過去のナンバーを多用したセット。だが大音量とディストーションに問題あり?

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過去のナンバーを多用したセット。だが大音量とディストーションに問題あり?
 

「Ain't That Enough」のような甘いポップのほうが彼らにとってよりしっくりくる感じだ

最新アルバム

HOWDY !
EPICインターナショナル ESCA-8221
2000年11月1日 2,520(tax in)

1 I Need Direction
2 I Can't Find My Way Home
3 Accidental Life
4 Near You
5 Happiness
6 Dumb Dumb Dumb
7 The Town and The City
8 The Sun Shines From You
9 Straight & Narrow
10 Cul de Sac
11 My Uptight Life
12 If I Never See You Again


以前、コンサートでサウンドボードを担当している男が、コンサートの記事やレヴューで取り上げられない自分の存在はまるで無名の英雄だと嘆くのを聞いた。彼は、言及されないというのは少なくとも自分が問題なく仕事をこなしている証であり、無名であることに心がけるほうが賢明なのだと考えて、自身の傷ついたエゴを慰めていた。

ということは、スコットランドのベテランポップバンド、Teenage Fanclub(以下、TFC)の最近のステージを台無しにした泥沼のようなミックスは、興味深い疑問を投げ掛けているということになる。これはサウンドミキサーだけの責任なのだろうか? それとも爽やかで明るいバンドの音楽を引き立てるための意識的な選択だったのだろうか?

特にコンサートのサウンドにおけるひずみの多さと定位の不明瞭さは、インポートオンリーでリリースされたTFCの最新作『Howdy!』の内容を考えればいっそう謎めいてくる。このアルバムはBeatlesByrds、さらにはAssociationにも匹敵する目を見張るようなハーモニーとジャングリーなギターのレイドバックした寄せ集めとも言える作品だ。したがって新作をサポートするツアーでは、彼らがもっと削ぎ落とされたアプローチをすると予想する向きがあっても当然だろう。

だが、実際はそうではなかった。バンドはその代わりに、オープニングにエネルギッシュにドライヴする「Near You」を持ってくるなど、バックカタログのマテリアルを多用したセットを構成したのである。しかし彼らがロックするショウを展開するには無理があったようで、エネルギーとパワーを増強するために大音量とディストーションに頼っていた。「Ain't That Enough」のような甘いポップが披露されたのは、ショウが始まってから数曲進んだ後のことだったが、そのほうが彼らにとってよりしっくりくるサウンドに戻れたという感じだ。ありがたいことにその傾向は、荘厳な「My Uptight Life」や軽やかに飛び跳ねる「I Need Direction」でも持続され、この2曲がショウのハイライトにもなったのである。

バンドは最終的に最近のスタジオでの個性と折り合いをつけたようであった。フロントマンのNorman Blakeによるあまり面白くもない曲間のおしゃべりで、ペースアップするのが遅れた感はあったものの、今回のショウはFanclubsの持続力に対する誓約書であることを証明してみせたのである。つまり、ありのままの姿でいることの価値を示す結果となったのだ。

By Tim Sheridan/LAUNCH.com

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