インスパイアされない音楽は絶対に演らない!

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インスパイアされない音楽は絶対に演らない!

Ladies and gentlemen、Ben Harperは遂に立ち上がります。

いや、まだ立ち上がらないようですが近い将来立ち上がるかもしれません。でもやっぱり、立ち上がらないのかもしれません。

近い将来立って演奏するかどうかはまだわからない」と彼はちょっと笑いながらロサンゼルスの自宅からこう言う。

色んな人から立って演奏するようプッシュされてるけど、まだしばらくは座って演奏すると思う。オーディエンスは僕が座って歌うのが当然と思うようになったから、立って演奏するようにした方が良いのかもしれないけど、わからない

'94年のデビューアルバム『Welcome To The Cruel World』から『Fight For Your Mind』『The Will To Live』とHarperを見守ってきたファンは、彼がオルタナテイブのオルタナティブ(既存のものに替わるもの)・アーティストとして音楽の骨組を築いてきたことを知っている。ラップスティール・ギターを収集したり、大っぴらにスピリチュアルなテーマの詞を作ったり、ライブショーで座りながら演奏したり(ステージの最後に歌う感動的な曲「I'll Rise」まで、とにかく)、彼はポップス業界がしばらくお目にかかったことのない異才である。

いまだ知名度は低く脚光を浴びてはいないが、彼は世界中にファンの輪を広げ、ラジオヒットがないまま演奏会場の収容人数は増え続けている。H.O.R.D.E.ツアーを終え、Pearl Jamの前座を務め、Tibetan Freedom Concertsで演奏したりしてきた。またBeth Orton、John Lee Hooker、Government Muleのアルバムに客演もしている。そして昨年、『Welcome To The Cruel World』のリリース後にツアーをスタートさせて以来長期休暇をとり、その間にHarper夫妻は第二子の誕生を祝い、新居に引っ越した。

彼はいま、自分の身の回りで起こっていることに圧倒されてはいないのだろうか。

その可能性は大だよ。僕を圧倒する用意はできてるからね。僕を圧倒しようとウズウズしているはず。(でも)僕は僕の目の前にある確固たるものから目をそらさないで、着実に一歩づつ前に進んでいくつもりだ」と彼は言う。

彼の目の前にあるものとはニューアルバム『Burn To Shine』で、Harper & the Innocent Criminals(ベース:Juan Nelson、ドラムス:Dean Butterworth、パーカッション:David Leach)がこれまでにリリースしたアルバムの中で最もエレクトリックでバリエーション豊富な曲が収録されている。

このことをHarperに説明してもらうと、彼の最初の3枚のリリースは「3枚合わせて僕の1stレコードで、この3枚を聴いて初めて僕の音楽を理解することができる。そして、このニューアルバムは僕の2ndレコードだと思っている。これを聴くと3部作の2作目だと感じるんだ」とのこと。

ワイゼンボーンのアコースティック・ラップスティール・ギターはフルボリュームのストラトキャスターに取って代わられたが、それでもこのアルバムはHarperの作品だと言える。「Less」や「Burn To Shine」などのロックナンバーに加え、Harperは神秘的なフォーク音楽「Two Hands Of A Prayer」「In The Lord's Arms」、粋なニューオリンズ・スタイルのR&B「Steal My Kisses」、ラグタイムジャズ「Suzie Blue」など聴覚に訴える多彩なフレーバーを盛り込んでいる。

だが、これを新機軸とみなすことはできない。

これは僕の人生の中で僕にとって第二の音楽ムーヴメントの始まりだと思う」と彼は説明する。

新機軸を打ち出すことなんて絶対しない。Ben HarperのハウスレコードとかBen Harperのドラムンベース・レコードとか出すつもりはない。曲にパワーがある限り、どんなスタイルでも自分を表現することができるし、それをソウルフルにすることもできる。それを自分自身の声にすることもできると思う

加えて自分はどちらかと言えば音楽について行くタイプだと付け足す。

ここでは音楽が導いてくれていて、大部分自分が何をやっているのかまったくわかってない。いままで以上に強く、ソングライティングのワザというものにより親近感を感じている」と彼は言う。

昔はソングライティングのプロセスの部外者のように感じていたけど、いまは親友みたいな気分。でも同時に、自分が統率しているとは思えない

だから、「Suzie Blue」みたいな曲ができると、彼は何の抵抗もできない。

それが僕のやり方。曲を書くときは、いつも新しいコードや新しい指使い、新しい声域を探し求めている」とHarperは言う。

もしディキシーランドジャズ、クラシック、パンク、ロック、場合によればちょっとメタルに聞こえるサウンドが作り出されても、それは僕がそこでインスピレーションを感じるからだよ

これまでの3リリースと同様、『Burn To Shine』ではHarperがより時間をかけて人生のスピリチュアルな面について詞を作っているのがうかがえる。彼はこのトピックに取り組んだことはあるが、アルバムにスピリチュアルな曲を収録することは彼にとってみれば意図的に決定したことではない。

それは音楽的な充足感のためであって、自分自身をスピリチュアルに充足させるための意図的なモチベーションじゃない」と彼は言う。

歌っている内容に関係なく、ギターを抱えた瞬間にスピリチュアルになる。というのは音楽は自由であり、自由であることはスピリチュアルであることに一番近いと感じられるからだ

Harperは自分のスピリチュアルな生き方について深入りはしたくないと言う。

人前では僕は敬虔な“神の御加護を”タイプじゃない」と彼は説明する。

毎日息を吸い、息を吐くことが実感できると神に感謝する。それは事実。でも、神への感謝のノルマを達成するために表だってそんなことをする必要はない。僕にとって表だってそうすることが人生の最大の目標じゃない。僕はハートの中で感謝の念を強く感じ、そのことについて歌い、そのことについて書く。なぜならそれはBen Harperを構成している一部分、つまり単に僕の一部分であって、僕をいまの僕にしているものだからだ

単なる一部分とは良く言ったもの。Harperのことをスピリチュアルシンガー、またはワイゼンボーンのスライドギター演奏者、またはオルタナティブのオルタナティブと呼ぶことができるが、彼を面白くしているのはこれらの要素のブレンドである。

僕に異なるスタイルで作曲し、異なる声で歌い、異なるスタイルで演奏する才能がなければ、僕は常にインスパイアされなくなる」と彼は言う。

僕は絶対インスパイアされていないときは音楽を作らない。僕は絶対ロックンロールの世界でみじめに年をとりたくない。もし僕がインスパイアされ、音楽が僕をインスパイアするなら、僕は続けて音楽を演奏する。けど、僕の音楽を愛してくれているファンを裏切ることは絶対にないし、僕の人生に与えられた音楽の恩恵を裏切ることは絶対にしない。インスパイアされていない音楽を演奏することで僕自身を裏切ることも絶対にない

そう言って、Ben Harperはリハーサルに向かった。

おそらくそこで彼とInnocent Criminalsはあなたのお手元にインスピレーションをお届けする新しい方策について話し合っていくはずである。

by David John Farinella

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