来日間際のパトリック・ウルフに直撃インタビュー

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あどけない顔をしていながら、実は190センチもある大男。過激なパフォーマンスをしつつも実はシャイ、難しそうに見えるが本当は人が良く、ダークでありながらポップ、テクノロジーにのめり込みながらも自然を敬愛する、ポップ界の鬼才、パトリック・ウルフ。日本初の単独公演を来週に控えた“不思議くん”の素顔に迫ってみよう。

──いま、髪の毛は何色?

パトリック・ウルフ:ピーチだよ。日本にもピーチで行くよ。

──その日本ではどんなパフォーマンスを?

パトリック・ウルフ:すごくいいものになるよ。『Magic Position』のトラックが中心だけど、古い曲もいくつかやろうと思ってる。

──お姉さんがショウに参加したり、お父さんがアルバムでベースを弾いたり、音楽に造詣の深い家庭で育ったんですね?
パトリック・ウルフ:そう、父はクラリネットやフルートも吹くマルチなプレイヤーなんだ。それに母親は画家。すごくアーティスティックな家庭だよ。

──そんな中、どんな音楽を聴いて育ったの?

パトリック・ウルフ:チャーリー・パーカーとかジョニ・ミッチェル、チェット・ベイカー…、ジャズやシンガー・ソング・ライターの曲が多かった。何かこれといったきっかけがあったわけじゃないけど、11歳のとき音楽に目覚めたんだ。それ以来、自分には音楽しかないって思ってる。

──どんな子供だった? 学校は好きだった?

パトリック・ウルフ:嫌いだった。うちの庭で遊んでるのが好きで、ジャングルジムに上ったり、何か発明したりしてたよ。電気のことに興味があって、小さいころは自分の身体に電流を通してみたいなんて本気で考えてた。僕の祖先って電球、発明してるんだ。エジソンじゃないよ、ジョセフ・スワンって人。だから、電気ものに取り付かれてたんだよ。

──デビュー後、あらためて音楽を学びにカレッジへ入学したのはなぜ?

パトリック・ウルフ:人生って知らないことばかりで、学ぶべきことがいっぱいあるって思ったんだ。それに、あのころのポップ・ミュージックってアメリカのセクシーな女の子ばかりで、僕みたいなのは浮いてた。だったら自分は作曲家になってやろうって思ったんだ。作曲のテクを学んで、それをポップ・ミュージックに持ち込んで革命的なアルバムを作ってやるって思ったんだよ。

──『Magic Position』は前作2枚と違ってずい分ポップなサウンドだけど……

パトリック・ウルフ:同じようなものばかり作って、ある特定のオーディエンスだけを喜ばせていてもしょうがないって思ったんだ。自分の可能性を試してみたかったし、バリアを打ち破りたかったんだよ。

──これまで3枚のアルバムは、あなたの人生のどんなチャプターを象徴しているのでしょう?

パトリック・ウルフ:1stは18までの僕。世界から取り残されてぽつんとしてる。2ndでは、自分を理解し、居場所を見つけようってもがいてる。3rdは、恋に落ち、誰かの腕の中にいるって感じだよ。

──ニュー・アルバムは政治的なものになるとの噂が…

パトリック・ウルフ:それほど政治的じゃないけど、現実的なものになると思う。いまの世の中で起きてることを元にしたリアリスティックなポップ・アルバムにしたい。

──最近は多くのミュージシャンが環境問題のキャンペーンに参加してますが?

パトリック・ウルフ:みんな、地球をメチャクチャにしたって罪の意識を感じてるんじゃないかな。僕はいつだって自然をリスペクトしてきたし、自然とコミュニケーションを取ってきたつもりだ。人類は地球に生存する生き物の一種にすぎないことを忘れちゃダメだよ。僕らのほうが牛より優れてるってわけじゃないんだよ。

──いまのミュージック・シーンをどう思う?

パトリック・ウルフ:とくに興味を引かれるものはないなあ。

──自分のレーベルをスタートしましたね。

パトリック・ウルフ:すごい勢いで発展中のデジタルの世界に追いつくには、自分でやるほうが早いって思ったんだ。最近の子は何でもダウンロードだ。環境的にもそのほうがいいけどね。

──では、レディオヘッドの新作のリリース方をどう思う?

パトリック・ウルフ:いいと思うよ、金があるミュージシャンならね。でも無料で音楽を提供するっていうのはやめたほうがいい。週の半分ウェイターやって、残りの時間で音楽作るっていうのは良くないよ。昔みたいに、金持ちがアーティストやミュージシャンのパトロンになって彼らの面倒を見るっていうのが1番理想的だ。本当はレコード会社がそうすべきなんだ。ミュージシャンに住む場所と創作の時間を与える。それが、作り手と受け取る側の健全な関係だよ。

──あなた自身は、何か他の仕事をしたことある?

パトリック・ウルフ:あるよ! 親が金持ちってわけじゃないし、16のときに家を出てるからね、生活するためにいろんなことやった。宝石店で働いたこともあるし、寿司屋でウェイターしてたこともある。幼稚園の先生やったりピアノ弾いたり、何でもやったよ。

──ユニークなファション・センスを持ってるけど、買い物はどんなところで?

パトリック・ウルフ:古着屋やチャリティ・ショップ、ジャンク・ショップ……、100年も前のものを売ってるパリの蚤の市とか大好きなんだ。それに自分でミシンを使って作る。詩を書くのや曲を作るのと同じだよ。自分のセンスで独自のものを作って、自己表現するのさ。

──以前、自分はバイセクシャルだと発言しているけど、今日は何かセンセーショナルな告白は?

パトリック・ウルフ:ないよ(笑)! 僕の存在がセンセーショナルだ(笑)!

──来日を楽しみにしている日本のファンへ一言

パトリック・ウルフ:また戻ってパフォーマンスできるのは嬉しいよ。呼んでくれて、ありがとう! 今回は、みんなとじっくり顔を合わすことができそうで嬉しいよ。

パトリック・ウルフのスペシャル・パフォーマンスは11月14日、東京/渋谷のDuo Music Exchangeで見ることができる。

Ako Suzuki, London
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