メガヒットをめぐる狂騒の中で着実に成長を遂げた彼らの快進撃インタビュー!【前編】

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「1stの成功は運命のいたずらさ…」

メガヒットをめぐる狂騒の中で着実に成長を遂げた彼らの快進撃インタビュー!【前編】

 

 

Matchbox 20がMatchbox Twentyに“改名”して以来、Rob Thomasと仲間たちは1000万枚のアルバムをアメリカ国内で売り、Rob自身はSantanaとのコラボレーションによってグラミー賞を3つもゲット、2ndアルバム『Mad Season』を完成させていた。バンド名の変更とRobのメガスターダムにもかかわらず、彼らはきちんと地に足をつけ、現実離れせずに、バンド内のいざこざもなくここまでやってきた。LAUNCHはそのRobともうひとりのメンバー、Kyle Cookから興味深い話を聞くことができた。2枚目のジンクスをいかに乗り切ったか、アルバム・タイトルの由来、成功の秘訣は、などなどだ。


――デビュー・アルバムと『Mad Season』の違いを挙げてくれますか?

ROB:このバンドは、1stアルバムを作った時点でまだ2年しか活動していなかった。最初ギタリストたちを見つけてきて、「さて、Matchbox Twentyの音というのはどんな音だろう」と考えるところからスタートしているんだ。だから、1stアルバムはあの時点で作ることのできた最高の作品だとは思うけど、まだまだお互いの力を試しながら、一緒に何ができるかを模索してる最中だったんだ。でもその後ツアーに出て一緒に生活することによって、ケンカしたり、笑ったり、遊んだりしながらいろんなものが見えてきた。そして、いよいよ『Mad Season』を作る段になり、「そうさ、これが俺たちの音さ」ってものがしっかり見えてくるようになったんだ。5人の声がひとつになって大きなノイズとなる。そこからでき上がった作品は、5人全員の意見を反映させた、今のMatchbox Twenty以外の何ものでもないんだよ。

KYLE:逆に、1stアルバムと変わらないところ。それは、曲も大事だけどバンドであることの大切さだ。その基本姿勢の中で、僕らは成長を遂げたんだ。とても月並みな言い方かもしれないけど、年をとったぶん、音楽も成熟した。ただし今回はアレンジメントのほうでいろんな実験もしてみた。1stアルバムはどちらかというとシンプルにとどめて、ロックバンド的な要素を重視した。でも今回はオーケストレーションやホーンセクション、ちょっとエキゾチックなギターサウンドなどに凝ってみたんだ。歌詞は1stに近いかもしれないけど、いろんなところで大人になったと思うよ。


――アルバムタイトルの由来は?

ROB:アルバムの中に“Mad Season”という曲があって、それは、僕らが最初の何年かに体験したことを、ツアーバスやファンといった明らかな表現に頼らずに言い表そうとした結果なんだ。よく、ツアーがいかに厳しいもので、バンドをやってるのが辛いっていうような歌を歌ってるバンドがいるけど、大嫌いなんだ、そういうの。“Mad Season”は一種のドキュメンタリーさ。やればやるほど何かを学び、自分がいかに無知であるかを知る。「自分がバカに思えてきた、けれどそれは時間の問題さ」という歌詞があるけど、実際、バンドを始めた頃は自分は何でも知っていると錯覚しているんだよね。でもやればやるほど、自分は何も知らない、まだまだ勉強することがいっぱいあるって気づく。すべての曲を書き終えた時点で、“Mad Season”がアルバムタイトルにもぴったりだと思えたんだよ。

KYLE:僕にとっては、嵐のように押し寄せてくるマスコミと、すべての政治的プロセスをひとまとめにしたような意味かな。つまり、僕の人生なんだけど、もはや僕ひとりのものじゃなくなったということ。


――あれだけ大ヒットしたデビューアルバムに続く作品ですから、はっきり言ってナーヴァスになりました?

ROB:僕らとしてはそんなことも考えずにとりかかったんだ。ところが、まわりから「ナーヴァスになってない?」ってしつこく訊かれるようになって、そのうち「ああなってるよ、きみのおかげでね。ありがとう」って感じ。1stアルバムの成功は、ある意味、運命のいたずらだった。すべての星のめぐりが完璧だったというか、ああいう成功は二度と望めないと思う。成功にフォーマットはないわけで、あれは本当に偶然だったというか、そういうふうに考えれば自然とプレッシャーは和らいでいくよ。僕らはただ、その時のベストを尽くして作品を作ることしかできないわけで、あとは運に任せる。そしてその運は、他人次第なんだよね。でも、1stアルバムと同じ成功を望まれているとは思えない。そりゃ2000万枚売れたよ。でも、次のアルバムを作り終えてまで、なぜ前のやつが2000万枚売れたのかしか話せないようなら、そいつはよっぽどのバカだね。重症のバカ。他にも言うべきことはたくさんあるだろうって。

KYLE:もちろんプレッシャーは感じるよ。「いいかげん、飽きられるんじゃないか。こんなに売れちゃって、最低だ」って思うこともある。根はコマーシャリズムにあるわけだから、露出過多だってありえるわけだ。僕のいちばんの心配は、これでバンドの寿命が縮まるんじゃないかってことだけ。でも、つまるところ、クオリティの高い曲さえあれば大丈夫だと思う。その点僕らには良い曲も良いアレンジもある。けど、やっぱり多少のプレッシャーを感じたことは否めないよ。



――結成当時のコンサートは今と比べるとどんな感じでした?

ROB:当時のビデオと今のビデオを比べてみると、きっと、ほとんど変わってないと思う。不本意な答えで申し訳ない! 笑えると言っちゃ笑えるけどね。自分たちは最高のロッカーだと信じてた頃があって、当時のビデオを見直すと「ワォ!」って思う。だいぶ成長したよ。ついこの間のオーストラリア・ツアーではほとんどのショウをビデオで撮ってあったんだけど、音楽的には「いいショウだね、いいバンドだね、まとまってるね」と思える。最初の頃は、とにかくお互いに絡むのに必死で、そのうち上手なローカルバンドぐらいまでにはなれた。最初の数年なんてそんなもんだよ。

KYLE:相手にインパクトを与える目的でいろんな大袈裟なこともやったよ。「俺はロックスターになりたいんだぁ!」って気持ちでドラムから飛び降りたり、そこらへんにあるものを蹴ってみたり。それに比べて今はだいぶ落ち着いたというか、音楽で勝負したいって気持ちになってきてる。肩の力を抜いて、自分のやってることに自信さえ持てれば、そんな必死にならなくても何とかなるんだよ。


――自分たちなりに、どうしてここまで売れたと思いますか?

ROB:アルバムが売れるためにはバンド自身、アルバムそのもの、ライヴ・パフォーマンス、マネージメント、レコード会社、ファン、そして今のトレンドのすべてをひっくるめたものが作用しあうことが必要だ。あとは「SPIN」誌とかにバカみたいな記事を書かれないように願うことしかできない。結局、僕ら自身は朝起きたら、今日も1日がんばろうって思うだけなんだよ。でも、その1日の中で本当にいろんなことが起こりえて、気がつけば、違う方向に向かって歩き始めてることもある。もちろん、売れた要因のひとつは僕らの努力だと思いたい。けど、僕らだけの力じゃ、どんなにいいアルバムを作っても1000万枚は売れないんだよ。だって、世の中にはいいアルバムを作ってるバンドはたくさんいるもの。

もちろん、すべての原点は良い作品にある。でも次はどこに行けばいい? もともとレコード契約が欲しいのも、良い作品を作りたいからでしょ? でもその後は、いろんな要素が上手に絡むのを願うしかないんだ。一度音楽業界に足を踏み入れると、なぜ、グレイトなバンドが売れてないのかわかるようになってくる。マネージメントが仕事をしてない、レコード会社が無理を強いる、バンドがやらなくてもいいことをやってる。そんなことまでしなくてもいいじゃない、ってケースはよくあるよ。目の前でそういうことが行なわれるのを見てしまうと、なんだかすっごく気の毒になっちゃうんだよね。


KYLE:ここまでの成功を予想した人はいないはずだ。僕だって、最初にデモ・テープを聴いた時は、自分が求めてる音とは違うと感じた。でもプロデューサーに会っていろんな話しをして“3 a.m.”を聴いた時は、シンプルな中にも惹かれるものがあった。Robってそういうところの才能はすごいんだ。メロディーも良かったし、歌詞も最高だった。良い曲は聴き手の心に訴えかける。僕らはそういうバンドだと思っているよ。会話のような歌詞で相手に語りかけ、それは実際、メンバー同士の会話でもある。「そうそう、俺もそう思った。こんなセリフ言ったことがある。誰かに言われたことある」っていうふうにね。


――自分たちが“成功”ではなく“大成功”していることを実感した瞬間ってありますか?

ROB:グラミーで賞を取れなかったことがあったんだ。その時はテレビ中継前の収録だったんだけど、一応取材を受けるだけ受けた後、みんなでごはんを食べに出ようとしてた。すると、誰かが僕に「John Foghertyが会いたがってるよ」って言うんだ。僕は思わず「なぜ? 俺殴られるようなことしたっけ?」って言ったよ。だって、その年彼はベスト・ロック・アルバム賞を受賞して、最高のカムバックを果たしてた。とにかく、彼は僕を見つけると握手を求めてきて、「ベスト・ロック・アルバムは君たちが受賞するべきだった」と言ったんだ。僕たちのことをすごく気に入ってるととも言ってくれて、正直、僕のことを知っててくれてるだけでもすごい驚きだったけど、マジ興奮したよ。

バンドをやってるとつい、自分たちとまわりにいる人間だけの世界を作っちゃって、いつまでたってもローカルバンドみたいな気持ちでいるけど、John Foghertyが僕のことを知ってる!って思っただけで胸が弾んで、「もしかして、俺っていい感じなのかもしれない」って思えたよ。これからは、評論家とかにめちゃくちゃ書かれても「俺はJohn Foghertyに気に入られてるんだもんね、どうだ!」って思えばいいわけだ!


KYLE:実感したことは何度もあるし、そのたびに度合いが大きくなっていくよ。テキサスで、生まれて初めて自分たちの音楽をラジオで聴いた時の感動は一生忘れない。大いなる目覚めだった。アルバムを出せただけでも大変なことなのに、今度はラジオでかけてもらえるなんて! 車の中は大騒ぎだったね。まだまだビッグと呼ぶにはほど遠かったけど、ああやって全員で一緒に感動できたのは本当に嬉しかったよ。

後編に続く】

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