【インタビュー】沖ちづる、シングル「負けました」は「想像と現実のギャップを埋める“みんなの歌”」

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シンガーソングライター沖ちづるが3月21日、3rdシングル「負けました」をリリースする。2017年2月リリースのミニアルバム『僕は今』に続くCD作品で、通算3枚目の全国流通シングルとなるものだ。タイトル曲の「負けました」はシンプルな言葉とメロディを繰り返し、最後には前向きな気持ちになるサウンドとリリックが印象的。ライブで披露されている「街の灯かり」をピアノ独唱で生まれ変わらせた「街の灯かり(春)」や、あざやかな夏の風景が描かれるフォーク調佳曲「夏の嵐」といったカップリングの2曲も充実している。

◆沖ちづる 画像

約1年ぶりとなるCDリリースだが、この1年、沖ちづるは自分と歌、そしてリスナーとの距離を見つめ直してきた。「落ち込んでいる人がいるのなら、そこに向けて歌いたい」そう語った彼女の内面に迫った。

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■光に満ちた曲になったというか
■瑞々しさのようなものが作れた

──「負けました」というなかなか強い言葉のタイトル曲ですが、どんな経緯でこの曲ができたのですか。

沖:曲が出来た初めのキッカケみたいなものは、去年の夏、藤井聡太六段(当時、四段)の連勝記録が止まってしまった時のニュースの見出しで『藤井四段、負けました』とあった事です。勝負事の世界に生きている人たちのすごくシビアで逃げ場のない世界で戦っている姿を見て、憧れというか“カッコいいな”と感じました。

──戦う姿にですか?

沖:自分は音楽活動をやりながらも、元々“勝ち負け”みたいなものをハッキリとつけるようなタイプではなくて。ただ、やっぱりスポーツ選手や勝負の世界の人たちの姿を見ると、素直に“頑張りたいな”と勇気づけられるんですね。この曲も作り始めは自分への応援歌の要素が強かったんです。でも、この曲が今までの楽曲と違うのは単に“私の出来事”として歌うのではなくて、誰もが生活をしていくうえで感じる“想像していた自分”と“現実の自分”とのギャップを埋める“みんなの歌”として届くように。そのあたりはすごく意識しました。

──「負けました」と歌う事って勇気がいると思ったのですが。

沖:単に“負けた自分”を責めるという歌ではないので、それに関しては素直に歌えました。この曲のテーマを描けば描くほど、“自分の歌になっていく”という気持ちが根底にはありました。

──2017年11月に弾き語りスタイルの「負けました(naked ver.)」のミュージックビデオが公式チャンネルで先に発表されて、今度のシングルではバンドスタイルでの音源です。印象的なピアノのイントロからゆるやかに上に登ってゆくようなアレンジとなり、少し歌の表情が変わった気がするのですが。

沖:弾き語りの時は自分の心情がそばにあって、それを語りかけるような気持ちで歌っているんですけど、バンドで録り始めて音が重なり形になっていくうちに、タイトルに反して、思っていた以上に“光に満ちた曲”になったと言うか、すごく瑞々しさのようなものが作れたな、と思っています。バンドの音を重ねていくうちに曲自体の存在が大きなものになっていって、すごく穏やかな気持ちで歌えました。

──レコーディングメンバーはどういった方々なのですか?

沖:ベースの隅倉(弘至)さんは初恋の嵐のメンバーで、私の赤坂BLITZでのワンマンライブの時にもサポート演奏をしていただきました。ギターはシンプルで、だけども感情を揺さぶられるような音が欲しくて、初恋の嵐のライブでお会いしたことのあるヒックスヴィルの木暮晋也さんにお願いしました。ドラムの神谷(洵平)さんは不思議な縁です。私が学生の頃に遊びでバンドを組んで下北沢のライブハウスに出た時に、共演した女性シンガーのサポートをやっていて知り合いになり、その時に「機会があったら是非!」という言葉をもらって、今回スケジュールを調整していただきました。まずは3人の皆さんでサウンドの土台を作ってもらい、その上に以前の「誰も知らない」のレコーディングでも鍵盤を弾いていただいた岸田(勇気)さんのピアノを重ねるというやり方でした。みなさん、私の思い描いてるサウンドをすぐに理解してくれて、勝手に信頼関係を感じてましたね(笑)。

──「負けました (naked ver.)」のミュージックビデオは黙々とバスケットボールのシュート練習を繰り返す沖さんの姿がすごく印象的でした。自分の歌で誰かの心を射抜きたい、という意思みたいなものを感じたのですが。

沖:そこまで感じてくれたのですか(笑)。この「負けました」って曲が出来た時に、今となっては笑い話かも知れないですが、色々と過去の“ああ、この日は負けたなあ”と感じた出来事を思い出したんです。そのうちのひとつに自分の学生時代のバスケの部活動の事が印象に残っていて。すごく下手だったんですよ、部員の中で(笑)、後輩からもどんどん抜かされるっていう立場。試合に出てるのは同級生と後輩たちで。でも、その時も試合に出て頑張っている友達の姿を見ながら“悔しい。どうにかしてやりたい”って気持ちはなくて、どこかあきらめていたと思うんですよね、“自分は応援する立場なんだ”って。そんな自分の姿をコーチたちが見ててくれて、最後の引退試合でコートに出る事ができたんです。でもやっぱり、想像以上に思ったようには動けなくて、すぐにまたベンチに戻されて。最後の試合も結局、応援する立場になったんです。その時のうまく動けなかった気持ちとか、帰り道に一人で“本当に何も出来ないで終わっちゃったなあ”って思った事とか、今でも割と鮮明に覚えていて。でもそれって学生時代とかの誰もが共通するエピソードなのかなって思ったり。


──どうやったら自分の歌が共感してもらえるのだろう、という気持ちがますます強くなっているようにも感じました。

沖:今までの、自分が中心にいてそこから歌を作ってゆくというやり方だとキツかったというのはあります。「負けました」のリリースまでの1年間っていうのは“どういう歌が自分にとって良いんだろう”という気持ちがあって。テーマと曲が浮かんだ時にすごくシンプルな言葉で作ることが出来たので、自分の中で気持ちの整理が出来た感じです。負けた人にスポットライトを当てている曲ではあるんですけど、単純に“負けても大丈夫だよ”って曲にはしたくないっていうか、出来ないっていうか。落ち込んだ時は陽に当たりたくない時もあると思うので。

◆インタビュー(2)へ
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