“セクシャリティ”と“貫禄”と“初々しさ”の絶妙な重なり合い

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“セクシャリティ”と“貫禄”と“初々しさ”の絶妙な重なり合い

終始笑顔で機嫌よく、パワフルで高品質のライヴを披露

最新 Album

『beutifulgarbage』

Sony Records International SRCS-2533
2001年9月27日発売 2,520(tax in)

1 Shut your mouth  
2 androgyny  
3 Can't cry these tears  
4 Till the day I die  
5 Cup of Coffee  
6 Silence is golden  
7 Cherry lips(go baby go!)  
8 Breaking up the girl  
9 Drive you home  
10 Parade  
11 Nobody loves you  
12 Untouchable  
13 So like a rose  
14 Begging Bone  
15 The World is not enough


 

最新作『beautifulgarbage』でこれまで以上に洗練された妖艶さを表現するのに成功し、さらなる大物バンドへと進化を遂げたガービッジの待望の来日公演。<FUJI ROCK FESTIVAL '98>以来の日本とあって、当の本人たちもオーディエンスも期するところが大きかった。ただ、直前にドラマーにしてサウンドの要であるブッチ・ヴィグが肝炎で倒れ入院し、昨年秋のアメリカ・ツアーを代役で臨んだということもあって、万全の形でのツアーが可能かが心配されたが、どうやらそれは杞憂に終わったようだ。

この日はZEPP3Daysの追加公演3日目ということもあって、客の入りが若干渋くもあったが、ここは日本公演の最終日…本人たちは良い意味で肩の力が抜けリラックスそのもの。終始笑顔で機嫌よく、パワフルで高品質のライヴを披露してくれた。

彼らの場合、どうしても釘付けにならずにいられないのはシャーリー・マンソンの存在だ。

これまで肩ぐらいまでの赤毛の髪に、ちょっと不健康そうなゴス・メイクといった妖艶なファッションがトレードマークだった彼女だが、今回は大変身。ブロンドの短髪リーゼントにマニッシュなパンツ・ルックで、新作からの代表曲「アンドロジニー(両性具有)」のイメージそのままの出で立ち。そのためか彼女の唱法やアクションもこれまでになくパワフルかつりりしく見える。

そしてシャーリー以外の“ボーイズ”と呼ばれる40歳以上のオジサン・トリオ、デューク・エリクソン、スティーヴ・マーカー、ヴッチ・ヴィグの3人も動きそのものはお世辞にもカッコいいとは言えないが、中年体型を必死に動かすことによって、キャリアを重ねた円熟味のある演奏を披露。

特に50歳を超えた細身ではげあがったデュークが、蛇のように体をクネクネさせながらギターを弾く姿は見ていて何か微笑ましかった。そして、当初心配されたブッチも体調は万全で、リズム面において何ら乱れはなかった。

ライヴ的には基本的に、これまでのようにバンド演奏にエレクトロニックなデジタル・ビートが織り混ざるスタイルで一貫していたが、最新アルバム同様、音自体はかなり太くなりダイナミックに、そしてデジタルな音の感触もより鋭角的になり“21世紀初頭のロック”の姿を睨んだものとなっていた。

選曲的には想像したよりも1stや2ndの曲が多く、新作の曲は思ったほどには多くなく、演奏自体も安定感こそあるもののスリリングな要素に欠けた点は少々物足りなくはあった。だがそれでも、成長の痕跡は音や外面の至るところでハッキリと現われてはいたし、“セクシャリティ”と“貫禄”と“初々しさ”がこうも絶妙に重なりあったバンドという彼らの稀少価値な魅力についても大いに再認識させられた。

文●沢田太陽(02/03/04)

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