【連載】Vol.141「Mike's Boogie Station=音楽にいつも感謝!=」

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【伝説の音楽雑誌 ティーンビート ビートルズ特集保存版】


提供:シンコーミュージック・エンタテインメント

1960年第中期から後期、ちょうど僕がティーンだった頃に音楽参考書として毎日鞄中に入れて持ち歩き授業中に必死に“勉強”していたのが「ティーンビート」。勿論「ミュージックライフ」も邦人アーティストが表紙を飾っていた頃から愛読していた。でも男女の比率から言うとMLは女の子中心、TBの読者はほとんど男性で年齢層も高かった。TBはアメリカン・ヒット・チャート&ソング、リズム&ブルース、ローリング・ストーンズをはじめとした英国新勢力、ベンチャーズ 、そして勿論ビートルズもしっかりフォローしていた。そういえば「ティーンビート」創刊号は1965年9月号、表紙はベンチャーズ。特別付録のフォノシート(ソノシート)は「ベンチャーズ記者会見録音」だった。その後のフォノシートフォノシートはジョニー・ティロットソン、フランス・ギャル、シルヴィ・バルタン‥‥いろいろあった。TBの表紙はその後B4→エルヴィス ・プレスリー…………と続く。


特別付録フォノシート「ベンチャーズ記者会見録音」 from Mike’s Collection

そして何よりその頃チャート・マニアにとってUSからは高くて取り寄せることの出来なかったBillboard誌のHOT100が4週分掲載されていた。勿論R&Bも含めのその動向、海外音楽ニュース、特集記事、とにかくマニアックな内容のは毎週僕らをワクワクさせた。福田一郎さん、亀渕昭信さん、木崎義二さん(編集長)。そしてMLから移籍した編集者の桜井ユタカさん(石橋ひろしさんはユタカさんのペンネーム)と内垣内佳子さん(ユタカさんの奥様)……錚々たる執筆陣がTBを充実した内容で盛り上げていた。勿論ビートルズも精力的に取り上げた。中でも66年8月号“ビートルズ来日記念特別号”は印象深く今でも時折書庫から引っ張り出して懐かしがんでいる。

そんなティーンビート1965年9月号~68年2月号ビートルズ記事を纏め上げたのが本書「伝説の音楽雑誌 ティーンビート ビートルズ特集保存版』(シンコーミュージック・エンタテインメント)である。当時のライバル会社、MLのシンコーからの発行、時代を感じる。貴重な彼らの写真を鏤めながら来日公演、その記者会見の貴重な記録、証言。そしてB4のプライベートな話題からビートルズ・ナンバーの研究までTBならではの切り口がヒット・ソング・マニアにうけた。ブライアン・エプスタインが驚愕した“ビートルズ・ナンバーの徹底的一覧表”(66年7月号)は多くのファンの喝采を浴びた。因みに66年9月号の表紙はストーンズで彼らの特集だったけどそこでの“ローリング・ストーンズ・レコードの徹底的一覧表”も実にマニアックでありファンには大変勉強になった。

改めてB4来日記念版となった66年8月号を読み返すと、当時の社会情勢も思い出させてくれる。現在はグループ解散後にビートルズのファンになった方々が多くなったと思うけど、本書はそんな世代の皆さんによりじっくりと味わって欲しいと思う。本書にも登場する66年8月号からの“座談会 見て聴いて泣いたビートルズ“は、当時のファンの声としてとても貴重だと思う。その出席者の増沢和子さんと中島幸栄さんのお二人は当時僕が会長を務めていたRSFCのスタッフでもあった………。

ティーンビートの表紙、バックカバー、口絵、記事………どの頁を見ても当時流行していたサウンドがすっと脳裏に蘇ってくるのだ。50~60代のフォロワー、それよりずっと若いB4ファンに本書の感想を聞いてみたい。

そしてTB1967年6月号表紙はポール・リヴィアー&ザ・レイダーズ。ユーミンとラジオ番組でご一緒させて頂いた時、彼女は「PR&RのFCスタッフしてました」と語っていた。僕も彼らのサウンド大々好きだ。

☆☆☆☆☆

【ニューオーリンズR&Bをつくった男 ヒューイ・”ピアノ“・スミス伝】


提供:陶守正寛さん

日本でジャズを除けばニューオーリンズの音楽が注目されるようになったのは1970年代中期以降からだった。それ以前はニューオーリンズの旗手としてファッツ・ドミノがR&Bファンの間で知られていたが、74年の御大の初来日公演の会場はガラガラだった。思い起こすと60年代の僕はディキシー・カップス「Chapel Of Love」「Iko Iko」、アーロン・ネヴィル「Tell It Like It Is」といった日本盤シングルを購入したけど、ニューオーリンズ云々ということは露知らずFENから流れてくるUSヒット・チューンとして彼らの楽曲を楽しんでいた。その後我が国でドクター・ジョンの登場でロック・ファンやブルース愛好家にニューオーリンズの音楽が人気を呼び、漸く根付ていった。ご存知の通ドクター・ジョン、ネヴィル・ブラザーズ、アラン・トゥーサンetcが何度も来日した。YANCYらニューオーリンズ音楽を演奏する日本人敏腕ミュージシャンも多い。元ウエスト・ロード・ブルースバンド山岸潤史が90年代中期からニューオーリンズで大活躍していることは周知の通り。

ニューオーリンズの音楽は我が国ではもうすっかりのお馴染みの存在となった。そういえばサントリー・金麦/ザ・ラガーTVコマーシャルは同地の音楽が使用されている。Billboard誌58年4月14日付Top 100 Sides(HOT100は同年10月20日付から)で9位を記録したヒューイ・”ピアノ“・スミス「Don’t You Just Know It 」。

ニューオーリンズのレジェンド、ヒューイ・”ピアノ“・スミスの足跡を纏め上げた素晴らしい書籍が翻訳された。『ニューオーリンズR&Bをつくった男 ヒューイ・”ピアノ“・スミス伝/ジョン・ワート著 陶守正寛・訳」(DU BOOKS )である。

50年代から本格的な音楽活動をスタートさせ「Rocking Pneumonia And The Boogie Woogie Flu」など多くの名作を生みまさにニューオーリンズの音楽史を語る上で忘れることの出来ないヒューイ。著者は彼やその関係者に長年に亘ってインタビューを行った。膨大な記録から纏め上げられたのがこの一冊だ。ヒューイの足跡は勿論のこと、ニューオーリンズ音楽とリズム&ブルースの歴史が多くの史実を鏤めながら記されている。自らシーンの中心に位置しながら、多くのミュージシャンのバックも務め、一方で早くから多くのアーティストが彼の楽曲をカバーしている。またドクター・ジョンほか多くのヒューイ・フォロワーが続いた。ヒューイ・”ピアノ“・スミスはピアノ奏者の百科事典!

本書後半では搾取される黒人アーティストのリアルな側面をヒューイの実生活から描いている。アメリカ史の教科書でもある。

ニューオーリンズ音楽の魅力を再認識させた「ニューオーリンズR&Bをつくった男 ヒューイ・”ピアノ“・スミス伝」。久しぶりにバーボン・ストリートに行きたくなった。

本書にはファッツ・ドミノ、アール・パーマー、ドクター・ジョン、アイヴァン・ネヴィル、山岸潤史、ローリング・ストーンズ、ジェイソン・イズベルetc 僕がインタビューや司会、そして酒席を一緒したことのあるミュージシャン名が続々と登場、よりエキサイトしながら熟読した。陶守さん、今度はアール・パーマー「Backbeat 」を翻訳してください!


ドクター・ジョンと陶守さん 提供:陶守正寛さん

☆☆☆☆☆

【エセル中田とハワイアン・ミュージック/エセル中田・著】


提供:シンコーミュージック・エンタテインメント

第二次世界大戦後の我が国では米国の音楽が一気に人気を呼んだ。ジャズ、カントリー&ウエスタン、そしてハワイアン・ミュージック。

僕がポップ・ミュージックに目覚めた1960年代初頭、大学生の音楽先輩たちからハワイアンの魅力をいろいろ教えてもらったけど、結局アメリカのヒット・ポップス、ロックンロール、リズム&ブルースを聴きまくることになる。ラジオのダイアルをいつもFENにあわせていた。そんな時“Hawaii Calls”という番組に出会い、時どき心地良いハワイの音楽に触れていた。ロックンロール史のように勉強はしなかったけど、癒しのサウンドとしてその後もことある毎にハワイアン・ミュージックを楽しんだ。1970年代~90年代にはエルヴィス ・プレスリーやローリング・ストーンズのコンサート以外にも観光で何度もホノルルを訪れ本場のサウンドを味わった。20年以上前“Hawaii Calls“シリーズ・アルバムがCD化され多くのファンから大拍手が送られたことも思い出す。

ここにご紹介する「エセル中田とハワイアン・ミュージック/エセル中田・著」(シンコーミュージック・エンタテイメント)は我が国におけるハワイアン・ミュージックの足跡をリアルに綴った力作である。著者は日本ハワイアン・ミュージック界の女王、エセル中田さんだ。34年生まれ、高校時代から活動をはじめ50年代後半からはレコードを発表、テレビや映画にも出演。ハワイにも滞在し、その際に“Hawaii Calls”に出演した。

ここではエセルさんの音楽歴は勿論、我が国のハワイ音楽の史実がリアルに記されているのだ。“Hawaii Calls“出演のエピソードをはじめ、ハワイでの数多くの思い出も感動的だ。エセルさんは石原裕次郎、坂本九、加山雄三ほか多くの俳優/歌手とも交流がある。ナット・キング・コールの初来日公演ではステージ上で花束を手渡したのがエセルさんだったという。その記念ショットが本書に登場する。「エセル中田とハワイアン・ミュージック」には彼女の多くのメモリアル・ショットが掲載されている。本書のもう一つの大きな魅力だ。

お仲間と紹介されている山下敬二郎さん、尾崎紀世彦さん。何度かMCさせて頂いたが、その際エセルさんの楽しいエピソードをお聞きしたのを思い出す。

そして元東芝EMI二荒芳忠氏、実はエセルさんの旦那様。僕がこの業界に入った頃にお世話になりました。お二人方のエピソードもしっかり読ませて頂き心温まる思いだった。

アメリカ進駐軍時の音楽活動やその背景など僕の未知の世界が多々登場。ジャパニーズ・ポピュラー・ミュージック史をしっかり学ばせてもらった素晴らしい一冊。久しぶりにエセルさんやドン・ホーのCDを聴いてみよう。映画『ハワイの夜』『パイナップル部隊』の映像も探してみることにしよう!アローハ!!

☆☆☆☆☆

【Charlie's Good Tonight:The Authorised Biography of Charlie Watts】


From Mike’s Libarary

昨年UKリリースされたポール・セクストン著のチャーリー・ワッツ注目の一冊が夏前に翻訳書が登場する予定。

☆☆☆☆☆

【ライヴinfo】

◆リチャード・カーペンター



カレン&リチャードの兄妹、カーペンターズがA&Mからデビューしたのが54年前。1970代には「遙かなる影」「イエスタデイ・ワンス・モア」「スーパースター」「トップ・オブ・ザ・ワールド」……多くのヒットで世界中を圧巻。その素晴らしい作品は我が国音楽の教科書にも採用された。カレン亡き後、リチャードは様々な形でカーペンターズ音楽をしっかりと継承している。Richard Carpenter plays The Carpenters Greatest HitsライヴがBillboard Liveで開催される。

*2023年3月27日 Billboard Live OSAKA
ファースト・ステージ 開場16:00 開演17:00
セカンド・ステージ  開場19:00 開演20:00
http://billboard-live.com/pg/shop/show/index.php?mode=detail1&event=13866&shop=2

*2023年3月29日 30日 Billboard Live TOKYO
ファースト・ステージ 開場16:00 開演17:00
セカンド・ステージ  開場19:00 開演20:00
http://billboard-live.com/pg/shop/show/index.php?mode=detail1&event=13867&shop=1

*2023年4月1日 3日 Billboard Live TOKYO
ファースト・ステージ 開場16:00 開演17:00
セカンド・ステージ  開場19:00 開演20:00
http://billboard-live.com/pg/shop/show/index.php?mode=detail1&event=13868&shop=1
http://billboard-live.com/pg/shop/show/index.php?mode=detail1&event=13869&shop=4

◆ビル・エヴァンス & ロベン・フォード "Blues, Miles & Beyond" featuring ダリル・ジョーンズ & キース・カーロック



マイルス・デイヴィスの門下生として御大の素晴らしさを継承しながらもオリジナリティー溢れる自らのサウンドを求めるビル・エヴァンス&ロベン・フォード はこのところダリル・ジョーンズ 、キース・カーロックとの編成で活動を続けている。このメンバーで新作『Common Ground』を発表。今回のBNTライヴではレイテスト・アルバムをフューチャーしてくれることだろう。勿論ダリルもマイルスの門下生で現在はローリング・ストーンズのサポーティング・メンバーであることは周知の通りだ。ファンキーなステージを期待したい。

*2023年4月14日 17日 Blue Note TOKYO
ファースト・ステージ 開場17:00 開演18:00
セカンド・ステージ  開場19:45 開演20:30
*2023年4月15日 16 日 Blue Note TOKYO
ファースト・ステージ 開場16:00 開演17:00
セカンド・ステージ  開場19:00 開演20:00

https://www.bluenote.co.jp/jp/artists/bill-evans/

◆「Mike's Boogie Station=音楽にいつも感謝!=」まとめページ
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