【連載】Vol.101「Mike's Boogie Station=音楽にいつも感謝!=」

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映画「ザ・バンド かつて僕らは兄弟だった」



1968~69年にかけて僕のターン・テーブルにはローリング・ストーンズの『Beggars Banquet』かザ・バンドの『Music From Big Pink』が乗っていた。毎朝どちらかのLPを一通り楽しんでから中央大学付属高校へ向かう。そして授業中は「Salt Of Earth」や「The Weight」を口ずさみながらRSFC会報の原稿執筆していた。3年B組で僕に前に座っていた服部裕君(現在はミック・テイラーやイアン・マクレガンも訪れた千駄ヶ谷にある“ぎっちょん”のマスター)が証人である。また原稿を書いてない時は座高の高い服部君をガードにしてグーグーだったらしい(冷汗)。


▲大仲良しだったマックこと故イアン・マクレガンと…@ぎっちょん・1994年4月 Pic.by Hiroshi Hattori

ザ・バンドは渋谷ヤマハの輸入盤コーナーでそのジャケット・デザインに衝撃を受けて早くから注目していた。当時仲良くしていたヤマハのお姉さん(ウフフ)に特別に封を切って視聴させて貰った瞬間、もう即買いだった。まだスワンプ・ミュージックという用語誕生前だったけどそのダウン・トゥ・アースなサウンド・クリエイトぶりはストーンズとは全く異なったとても新鮮な味わいだったのだ。映画『イージー・ライダー』や“ウッドストック”が注目される中、日本でも彼らが段々と脚光を浴びてくることになり改めてザ・バンドとボブ・ディラン、ザ・バンドとロニー・ホーキンスのことをいろいろ勉強した…。



ザ・バンドがロビー・ロバートソン、リック・ダンコ、リヴォン・ヘルム、ガース・ハドソン、リチャード・マニュエルの5人のオリジナル・メンバーで活動したのは16年余りだったけど、その間に彼らはアメリカン・ミュージックの魅力を余すことなく僕らに伝えてくれたと改めて諦観する今日この頃だったりする。



この度ザ・バンドというグループの偉大さをダイレクトに伝えてくれる映画がマーティン・スコセッシのディレクションで完成した。ストーンズ・ファンにも馴染み深いマーティンは勿論あの『ラスト・ワルツ』を手掛けたことでも知られる。



この映画は10月23日から全国順次公開中でタイトルは『ザ・バンド かつて僕らは兄弟だった』だ。ロビーが自らの生い立ちを語りながらザ・バンド結成から崩壊までをエモーショナルに語りながら、貴重な映像や音源がスクリーンから飛び出す。


▲ロビー・ロバートソン

Vol.99でご紹介した映画「ランブル 音楽界を揺るがしたインディアンたち」でも触れたがロビーは母親がモーホー族。そして本作で知ることになるのだが実父はユダヤ人ということだ。1943年生まれのロビーは50年代中期のロックンロール・エクスプロージョンにビッグバン。チャック・ベリーやファッツ・ドミノの音楽に出会い自分も将来この音楽の道に進むことを子ども心に決心する。ミドルティーンになるかならない頃からバンドを結成しトロント周辺で活動。そしてロニー・ホーキンスと出会う。彼のバンド、ザ・ホークスがその後のザ・バンドとなることはよく知られる。僕はこのところロ二ー・ホーキンス&ザ・ホークスのCD『Ronnie Hawkins+Mr.Dynamo』を聴きまくっているのだが、ここにはロビー15才時作品「Hey Boba Lou」「Someone Like You」が収録されている。機会をみつけてぜひお聴きいただきたい!


▲CD『Ronnie Hawkins+Mr.Dynamo』のジャケット13~14頁 ロビーの名前を見つけてください! from Mike's Collection

映画はザ・バンドがロニーのバンドとして活動しその後独立しホワイトR&Bグループと注目されたと説明してくれる。もうネタバレでいくけど、ザ・バンドはボブ・ディランと出会い彼のバッキングを務め、ロック史に刻印されている“ディランへのブーイング”を体現する。

本作ではジョージ・ハリスン、ブルース・スプリングスティーン、エリック・クラプトンらがザ・バンドの凄さを語っている。特にエリックはザ・バンドのメンバーになれなかったことを今でも残念がっている。


▲エリック・クラプトン


▲ブルース・スプリングスティーン

本作はザ・バンド結成から解散までをロビーのプライベート・ライフを交えながら進んでいく。そして1976年、祝典となった“ラスト・ワルツ”には多くのゲストが出演するがやはり圧巻はロニー・ホーキンス、「Who Do You Love」だ。彼の下に集結した5人は“兄弟愛”“友情”“愛情”の中で76年まで一緒に演奏したのだった。



その後はザ・バンドというグループが形を変えて活動していくのだが、やがてメンバー3人がこの世を去っていった。彼らの発言シーンには心が痛む…。エンディングのリヴォンがシャウトする「The Night They Drove Old Dixie Down」(リヴォンが南北戦争時のことを研究してこの作品は完成している)シーンは涙なくして観れない。そしてこの作品を味わいながら僕はふとディランとザ・バンドのライヴを1965年に体験したムロケンこと室矢憲治さんを想い出した。彼に久しぶりに電話し、ムロケン著「'67~'69 ロックとカウンターカルチャー 激動の3年間」(河出書房新社)を改めて熟読した。


▲「'67~'69 ロックとカウンターカルチャー 激動の3年間」 from Mike's Libarary

*映画「ザ・バンド かつて僕らは兄弟だった」
角川シネマ有楽町、渋谷WHITE CINE QUINTOほかにて上映中
*写真:(C)Robbie Documentary Productions Inc.2019
https://theband.ayapro.ne.jp/



偉大なるザ・バンドの音楽は現在ジム・ウィダー率いるザ・ウェイト・バンドが伝承していることは周知の通りだ。Vol.78でも紹介した通りライヴ・イン・ジャパンも実現している。TWBのレイテストLIVE CD2枚、こちらもぜひとも楽しんで欲しい!(前者のライナーは僕です、汗。後者は健太選手、拍手)。


▲CD『ライヴ・イズ・ア・カーニヴァル/ザ・ウェイト・バンド』 提供:BSMF RECORDS


▲『ライヴ・イン・ジャパン/ザ・ウェイト・バンド』 提供:Vivid Sound Corporation

☆☆☆☆☆

このところ必見の音楽映画がいろいろ公開されている。僕はジョン・コルトーレーンやセロニアス・モンクのステージを60年代に味わった(プログラムもしっかりコレクションしてあるんだ)、ジャズも大好き。そんなジャズ・ファンにお薦め、まずは「マイルス・デイヴィス クールの誕生」、さすが64年来日には行ってないけど、81年の新宿西口広場での素晴らしいライヴを本作を楽しみながら思い出した。


▲「マイルス・デイヴィス クールの誕生」プログラム from Mike's Collection

そしてドキュメタリー・タッチな映画「ジャズ喫茶ベイシー Swiftyの譚詩(Ballad)」もジャズ&オーディオ・ファンは勿論のこと幅広い音楽愛好者を唸らせる内容だ。



半世紀に亘って営業を続ける伝説のジャズ喫茶“ベイシー”をオーナーの菅原正二氏自らが語る。



ここには日本人ミュージシャンは勿論多くの海外アーティストが出演していることでも有名。ひとつのお店の物語ではあるけれど、そこからは日本ジャズ史を垣間見ることが出来る。いろいろお世話になった故・野口久光先生、何度かイベントで一緒になった村上“ポンタ”秀一さん。そして40数年大お世話になった故・伊藤八十八さんらが本作に出演している。やはり知り合いがスクリーンに登場は嬉しいものだ。それはともあれ、岩手県一関市でマイ・ペースでジャズ・レコードを演奏するSwiftyのまさにバラードといえるこの映画は心ときめくものがある。エルヴィン・ジョーンズ、渡辺貞夫、小澤征爾、坂田昭、中村誠一ら大物の方も出演している。



*映画「ジャズ喫茶ベイシー Swiftyの譚詩(Ballad)」
*アップリンク渋谷、アップリンク吉祥寺ほかにて上映中
*写真:(C)「ジャズ喫茶ベイシー」フィルムパートナーズ
https://www.uplink.co.jp/Basie/

☆☆☆☆☆

◆イベントのご案内
【湯川れい子 洋楽裏話 千夜十夜 with マイク越谷】
“第一夜 マイケル・ジャクソン~秋の午後のマイケル秘話”


▲Pic.by K.SATO

日本のポピュラー・ミュージック・シーンをリードして60年。数多くの洋楽アーティストと交流を重ねてきた湯川れい子さん。所属していた日本のレコード会社の社長も会ったことのないアーティストも何人か…。そんな湯川さんの長い歴史の中でも、これだけは話しておきたいという秘話を、今だから仲の良い友人やゲストを交えて、あんな話、こんな話、涙が止まらない思い出の数々など、時に貴重な音源や映像を交えながらお話しするトーク・セッションです。

第一夜は、映画『メイキング・オブ・モータウン』の大ヒットを祝してズバリ<マイケル・ジャクソン&モータウン・スペシャル>。同映画上映時の二人のトーク・ショーに入り切れなかった方や、もっと話を聞きたいという声を受けて第一夜はマイケルを選びました。シークレット・ゲストの予定もあります。アルコールのいける人はお好きなお酒を手に。飲めない人はソフトドリンクで。お食事もありますヨ。マイケルに何度も会ったことのあるれい子さんとマイケルと一度だけトークしたことのあるマイク、どんなシークレットなエピソードが飛び出すのでしょうか!?どうぞお楽しみに!!そうそう「今のうちに聞いておかないと、損するよ!!」とれい子さんが言っていま〜す。

※日時:2020年11月23日(月・祝日)
Open:13時30 分
Start:14時00分
※出演:湯川れい子   @yukawareiko
マイク越谷 https://www.barks.jp/keywords/mikes_boogie_station.html
シークレット・ゲスト
※会場:LOFT9 Shibuya
http://www.loft-prj.co.jp/loft9/
ユーロスペース1F
※入場料:予約 ¥3000(+お飲み物 アルコールもご用意してあります)
▲お食事もございます
https://www.loft-prj.co.jp/schedule/loft9/159591
※予約サイト:https://www.loft-prj.co.jp/schedule/reserve?event_id=159591
前日までにご予約下さい
当日 ¥3500(+要ワンオーダー)
ソールドアウトになるケースもあります
(予約サイトご確認ください)
※お問い合わせ:03-5784-1239(12:00~22:00)

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