞のアイディアなんかは1stアルバムと似てる部分も多いけどね。でも、全体的に見て凄く成長したと思う

一方、Thomasは嬉しそうにこう説明してくれた。

一番大きな違いは、1stアルバムをレコーディングした時には、“Matchbox Twentyの音楽ってどんなのだろう? もしこのバンドがアルバムを作ったら、一体どんなサウンドになるんだろう?”と思ってたってところかな。もちろん、(1stアルバムも)できる限りいい作品に仕上げたつもりだけど、それでもあの時は自分たちがどんなバンドなのかって部分で、ほとんど手探り状態だった。その後ツアーに出て、同じ部屋で寝泊まりして、お互いを守り合って、喧嘩もして、笑い合って、おまけに毎日一緒にプレイして…今度のアルバムのサウンドはこういった経験を反映したものになってるんだ。5人の声が同時に1つのノイズを作り出している。レコーディングが終わった時、これがMatchbox Twentyのサウンドだって思ったよ。全員が持っている力を十分に出せたからね

初期の頃のバンドを振り返りながら、Thomasは笑う。

ただ単純に俺たちのロックは最高って思ってた時期もあったんだよね」と彼は明かす。

あの頃、自分たちのショウを毎回録音しててさ。それを今聴いてみると、“うわっ!何だこれ”って感じ。俺たちよくここまで来れたよなあ、ってね。いい音楽を作りたくて始めて、結果的にローカルバンドにしてはなかなか上出来だってところまで辿り着いたわけだからさ


ここで決定的な違いが1つある。ほとんどのローカルバンドには、フロントマンが音楽界の伝説的人物とコラボレーションし、それがグラミー賞を総ナメするなどといったことはまず起こらない、ということだ。

かの有名なSantanaとの仕事について、Thomasは当初その申し出を辞退しようとしたことを率直に打ち明けている。

自分の持ち味を活かしてああいうプロジェクトに参加するってことに少し不安を感じたし、怖かったんだ。特に俺の持ち味ってのは…

ここで話を止めて少し考え込む。

あの仕事が舞い込んで来たとき、俺たちはまだバンドとしての持ち味を作り上げている最中だった。だから、俺自身、もの凄く音楽的に脆い状態だったのさ。けど、幸運にもメチャクチャかっこよく仕上がった。結局、俺個人が他のミュージシャンと音楽を作る、ただそれだけのことだったんだよ。最初からそれが分かっていれば良かったんだけど

「Smooth」はSantanaのミュージシャンとしてのキャリアを復活させた媒介として高く評価されている。だがThomasはその一端を自分が担ったという名誉に多少おじけづいているという。

俺たちがやったのは付け合わせの野菜みたいなもんだよ。メインの肉の部分はあくまでもSantanaと彼のバンドさ」と彼は言う。

俺たちは玄関。玄関をそこそこ奇麗にしておけば、他人が家の中に入った時に“うわぁ、見ろよ! すげえ部屋だぜ!”ってことになるだろ?


Cookは、「Smooth」のおかげで昨年のメディアの感心が強烈にThomasに集中したことについて、Matchbox Twentyの残りのメンバーは特に動揺も嫉妬も感じていないと言う。

何かあったとしても、せいぜい前以上に奴をからかうくらいさ」とこのギタリストは肩をすくめる。

もちろん、奴のことはもの凄く誇りに思ってるよ。『Mad Season』のセールスにだって当然影響するだろ? 奴が今まで以上にメディアに露出するようになったってことがさ。だから、俺たちにとっては何の問題もないよ。むしろ大歓迎だし、皆でジョークにしてるくらいさ

昔から、どんなバンドにとっても、巨大な成功は同時に批判という諸刃の剣を連れてやってくるものである。 一部の評論家たちがMatchbox Twentyをよくあるライト級ポップバンドの1つだと考えていることを、ThomasとCookは十分に理解しているようだ。

もし世の中がMatchbox Twentyについて分かっていない点があるとすれば、それは“深さ”だ」とCookは主張する。

評論家たちは皆、俺らのことが気に入らないみたいだけど、まあ、それがポップバンド成功の法則なんじゃないの、多分。いわゆる“キャッチー”としか評価されない曲で成功しても、本物のイノヴェーターに与えられるような名声を得ることは絶対できないんだよ。メディアに叩かれることはしょっちゅうあるけど、俺たちには何でだか理解できないね

Thomasは違った意見を持っている。

世の中がMatchbox Twentyについて分かってない点があるとすれば、それは俺たちが意外とナイスガイだってことかな」と彼は力説する。

もし俺たちのことを全然知らなくて、見たこともない人が、俺たちの成功の話を聴いたら、多分こいつらバカだと思うんだろうね。“お前ら自分のことをすげえ奴だと思ってんだろ。世界は俺のもんだって勘違いしてるんだろ”ってね

Thomasの言うように、こうした状況の中ではどんな人でもパラノイドに陥ってしまうかもしれない。

俺は毎日、朝から晩まで自分の言動について謝罪しまくっているんだ。ビデオを見たりラジオ聴いたりしただけでも、多分そういう気分になるだろうね

だが、彼はこう付け加える。

バンドとしては、俺たちは自分たちの音楽をプレイすることに夢中なんだ。俺たちに直接会ったり、ライヴを見たりすればそれは分かってもらえると思うよ。俺たちにこの仕事をさせているのは、音楽をやりたいって気持ちだけさ。それ以外のことはすべて、俺たちをステージに上げるための必要悪だ」。少しの間を置いて彼はこう付け加えた。「自我が強くなければ、この仕事はできないね

by Wendy Hermanson

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