【ライブレポート】真野恵里菜がハロプロ卒業。「今、ここに立つことができて、みなさんに感謝しています」

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暗転する会場に響く「恵里菜!」の大コールを受けて、アンコール。ステージには、背面にErina Manoのロゴが入った真っ白いピアノがセッティングされ、純白のドレスを着た真野恵里菜が登場する。ソロ活動の初期を思い出させる光景の中で披露された曲。それは、真野ちゃんがソロアイドルとしての歩みをはじめた曲、「マノピアノ」。あの頃よりも大人になった真野恵里菜が、あの頃の煌めきのままで歌う。そこから感じるのは、アイドル、歌手から女優へと、新しいチャンスを掴み続けてきた真野ちゃんの、昔から変わらない純真さ、透明感だ。

そしてこのタイミングで、開演前、マノフレ有志らが配布していた白サイリウム企画が実行に移された。真野ちゃんのイメージカラーである赤から、一面、純白に輝く客席。それを目の当たりにし、マノフレの優しさ、暖かさに触れて涙を落としながら、アーティストとしてピアノを弾き、歌うことをやめない真野恵里菜。しかし、「マノピアノ」の弾き語りが終わって、マイクを握った瞬間、彼女の想いは一気に溢れ出す。涙とともに。

「すごい……すごい綺麗です。ありがとうございます。ちょっと、ピアノだけはちゃんと弾ききりたいと思って、こらえてたんですけど、ほんとに、みなさんの気持ちが伝わってきて。とてもうれしいです。ありがとうございます。アンコール1曲目はインディーズデビューシングルの「マノピアノ」を聴いていただいたんですけど、えー……何、喋ろうか忘れちゃった。そうですね。ほんとに、小さい頃から大好きだったハロー!プロジェクトに、1回、エッグオーディションを中学1年生の時に受けて、落選してしまって。それでも大好きって気持ちは負けたくなくて。だからこそ、もう1回挑戦するんだって思って、中学3年生でまた受けたんですけど、そしたら受かって。音楽ガッタスがあり、今に至るんですけど。んー。なんていうんだろうな……(涙で言葉に詰まる)……なんかソロになってから寂しいな、って気持ちもすごいあったんですけど、こうやってイベントとかライブをやると会いに来てくれるみんながいたり、ブログとかコメントでも、いつもメッセージくれたり。ひとりじゃないんだなって、実感しています。ありがとうございます。楽しいこととか嬉しいこととか幸せ感じたりとかいっぱいあったんですけど、時には悔しいこととか寂しい時とかもあったんですけど、でも、そういうのも全部、今日につながっていったんだなって思うと、いろんな経験ができて、今、ここに立つことができて、こんなにたくさんの方が会いに来てくれて。今まで出会ったマノフレのみなさんに感謝しています。」

「嬉しいことも悔しいことも、すべては今、この時のため。」 そんな真野ちゃんの言葉を受けて、客席の四方から「恵里菜!」「真野ちゃん!!」の声が飛ぶ。そしてその声は自然と「恵里菜!」コールへつながっていく。各人の胸の中にある真野ちゃんとともに経験した数々の思い出。それもまた、真野恵里菜がオーディションに合格し、ハロプロエッグとなり、ソロとしてデビューしたからこそ。彼女自身の頑張りと、もちろんマノフレを含む、いろんな人たちのサポートによって活動してきたからこそ。そして、今、この瞬間。すべてはつながっていて、さらに未来へと引き継がれていく。

みんなで歌う「NEXT MY SELF」、さらにレコーディング時から“この曲は2月23日に歌いたい!”と決めていたという曲「みんな、ありがとう。」へ。真野ちゃんは、涙を浮かべながらも、プロとしてちゃんと歌を届ける。彼女の負けず嫌いという性格が、というよりも、それはプライド。最後の最後に、彼女はアイドル・歌手・真野恵里菜としてのプライドで、ありったけの気持ちを込めて、ちゃんと歌を届けたのだった。

アンコールが終わり、それでもやむことのない「恵里菜!」コール。それは「まだ“あの歌”が残ってる!」という、リクエスト。会場の誰もがわかっていた。彼女が「特別な時にしか歌いたくない。」と口にするほど大切にしている曲がまだ残っていることを。

再び、ステージに登場する真野恵里菜。そして感謝の言葉を述べようとしたところで、本人にも内緒のサプライズゲストが。「真野ちゃん、卒業おめでとうー!」と、会場に駆けつけたのは、花束を抱えたBerryz工房・嗣永桃子と℃-ute・矢島舞美。「真野ちゃんが大好き過ぎて、どうしても直接、卒業おめでとうって言いたくて、ふたりで駆けつけちゃいました!」というももち。ハロー!プロジェクトの中では先輩ながら、同年代。そして苦楽をともにしてきた盟友たちの登場に、驚きを隠せない真野ちゃん。過去のインタビューで、自身のハロー!プロジェクト卒業について「(モーニング娘。・新垣里沙と光井愛佳の卒業公演を見ながら)『あ、そっか。私にはこういう卒業セレモニーはないんだ。』って。」と、発言していた真野ちゃんに、ももちと舞美からは「伝えたいことはいっぱいあるんですけど、ふたりとも文章能力とか言葉まとめるの苦手だから、真野ちゃんにお手紙を書いてきたんです。」と、手紙の朗読が。そう、駆けつけた仲間による卒業セレモニーだ。

舞台稽古中、台詞が全然覚えられなくて、お芝居が大好きな真野ちゃんに相談したところ、「台本読めば覚えられます。」と、まったく当てにならないアドバイスをされたという思い出や、真野ちゃんが卒業することで、ご飯を食べる相手がいなくなってしまうのではないかとファンに思われてしまう……などなど、面白エピソードを盛り込んだももち。デビュー前から見守り続けて「いつかは“矢島さん”じゃなくて“舞美ちゃん”と呼んでもらうぞ!」と、心に決めていたので、初めて真野ちゃんが悩みを相談してくれた時、実はとても嬉しかったという気持ちを告白した矢島舞美。ふたりらしい内容の手紙に、涙と笑顔の真野ちゃん。

そして、「ももちの目がうるうるしてる!」と真野ちゃんが口にすれば、「あ、汗だし。」と、返すももち。「踊ってないじゃん。」という真野ちゃんのツッコミに「悲しいけど……スタートだから。」と、“本来のももちのキャラクター”とはちょっと違う一面がつい顔を出す(ももちが涙を見せるのは実に稀なこと)。かたや矢島舞美は、「見てて、真野ちゃんはほんとにひとりですっごいパワーを出して、(感極まって声を震わせる)なんかすごいなって思ったよ。ほんとに尊敬してるから。これからもきっと大丈夫だと思います。」と、素直な気持ちをストレートにぶつける。

3人の笑いと涙が詰まったやり取りを挟んで、いよいよハロー!プロジェクトの真野恵里菜として最後の曲、「My Days for You」に。歌う前に、胸に手を置いて、ひとつ息を吐く。そして真野ちゃんは、<いつも見ててくれて ありがとう><支えてくれていて ありがとう>という止まらない気持ち、溢れる想いを歌に乗せて、会場に集ったすべての人のもとに届けた。

「みなさん、今日まで、ほんとにほんとに、どうもありがとうございました。そしてこれからも、よろしくお願いします。ありがとうございました。真野恵里菜でした!」

メドレー楽曲も数えると全27曲を歌いきって、最後は清々しいまでの笑顔でステージを降りた真野恵里菜。この公演が、いわゆる卒業公演の切なさ一色に支配されなかったのは、マノフレもまた見送る側ではなく、ともにひとつの区切りとしてこの日を迎え、そして一緒に、新しい世界へと飛び出していく側だったから。<これからも どうぞ よろしくね>という「My Days for You」のラストフレーズが表しているとおり、真野恵里菜はこれからも続く。本人がステージを降りた後に流れた、オーディションの時からのハロー!プロジェクトでの真野恵里菜の歩みをまとめた映像。真野恵里菜の、そして我々マノフレの夢はまだまだ続くのだ。

「リハーサルの時は、怒られたりとか……して、“あぁ……本番大丈夫かな”なんて思ったりするんですけど、でも本番になると、ほんとに楽しくて。みんなの笑顔が嬉しくて。みんなが一生懸命応援してくれるから、わたしも頑張って、もっともっとちゃんと歌おうって思って、空回りする時もあるんですけど(笑)。でも、こうやって、ライブの楽しさを教えてくれたのはみなさんですから。ほんとにほんとに、ありがとうございます。なんか伝えたいこといっぱいあるんですけど、ありすぎてまとまらないし。これが最後ではないので。ハロー!プロジェクトは今日で卒業しますけども、これから先も、真野恵里菜、しっかり頑張っていくし。またみんなと会える機会、みんなが帰ってくる場所、私自身もこうやって帰ってくる場所がほしいので、また、そういう機会がありましたら、ぜひ、私と一緒に盛り上がりにきてください。これからもよろしくお願いします。」

ちなみに真野恵里菜は、4月からテレビ東京でスタートするドラマ『みんな!エスパーだよ!』へのレギュラー出演が決定している。過去、『嬢王』や『怨み屋本舗』『勇者ヨシヒコ』といったヒット作を生み出したテレ東の深夜枠ドラマで、監督は『愛のむきだし』『ヒミズ』の園子温。そして原作は大ヒット漫画『デトロイト・メタル・シティ』の若杉公徳というのだから、卒業早々に、これまた女優・真野恵里菜として大きく飛躍するチャンスを掴んだことになる。

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21時30分。やむことのない「恵里菜!」コールの中、客電がついて、卒業公演は終了。新たな世界へと踏み出した真野恵里菜。まつげを濡らしたその涙は、たとえるなら、一足早く春を告げる優しい雨、新緑に輝く雨粒のよう。

“雨女”。そんなワードを思い浮かべながら中野サンプラザを出ると、澄み切った夜空には星が輝いていた。

text and photo by ytsuji a.k.a.編集部(つ)
◆BARKS かわいこちゃんねる
◆真野恵里菜 オフィシャルサイト

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