クイーン結成30周年の今、上質トリビュート誕生!

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クイーン結成30周年の今、上質トリビュート誕生!

文●根来伸充

全国のクイーン・ファンから注がれる熱い視線──聴きごたえはばっちり!

オムニバス

『クィーン・トリビュート~Stone Cold Crazy~』

VIDEOARTSMUSIC VACM-1173
2001年6月27日発売 2,548(tax in)

1 ストーン・コールド・クレイジー
2
プレイ・ザ・ゲーム
3
ファット・ボトムド・ガールズ
4
愛にすべてを
5
愛という名の欲望
6
秘めたる炎
7
マイ・ベスト・フレンド
8
アイム・イン・ラヴ・ウィズ・マイ・カー
9
キラー・クイーン
10
永遠の翼
11
ウィ・ウィル・ロック・ユー

嬉しい、ハッキリ言ってすごく嬉しい。

イギリスの国民的英雄、いや、もはや世界中の英雄、我らがQUEENの新しいトリビュート・アルバムが、フレディ・マーキュリー没後10年、QUEEN結成30周年の今、発表された!

“新しい”というのは、QUEENファンなら御存知であろうが、以前にも数種類、QUEENのトリビュート・アルバムは発表されている。数年前に発表された『DRAGON ATTACK a tribute to QUEEN』(ビクターエンタテインメント株式会社、VICP-5832)などがそれである。

そのアルバムはどちらかといえば、HR/HM寄りの内容だったが、今回の『クイーン・トリビュート~STONE COLD CRAZY(STONE COLD QUEEN | A TRIBUTE)』は、参加アーティストこそHR/HM勢が多いものの、楽曲はとても幅広く選曲されており、より楽しめる内容となっている。

ここ数年、トリビュート・アルバムのブームとなっていて、いささか食傷気味という声もあるし、たしかにガッカリものも少なくない。

しかし、トリビュート、大歓迎である。特に、QUEENのように、もうオリジナル・メンバーでの再結成は絶対あり得ない、しかも未発表音源も出尽くしたアーティストのトリビュートなら、なおさらのコトである。ちょっとでも、そのアーティストに関する音源や映像なんかにすがりたい! ファンなら誰しもそう思ってしまうハズである。

以下、各曲ごとに参加アーティストの紹介と、解説を記す。

各曲について、その流れを解説していくが、中には、少々辛口かな?と思う部分もあるかもしれない。…が、それは、QUEENに対する溢れんばかりの愛情と、このアルバムに関する多大なる興味から来るものとして、寛大なる貴兄方々には御理解願いたい。

モチロン、QUEENファンは当然、参加アーティストのファンも必聴の1枚であることは言うまでもない。

をクリックし、試聴しながら御熟読あれ!
「STONE COLD CRAZY」(from『SHEER HEART ATTACK』)
■ロビン・ザンダー
(vo/CHIEP TRICK)
■スティーヴ・スティーヴンス
(g/BILLY IDOL,ATOMIC PLAYBOYS,VINCE NIEL,氷室京介他)
■ビリー・シーン
(b/TALAS,DAVID LEE ROTH,MR.BIG他)
■マット・ソーラム
(ds/GUN N' ROSES,SLASH'S SNAKEPIT他)
METALLICAがカヴァーすることで、一躍有名になったというか、むしろQUEENのハードな一面が再評価されるキッカケになった曲。

Voのロビンだが、QUEENとCHEAP TRICKのファンは、重複することが多いように思う。どちらのバンドも、ハードでありつつポップさも持ち合わせ、またアイドル扱いされながらも、実は実力派!などと、共通点も多いからであろうか。

そんなワケで、ロビンの出来が悪いハズがない。見事にこの曲を伸びのある歌唱で基本に忠実に消化している。gのスティーブ、bのビリーは、その幅広い音楽性とテクニックが特徴で、基本的にはオリジナルに忠実だが、ギター・ソロではサスガのツボを押さえたアグレッシブなプレイが光る。

スティーヴ・スティーヴンスの才能は知っていたつもりだが、改めながら、凄いプレイヤーだ。

ちょうど、QUEENとMETALLICAヴァージョンの中間に位置するといった仕上がりか?
「PLAY THE GAME」(from『THE GAME』)
■ミッキー・トーマス
(vo/JEFFERSON AIRPLAINE,STARSHIP)
■マーティー・フリードマン
(g/カコフォニー、MEGADETH他)
■チャック・ライト
(b/QUIET RIOT,HOUSE OF LOADS他)
■グレッグ・ビソネット
(ds/DAVID LEE ROTH他)
難しい曲を選択したな、というのが実感。何故、メガデスを脱退して、今、注目すべきマーティーがこの曲で?

たしかに名曲だし、みんな精一杯がんばってはいるのだが、この曲のような、モロQUEENな曲はやはり、カヴァーが難しいのは否めない。どうせなら、思いきって、もっと自分達流にアレンジしてもよかったのでは? 逆に、フレディの天性の素晴らしいヴォーカルを再確認する結果となってしまったかも。でも、ま、マーティーは相変わらず彼の音色だし、随所でマーティー節が聴けるから、それだけでもOKかな。…とは言え、ブライアン・メイへのリスペクトが充分に伺えるそのプレイは、この作品ならでは。聴いて欲しい。
「FAT BOTTOMED GIRLS」(from『JAZZ』)
■ジョー・リン・ターナー
(vo/RAINBOW,DEEP PURPLE他)
■レブ・ビーチ
(g/WINGER,DOKKEN他)
■トニー・フランクリン
(b/BLUE MURDER,WHITESNAKE他)
■エリック・シンガー
(ds/KISS,ALICE COOPER BAND他)
ドライヴ感溢れる、ライブではお馴染みの曲。あまりフィーチュアされないが、改めてブライアンのリフ作りの素晴らしさに気づく。全体的にオリジナルに忠実なコンパクトな仕上がりで、レブのgも自由自在にドライヴしまくっている。

…が、voのジョーの、この曲での起用はちょっと疑問が残る。RAINBOW時代の「I SURRENDER」に代表される様に、どちらかと言えば、彼は、メロディーを切なく歌いあげるタイプのvoで、こういった曲には、イマイチ、不向きなような気がしてしまうのだが。またの機会があれば、ロジャー・テイラー作品を是非ジョーにカヴァーしてもらいたい。
「SOMEBODY TO LOVE」(from『A DAY AT THE RACE』)
■ジェフ・テイト
(vo/QUEENSRYCHE)
■ダグ・アルドリッチ
(g/LION,BAD MOON RISING他)
■カーマイン・ロジャース
(b/BABY GRAND,DAVID BOWIE,GLOBE他)
■アインズレー・ダンバー
(ds/FRANK ZAPPA & MOTHERS,WHITESNAKE他)
まさにQUEEN節といった、彼等の代表曲の1つであり、超名曲。だから、「PLAY THE GAME」同様、カヴァーがとても難しい曲でもある。

フレディ没後、ウェンブリー・スタジアムで行われたフレディ追悼コンサートでは、大人数のゴスペル・コーラス隊をバックに、ジョージ・マイケルが熱唱したが、あれはあれでとても素晴らしかった。あれに比べると、どうしてもコーラス面でも聴き劣りしてしまうが、情熱たっぷりに歌い上げるジェフもなかなか興味深い。

全体的にはオリジナルに忠実。gのダグもおとなしめで、このテイクと同時に、もっとドライヴ感のあるライヴ・ヴァージョンをカヴァーしたものも聴いてみたいと感じた。
「CRAZY LITTLE THING CALLED LOVE」(from『THE GAME』)
■ガナー&マシュー・ネルソン
(vo/NELSON)
■アルバート・リー
(g/ERIC CRAPTON他)
■マイケル・ポーカロ
(b/TOTO)
■パット・トーピー
(ds/MR.BIG,ODD MAN OUT他)
当時、音楽活動意欲を失っていたジョン・レノンが、この曲にインスパイヤされて、再活動を始めたという、QUEENにしてはめずらしいロカビリー調の曲。

ネルソン兄弟のヴォーカルも、カントリー・ギターの名手、アルバートのプレイも小気味よくて、思わずニンマリしてしまうデキ。

特に、ブライアン・メイは、どちらかといえば、あまり泥臭くない、洗練されたギタリストなので、この曲に関してはアルバートのプレイは本家をしのぐ程のハマリ具合かも。
「FIGHT FROM THE INSIDE」(from『NEWS OF THE WORLD』)
■ジャック・ブレイズ
(vo/NIGHT RANGER,DAMN YANKEES他)
■ジェイク・E・リー
(g/OZZY OSBOURNE,BADLANDS他)
■トニー・レヴィン
(b/KING CRIMSON,LIQUID TENTION他)
■トニー・トンプソン
(ds/CHIC,POWER STATION,BABYFACE他)
ロジャー・テイラー作曲、voの曲。

初期のQUEENのアルバムでは、ロジャーの曲は、中休み的役割というか、少々退屈気味(失礼!)な存在だったが、今回のこのカヴァーで、見事、息を吹き返したというか、新しい魂が込められたというか、とにかくいいカンジに仕上がっている。

ジェイクは相変わらず自由奔放なジェイク節なのだが、それがいい方向に向かったのかもしれない。

元々、初期のロジャーの曲ではブライアン・メイは何故か遠慮がちで、ちょっと消化不良だったのだが、今回では、それが解消されていて、スッキリしたし、改めて、“ああ、この曲って、こんなにカッコよかったんだ”と再確認した次第。
「YOU'RE MY BEST FRIEND」(from『A NIGHT AT THE OPERA』)
■ジェイソン・シェフ
(vo/CHICAGO他)
■リッチー・コッツェン
(g/POISON,MR.BIG他)
■マルコ・メンドーサ
(b/BLUE MURDER,WHITESNAKE他)
■ヴィニー・アピス
(ds/DIO,BLACK SABBATH他)
この曲にCHICAGOからジェイソンという人選もまた面白い。プロデューサーであるボブ・キューリック(元KISSのブルース・キューリックの実兄)&ブルース・ブーレット達の人脈なのだろうか。

しかし、意外とハマっていて、オリジナルに忠実な仕上がりにまとまっている。リッチーがさぞかし弾きまくるかと思いきや、意外とシンプルなプレイに徹している。さすが、推し退きを心得ている名ギタリスト! が、モチロン所々で聴き所もあるので、要チェック。
「I'M IN LOVE WITH MY CAR」(from『A NIGHT AT THE OPERA』)
■キップ・ウインガー
(vo/WINGER)
■スティーヴ・ルカサー
(lead g/TOTO)
■ボブ・キューリック
(rhythm g)
■フィル・スーザン
(b/OZZY OZBOURNE他)
■フランキー・バネリ
(ds/QUIET RIOT,W.A.S.P他)
いやあ、驚いた! キップの声や歌いまわしがロジャー・テイラーそっくりで、“コレ、ロジャーじゃないの?”と疑いたくなるくらいだ。まぁ、ヴォーカル・エフェクトの効果もあるだろうけど。

この曲もロジャーによる曲。また、このヴァージョンも「FIGHT FROM THE INSIDE」同様、オリジナルを上回るデキかも?

gは御大、ルカサーだし。ツボを押さえつつも、最近の彼らしいオリエンタルなフレーズも要所要所で聴ける。rhythm gにはボブ・キューリックが参加しているのも興味深い。
「KILLER QUEEN」(from『SHEER HEART ATTACK』)
■グレン・ヒューズ
(vo/DEEP PURPLE,BLACK SABBATH他)
■パット・スロール
(g/AISIA,HUGHES,THRALL他)
■ステュ・ハム
(b/STEVE VAI,JOE SATORIANI他)
■カーマイン・アピス
(ds/BECK.BOGERT&APPICE,OZZY OSBOURNE他)
これぞトリビュートの醍醐味! 大御所グレン・ヒューズがウィスパー・ヴォイスでささやく様に、時には叫ぶように歌い上げる、思い切ったアレンジがいい意味での異色なデキ。QUEENの超有名な代表曲を完全に自分のものにしている。このアタリはサスガ。

しかもギターはパット・スロール…つまり、ヒューズ・スロール・バンドってわけだ! バックはあくまでも基本に忠実で、それがまたグレンのヴォーカルを引き立てている。

この曲みたいにバッチリハマれば、こういうアプローチもアリだなあ。
「SPREAD YOUR WINGS」(from『NEWS OF THE WORLD』)
■トミー・ショウ
(vo/STYX,DAMN YANKEES他)
■ドゥージル・ザッパ
(g)
■ティム・ボガート
(b/BECK.BOGERT&APPICE,VANILLA FUDGE他)
■スティーヴ・フェローネ
(ds/AVERAGE WHITE BAND他)
おお!シブイ選曲。

ファンの間では隠れた名曲として名高いジョン・ディーコン作のパワー・バラード。トミーが感情たっぷりに歌い上げれば、ドゥージル・ザッパがブライアン十八番のギター・オーケストレーションを自分なりに見事に消化して披露する。

こういう愛情に満ちたアプローチも嬉しい。うん、満足の出来。
「WE WILL ROCK YOU」(from『NEWS OF THE WORLD』)
■ジャック・ラッセル
(vo/GREAT WHITE)
■ブルース&ボブ・キューリック
(g)
■ジェフ・ピルソン
(b/DOKKEN,DIO,WAR&PIECE)
■ミッキー・ディー
(ds/MOTORHEAD,DOKKEN他)
有名なオリジナル版は『世界へ捧ぐ』1曲目に収録されているが、そのHRヴァージョンが2枚組の名作ライヴ版の『LIVE KILLERS』のオープニング曲として収録されている。

今回は、そちらのライヴ・ヴァージョンをカヴァー。ジャックがフレディを意識して歌っている様が微笑ましいし、ブルースとボブ兄弟の共演も、こういう企画版ならでは。ブルースは、あまり自由に振る舞えなかったKISS時代より伸び伸びプレイしているように思えてしまう。

なお、今作品の全11曲、ほぼ全編にわたって、デイヴィッド・グレン・エイズレー(ANGEL他)とアレックス・リガートウッド(SANTANA他)がバックグラウンド・ヴォーカルを、ポール・テイラー(WINGER他)がキーボードを担当している。

特にバックグラウンド・ヴォーカルの二人は、何せ、相手はあのQUEENなのだから、さぞかし大変だったことだろう。高い評価を得てもいいところだ。
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