独自の世界を築き上げたリンキン・パーク、ラップ・メタルを“うた”に昇華させたステージ

ポスト
~

独自の世界を築き上げたリンキン・パーク
ラップ・メタルを“うた”に昇華させたステージ

デビュー・アルバム『ハイブリッド・セオリー』は世界で1,500万枚という
驚異的なリリースを誇るリンキン・パーク
今年リリースされた2ndアルバム『メテオラ』は 世界15ヶ国で1位を獲得。
“リンキンっぽさ”はそのままに、スケール感、サウンドの多彩さを増したその新作を携え、
2003年10月待望の来日公演を行なった。その横浜アリーナ公演の模様をお届けしたい。

チェスターの熱唱、DJハーンの繰り出すエレクトロニカな'00年代のサウンド

 セットリスト
2003/10/21 @横浜アリーナ

1. PROJEKT REVOLUTION INTRO
2. DON'T STAY
3. SOMEWHERE I BELONG
4. LYING FROM YOU
5. PAPERCUT
6. POINTS
7. RUNAWAY
8. FAINT
9. FROM THE INSIDE
10. FIGURE 9.0
11. WITH YOU
12. BY MYSELF
13. PUSHING REMIX
14. NUMB
15. CRAWLING
16. IN THE END
17. A PLACE FOR MY HEAD
18. ONE STEP CLOSER

ライヴCD/DVD


『LIVE IN TEXAS』

ワーナーミュージック・ジャパン
WPZR-30036 3,400(tax out)

メタリカ
が主宰し、リンキン・パーク、リンプ・ビズキットらが出演した、米国最大級のヘヴィロックの祭典<サマー・サニタリウム・ツアー>。その模様が、リンキン・パーク初のライヴ・アルバムCDとして、さらにDVD映像も収録したCD/DVDの2枚組でリリースされる。2003年8/2、テキサス州ヒューストンにあるリリアント・スタジアム、8/3ダラス郊外にあるテキサス・スタジアムという2ヶ所で、16台のカメラで撮影迫力の映像で、<サマー・サニタリウム・ツアー>の模様を収録している。

●DISC 1(CD)
01. SOMEWHERE I BELONG
02. LYING FROM YOU
03. PAPERCUT
04. POINTS OF AUTHORITY
05. RUNAWAY
06. FAINT
07. FROM THE INSIDE
08. P5HING ME A*AY
09. NUMB
10. CRAWLING
11. IN THE END
12. ONE STEP CLOSER

●DISC 2(DVD)
DON'T STAY
SOMEWHERE I BELONG
LYING FROM YOU
PAPERCUT
POINTS OF AUTHORITY
RUNAWAY
FAINT
FROM THE INSIDE
FIGHRE.09
WITH YOU
BY MYSELF
P5HNG ME A*WY
NUMB
CRAWLING
IN THE END
A PLACE FOR MY HEAD
ONE STEP CLOSER



最新アルバム


『Meteora』

ワーナーミュージック・ジャパン
WPCR-11440 2,400(tax out)

01. FOREWARD(INTRO)
02. DON'T STAY
03. SOMEWHERE I BELONG
04. LYING FROM YOU
05. HIT THE FLOOR
06. EASIER TO RUN
07. FAINT
08. FIGURE.09
09. BREAKING THE HABI
10. FROM THE INSIDE
11. NOBODY'S LISTENING
12. SESSION
13. NUMB


今年の春に発表された2ndアルバム『メテオラ』が世界15ヶ国でNo.1に輝き、日本でもオリコントップ5を記録するなど、もはや世界のロック・シーンを代表する顔となったリンキン・パーク。彼らの登場は、これまで過激で暴力的なイメージを持たれがちだったラップ・メタルを、誰もが歌える真摯な“うた”というクリーンなイメージに変えたことだった。そしてそんな彼らの歌は、アメリカ同時多発テロ以降の時代を表わすある種のアンセムとしてさえも機能するようになった。もはや今のリンキンには、かつてよく指摘されたような“リンプKORNフォロワー”的なイメージはほとんどないと言ってよい。そしてそのことは、この日の横浜アリーナに詰め掛けた観客の姿を見ても明らかだった。


photo by YUKI KUROYANAGI

2年前の春の初来日の際には、Tシャツ、短パン、白タオルの、いかにも「これから暴れてやるぜ」と意気込んだ風のスポーティな男のキッズが多かったのだが、2年経ってようやくリンキンがどんなバンドなのか理解されたのか、この日はそのテのキッズが予想以上に少なく、むしろ女のコやフツーのコンサートにどこでもいそうなおとなしそうな男のコの方が目立っていたほど。おそらくこの事実には、わざわざ椅子席のアリーナをオール・スタンディング用に開放した主催者側も肩透かしを食らったような気分になったのではないだろうか。

そして、そのことはライヴがはじまっても同様であった。アルバム『メテオラ』のはじまりと同じく、イントロ~「Don’t Stay」でスタートしたこのライヴだが、客席の側はいわゆるポップ・パンクやニュー・メタルのライヴで起こりがちな、モッシュやダイブの嵐にはなかなかならない。この日、僕はかなり前方の方で見ていたのだが、このテのライヴを見る際にいつも感じる身の危険が全く感じられない。いや、それどころか、ここに集まっている観客たちは、暴れることよりも、合唱することの方をエンジョイしたがっているかのようにさえ見えた。ヴォーカリストのチェスターから放たれる憂いに満ちた歌メロと、眉間とこめかみに皺を寄せ汗をかきながらの熱すぎる熱唱。これに合わせて拳をあげながら一斉に歌うこと。この日のライヴの肝はここにこそ置かれているような気がした。その光景は、'80sの頃のヘヴィ・メタルのそれにさえよく似ている。


photo by YUKI KUROYANAGI

そんなライヴのカラーに合わせてか、バンド側のステージでのルックスも以前に比べさらに柔和になって来た。ラッパーのシノダやDJのハーンは以前からかなりソフトなイメージだったが、以前は多少はいかつかった他のメンバーもすっかり小ギレイになり、かなり親しみやすい感じになっている。彼らは自分たちの進むべきイメージをもうすっかり把握できているようである。

ストリートのバッドボーイだけに向けたのではない、普遍的なポップ・イメージ。リンキンはやはりそれこそが武器なのだが、サウンド・クリエイターとしても彼らはやはり非凡。ツアーを経て演奏技量自体が飛躍的に向上していることもたしかだが、とりわけ耳を惹くのがDJハーンのプレイ。『メテオラ』同様、彼はエレクトロニカの要素の強いトラックを繰り出していたが、この音像こそ、サウンドの軽量化が進む'00年代にとってはとても有効なもの。彼らは90年代後半に完成されてしまった、重苦しくなりがちなラップ・メタルという様式を次世代にどうシフトさせて良いか心得ているようだ。楽曲的にサウンド的に、ここまで完成度の高いことをやられると、リンプやKORNといった旧世代の代表も正直なところさすがにキツいだろう。

そしてライヴは大ヒット曲の「Crawling」「In The End」、そして「One Step Closer」などの大合唱で、終始ホットなまま幕を閉じた。一般的にバッドボーイ・イメージの強い音楽において、一体何がサヴァイヴして行くのか。その答を僕はここに見たような気がした。そしてそれと同じことは、ボン・ジョヴィリップ・スライムにも当てはまることなのかもしれない……などと思ったりもした。

取材・文●沢田太陽

この記事をポスト

この記事の関連情報