ホストにトータスを迎えた3年目のオール・トゥモロウズ・パーティーズ

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ホストにトータスを迎えた3年目のオール・トゥモロウズ・パーティーズ
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「“Tur-toise”なんて聞いたこともないね」とRichard Lloydは言った

All Tomorrows Parties

99年以降、毎年4月にイギリス南部のキャンバー・サンズの保養施設で3日間にわたって行なわれるフェスティバル。保養施設には宿泊設備も完備されており、オーディエンスはそこに寝泊りしながら、リラックスした環境の中でライヴやアーチストとのコミュニケーションを楽しむ。毎回、一組のアーチストがホストとなってオーガナイズするため、出演アーチストはホストの趣味や交遊関係が大きく反映され顔ぶれとなり、それがこのフェスティバルを独自のものにしている。

'99年に行なわれた第1回目は、All Tomorrows Partiesではなく“Bowlie Weekender”という名で開催されている。ホストはグラスゴーのアコースティック・ポップバンド、Belle And Sebastianで、彼らが選んだ出演アーチストはFlaming LipsMercury RevJon Spencer Blues ExplosionStereolabなど。また、日本からもコーネリアスが参加した。

翌2000年にホストを務めたのは、前年のシークレットゲストとして登場したMogwaiだ。出演したのは彼らと同じグラスゴー出身のArab Strapや、交流の深いSuper Furry Animalsといったバンド。さらにベテラン勢ではSonic YouthWireも参加している。

今年で3回目と、まだ歴史の浅いフェスティバルだが、キャンバー・サンズはインディー/オルタナティブ・ミュージック好きの間では早くも聖地化しつつある。来年はスティーブ・アルビニ率いるShellacがホストを務める予定だ。さらに、フェスティバルのコンセプトはそのままに、Sonic Youthをホストに迎えたUS版All Tomorrows Partiesも今年10月にロサンゲルスのUCLAで開かれる。




Tortoise



Sea & Cake



Yo La Tengo



Autechre



Television

キャンバー・サンズなんて爆撃の対象にもならなかった海辺の町さ、とMorrisseyなら言いそうだ。それに英国ではビーチを楽しむこと自体に無理がある。だいたい誰が、夏でも変わりやすい英国の天気のもと、服を脱いで泳ぎたいものか。さびれたキャンバー・ビーチは、ポンティン旅行社が企画するベニヤ板製のヤシの木がおっ立っているマンガチックなホリデーリゾートくらいがお似合いなのだ。そういう所へMogwaiBelle & Sebastian、さらにはTortoiseまでがフェスティバル・コンサートを開いて盛り上げ、同時にオフシーズンのビーチに現金をもたらすというのである。

“Tur-toise”なんてこれまで聞いたこともないね」とTelevisionのギタリスト、Richard LloydはLAUNCHに語った。「音楽をやる正体不明の生き物ってとこじゃないの

そんなRichardのために説明すると、今年のAll Tomorrow's Partiesフェスティバルの責任者、Tortoiseはメンバーの多いシカゴのグループ。スタジオ・テクニックにギター・ノイズ、ジャズをフュージョンした音楽で、ポストモダンしか知らない批評家達をきりきり舞いさせた挙句、ポストロックというジャンルまで作らせた。これってロックでないロックということ? いわゆる「ジャズ」は勘弁してほしいという人向けである。いずれにしろTortoiseの多様な音楽性は、今週末行なわれるフェスティバルの出演バンドの選択を見ればよく分かる。英国からは、新生WARPレーベルの同朋であるBroadcast、Boards Of Canada、Autechre。そして時代は古くなるが、'70年代ニューヨークのアートロック・レジェンド、Television(この機会のために再結成)、オランダからベテラン・アナーキストのEx、これもまたベテランのスペース・ジャズ・スウィンガー、Sun Ra Arkestra(もちろん、はるかサターンからのお出ましだ)。

メインステージのオープニングを飾ったのはExだ。“がむしゃら”と“仰天”の中間のようなステージだった、と教えてくれたのはサセックスの分かりにくい道を迷わず抜けて開演時間に間に合ったラッキーな連中だ。ほとんどの観客にとって、All Tomorrow's Parties 2001の本当のオープニングは、ぎこちない平均点以下のU.S. Mapleだった。シカゴのノイズニックのグループで、Captain BeefheartとSwansを掛け合わせたような妙な感じ。U.S. Mapleのベースのないアートロック調のパフォーマンスはほとんど観客にウケず、たどたどしい演奏の合間に多少はうまい部分もあったが、多くの観客は第2ステージのAtmosphereというダークなヒップホップを聴きに行った。第2ステージが休憩時間に入ると、フェスティバルの司会Neil Hamburgerが、Red Hot Chili Peppersをダシに笑いを誘おうと空しい努力をしている。

そこへやっと身を乗り出したくなるアーティストの登場。Sun Ra's Arkestraである。Raの亡き後、グループを率いるのはリード奏者のMarshall Allen。観客が待ちわびたショウマンシップと活気あふれるステージを見せつけてくれる。ブルーとゴールドのスパンコールがきらめく衣装に身を包んだ9人編成のバンドは、トラッド寄りのビッグバンド・スウィングにSFタッチなハーモニックスを加えたスペースジャズ好みの“Love In Outer Space”などの曲と、夜空の星を見つめようと呼びかけるアカペラの両方でステージを盛り上げる。若い観客が生まれる前から宇宙を旅してきたメンバーばかりで、さすがに熟練したプレイを楽々と聴かせる。ただやはり最近は、彼らの軌道も多少地球に近づいたといったところか。バンドは心底楽しんでいる様子で、それが観客にも十分伝わり、ソロやとんぼ返りのたびに大きな歓声が湧く。間抜けなビートニクみたいに無邪気にはしゃいでいるというか、呆気にとられたインディーズ・キッズは、こんなショウは見たこともないしジャズのノリさえ知らないようだ。

ホストのTortoiseは、落ち着いたプレイで第1夜のメインステージのトリを務めた。今年、WARP Recordsからのデビュー作となった『Standards』のオープニング曲“Seneca”が、今夜のハイライトだ。他にもAshford & Simpsonのサンプリング曲“Monica”、Steve Reich風のダークな曲“Djed”、『Millions Now Living Will Never Die』からの轟くようなギタープレイ、それに去年カルヴァン・クラインの広告にも使われたベースラインがズンズン胸に響く“Tin Cans & Twine”。しかし残念なことに、40分くらいたった頃からTortoiseのセットは勢いがなくなり、ジャズ・フュージョンの悪例と言えるまとまりのないインプロヴィゼーションと、Pat Metheny風の退屈なプレイが延々と続いた。

'70年代アフロビートのパイオニアにFela Kutiがいたが、そのドラマーがTony Allenだった。彼はFelaのバンドとそのプロダクション・テクニックを自分のレコーディングに使った唯一のメンバーであり、Tortoiseの成功とインスピレーションは彼に負うところが大きい。Allenは無駄のない抑制の効いたスタイルで知られ、ソロや派手なプレイは一切やらない。極めてタイトでファンキーなビートを叩き出し、4人編成バンドによるノリのいいグルーヴをしっかりと支える。

階下の第2ステージでは、シカゴの3人編成バンドEternalsが、エレクトロニクスやダブ・エフェクトで、少ないが熱心な観客を楽しませている。彼らのライヴプレイは、ものすごく風変わりなON-U Soundを思わせる。例えばビル解体の騒音を取り入れたMark Stewartのように、Eternalsもジャズやレゲエ、エレクトロニクスの要素をごちゃまぜにし、ヴォーカリストDamon Locksがアジテーション・ソウルを喚きちらすのだ。“Individual”はその良い例といえる。Derek Baileyも同様だ。フリージャズのギター・インプロヴィゼーションの第一人者である彼は、すでに数10年にわたり6本の弦を自由自在に操るプレイで知られ、同じフレーズなど二度と弾かないほどである。今夜も素晴らしいフレットワークだが、バックに前もってレコーディングされた不規則なエレクトロニクスとドラムンベースを使っているところを見ると、コンテンポラリーも好みらしい。常に動いている両手は一見、音符やコードをランダムに弾いているかに思えるが、Baileyはサウンドによるアクション・ペインティングを創作しているのだ。

あちこちでサンプリングされているニューヨークのガール・ヒップホップ・グループESGが、病気でキャンセルになったのは残念だった。その代わりSea & Cakeが土曜日の主役として登場。Baileyが弾いた不協和音の後では、アップビートなポップが光っている。Tortoiseのフロントマン、John McEntireがドラムキットで控えめにリズムを刻み、ツインギターのSam PrekopとArcher Prewittが、暗かった第2ステージに明るく夏らしいポップを響かせる。Samの甘いヴォーカルがジャジーな“Jacking The Ball”を盛り上げる一方、Archerはごく普通の“Escort”の出だしに、場違いなドライアイスがもくもくと流れてくるのを見て憮然としている。

土曜日のメインステージではダブルヘッダーという嬉しいセットがあった。それは砂ぼこり舞う砂漠から来たCalexicoとLambchop。まぁ軽いカントリー・ソウルといったところ。前回よりメンバーがぐっと減り、マリアッチはひとりだけ? さみしい限りだ! それでもCalexicoのサウンドはこれまで最高で、レコードでは表現しきれないほどの熱い血がたぎっている。心をかき乱すほど美しい“Sonic Wind”。Johnny Cashをほうふつさせる“Service And Repair”は、人気のない道路とさびれたダイナー食堂を歌った涙を誘う物語。アンコールが最高だった。“Crystal Frontier”で聴かせたJoey Burnsのヴォーカルは、Cormac McCarthy風の語りと荒削りなTex-Mexのスタイルを兼ね備えた完璧な出来だ。Burns自身の部屋で歌ったというアコースティック・ヴァージョンを聴いた時も、LAUNCHのスタッフは背筋がゾクゾクするほど感動したが、今回はそれをも上回るほど素晴らしい。

Lambchopのほうは、Boards Of Canadaがステージ前方に置いた機材が邪魔になったものの、13曲をプレイ(BOCは謎のバンドだ。入念なサウンドチェックを終えた機材が他のバンドの邪魔になっているのに、頑としてどかさない)。Joey Burnsの歌のあと、かろうじて残っていた観客のハートを完全にブロークンにしてしまった。心に染み入る歌ばかりのセットに観客は大喝采し、静まるのにしばらくかかったほどだ。ナッシュヴィルのやさ男Kurt Wagnerが、Al Greenのスパイシーなソウル曲“How Can You Mend A Broken Heart”を歌う。多少薄汚れた部分も含め、日々の些細な出来事を歌った彼のヴォーカルは、信じられないほど感動的に聴こえた。アンコールは意外にもSisters Of Mercyの大ヒット曲“This Corrosion”。ゴス・ロック・ファンには涙が出るほど嬉しい瞬間だった。ナッシュヴィルとゴス・ロックのクロスオーバー、万歳!

一応ヘッドライナーのBoards Of Canadaは、ミニマルでメロディックなレコードを出しており、WARPが最近契約した中では間違いなく注目株のひとつである。しかしライヴでは、2人の男の子が薄暗いステージであれこれノブをいじくっているだけ。正体のわからない複数のエレクトリック技師が、満席の観客をなんとか盛り上げようと懸命だ。ダンスフロアが「DJ」の独壇場となって久しいが、ロックコンサートも同じで、観客は何かを「観」なければ納得しなくなってしまった。Boardsがあれだけカリスマ性にこだわるなら、単にレコードをかけていたほうがマシだろう。ただ、レコードではさわやかで切れ味がいいサウンドなのだが、ライヴではまるでMike Oldfield。シャレたヴィジュアルを駆使しても、ピンぼけでは幻滅するだけだ。

日曜日には、Arkestraの代わりをYo La Tengoが引き継いだ。サターン発のスペースロックの余韻に影響されたらしく、Whoの“The Kids Are Alright”のカヴァーではステージ狭しと飛び跳ねる。それから、ベースのJamesが物悲しい“Stockholm Syndrome”をプレイ。'99年の『And Then Nothing Turned Itself Inside-Out』の曲をだらだらとやったのはいただけなかったが、Georgia HubleyとIra Kaplan、James McNewのトリオは“Evil That Men Do”“From A Motel 6”、それにGeorgiaの素敵な曲“I Heard You Looking”では目の覚めるようなパフォーマンスを見せ、“Cherry Chapstick”ではまるでSonic YouthJesus & Mary Chainをプレイしているかのようだった。楽器を交換してNeil Youngのようなギター・プレイを聴かせるなど楽しい1時間だったが、ひとつだけ少しがっかりしたことがある。それは“You Can Have It All”でよく見せていたTemptationsスタイルのダンスがなかったこと。代わりにこの曲はジャジーで粋なボンゴ・シャッフルにアレンジされていた。それにSun Raに敬意を表し、“Our Way To Fall”で一部“Rocket No.9”を取り入れたのも良かった。アンコールでは「Televisionがリラックスできるように」と、Ramonesの“Sheena Is A Punk Rocker”とBlondieの“Dreaming”をプレイ。やっぱりYo La Tengoはパンクもやれば、エアジャズのような軽いのもやる、文句なしに楽しいバンドだ。

Televisionとくれば、誰もが見たがると言っていいだろう。階下では真っ暗な中でAutechreが満席の観客を恐怖のるつぼに陥れ、警備員はもう入場お断りという。調子の外れたビートを爆音のごとく轟かせるAutechreのノイズで、頭がくらくらしてくる。

階上では陽気な古株のTom Verlaineとその仲間が、なかなかのステージを見せている。Verlaineの歌は今もうまくはないし、Gordon Ganoの嫌味な後見人ではあるが、そんなことは大したことではない。Televisionのギンギンの悲鳴のようなギターは、いまだにどのジャンルとも言いがたい代物だ。あれはパンクか? それともプログレッシヴ?

Televisionのオープニングは、Verlaineのアルバム『Warm And Cool』のアウトテイクのようなしなやかなインストゥルメンタル。だがこれは単なる遊びで、すぐに“Little Johnny Jewel”や“See No Evil”のようなお馴染みの曲になり、例の狂乱状態に入っていく。しかし、Televisionはニューヨークを代表するワールドトレードセンターと同じく、見た目はスリル満点かもしれないが住みたいとは思わない。こうして20年経って聴いても、相変わらず感動がないバンドだ。つまりは頭と心のジレンマであり、それはとりもなおさず、Tortoiseによるプログラミングにも言えることだ。今回は運良く、心のほうに軍配が上がりそうなのだが。

By Jenny Bulley, Andrew Carden,
and David Peschek/LAUNCH.com

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