俺には傲慢になる理由がないんだ。みんなのための“キモチイイ”音楽を提供しようとしているだけさ。

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俺には傲慢になる理由がないんだ。
みんなのための“キモチイイ”音楽を
提供しようとしているだけさ。

確かに、彼は弟分のCanibusのレビューに憤慨して、あるアーバンミュージック誌のエディターに銃を突きつけた罪に問われている。だが、LAUNCHがFugeesWyclef JeanにSmokin' Groovesツアーの中休みにインタヴューしたとき、彼はまったく非暴力的で人柄の良さを見せてくれた。

アトランタでのインタヴューの間、Wyclefはハイチでの貧窮した子供時代について話を聞かせてくれた。クレオール語が母国語のブードゥー教司祭の孫であるWyclefは、いかにして11歳で音楽に目覚め、13歳でギターを始め、ラップ音楽で英会話に磨きをかけたかを話してくれた。

Wyclefの最新ソロアルバム『The Carnival』ではほかの様々な音楽からの影響とスタイルがフィーチャーされ、彼がアーバンミュージックに対する固定観念を払拭しようとしているのがうかがえる。

カントリーのファンで『The Carnival』を聴いている人を知っている」と彼は言う。

このアルバムには、Wyclef自身が作曲,指揮した62人編成のオーケストラ楽曲をフィーチャーしたグラミー賞ノミネート作品「Gone 'Til November」が収録されている。弱冠27歳の自称「金のネックレスをしたドレッドロック野郎」にしては悪くない。


LAUNCH:
あなたの経歴は非常にユニークで、あなたの音楽について多くを語っています。あなたはどこでインスピレーションを得ているのですか。

WYCLEF:
基本的に俺の強さは俺の生い立ちにある。俺は思いっきり貧乏なうちの子なんだ。俺はハイチで育った。ひいじいさんはキューバ出身だから、俺の家族には黒い肌の子供と白黒混血児がいるんだ。弟の1人といとこの何人かはまったくの白人に見えるんだ。俺はゲットーで貧乏しながら黒い肌の人間として育った。当時はブードゥーがはやっていた。俺のじいさんはブードゥー教の司祭だったんだ。俺の人生は多くの場面で精神性とかかわりあっていた。目を閉じて、俺がどこからきたか思い出すことができる。(歌いはじめる)“Vanity, vanity, all is vanity.(空の空なるかな、すべて空なり)”…身につけている金のアクセサリーもいつか手放すだろう。車もいつか手放すだろう。残るのは音楽と作品だけ。これが人を助け、仕事に励むためのインスピレーションの源だ。

LAUNCH:
いつアーティストになろうと決心しましたか。また、何がそうさせたのでしょうか。

WYCLEF:
ただ音楽を愛してるからであって、子供の頃、11歳くらいから音楽をやっている。でも音楽で成功することも大切だと思っていた。他のアーティストも愛してるからとか言ってるけど、まあ愛のためかもしれないけど、成功したいのも確か。俺の成功によって、貧しい家の生まれでも社会に飛び出して自分の才能を発揮できることを何百万人もの子供達に証明することができた。プロになってから7年になる。大学に入って専攻をまだ決定していなくて、専攻を決定するやいなやそれに集中するといった感じだ。音楽を“専攻”すると決めるやいなや、ビジネス、マネージメント、制作など広い意味で自分のキャリアに集中するようになった。

LAUNCH:
最近あなたがハイチに帰省したときのことについて記事を読みましたが、とても感動的な経験だったとおっしゃってましたよね。自分のルーツに戻ったときの感慨について聞かせてください。

WYCLEF:
ハイチ行きの飛行機に乗り込んだときは、まじで気分が高ぶってたよ。飛行機が着陸したときはまじでジーンときて涙がでてきた。あの経験は俺にとって感動的だったよ。アーティストとして成功したことを除けば、俺も彼らの一人。飛行場で出迎えてくれた子供達は本当に貧乏してるけど、金が欲しいわけじゃなく、クールに振る舞い、サインをもらい、話したいから俺に近づいてくる。彼らにとっちゃ俺から1ドルもらうよりもそれははるかに価値のあることなんだ。俺にとっちゃそれがすごい。

LAUNCH:
あなたのキャリアは多岐にわたり、多数の色んなアーティストをプロデュースしてきましたよね。

WYCLEF:
それが俺がこの業界に存在している理由と言えるね。俺は現在のヒップホップ界のQuincy Jonesさ。それが俺の仕事。俺は音楽を提供する、言っている意味わかるかな。偽物じゃない。俺はスタジオに入って、レコードをかけて、ループするだけで自分の作品としてリリースする必要がない。アーティストを探すには、本物を届けるアーティストを探さなくちゃ。50:50のバランスが必要なんだ。俺がWill Smithと仕事し、Canibusと仕事するとすれば、この2つの仕事はまったく違う仕事になる。Canibusと仕事すると、“Getting' Jiggy Wit' It(金儲け主義)”とは反対のストリートの音楽作りができる。金儲け主義にはしっても、ファンはそう感じないだろう。俺は一緒に仕事するアーティストごとに違うものを提供するよう心がけている。

LAUNCH:
あなたのソロアルバム『The Carnival』について聞かせてください。これはFugeesの一員としての活動とは異なるあなたの一面を見せていますね。このアルバムで達成しようとしたのは何ですか。

WYCLEF:
(Fugeesの)『The Score』をリリースした1年後に『The Carnival』をリリースしたんだけど、これは5000万枚売るつもりで出したもんじゃないんだ。これは俺の主張。これはWyclefがどんな人間かを表現している。でも、『The Carnival』の制作では、いましている仕事をすることができる。これはアーティストとして、プロデューサーとして、映画のサウンドトラックが作れるミュージシャンとして、色んな音楽の才能をもつ万能ミュージシャンとしての俺を確立した。「ほら、あの“一発屋”、あの「'Killing Me Softly」を歌ってたやつ」なんて言われたくないんだ。

LAUNCH:
万能であることがあなたの創造力を刺激しているように思われますが、ヒップホップはアーティストの多様な才能をさらに活用できると思いますか。

WYCLEF:
俺がしようとしていることは、何がラップで何が音楽かというジャンルの壁を破ることだよ。カントリーのファンで『The Carnival』をもっている人を知ってる。ラップと言うと人は自動的に“撃て、バンバン”を想像する。『The Carnival』を聴いてみると、ラップというジャンルを超えたものが詰め込まれているのがわかる。これはヒップホップの原点“ヒップホップザヒビー”を超えるもの。ラップのレコードはキモチイイ音楽ではなくなっている。リリースから半年たっても、クラシックとしてカムバックすることができない。Slick Rickのレコード、昔のLL Cool Jのレコードはキモチイイ音楽だ。でも、いまのアーティスト、いまのラップというジャンルの音楽を20年後にかけてもキモチイイ音楽かどうかわからない。当然(Snoop Doggの)『Gin & Juice』とかクラシックもある。今ではこれはステートメントレコードになっている。

LAUNCH:
あなたの曲を聴いていると、他のラップではよく使われる放送禁止用語や性差別用語があまり使われていませんね。あまりにも多くのアーティストが暴力的な言葉や性的描写を歌詞に盛り込むことでオーディエンスにショックを与えようとしているように思われますが。

WYCLEF:
そういうアーティストとは違う環境に俺は育った。俺の育った環境では女を“ho(娼婦)”なんて呼ばなかった。ただそういうふうに育てられただけさ。俺は女をビッチなんて呼ばないよ。その女が俺にそう呼んでほしいと思わない限りね。ビッチと呼ばれると興奮する女もいっぱいいる。ただ、道を歩いてて「おい、ビッチ!」なんてことは言わない。それは声の調子とか、歌詞の中でどのように使うかによると思う。ボキャブラリーは、言葉をどのように選択するかによると思う。

LAUNCH:
演奏法も楽器をどのように選択するかによりますよね。「Gone 'Til November」について聞かせてください。ヒップホップでオーケストラが登場するのは珍しいですよね。

WYCLEF:
俺は高校でジャズを専攻してジャズバンドのメンバーだった。俺が何をしようと、音楽的に受けた影響が現れるんだ。交響楽団と録音をした。楽器それぞれの楽譜を書いて、俺はスタジオの中、62人のオーケストラはスタジオの外にいた。彼らは俺の顔も俺がどんなやつかも知らなかったんだ。彼らが「この作曲家は天才だ」とか言っているのが聞こえた。俺を実際見るまではそんなことを言っていた。そして、俺がスタジオの外にでて「指揮者のWyclefです」って紹介したら、「ええっ、この金のネックレスを首からぶらさげたドレッドロック野郎がどうやってこの音楽を作ったんだ」って驚いてたよ。俺は固定観念を打ち破ったんだ。そして指揮棒を手にとって指揮し始めた。ヒップホップのノリでね。あれは俺にとっても彼らにとっても貴重な経験だったよ。もう新しいミレニアム、新しい時代に生きているって感じがした。「Gone 'Til November」ではヒップホップと弦楽器の演奏が融合されたんだ。

LAUNCH:
あなたの妹Roseさんについて聞かせてください。彼女は何曲か制作を手伝っているし、あなたの作品のご意見番であるとか聞いているのですが。

WYCLEF:
そうさ、あいつは若かったときの俺みたいだよ。唯一違うのはあいつは欲しいものはすべて与えられ、甘やかされている。あいつは『The Score』が気に入っていて、良い作品だと思ってる。でもPuff Daddyの『No Way Out』の方が気に入ってるそうだ。ある日あいつがキャンプに行く準備で荷物をつめてるとき、「それじゃ、アニキ、『No Way Out』のCDを25枚送って。友達にあげるから。それから『The Carnival』も10枚ほどお願い」なんて言うんだ。俺は「おいおい、俺はおまえの兄貴なんだぜ、応援してくれないのかよ」ってぼやいてしまった。そしたらあいつ非情にも好きなように批判するんだ。「沈んだ気分になるのはイヤだから、とにかくPuffyを送って」だって。あいつが正しかったよ。ときたま年をとると「なんでPuffyだけが何でも独り占めするんだ」とか思ってしまう。でも、冷静に考えて、みんながやっていることをできる限り多くチェックする必要がある。何がその音楽を特別にし、良いものにしているのか。PuffyがしてることとかWu-Tangがしてることとか。回りまわってるんだ。それがその音楽をユニークにしてるんだ。Roseは良い耳をしてる。あいつはSantanaが気に入っているらしい。「アニキ、これってヘン」「これイケてる」とか意見するんだ。新しいマキシシングル「To All The Girls I Cheated On」をリリースしたんだけど、3種類の違うミックスを作るのはどうかってアドバイスしてくれた。このビデオクリップには3つのバージョンが1つに詰め込まれている。いいぞRose! でもいまあいつはソングライティングに興味をもっている。最近Myaに提供する曲の制作を手伝ってくれた。「アニキ、私の作った曲をチェックしてもらったほうがいいわよ」なんて言うんだ。ほんと鋭いよ。

LAUNCH:
あなたとお話していると、すごく気さくで堅実な人という印象を受けるのですが、あなたほど成功した人ってともすれば傲慢になりやすいですよね。

WYCLEF:
俺には傲慢になる理由がないんだ。俺はすごいやつなんだって感心してもらおうとか思ってない。俺はただ上司とケンカしながらも仕事に励んでる人達、バーガーキングで働くのが嫌な人達、部下に呆れ果てている上司達に音楽を提供しようとしているだけ。みんなのための音楽をね。これは“キモチイイ”音楽さ。ファンと現実の世界を忘れてしまうと、Vanilla Iceとかの二の舞になる。

LAUNCH:
バーガーキングについてふれられたのでどうしても聞きたくなったのですが、しばらくバーガーキングで仕事されてたんですよね。その経験で何を学びましたか。

WYCLEF:
学んだことねえ、仕事中にメシを食ったらクビになることかな。店長は部下とのコミュニケーションをもっと良くする必要があると思う。彼らは部下をありがたくおもってないし、部下には将来がないみたいに振る舞う。バーガーキングで働いてたとき、食べ物を扱う場合は衛生状態が非常に重要だってことも学んだよ。歌を作るのは全部頭ん中でやってた。俺はあの場所を奴隷工場と呼んでたんだ。奴隷みたいに、綿花を摘むときは心を閉ざす。彼らは「Amazing Grace」を歌っていた。俺はハンバーガーを30個、フライドポテトを6つ作ってるうちに頭ん中で何曲も歌を作ってたよ。だから、俺はくじけたりなんかしなかったんだ。当然クビになったよ、強盗があってさ。そいつらが入ってきて「そんじゃあクレフ君(WYCLEFのこと)、カウンターの中のもの全部出しな」って言うから、俺は「わかりました、わかりました、防犯ボタンなんか押してませんから」みたいな感じ。次の日、店長は俺といとこがつるんでやった内部犯行だと思ったみたいでクビになったよ。

LAUNCH:
つるんでやったというのはほんとですか。

WYCLEF:
さあ、どうだろ。ま、俺の本に書いてあるからそれを読んでくれ。

LAUNCH:
LL Cool JはレコードであなたのことをBob Marleyモドキと呼んでますが、そのことについてはどう思いますか。

WYCLEF:
同じカテゴリーに入れてもらえただけでもすごいありがたいことだと思うよ。俺もハイチというカリブ海の島の出身だから、Bob Marleyは子供のときから俺の憧れの人だった。彼の母親が黒人で父親が白人だったこともあるから、彼は色んな人種を分離させるんじゃなくて融合しようとがんばっていた。俺も同じことをしようとしている。みんなが仲良く一緒に住めるように。彼の音楽は、マリファナを吸っていようがただリラックスしているだけであろうが、聴いていて“キモチイイ”音楽だった。Jimi Hendrixみたいに。彼はちょっとクレイジーなことも色々していたけど。Marvin GayeとかDonnie Hathawayも同じカテゴリーだ。

LAUNCH:
音楽では次に何をする予定ですか。

WYCLEF:
13歳からギターを弾いてるから次はギターだけのアルバムを作る予定。俺のカリブスタイルとロックスタイルをミックスさせて。ミュージシャンのためのアルバムを作りたいね。ギターが色んなメロディーを奏でてるような。ブラジル風ギター、ロックギター、クレイジーなのとか全然違う感じの曲を10曲作ろうと思ってる。良いものができると思うよ。

LAUNCH:
クレオール語で曲を作る予定は。

WYCLEF:
英語以外の言葉で曲を作るのはクールだと思う。そもそも俺はラップを聴いて英語を勉強したんだ。変な話だと思う人が多いけど本当だ。発音を習得しようとしてたんだ、ただそれがしたかっただけ。おふくろがいつも「あんた何やってんの」ってクレオール語で言ってたよ。学校に行ってるときは英語をあまりうまく話せなかった。“love(愛)”って言葉だけ覚えてた。誰かがいちゃもんつけてきたら「おまえにやる“love”はないよ」って言ってやった。こうやって英語を覚えたんだ。そうやってバイリンガルになった。学校で英語を教えるんだったらこれは一番いい方法だと思うよ、生徒は自分の好きなことなら集中できるからね。

LAUNCH:
ラップを聴きながら英語の勉強したんですか。子供のときに好きだったアーティストにはどんな人がいますか。

WYCLEF:
俺が子供の頃はEarth, Wind & Fire、Parliament、Kool & the GangCab Callowayとかのテープをよく見ていた。アメリカに来たときは、彼らのことを頭に描いてた。

LAUNCH:
ところで、いま映画の脚本を書いているそうですね。

WYCLEF:
いま、俺の人生とハイチからアメリカにきた2人の若者の話の脚本を書いている。2人のうち1人はミュージシャンに、もう1人がギャングになるという話。今はそれだけしか言えない。

LAUNCH:
Eddie Murphyの新作映画のサウンドトラックも制作中なんですよね。

WYCLEF:
そう、「Life」っていう映画。Eddie MurphyとMartin Lawrenceが出演している。サントラはこれが初めてなんだ。いま俺にとって重要な仕事だ。俺はいま27歳。思いっきり偉そうにハリウッドに殴り込むつもりさ。既成概念をことごとく打ち破ってやる。面白くなりそうだ。

by Billy Johnson Jr

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