愛すべきインディー・ロックのベテランたちが織りなす珠玉の一夜

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愛すべきインディー・ロックのベテランたちが織りなす珠玉の一夜

 

Yo La Tengo
Yo La Tengoにとって、15分以上にもわたる「Night Falls on Hoboken」でセットをスタートさせることはリスクだったろう。これは観客の集中力をすぐにそらせてしまうようなナンバーで、オープニングとしては一般的ではない。しかし、この風変わりなトリオは、2000年のトップ10アルバム候補作『And Then Nothing Turned Itself Inside-Out』をサポートするライヴを今年前半にスタートさせてから、常にそのリスクをとり続けてきた。そしてそれは、インディー・ポップの穏やかな部分と尖った部分を交互に聴かせる機会となり、ショウのトーンを心地よいものにしているのである。

ドラマーである妻のGeorgia Hubleyが、眠たげに揺れる子守歌のように「Night Falls」を歌いはじめると、ギタリストで夫のIra Kaplanはすぐさま頭を超現実的にするサイケデリアへと曲を転換した。彼がフィードバックにマレット、ヘヴィにリヴァーブを効かせたリフや電子音で技巧を凝らす一方で、ベーシストのJames McNewはソフトで安定したベースラインをキープする。続いてMcNewが星をちりばめたようなライティングの下に加わると、Hubleyはドラムキットをブラシで操り、Kaplanはオルガンに移動して分厚いコードを響かせる。そうして、音楽で描く夕暮れが暗闇へと溶けていくころ、(時として)穏やかで優しい『Twin Peaks』のサントラのようなその夜のショウにとって、これが完璧で決定的なオープニングだったことが明白になるのだ。

こうしたヴァイブはRoxyでのショウの大半で維持され、最新アルバムの最もおいしい部分をフィーチャーしながら進行した。Stereolab風の「Let's Save Tony Orlando's House」ではGeorgiaのソフトなマシン操作が曲をリードし、自由な精神に満ちた「We're An American Band」ではアシッドロックがジャズコンボに取り憑いたようなフリーキーな展開を見せた。Hal Hartleyの映画『Amateur』でフィーチャーされた「Shaker」の煉獄のような鼓動、Jonathan Richmanっぽい「Should I Cry」、そして教会風のオルガンバラード「Autumn Sweater」へと、バンドはシフトアップしていく。さらに、George McCraeのディスコヒット「You Can Have It All」の発溂としたカヴァーでは、白人少年によるSoul Train風フラダンスも披露され、ばかばかしくもチャーミングなお楽しみを提供した。だが、その夜のハイライトは、アルバム『And Then Nothing Turned~』からの拡張された、浮遊する音楽の光景であり、「Tears Are In Your Eyes」「The Crying Of Lot G.」を含む一連の作品はゴージャスなまでに抑制が効いていた。ここで展開された甘いささやきは、Yo La Tengoのノイジーで、“イージーなスリルを無料で皆さんに”という性向よりもはるかに効果的だ。そして退出する観客に祝福の響きを与えたのは、幸福なことにフィナーレの静かなシャッフル「Our Way To Fall」だった。

Go-Betweens
オーストラリア、ブリズベーン出身のRobert ForsterとGrant McLennanは、それぞれのソロキャリアでもソングライターとしてある程度の成功を収めてきた。しかし、彼らがお互いをより輝かせる最高の仕事をするのは、Go-Betweensの中でシンプルな殊玉のメロディに血肉を通わせるときだ。10年以上前に出た2人のデュオとしてのファーストアルバム『The Friends OF Rachel Worth』は、Go-Betweensの再結成を継続させるための強固な基礎を築いた作品であった。McLennanとForsterが交互にリードヴァーカルをとるRoxyでのセットは、3パートのハーモニーを多用した本質的、かつきらめくようなポップの至宝と言えるものだった。McLennanの「Haunted House」は、メランコリーの淵で危ういバランスを保った切ない叙情詩といった小品。また「Headful Of Steam」「Bye Bye Pride」「Street Of Your Town」などのリッチでフックに富んだ傑作は、「Magic In Here」のようなアコースティックな輝きを放つ新曲と無造作にミックスされていた。あらゆる曲で包み込むように暖かく快適な伴奏が付けられていたが、残念なことにツアードラマーのMatthais Strzodaが前の週にバンドを脱退してしまったために、2人のリードヴォーカルにカウンターラインを提供するのはベーシストのAdele Pickvanceのみとなってしまった。

Yo La Tengoと同様に、Go-Betweensのセットも少ない曲を長時間演奏する傾向にあった。最後は新曲の「Surfing Magazines」で弱々しく終わったが、その前にForsterが“VH-1でいつでも54位の曲”と紹介した「Spring Rain」こそフィナーレにふさわしい曲だ。だが、長らく待たれていた再結成だっただけに、記念すべき瞬間を少しでも長く続かせようとした彼らを許すことにしよう。

 

 

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