ARW、イエス・ミュージックの魂を正しく継承するものたちによる、イエスを超える壮絶なパフォーマンス

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「またリックやトレヴァーと一緒に演奏し、歌うことができるなんて、言葉にできないほど素晴らしいことだよ!」(ジョン・アンダーソン)

2017年4月の来日公演が先日発表されたジョン・アンダーソン、トレヴァー・ラビン、リック・ウェイクマン、最強の3人。来日に先立って、この3人のこれまで、そしてユニットの魅力を解き明かすレポートを紹介する。

◆ジョン・アンダーソン、トレヴァー・ラビン、リック・ウェイクマン~画像&映像~

イエスのファウンダー(創設者)として『ラウンドアバウト』や『危機(Close To The Edge)』など数多くの名曲を生み出したジョン・アンダーソン(Vo)、『ロンリー・ハート』を全米No.1に導いた立役者トレヴァー・ラビン(G)、70年代のプログレ黄金期を支えたキーボードの魔術師リック・ウェイクマン(Key)。まさに“イエスの核”を成す3人で結成されたバンド、それがアンダーソン、ラビン&ウェイクマン(ARW)だ。

ヴォイス・オブ・イエス(あるいはハート・オブ・イエス)ことジョン・アンダーソンは、天に昇るようなハイトーンのファルセット・ヴォイスが魅力で、イエスの名曲の数々のほとんどの作詞を担当し、その世界観は抽象的かつ難解であることがプログレとしてのトレードマークとなっていた。自分で作り上げたバンドであるにも関わらず、1980年と1988年、さらに2008年の3度にわたりイエスを脱退している。ソロとしての活動以外に、ヴァンゲリスや喜多郎、近年はジャン=リュック・ポンティとコラボするなど、その自由奔放な音楽性が彼のウリでもある。

南アフリカ出身のトレヴァー・ラビンは、1981年に一時期解体していたイエスのクリス・スクワイア&アラン・ホワイトと合流してシネマという新バンドを結成したものの、後にジョン・アンダーソンがヴォーカリストとして加わり、結果的にそれがイエスの復活劇になったという経緯がある。その新生イエスは1983年にシングル「ロンリー・ハート」で全米No.1を獲得し、一躍その名を世界中に轟かせたのだった。

191cmの長身であるリック・ウェイクマンは、学生時代からセッション・キーボーディストとして活躍していたスーパースターであり、イエスに加入したその日のうちに名曲「ラウンドアバウト」を完成させたという逸話を残している。イエスには5度参加し5度脱退しているという、数奇な記録保持者でもある。現在までに公式ソロ・アルバムを100枚以上リリースしている、見た目どおりのキーボード・モンスターだ。

ARWを支えるリズム・セクションには、彼らと馴染みの深い2人が選ばれた。ベースのリー・ポメロイは、2000年代以降、リックのレコーディングやツアーでベースを担当してきており、近年は復活したイット・バイツやスティーヴ・ハケット・バンドにも参加。リックをして「クリス・スクワイア、ジョン・エントウィッスルと並ぶ3大ベーシストのひとり」と言わしめた強者だ。ドラムのルイ・モリノIIIは、80年代に彗星のごとく登場したポップ・バンド、コック・ロビンのオリジナル・メンバーで、1985年にトレヴァー・ラビンのソロ作『キャント・ルック・アウェイ』に参加して以降、彼の多くのサウンドトラック作品に参加している他、ビリー・シャーウッドやトニー・ケイによるYosoでもその手腕を聴かせている凄腕のミュージシャンである。このように、2人はすでにARWの一員となるべく活躍をしてきており、サポート・ミュージシャンの立場を超えて、ひとつのバンド・サウンドを確立させるために一役買っていると言える。

こうして結成されたARWは、2016年10月4日のフロリダ公演を皮切りに、早くもツアーを開始した。現状では全曲イエス・クラシックスでセット・リストが組まれているが、本家イエスのレパートリーと異なるのは、トレヴァー在籍時代の名曲が多数組み込まれていること。イエス最大のヒット曲である「ロンリー・ハート」はもちろん、「リズム・オブ・ラヴ」や「変革(Changes)」、「ホールド・オン」、「リフト・ミー・アップ」など、イエス本体のセット・リストにも長い間組み込まれていなかった曲が並ぶ。80年代のイエスは産業ロックのカテゴリーへと追いやられたこともあったが、今回のARWではリックが加わることによって黄金期イエスが持っていた、華やかで色彩感あふれるシンフォニック・サウンドへと進化していることがポイントだ。イエスが決して70年代だけに生きたオールドタイム・バンドでないことを証明してくれるだろう。

さらに定番のイエス・クラシックスである「燃える朝焼け(Heart of the Sunrise)」や「同志(And You and I)」、「遥かなる想い出(Long Distance Runaround)」の他、オリジネイターのジョン・アンダーソンでなければ再現不可能な大作「悟りの境地(Awaken)」に至るまで、息をつかせぬ怒濤のパフォーマンスが待ち受けている。さらに嬉しいことに、ARWの3人が共作した新曲のレコーディングが進められており、4月の日本公演でそれが披露される可能性も高い。

ARWの来日公演の見どころは、ずばりバンド名そのままに、ARWの3人が同じステージに立つということにある。3人がバンドメイトとして顔を合わせるのは、1991年の8人イエスの時以来となり、この時意気投合したリックとトレヴァーは、イエス内で一緒に演奏することを望んだものの、マネージメントの問題などの理由からその望みは叶えられなかった。約25年の時を経て、その2人の想いを繋ぎ合わせたのがジョンであり、2人は遂に再び同じステージに立つことになった。さらにトレヴァーに至っては、1994年の日本公演をもってイエスを脱退しているため、いくつかのゲスト出演を除けば、事実上22年ぶりの現役復帰となる。スティーヴ・ハウのプレイ・スタイルとは異なり、ソリッドでパワー・ロック的なトレヴァーのギターが炸裂し、会場を沸かすのを見逃す手はないだろう。

常にプログレッシヴであり続けること、それがジョン・アンダーソンの信条であり、その想いがトレヴァー・ラビンとリック・ウェイクマンに伝わり、どのようなサウンド・マジックを聴かせてくれるのか、今から楽しみで仕方がない。イエス・ミュージックの魂を正しく継承するものたちによる、イエスを超える壮絶なパフォーマンスに期待したい。

片山 伸


【来日メンバー】
ジョン・アンダーソン(Vo.)
トレヴァー・ラビン(G.)
リック・ウェイクマン(Key.)
リー・ポメロイ(B.)
ルイ・モリノIII(Dr.)

ライブ・イベント情報

<ARW ジャパン・ツアー 2017>
【東京】
4/17(月),18(火),19(水) Bunkamura オーチャードホール
一般発売:12/10(土)
お問い合わせ:ウドー音楽事務所 03-3402-5999 udo.jp

【大阪】
4/21(金) あましんアルカイックホール
一般発売:12/10(土)お問い合わせ:大阪ウドー音楽事務所 06-6341-4506 udo.jp/Osaka

【広島】
4/22(土) 広島クラブクアトロ
一般発売:後日発表お問い合わせ:広島クラブクアトロ 082-542-2280

【名古屋】
4/24(月)  日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
一般発売:後日発表
お問い合わせ:CBCテレビ事業部 052-241-8118


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