【連載】Vol.081「Mike's Boogie Station=音楽にいつも感謝!=」

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ジャーメイン・ジャクソンLIVE IN JAPAN、ジャクソン5&マイケル・ジャクソン伝説の体現、そして「パパの家」に大感激



ジャクソン5がデビュー当時。僕は彼らの日本盤シングルやLPの解説を書かせて貰った。その後J5は1973年に初来日した。その模様をソウル・ミュージック・ファンジン『SOUL ON』にリポートした。


▲『SOUL ON』73年5月号 from Mike’s Library




▲『SOUL ON』73年5月号“WELCOME Jackson 5” from Mike’s Library

それから半世紀近く経った2019年11月8日、J5のメンバーだったジャーメイン・ジャクソンの単独ステージをBlue Note TOKYOで味わった。そこで彼の大ヒット・ナンバーは勿論、J5や弟マイケル・ジャクソンの名作を次々に披露した。まさにジャクソン5&マイケル・ジャクソン伝説の体現。このステージはジャーメインにしかできないワン・アンド・オンリーの歴史ドラマであった。

まずはBand Instrumental。ホットなムードが演出されたところでジャーメインの登場。60代半ばとは思えない溌剌な雰囲気でコスチュームもぐっとファンキー!オープニングは「Dynamite」。彼の10枚目のアルバムとして84年にリリースしたタイトル・チューン。これはアリスタ・レーベルにおける最初の作品集だった。ミディアム・アップなこのナンバーを軽快に歌い上げる。ジャーメイン絶好調だ。アルバムからシングル・カットされBillboard誌HOT100では9月15日付、22日付15位が最高位。同誌R&Bチャートでは8位。


▲『Joel Whitburn Presents The Billboard HOT100 The Eighties』84年9月15日付 from Mike’s Library 以下のランク表は『Joel Whitburn Presents The Billboard HOT100 The Sixties』(以下の写真でのランキングの日付は明記してありません ご了承ください)

2曲目に入る前に皆立ちあがってダンスしようと観客を促す。「Blame It On The Boogie」“今夜はブギーナイト”で馴染み深いこのナンバーは78年のジャクソンズのアルバム『Destiny』からのファースト・シングル・ナンバー。元々はイギリスのシンガー=ソングライターのミック・ジャクソンが78年に発表しHOT100で61位を記録している。ジャクソンズのシングルはHOT100で同年11月25日付、12月2日付で54位。R&Bチャートでは3位を記録している。ジャーメインは2011年にこのナンバーを取り上げてシングル・リリースしている。サンシャイン~ムーンライト~グッドタイム~ブギー、ダンサブル・チューンだ。

そして「Rock With You」、マイケルのヒットとして知られる。クインシー・ジョーンズをプロデューサーに迎えての最初のアルバム、79年リリースの通算5作目『Off The Wall』からのセカンド・シングル。HOT100では80年1月19日付、26日付、2月2日付、2月9日付の4週1位。R&Bチャートでは6週1位。これまたダンサブル・チューン、ジャパニーズ・ディスコ・シーンでも大ブレイクした。



4曲目の「Enjoy Yourself」、“僕はゴキゲン”で馴染み深いジャクソンズのエピック・レーベルでのファースト・シングル。HOT100で77年2月19日付、26日付6位。R&Bチャートでは2位を記録。フィラデルフィア・ソウル・サウンドを語るうえでは忘れることのできないケニー・ギャンブル&レオン・ハフが手掛けた作品としても知られる。ソフィストケイトされたダンス・ナンバー。

そしてここで「Jackson 5 Medley」だ。ここでは今年はJ5の50周年、そして4曲連続ナンバー・ワン・ヒットを放った頃の想い出をジャーメインはしみじみと語る。メドレー1曲目は「I Want You Back」“帰ってほしいの”。本当に懐かしい!ファンタスティック!!J5のモータウンから69年に発表されたメジャー・デビュー・シングル・チューンだ。HOT100で70年1月31日付1位、R&Bチャートでは4週1位を記録。続いてはJ5セカンド・シングル「ABC」。HOT100で70年4月25日付5月2日付2週1位。R&Bチャートでは4週1位。ここでもアップ・ビートでファンキーなこのナンバーをシャウトするジャーメインはカッコ良いのだ。因みに日本ではこの一連のヒット・ナンバーの中ではこの”ABC”が一番話題になったのだ。そして「The Love You Save」(小さな経験)。HO100 で70年6月27日付、7月4日付2週1位。R&Bチャートでは6週1位。モータウンらしさが噴出している楽曲。このJ5・3曲メドレーは僕が初めて味わったJ5コンサート(帝国劇場)でもセットリストに加えられていた。

続いての曲はこれまたJ5の大ヒット、ジャパニーズ・ディスコ・シーンでよくプレーされていた「Dancing Machine」。事前にスタッフから受け取ったセットリストに6曲目として記されていた。確かに前曲のフィニッシュはカット・アウトでこちらはカット・インで始まった。でも客席は何となく“Dancing~”迄をJ5メドレーと感じたみたいだ。吉岡正晴さんのソウル・サーチンではここまでをメドレーとして記している(僕の当日メモにもそのままメドレーのように…と)。このJ5の74年ダンサブル・ナンバーはHOT100で5月18日付、25日付で2位。R&Bチャートでは1位。ソウル・マニアによく知られるハル・デイヴィッドが手掛けた作品だ。ステージ・バックのスクリーンには懐かしのTV番組“SOUL TRAIN”。当時、この楽曲でニック岡井(故人)にファンキー・ロボットを教えてもらったことを想い出す…。

そしてディスコといえば80年代初頭このナンバーも大人気だった、ジャーメインの79年のアルバム・タイトル・チューン「Let’s Get Serious」。


▲CD『Let’s Get Serious』 from Mike’s Collection

ポップな味わいも加味してのダンサブル・ソング、ここで彼はベースを弾いて魅せる。HOT100では80年7月12日付、19日付9位。R&Bチャートでは6週1位。スティーヴィー・ワンダーのプロデュース。



そして再びJ5大ヒットが登場、「I'll Be There」。「帰ってほしいの」「ABC」「小さな経験」に続いてこのナンバーもHOT100で70年10月17日付、24日付、31日付、11月7日付、14日付の5週1位。R&Bチャートでは6週1位。4曲連続ナンバー・ワンの記録を樹立した。ジャーメインは大好きな楽曲とMC、素晴らしいバラードだ。後半はオーディアンスも一緒に♪I’ll Be There♪。エモーショナルに歌い上げるジャーメイン、改めて彼の歌手としての魅力をひしひしと味わった。

バラードが続く、素晴らしい作品「Gone Too Soon」、涙腺が思わず緩む…。マイケル91年のアルバム『Dangerous』(日本盤では湯川れい子さんがライナーノーツを担当されている)収録。マイケルのことを思い浮かべながらジャーメインは切々とドラマティックに歌い上げ、僕はその姿に感動を覚えた。エンディングでより一層大きな拍手…。尚、アルバムからの最後のシングルとして93年末にUSリリースされているがチャート・インはしていない。


▲れい子先生とジャーメイン(Nov.10 2019) 提供:湯川れい子さん

そして僕がこの日一番聴きたかったのがこの「Daddy’s Home」だ。


▲日本盤シングル「パパの家」 from Mike’s Collection

1970年代前半六本木のソウル・バー“George’s”で僕のソウル・ミュージックの師匠・桜井ユタカさんやメビウスDJ/Yoshie-chanとこの楽曲をよく楽しんだ。ジャーメインはオールディーズが大好きで71年のJ5アルバム『Maybe Tomorrow』(89年の再発CDでは僕がライナー書いてた、冷汗)ではクレスツの「Sixteen Candles」を歌っていたけど(リード・ヴォーカル)、この楽曲も古いR&Bの名作でシェップ&ザ・ライムライツが61年にヒットさせている。ジャーメインのアメリカで2枚目、日本で最初のソロ・シングル。HOT100で73年3月17日付9位。R&Bチャートでは3位。ソウルフルなR&Bバラードの名作である。



そして「Do What You Do」でもジャーメインは歌の上手さを立証するバラード作品である。1曲目同様アルバム『Dynamite』からのシングル・カット・チューンでHOT100では85年1月5日付13位。R&Bチャートでは14位。



ここでジャーメインは衣装チェンジのためステージ・オフ。Band Instrumental後に再び颯爽と登場。



後半1曲目は「Can’t Let Her Get Away」、マイケルのアルバム『Dangerous』収録楽曲。


▲CD『Dangerous』 from Mike’s Collection

サァ立ち上げって、ジャーメインは観客を引っ張る。ファンクなビートに乗って“Say Yeah”“Yeah”。曲中でバック・ミュージシャンを紹介する、メンフィス出身のケネス“KT”タウンゼント(キーボード)、LA出身のカーネル・ハレル(キーボード)。そしてギターはスティーヴィー・ワンダーやジャクソンズのバックも務めたカイル・ボールデン。最後はエキサイティングなドラムを披露するラモント・シドナー。



そのラモントのカウントでスタートするのが「Heartbreak Hotel(This Place Hotel)」。ジャクソンズの80年のアルバム『Triumph』からのシングル・カット・チューン。


▲CD『Triumph』 from Mike’s Collection

HOT100では81年2月14日付、21日付で22位。R&Bチャートでは2週2位。マイケルの作詞作曲のドラマティックな内容の楽曲、エンディングのインスト・パートも印象的だ。

「When The Rain Begins To Fall」(恋の雨音)はジャーメインにとっていろいろな思い出のある楽曲。シンガー/女優として注目されたピア・ザドーラとジャーメインのデュオ・ナンバーだ。ピア主演でジャーメインも出演していた84年の映画「Voyage Of The Rock Aliens/ロック・エイリアンの冒険」の挿入曲。


▲日本盤シングル「恋の雨音」 from Mike’s Collection

サウンドトラック・アルバムとジャーメインの『Jermaine Jackson』に収録。シングル・カットされ特に欧州で大ヒットした。HOT100では85年3月9日付、16日付で54位。R&Bチャートでは61位。小刻みなビートに乗って80年代中期らしいポップな作品。尚、このナンバーの作者の一人は日本のポップス・ファンによく知られるあのリトル・ペギー・マーチだ

そしてここからはマイケル・ナンバーが続く。「Don’t Stop Till You Get Enough」“今夜はドント・ストップ”は『Off The Wall』からのヒット。マイケルの作詞作曲。 HOT100では79年10月13日付で1位。R&Bチャートでも5週1位。このダンサブル・チューンで会場は大盛り上がり。まさにあの黄金時代のディスコが再現なのだ。

そしてマイケル作詞作曲の「Wanna Be Startin’ Somethin’」(スタート・サムシング)。82年末から83年にかけて大ベスト・セラーを記録したアルバム『Thriller』(Billboard誌アルバム・チャートで37週1位)のオープニングを飾った。同アルバムからの4枚目のシングル、HOT100で83年7月16日付、23日付5位。R&Bチャートでも5位。映画『Michael Jackson’s THIS IS』でも実に印象深かった。ますます会場は熱くフィーヴァーなのだ。

最後は「Working Day And Night」。マイケルの『Off The Wall』収録で作詞作曲も彼だ。プロデュースはクインシー&マイケル。アップ・ビートのエキサイティングないかにもマイケルらしいこの楽曲をジャーメインはファンキーな雰囲気の中で仕上げて披露したのだ。



勿論アンコール!予想にもしなかった曲は何と「Beat It」“今夜はビート・イット”!!クインシー&マイケル・プロデュースのアルバム『Thriller』収録、マイケルの作詞作曲。同アルバムからのサード・シングルでHOT100では83年4月30日付、5月7日付、14付の3週1位。R&Bチャートでも1位。もう堪らなく80年代へタイム・トリップ。ジャーメインのシャウトする“今夜はビート・イット”もライド・オン、大拍手なのだ。そう言えばパロディ、アル・ヤンコビックの「Eat It」も話題を呼んだけどマイお友達グッチ裕三のヴァージョンのことを何故か思い出してしまった…。

ステージ終了後、ジャーメインに「今夜のステージはとても素晴らしかった!」と伝えるためにバック・ステージへ。実にジェントルマンの好人物。いろいろ話をした。赤ワインをかなり飲んでいたこともあって思わずマイ大好きソング「Daddy’s Home」を口ずさんだところジャーメインがジョインしてくれたのだ。大感激!


▲ジャーメインと筆者 Pic. by Janneke van der Linden(ジャーメインのマネージャーさん)


▲サイン色紙 for Mike’s Collection

*ライヴ・ショットPic. by Tsuneo Koga

☆☆☆

エンゲルベルト・フンパーディンク ジャパン・ツアー2019
~THE ANGEL ON MY SHOULER TOUR~
83歳エンゲルの素晴らしいステージに魅了された!!!



1966年、高校1年生の僕はローリング・ストーンズ・ファン・クラブの会長をしていた。その頃は毎週土曜の午後になるとキングレコードでFCワークスに勤しんでいた。当時多くの海外アーティストのFCは所属各レコード会社にサポートして貰っていた。RSFCは“ロンドン・ポピュラー・ファン・クラブ”も名乗っていた。そんな関係でキングレコード/ロンドン・グループが大プッシュを始めたトム・ジョーンズとエンゲルベルト・フンパーディンクをRSFCは応援した。間もなく“動”&“静”という、相反する個性を前面に出しながらもよきライバルとして両人はその名を知られるようになった。エンゲルの愛称で親しまれたエンゲルベルト・フンパーティングはバラードを得意とし多くの女性ファンの心を掴む。当時僕も彼のレコードもよく聴いたが、カントリー・タッチなソフィストケイトされたナンバーが大好きだった。後年エンゲルのアルバムがCD化された時にはライナーノーツを書かせてもらった。そんなエンゲルの久々の来日公演を楽しんだ。僕にとっては1975年以来2度目のエンゲル・ライヴ体験(94年&05年は参戦できなかった…)。11月14日、東京国際フォーラムCホールでエンゲル・オン・ステージを堪能した。

エンゲルベルト・フンパーディンク~THE ANGEL ON MY SHOULDER TOURの開幕である。映像“Dean Martin Video Intro”で始まる。これはアメリカで1970年10月22日TV放映された“The Dean Martin Show ”の紹介パートだ。ディーン・マーティことディノのビデオ中での“Engelbert Humperdinck”のコールをきっかけにバック・ミュージシャンの演奏がスタート。ドラム・ロールに続きエンゲルのお馴染みのヒット・ナンバー・フレーズ、どことなくエルヴィス・オン・ステージ・チックだったり…。女性コーラスにのりながらエンゲルの登場。1曲目は「Begin The Begin」、コール・ポーターの名作。1935年のミュージカル「Jubilee」からのヒット・ナンバー。同年ザビア・クガードで話題を呼び38年にはアーティー・ショー楽団で大ヒット、Billboard誌ポップス・チャートで6週1位を記録。46年にはフランク・シナトラでもヒット。多くのアーティストがカヴァー、トム・ジョーンズもレコーディングしている。エンゲルの”声”が実によく響き渡る、もう僕は最初から大拍手なのだ!

続いて“僕にとって幸運な楽曲です”というMCで歌い始める「Am I That Easy To Forget/忘れじの面影」。1959年にカール・ブリューでヒットしたカントリー・ソング。60年にはスキーター・デイヴィスでもリバイバル、一方でデビー・レイノルズ(60年)やエスター・フィリップス(63年)でも話題になった。幅広いファン層から注目された名作。エンゲルは67年リリースのセカンド・アルバム『The Last Waltz』のB面トップに収録。シングル・カットされUK/NEW MUSICAL EXPRESS紙シングル・チャートで68年1月13日付16位。US/Billboard誌HO10068年2月3日付、10日付18位。デイヴィッド・アラーナのピアノをフィーチャーしながらゆったりとしたエンゲル節をたっぷりと聴かせてくれる。


▲US/LP『The Last Waltz』 from Mike’s Collection

曲終りでMC“コンバンハ ミナサマ もうかりまっか”場内を沸かす。

「Il Mondo」はイタリア楽曲、カンツォーネだ。ジミー・フォンタナで65年に大ヒット。邦題は“限りなき世界”。その後“My World”という英題でよりポピュラーな歌となりエンゲルはじめ英米で多くのアーティストが取り上げた。彼の67年リリースのファースト・アルバム『Release Me』に収録。ドラマティックに盛り上がり場内は♪La la la・・・♪


▲US/LP『Release Me』 from Mike’s collection

続いてもカンツォーネ、「A Man Without Love/愛の花咲くとき」68年のエンゲルのヒット作。NMEシングル・チャートでは68年5月25日付、6月1日付、8日付の3週3位。HOT100では6月22日付19位。同名のアルバム・タイトル・チューン。原題は“Quando n’innamore”、1968年サンレモ音楽祭エントリー楽曲でアンナ・アイデンティチ(イタリア)とスタンピーダース(US)が歌った。バリー・メイソンが英詞をつけてエンゲルはレコーディング。それにしてもエンゲルはカンツォーネとカントリーがよく似合う。会場は♪Every day I wake up. Then…♪パートを大合唱。勿論マイ・カラオケ・ソングだ。


▲US/LP『A Man Without Love』 from Mike’s Collection

5曲目は「After The Lovin’」は76年のアルバム・タイトル・チューン。シングル・カットされ76年から77年にかけてUSヒット。HOT100で77年1月22日付8位。カントリー・チャートでも40位。エンゲルは70~80年代にかけてカントリー・チャートにそのほか「Goodbye My Friend」「This Moment In Time」「Til You And Your Lover Are Lovers Again」を送り込んでいる。


▲US/LP『After The Lovin’』 from Mike’s Collection

曲間でジャケットとってもいいですかというMCになりそこでバンドが「The Stripper」を演奏。演出たっぷり。デイヴィッド・ローズ楽団の1962年のHOT100ナンバー・ワンソング。因みに1975年2月23日@東京厚生年金会館録音のアルバム『Live IN JAPAN』の“お遊びコーナー”でもこのナンバーが登場している。続いてディーン・マーティンがエンゲルのエンターテイナーとしての才能を高く認めてくれたとMC。『Live IN JAPAN』の“インプレッションズ”ではエルヴィス、トム、ジェリー・リー・ルイス、バリー・ホワイトのほかディノも登場していた。


▲2枚組JP/LP『Live IN JAPAN』 from Mike’s Collection

そして曲は「Quando Quando Quando」、62年のサンレモ音楽祭にエントリーされた楽曲。トニー・レニスとエミリオ・ペリコーリが歌った(二人ともイタリア人)。トニー・ヴァージョンが大ヒット。そのイタリア楽曲をエンゲルは68年のアルバム『A Man Without Love』取り上げている。8年前にCMソングとして登場したことは記憶に新しい。

「Another Time, Another Place」は エンゲル71年リリースのアルバム・タイトル・チューン。シングル・カットされNMEシングル・チャートで10月16日付17位。HOT100では10月2日付43位。ビートルズやストーンズのファンにも馴染み深いプロデューサー/アレンジャー/ソングライターのマイク・リアンダ-の作品。


▲UK/LP『Another Time, Another Place』

続いては「Just The Way You Are」ブルーノ・マーズ作品、エンゲルは彼が5歳の時にハワイで初めて会ったとのこと。ブルーノは9年前のファースト・アルバム『Doo-Wops & Hooligans』に収録、そしてシングルとして大々ヒットしたことは周知の通り。2年前リリースのエンゲルのレイテスト・アルバム『The Man I Want To Be』から(US盤だけどインナー・スリーヴに歌詞がしっかり記されているのが嬉しい!)。オーディアンスに語りかけるようにスローに歌う。とてもドラマティック!(『The Man I Want To Be』に収録されているザ・ドリフターズのカヴァー「On Broadway」も僕は大好きだ。)


▲US/CD『The Man I Want To Be』 from Mike’s Collection

「I’m Glad I Dance With You」も『The Man I Want To Be』からのナンバー。ツアー・スーヴェニアーとしてコンサート会場で即売されたEP『REFLECTIONS』にも収録(一般発売は12月中旬)。妻パトリシアのことを歌っている。彼女は療養中だけど日々回復に向かっているという。ダンスしている17歳の彼女を見染めたのが最初の出会いだったとか、作詞は娘のルイーズ・ドージー。レイテスト・アルバムでエンゲルは9歳の孫娘オリヴィア・ヒーリー・タリアフェロとデュエットしているけど、この日のステージでもオリヴィアがスクリーンで登場。ラヴリーに二人は歌ったのだ。


▲EP『REFLECTIONS』

そして「Angel On My Shoulder」、素晴らしいバラードだ。『The Man I Want To Be』収録「Prodigal Son」と同じくジム・マーティンの作品。流麗な展開の中でエンゲルは切々と歌い上げる。この様な楽曲がシングル・ヒットする時代がまたやって来て欲しいと願っているけど…。来年5月まで続くエンゲルのコンサート・ツアー・タイトルはこのナンバーから。『REFLECTIONS』収録。

続いてはエンゲルが大好きなハワイのメロディーが…“Blue Hawaii”。そこに「You’re My World」が始まる。事前にコンサート・スタッフから手渡されたセットリストにも“You’re My World(Hawaiian style)”と記されている。エキゾチックな作品だ。


▲セットリスト 提供:KYODO TOKYO INTERNATIONAL INC

この作品もカンツォーネで原題を“Il Mio Mondo”。63年作品、ウンベルト・ビンディで話題を呼んだ。翌64年にビートルズ・ファンには馴染み深いイギリスの女性歌手シラ・ブラックが英語ヴァージョンで発表、本国だけでなくアメリカでもヒット。77年にはヘレン・レディでリバイバル・ヒットしている。エンゲルの大好きな作品でトム・ジョーンズもレコーディングしている。

今度はぐっとブルージー&ロックンロールな雰囲気の中での「I Can’t Stop Loving You」。世界中で知られるレイ・チャールズ62年の大ヒット・ナンバー。元々はカントリー楽曲で57年にドン・ギブソンが発表。エンゲルの実にファンキーなステージングに感激。曲中バック・ミュージシャンのヴォーカルや演奏がフィーチャーされエンゲルによるメンバー紹介。ドラムスはリック・ロッカピオリ、ベースはアダム・コーエン、サックス&キーボードはジェニー・インガ、キーボードはティモシー・リリス、コーラスはアマンダ・リリス&アネット・モア。ギターは長年エンゲルのバックを務めているヨハン・フランク、そしてミュージック・ディレクター&ピアノがデイヴィッド・アラーナ。



そしてバラードの名作としてエルヴィス・プレスリー・ファンには馴染み深い「Love Letters」が登場である。1945年の映画「Love Letters
/ラヴ・レター」の主題歌。同年ディック・ハイメスでヒットしている。62年にケイティー・レスターでリバイバル。そのケイティー・ヴァージョンにインスパイアされたエルヴィスは66年にシングル・カットしヒットさせた。エンゲルは69年にアルバム『Engelbert Humperdinck』に収録。そして78年にはこのナンバーをタイトルにしたアルバムも発表している。バック・ステージでエンゲルと少し話したが、彼はエルヴィスをとてもリスペクトしている。レイテスト・アルバムでも“Welcome To My World”を収録している。エンゲルは確か「Are You Lonesome Tonight?」もレコーディングしていた。この日のコンサートに古くからの友人、エルヴィス・フリーク小泉正也さん(小泉純一郎さんの弟)もいらっしゃった、彼はエンゲルについても博学で僕とコンサート前後いろいろと音楽&健康(笑)の話題で盛り上がった。


▲US/LP『Engelbert Humperdinck』 from Mike’s Collection バック・カヴァー(サインって何年経っても変わらない)


▲US/LP『Love Letters』 from Mike’s Collection

「Don't Let The Old Man In」は今年我が国でも公開されたクリンスト・イーストウッド監督・主演の映画「運び屋/The Mule」(2018年作品)挿入曲。カントリー界の大スター、僕の大好きなトビー・キースが歌った素晴らしい楽曲だ。エンゲルは歌詞をとても気に入っているという。ドラマティックに歌い上げるエンゲル、実に説得力がある。バラードの名作である。EP『REFLECTIONS』に収録。


▲ブルー・レイ・ディスク『運び屋』 from Mike’s Collection

今度はフラング・シナトラのヒット作「That’s Life」、66年HOT100で4位までランク・アップ。実は当時僕はシナトラをひとつ前の世代の歌手としてそれほど積極的に聴かなかったけど、この作品でいっきに興味を抱き直後のナンシー・シナトラとのデュオや60年代末の「My Way」で彼のLPを集めるようになった(エンゲルの”My Way”も素晴らしい!)。バックステージでエンゲルはシナトラも大好きだと語ってくれた。こうしたジャジーなテイストの作品もエンゲルはとてもエモーショナルに歌いこむ。

ステージも終盤に入る、67年のベスト・セラー「The Last Waltz」。バリー・メイソンとレス・リードの共作。NMEシングル・チャート9月9日付、16日付、23日付、30日付、10月7日付、14日付の6週1位を記録。HOT100では11月4日付25位。エンゲルに促され観客も♪I have the last waltz…♪、♪La la la la la la…♪大合唱。エンゲルはそのシーンに大喜び。



そしてエンゲル・オン・ステージの定番、メドレー・コーナー。昨年からのヴァージョンである。ファースト・ソングは「This Moment In Time」、1979年のアルバム・タイトル・チューンで先行シングル。アメリカのみでチャート・イン。HOT100で69年1月20日付58位。作曲はリッチー・アダムズ。彼は50年代から活躍するシンガー=ソングライターでボビー・ルイスのあの名作ロックンロール“Tossin’ And Turni’”他多くのヒット作を生んでいる。前出のエンゲル・ナンバー「After The Lovin’」もリッチー作品。


▲US/PROMO LP『This Moment In Time』 from Mike’s Collection

メドレー2曲目は「The Way It Used To Be」、コーラス・パートもぐっと前面に出て重厚な雰囲気を作り出す。69年のヒット作、NMEシングル・チャート3月8日付4位。HOT100では4月19日付、26日付、5月3日付の3週42位。“思い出の歌“という邦題でも知られるこの楽曲はカンツォーネで原題を”Melodia“といい68年にイザベラ・イアネッティでヒットした。エンゲル69年のアルバム『Engelbert』収録。続いての「Les Bicyclettes de Belesize/地平線の彼方に」はエンゲルの音楽ブレーンのレス・リードとバリー・メイソンが音楽担当した同名の短編映画主題歌。レスの勧めでエンゲルはレコーディング、68年にヒットしている。NMEシングル・チャート10月19日付、26日付8位。HOT100では11月30日付31位。『Engelbert』に収録。4曲目は「There Goes My Everything」、カントリーの名作だ。“淋しき足音”というタイトルでも知られるこのナンバーは1965年に歌手のダラス・フレーザーが作詞作曲。翌66年から67年にかけてジャック・グリーンで大ヒット、Billboard誌カントリー・チャートで7週1位を記録した。同年エンゲルもアルバム『Release Me』に収録。3枚目のシングルとしてリリース、NMEシングル・チャート6月17日付、24日付、7月1日付、8日付4週2位。HOT100では7月29日付20位。エルヴィスが70年末に「I Really Don't Want To Know」との両A面で発表。米英ともにヒットした(アメリカはイージー・リスニング・チャート)。メドレー5曲目は「Spanish Eyes」、ラテン・タッチなアレンジがメキシカン・フィーリングを醸し出す名曲、これもエルヴィス・ファンにも馴染み深い。原曲はドイツの偉大なるプロデューサー/ソングライター、ベルト・ケンプフェルトの“Moon Over Naples”。65年のアメリカで話題となった。その後英詞が付けられ、同年から66年にかけてアル・マルティーノでヒット(参考文献:『ワークス・オブ・エルヴィアス』。拙著のCMでした、冷汗)。多くのアーティストがカヴァーしている。エンゲルは68年のアルバム『A Man Without Love』に収録。エンゲルは5年前に多くのアーティストとの共演アルバム『Engelbert Calling』を発表したがそこでイル・ディーヴォとこの楽曲を取り上げている。メドレー最後は「Love Is All」、バリー・メイソン&レス・リード共作の73年シングル。ドラマティックな曲風でエンゲル・ファンには馴染み深い。NMEシングル・チャートではランクされていない(ミュージック・ウィーク誌のシングル・チャートには登場)、HOT100では10月13日付91位。74年のアルバム『The World Of Engelbert Humperdinck』収録。

ラスト・チューンはメドレーから間髪入れずイントロで大拍手、素晴らしい「Release Me(And Let me Love Again)」!!エンゲル最初の大ヒット・ナンバーである。1967年のベスト・セラー・ソング。NMEシングル・チャート3月4日付、11日付、18日付、25日付、4月1日付、8日付6週1位。HOT100では5月27日付、6月3日付、10日付、17日付4週4位。50年代のカントリー・ソングの名作で、54年にジミー・ヒープ・ウィズ・ピーク・ウィリアムズでヒット。時期を同じくしてレイ・プライス、キティ・ウェルズでもそれぞれベスト・セラーを記録。そんなカントリー・ソングは62年にエスター・フィリップスでR&Bシーンで話題を呼んだ(余談だけどエスターは僕の大好きな歌手でKUDUでのLPは僕がライナーを…)。そしてエンゲルで改めて大ヒットしたのだ。その後もカントリー/R&B界で何度かリバイバル。一方でエルヴィスは70年代にステージでよくこのナンバーを取り上げライヴ・アルバムにも残されているが、エンゲルの影響が大だ。ここで静かに席で聴き惚れていたオーディアンスは我慢しきれずステージ前に殺到、後半からエンゲル先生について大合唱!そしてエンディング、このナンバーの演奏がぐっとアップ・テンポになってエンゲルは一旦引っ込む予定だったけどそのままステージでノリノリ、オーディアンスへ感謝を述べる。

ドウモ アリガトウ、アンコール・ナンバー「For The Good Times」。この楽曲もエルヴィス・ファンには思い出深い。クリス・クリストファーソンの作品で彼自身も勿論レコーディングしている。レイ・プライスで70年にカントリー・シングル・チャート1位を記録して以来多くのアーティストが取り上げた。エンゲルは71年のアルバム『Sweetheart』に収録。 “Tokyo”“ドウモ アリガトウ”というフレーズを入れながらエンゲルはこの作品でフィナーレを飾ったのだった。ここでも観客はエンゲルに促されたまたまた大合唱。


▲US/LP『Sweetherat』 from Mike’s Collection

エンディング・テーマは「So Rare」、1930年代の楽曲、57年にジミー・ドーシーでヒットした。コーラスをフィーチャーしながらとてもお洒落な構成でフィニッシュ。勿論エンゲル・オン・ステージではお馴染み赤ハンカチ・プレゼントで客席を沸かす。この日は6枚だったかな!?永遠のミスター・ロマンス、エンゲルベルト・フンパーディンクに大きな拍手!!!


▲エンゲルと筆者

*ライヴ・ショット:Pic. by K. Sato

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