【BARKS編集部レビュー】名実共にカスタムIEMの最高峰、Ultimate Ears 18 Pro

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究極のカナル型ヘッドホンとして急速に人気拡大しているのがカスタムIEM。先日、激安価で登場してきた純国産カナルワークスを紹介したが、今回レポートするのはUltimate Ears(アルティメット・イヤーズ)のカスタムIEMだ。

◆Ultimate Ears 18 Pro画像

Ultimate Ears(以下UE)は事実上、カスタムIEMを世界中に広めた立役者であり、自他共に認めるカスタムIEMの雄である。一時は世界中の8割ものカスタムIEMがUEのものであり、戦国時代となった現在においても未だ世界の7割のシェアをUEが占めている。ヘッドホンマニアには有名な話だが、UE誕生の発端はアレックス・ヴァン・ヘイレンのリクエストによるものだった。

エディのEVH5150の音がでかすぎたか、サミー・ヘイガーの声がうるさかったのか、モニターヘッドフォンを使っていたもののサウンドを良く聞き取れないアレックスが、「このままでは難聴になってしまう」と音響エンジニアに相談したのが誕生のきっかけだ。日本の電子部品メーカーをはじめ世界中から電子パーツを集め、それまで世の中に存在しなかったデュアルスピーカー/カスタムフィット、さらに低歪みでライブでの演奏を正確に再現可能なイヤモニターをゼロから設計したのだ。

世界初のインイヤー型スピーカーシステムは、アレックス・ヴァン・ヘイレンのために完成され、究極(Ultimate)のサウンドがクリアに耳(Ears)に届く世界随一のカスタムIEMを制作するブランド、Ultimate Earsが誕生した。1995年のことである。当然のように、この革新的な製品は瞬く間にプロ・ミュージシャンの間に浸透、音楽の発展の裏で実に偉大な功績を残してきたブランドでもあるのだ。

今でこそ、UEからは様々なカナル型ヘッドホンが発売されているが、全てはカスタムIEMを基に汎用型(ユニバーサルモデル)として登場したもので、そもそもはカスタムIEM制作こそが、Ultimate Earsの真骨頂である。そんなUEが2010年に満を持して発表したフラッグシップモデルが、このUltimate Ears 18 Pro。最も長い歴史を持ち、最も多いユーザーを持ち、最も深い信頼を得た最高技術とフロンティア精神にあふれたオリジネーターが放つ最高機種であればこそ、18 Proがカナル型ヘッドホンの最高峰に輝く究極のモデルであることは、容易に想像できることだろう。

18 Proのサウンドは速くて重い。切れが鋭く濃厚である。矛盾しているように聞こえそうだが、速さはいいサウンドを成立させるための必要条件のひとつで、音をはじき出すレスポンスの良さと瞬発力のある発音の立ち上がりの機敏さを意味する。どれだけトーンが甘くなろうとももっさりしないのはこの速さのおかげだ。重さは揺るがぬ説得力と迫力を生む要素で、重低音から中低音における発音の十分な余裕から実現し得たものと思う。やはり速さゆえ鈍重にはならない点も重要だ。どでかいウーハーの目の前に居るような、コーン紙から直接風を受け取るような感覚を感じとることのできるカナル型ヘッドホンには、なかなかお目にかかれない。誤解を恐れずに言えば、オーバーヘッドのヘッドホンでしか得られなかった全帯域の芳醇さをついにカナル型で到達した完成度であると言うべきか。

まぎれもない最高峰の一端であろうこのサウンドを一言「別次元」と言い放つのは簡単だが、この重厚な音空間を、何か例えられないものか…しばし考えてみた。スーパーでいつも買っている1リットル180円の牛乳と、高原の牧場で飲む1杯400円の絞りたて牛乳ほどの違いだろうか。まるで別物ということだが、このサウンドを聴くと元来音楽はこうだったのかと愕然とする。オーディオプレイヤーから注がれる音楽は、これほど濃厚で新鮮で情報がたっぷりと詰め込まれているのに、それを鼓膜まで届けることができていなかった現実を突きつけられたようで、今までどれだけ損な聴き方をしてきたんだと複雑な気持ちになる。

耳に届けられるまでに通るフィルターの特性によって、サウンド特性が決定付けられるのだろうし、それこそがサウンドデザインなのだろうけれど、18 Proのサウンドを聞くと、出力されるサウンドをスポイルすることなく素直に耳に届けようとする贅沢な設計が貫かれており、その設計思想も実際のサウンドも、ピュアオーディオに通じるものに思えてくる。

18 Proは間違いなく現在のカスタムIEMの最高峰のひとつだが、ここで言う最高峰とは、これ以上を望むべくなく納得のサウンドであることを実感させてくれる説得力を持つという意味だ。いつもはもうちょっと解像度が云々、音場がどうのこうの…と、好みをもとに理想を語りだしたりするものだが、18 Proに関しては、足りない帯域も不足な機能もないので追加したくなる要素がない。広大な音場、細部までの驚くほどの再現性と甘くたおやかなトーン、澄み切った鮮明さに乗るダイナミクスは空気の振れを感じさせ、ぞくぞくするほど。

踏み込んで言えば、もちろん人それぞれの好みの問題から18 Proへの不満点も耳にする。もっと高域があってもいい、低域をもっと足したい、もっと低域を減らしたい…など様々な意見があり、真逆のリクエストまで飛び出してくる。しかし、まさにこれこそが18 Proがどの角度から攻められても破綻しない隙のないサウンドバランスを持っていることを表わしているに過ぎない。

完璧なサウンドバランスといいながら、人はわがまま贅沢なもので、そこに自分の好みを求め、更なる追加オプションが付加できればいいなと思ったりする。完璧と認めながら+αを求める矛盾こそが、ヘッドホンスパイラルの元凶でもあり、そこがオーディオの面白さでもあり、このいい加減なあいまいさこそが、音楽リスニングにいろんな刺激を感じさせてくれる秘密のスパイスなんだろうなとも思う。昨日の感覚も正しいし、今日の感覚も嘘じゃない。そこに正反対の事実があっても、そのファジーな揺れ動きをも全て受け入れて、そのときに最も刺激的な音を聞きたいと願う。

だから、完璧だけど物足りないという感覚は宝でもあるし、物足りないと思ったのにやっぱりパーフェクトなサウンドだと再認識する瞬間を何度も味わわせてくれる18 Proの持つ素養のでかさは並みのものではない。おそらく18 Proの存在はパーフェクトだ。この絶対的な品質は揺るがぬ事実であり、そこに好き嫌いでの判断を載せればいいと思う。

極めて個人的な感覚でいえば、超低域から低域の厚さとタイトさとその量感は十分。もうこれ以上は必要ない。中域の厚みと細かいディテールの高次両立も奇跡的なもの。そこに6~8KHzくらいの高域に、数db程度のもう少し派手さがあってもいい気がする。最大級の音場も、この高域が加われば更なる拡張を感じさせ、聴覚直結のようなヤバイほどのサウンド体験が味わえそうだ。

18 Proの持つ深い許容量は、ポータブルヘッドホンアンプに対しても寛容で、どのようなアンプとも楽しませてくれる素養を持つ。アンプの性格をそのまま反映した音を聞かせてくれるため、相性などを意識する必要がない。アンプの特性を簡単に描き出してくれるので、好きか嫌いかをジャッジするだけの作業で、音作りなどは無縁だ。上記の高域追加のリクエストなどは、アンプとの組み合わせでどのようにでも演出できるし、オーディオプレイヤーのEQ機能で好みにセットするのもいい。その時点で、己のサウンド桃源郷が完成するのだ。

カスタムIEMの雄として絶対的クオリティを見せる18 Proだが、サウンドのみならず、シェルの造型にも一日の長がある。耳介と干渉しないようにケーブルの出し口までシェルの厚みを十分にとり、その上にアートワークも指定できるフェイスプレートが乗るため、シェルは最大限の大きさを有する。その上アクリルの薄さと均一さが高レベルで、複雑な形をした江戸風鈴のような繊細さすら醸し出す美しさを持っている。結果、片耳6ドライバーという最大級のパーツ搭載量にもかかわらず、見る限りまだまだ空間的余裕もたっぷり残っている。ノズル近くですら、あと4モジュールくらいは楽勝で追加できそうなスペースが確保されており、設計にも制作にも余裕の伸びしろがずいぶん残されていることが伺える。ここにしか置けないから…という物理制約に苦心した様子や苦肉の設計などはどこにもなく、全ては完全なるコントロール下にあることを、あからさまに見せ付けてくれる。この製作技術と出てくるサウンドの重みは、やはり他を圧倒するものだ。

カスタムIEMは、自分の耳にジャストフィットしてみて初めて威力を発揮するもの。いくら情報を入手しようと試聴機で試聴しようと、本当の評価は下せないのが現実だ。高額ではあるが、一蓮托生、最後はえいやーとオーダーしてみないと分からない。

分からないなら信じるが吉。だから18 Proが一番、安心で間違いないのだ。

text by BARKS編集長 烏丸

Ultimate Ears 18 Pro Custom Monitor
・4way 3ユニット 6レシーバ構成
 subwoofer×1
 woofer×1
 mid×2
 high×2
・再生周波数:20Hz to 18,000Hz
・インピーダンス:21 ohms @ 1kHz
・入力感度:110.6 dB @ 1kHz
・能率:115.6 dB @1mW
・遮音性:-26dB
・ケーブル:46”(121cm)、又は64”(162cm)
・ケーブルカラー:Clear、Black、Beige
・プラグ:3.5mmステレオミニプラグ
・付属品:クリーニングツール、キャリーケース
・シェルカラー
 Ruby Red(半透明)
 Royal Blue(半透明)
 Slate Gray(半透明)
 Purple(半透明)
 Electric Blue(半透明)
 Clear
参考価格:1,350 USドル
送料:UPS 70 USドル
アンビエントノイズ機能:$50(シェルに穴をあけて周囲の音を少し聞こえるようにするオプション)
titaniumプレート:100 USドル(シェルの外側にプレートが付くオプション)
アートワーク代:100 USドル(シェルの外側に自分の好きなアートワークをつけるオプション)

価格および入手方法
米オフィシャルサイトにて購入手続きをとり、入手した耳型(インプレッション)をUltimate Earsまで送付。全て英語での対応が必要。詳細については、オフィシャルサイトでご確認を。

一般の方のお問い合わせ先:ロジクール・カスタマー・リレーションセンター
TEL:050-3786-2085 FAX:050-3737-2085
E-Mailサポート:http://www.logicool.co.jp/contact/

◆Ultimate Earsオフィシャルサイト(海外)
◆BARKS ヘッドホンチャンネル
◆実はすぐそこまで来ていた、カスタムIEMの世界

BARKS編集長 烏丸レビュー
◆クリエイティブAurvana In-Ear3(2011-07-06)
◆カナルワークス CW-L01(2011-07-01)
◆GRADO GR10&GR8(2011-06-25)
◆SAEC(サエク)SHURE SE用ケーブル(2011-06-21)
◆フィアトンPS 20&PS 210(2011-06-17)
◆ZERO AUDIO ZH-BX500&ZH-BX300(2011-06-11)
◆フィリップスSHE8000&SHE9000(2011-06-03)
◆アトミック フロイド(2011-05-26)
◆モンスター・マイルス・デイビス・トリビュート(2011-05-20)
◆SHURE SE215(2011-05-13)
◆ファイナルオーディオデザインPiano Forte IX(2011-05-06)
◆ラディウス・ドブルベ/ドブルベ・ヌメロドゥ(2011-05-01)
◆ローランドRH-PM5(2011-04-23)
◆フィリップスSHE9900(2011-04-15)
◆JAYS q-JAYS(2011-04-08)
◆フォステクスHP-P1(2011-03-29)
◆Klipsch Image X10/X5(2011-03-23)
◆ファイナルオーディオデザインheaven(2011-03-11)
◆Ultimate Ears TripleFi 10(2011-03-04)
◆Westone4(2011-02-24)
◆Etymotic Research ER-4S(2011-02-17)
◆KOTORI 101(2011-02-04)
◆ゼンハイザーIE8(2011-01-31)
◆ソニーMDR-EX1000(2011-01-17)
◆SHURE SE535(2011-01-13)
◆ビクターHA-FXC51(2011-01-12)
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