夢見ごこちに、スキルフルに…

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夢見ごこちに、スキルフルに…


MISIA+DCT
「I miss you~時を越えて~」

BMG ARISTA JAPAN
BVCS-29908 1,050(Tax in)

1. miss you ~時を越えて~
2. miss you ~時を越えて~Gomi Remix


昨年2000年11月23日、札幌・真駒内アイスアリーナを皮切りにスタートしたアリーナ・ツアー<THE TOUR OF MISIA 2001>。全国8都市17公演を行ない、最終日の1/28の横浜アリーナを迎えた。

MISIAのチケットは、なかなか手に入らない。そして、私自身、MISIAのライヴを観るのは久しぶりだ。デビュー直後のON AIR WEST、1stアルバム『Mother Father Brother Sister』リリース直後の赤坂BLITZ、そしてこの日の横浜アリーナ。3回目のライヴ拝見となる。

デビューから3年で横浜アリーナを即日満員にするMISIAパワー。

3年という年月。…長いようだが、1アーティストがここまで成長するには“絵に描いた理想”ではないだろうか。いきなりホールやアリーナクラスでライヴするミュージシャンもいないではないが、セールスと比例して順当にここまで昇り詰めたのは、ミュージシャンを大事にしているスタッフの証、そして、やはりMISIAの才能のなせる技なのか。

…なんて思いながら、グッズ売り場をのぞく。長蛇の列だ。そして、自分部の席を探してロビーをうろつくと、またもや長蛇の列。この列は…?と思ったら立見のための人の列だ。横浜アリーナのスタンド席2階一番後ろの廊下は、この開演ギリギリに入場させた立見の人で、ズラ~っと、そしてギッシリ埋まった。

お客さんは男女比にして半々。カップルが目立つ気がするのは、私だけか? 開演予定の18:00にはまだ始まらずに、アリーナ上空に、お腹に時計盤で時を知らせる巨大な風船の虫が飛んでいる。そしてステージは内部が見えないよう、しっかりと幕が降りている。なにやら、これだけでも、このステージが壮大なパフォーマンスを示唆している。ただただMISIAが歌うだけのステージではなさそうだ。

18:25。幻想的な影絵――世界的に有名な影絵作家/藤城清治氏(小人が横笛吹いた絵が有名)による影絵を書き下ろし――の映写とともにMISIAの詞の朗読が流れた後、Snapの「I've Got The Power」が爆音で流れ、ステージ上方からスロープで2人が下りてくる。かなりの高さからだ。

幕は降りたままのステージに降り立った2人はそれぞれ白装束と黒装束で、ESCAPE ORIGINAL CINEMAさながらのパフォーマンスを見せる。

その後、白い剣士と黒い剣士が登場して殺陣を見せる。刀と刀が触れ合ってハデに火花散るシーンもあり、一体何が始まるのか?と思っていると、ステージの幕が少しだけ下りる。と思ったら、なんとMISIAとダンサー5人がそこ――そう、少しだけ下がった幕の向こう、ステージ上空にいるではないか!

MISIAは黒いヘルメットを被り、黒尽くめのマリー・アントワネットのようなドレスを着て椅子に座っている。…が微動だにしない。それに反して5人のダンサーがMISIAの周りを踊る。そうしながら、ステージが幕とともに降りてくる。ステージが地上に着陸すると、MISIAは立ち上がると同時に黒尽くめのドレスから抜け出し、真っ白な衣装で「Escape」を歌い出した。

なんともエンタテインメントなステージ! 一気に観客はステージへと引き込まれてしまう。

「Change for good」「tell me」「BELIEVE」「花/鳥/風/月」などをメドレー風に組み合わせ、ダンサーと合わせて踊りながらMISIAが歌う。

「恋する季節」「忘れない日々」ではステージでひとりとなり歌だけを聴かせる場面になると、やはり彼女の集中力が高まっているようで、プロのシンガーのスキルを存分に見せてくれた。

こうなると、いつも思うことがある。

それは、MISIAは歌うことが楽しくでしょうがないんだろうな、ということ。

それは、観客はもちろん、MISIAも自身の歌の世界にどっぷり真ん中に入り込んでいて夢見ごこちに、そして正確無比に歌っている、ということなのだ。スキルがあるから歌が快感なのか、快感がゆえにスキルが上がっているのか。ともかく、そんなMISIAを見ていて、気持ちがいい。

ダンサー9名によるDANCE SHOWを盛り込んだ後、「Everything」「陽のあたる場所」「つつみ込むように…」と大ヒット曲を連発披露して、会場の盛り上がりは頂点に。

MISIA+DCT
そして、ダメ押しとばかりにDREAMS COME TRUEの3人が登場。

まさか…!と思いつつ本人たちが目の前にいるのを確認すると、会場は沸点を通り越した盛り上がり!

MISIA+DCT「I miss you~時を越えて~」を披露した。ダンサーに混じってステージを駆け回り踊る中村正人と西川隆宏に、合いの手のように「MISIA!」と叫び盛り立てる吉田美和。そして、その倍の音量と数をもって「DCT!」と応えるMISIA。それは彼女のDCTに対するリスペクト度の高さを表わしているようだった。

アンコールでは、ハウスメドレーにアレンジされた「SWEETNESS」「The Glory Day」、そして「INTO THE LIGHT」で横浜アリーナの観客のノリをきちっと仕上げた後、2回目のアンコールで、MISIA作詞・作曲の新曲「時をとめて」を披露。

この曲はピアノ伴奏だけで歌うスローナンバー。ドラマチックな盛り上がりはないが、しっとりと濡れるような歌を聴かせてくれた。そして「最後にMISIAと呼んでくださーい!」と叫ぶMISIAと、それに応える横浜アリーナの観客。彼女らしいライヴの終え方だった。

本来ならば、彼女の歌だけで聴かせるのもいいのだろう。けれども、彼女が現在22歳である若さと、彼女の歌いっぷりに反して普段はとてもおっとりとした雰囲気から、このようにエンタテインメントに施されたステージは、彼女の歌と――スキルだけでない彼女のプライベートな一面を見せつつ、いい方向へと誘いつつ――うまく相乗効果となって魅せるライヴになっているようだった。

彼女が年を重ね、人生経験も豊富に積んだときに、MISIAただひとりで行なわれるライヴが観たい。それが叶うのは、まだまだ先のことだが。

文●星野まり子

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