いい音爆音アワー vol.143「ナイス♪カウベル特集」

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いい音爆音アワー vol.143「ナイス♪カウベル特集」
2023年9月13日(水)@ニュー風知空知
「カウベル」は「牛の鈴」。大昔からアルプス地方の牛の放牧に使われてきました。放牧なんで、どこかへ行っちゃっても音で探せるようにするためです。
それをパーカッション楽器に転用したんですね。奏法は単純で、木のスティックで叩くだけ。手に持って叩く場合と、スタンドにセットする場合があります。ドラムといっしょにセッティングすることもあります。
ロック系の場合は、ビートを強調するために、シンプルに4分音符で叩く形が多いですが、ラテン系になると、リズムを複雑にしたり、音程の違うカウベルを組み合わせたり、ということも行われます。
素朴で安心できる音色なんですが、うるさい音楽の中でもちゃんと聴こえる存在感の確かさもあって、とても好きなパーカッションです。
今回はそんなカウベルが印象的に使われている名曲・名盤を集めました。


ふくおかとも彦 [いい音研究所]
  • ①Grand Funk Railroad「We're an American Band(アメリカン・バンド)」

    私がカウベルと聴いてすぐ思い浮かぶのが、“Grand Funk Railroad”の最大のヒット曲「We're an American Band」です。1973年7月に発売され、バンド初のシングル全米1位を獲得しました。トッド・ラングレン(Todd Rundgren)のプロデュースで、同タイトルの7thアルバムも2位まで行きました。
    69年のデビュー以来、ほとんどマーク・ファーナーが曲を書き、ボーカルをとっていましたが、この頃からドラムのドン・ブルーワーの曲・ボーカルが増えました。この「We're an American Band」もそのひとつなんです。ドラムとカウベルがフィーチャーされている感じがするのはそのせいでしょうか。

  • ②Loverboy「Working for the Weekend(それ行け!ウィークエンド)」

    さて、私より一回りくらい下の人たちからは、カウベルと言えばこれだという声がありました。聴いてみたら、カウベルは冒頭に3発しか入っていない(笑)。でも、その3発でこの曲が記憶に残っているなら、叩きがいがあったというものですね。
    “Loverboy”はカナダのカルガリーで1979年に結成されたポップロックバンド。アメリカのレコード会社に軒並み断られたので、「Columbia Canada」と契約して1980年、デビューアルバム『Loverboy』を出したところ、カナダだけでも100万枚売れ、アメリカでは200万枚売れました。
    そして、さらに売れた2nd アルバム『Get Lucky』から、この曲は先行シングルとして発売されました。

  • ③James Brown「My Thang」

    世の中的にもそうだと思いますが、1970年前後のJBがいちばん好きです。でもその頃はあまりパーカッションは使っていないもよう。
    この「My Thang」は1974年リリースで、曲としてはそんなにカッコいいとは思いませんが、R&B 1位 全米29位とまだまだ勢いは衰えていません。アルバムとしては38枚目の『Hell』に収録されています。
    ちょっと複雑なリズムで打っている、カウベルじゃないウッド系のパーカッションが目立っていて、律儀な4分音符のカウベルは陰に隠れています。でもカウベルってこの4分打ちが似合うんです。

  • ④Earth, Wind & Fire「September」

    9月ってことで、この曲も。私の中では好きなダンスミュージックのベスト10、いや5に入るかもです。ギター・リフ、ドラムとベース、ブラス・セクションとすべてが一体になって突き進むグルーブ感がたまりませんが、カウベルも、このグルーヴになくてはならない存在だと思っています。4分打ちに8分も混じるというスタイルで、ラルフ・ジョンソンが叩いているようです。

  • ⑤Bob Marley & the Wailers「Zimbabwe」

    「Zimbabwe」は、かつては英領南ローデシア、1980年にジンバブエ共和国となったアフリカ南部の国ですが、11thアルバム『Survival』がリリースされた1979年10月はまだローデシア時代。独立派への応援歌としてこの曲をつくりました。1980年のジンバブエ独立の祝典で、この曲は歌われ、非公式な国歌とされているそうです。
    で、この曲のカウベルは4分打ちではなく、小節の4拍目に3連符とかで入ってきます。

  • ⑥はっぴいえんど「いらいら」

    “はっぴいえんど”のデビュー・アルバム『はっぴいえんど』、通称『ゆでめん』の「いらいら」という曲にいい感じでカウベルが入っています。ほとんどの作詞は松本隆ですが、この曲は大瀧詠一の作詞・作曲。歌詞カードの最後に「下記の方々の多大なるご援助に深く感謝したい」というリストがありますが、そこに名のあるLaura Nyroの1968年の2ndアルバム『Eli and the Thirteenth Confession(イーライと13番目の懺悔)」の「イーライ」から思いついて「いらいら」にしたみたいですが、内容的にはほとんど関係ないです(「Eli」は旧約聖書の「サムエル記上」に登場するユダヤの民族的指導者、祭司)。
    日本のロックの創生期の作品ですが、今聴いても充分にカッコいいと思います。

  • ⑦荒井由実「返事はいらない [album ver.]」

    ユーミンのデビュー・シングルなんですが、シングルとアルバムではバージョンが全然違います。シングルはかまやつひろしのプロデュース。アルバムよりもゆったりしていて、カウベルは入っていません。アルバムはキャラメル・ママとユーミンの共同アレンジで、演奏はいいんだけど、テンポがちょっと速過ぎる気がしないでもない。でもユーミンのボーカルはこちらのほうがいいです。で、間奏がいきなりラテンぽくなって、ここでカウベルとティンバレスが登場します。

  • ⑧PINK「HINEMOS」

    80年代に“PINK”というバンドがありました。1984年6月にEPICソニーからデビューをして、デビューシングルの「砂の雫」のB面が「HINEMOS」というファンク・ロックな曲でした。私は85年に渡辺音楽出版という会社からEPICに転職したのですが、渡辺にいる時にこのPINKを原盤ディレクターとして担当していました。ところがもう1枚シングルを出し、アルバム用に何曲かレコーディングしたところで、EPICとソリが合わず、私がEPICに行くのとすれ違いで、彼らはアルファ・ムーンに行ってしまい、そこで私とは離れました。

  • ⑨Peter Gabriel「Games without Frontiers」

    この人のことをガブリエルと言うのは日本だけだそうです。ゲイブリエルですね。ただ、大天使のことをヘブライ語や古代ギリシャ語では「ガブリエル」と発音し、ゲイブリエルはその英語読みなので、日本人はオリジナルに則っているとも言えますが。
    それはさておき、ゲイブリエルは1975年まで、"Genesis"でボーカルを担当していました。その後、ゲイブリエルはソロ、バンドもフィル・コリンズをボーカルにして継続します。1980年頃は、Genesisもゲイブリエルも英国では1位になるんだけど、米国ではそこそこでした。それがなぜか1986年、Genesisは『Invisible Touch』、ゲイブリエルは『So』というアルバムで、順に2位、3位と、ともに米国でも大ブレイクするんです。こういうケースって珍しい。
    この曲は、“そこそこ時代”の3rdアルバム『Peter Gabriel Ⅲ (Melt)』からの先行シングルです。カウベルは小節の2拍4拍目、スネアの代わりですね。

  • ⑩Electric Light Orchestra「Evil Woman」

    「Evil Woman」はELOにとって最初のインターナショナル・ヒットでした。全英10位、全米10位。アルバムは5枚目の『Face the Music』に入っています。
    この曲、実は、アルバム・レコーディングの終盤に、まだちょっと尺が足らないというので、急遽つくった“埋草”だったそうです。コードとメロディは6分、詞を合わせても30分、ジェフ・リンが最も短時間で書いた曲とのこと。こういうのが案外大ヒットするんですよね。
    カウベルは“Evil woman〜”と唄うサビに4分で入ってきます。もうちょっと高音の別の金属パーカッションがもっと広範囲に入っていますが、それとは別なんでご注意を。

  • ⑪Shania Twain「That Don't Impress Me Much」

    カナダ人のカントリー・シンガー、シャナイア・トゥエインです。1997年11月に発売した3rdアルバム『Come on Over』はめちゃくちゃ売れまして、4000万枚。史上最も売り上げた女性ソロアーティストのアルバムとしてギネス認定されています。全米2位、全英1位他、世界各国で1位を獲得していますが、日本ではそこまで売れてない。向こうでの知名度はテイラー・スウィフト級ですが、日本では圧倒的にスウィフトのほうが有名。この違いはちょっと不思議なくらい。
    さてそのアルバムから7枚目のシングルとして(16曲入りで12曲がシングル・カット)、カットされたのが「That Don't Impress Me Much」です。イントロやブリッジになると4分打ちのカウベルが登場する、ポップで明るい曲です。

  • ⑫Backstreet Boys「I Want It That Way」

    “Backstreet Boys”は1993年に米国フロリダ州オーランドで結成した5人組ボーカルグループ。最初のシングルからスウェーデンに行きまして、デニス・ポップとマックス・マーティンのプロデュースで制作しました。で、そのせいか、いきなりヨーロッパやイギリスではヒットしますが、本国の米国ではそれほど売れなかった。なので1st & 2ndアルバムは米国ではあえて出さず、その2枚から曲を選りすぐって、米国盤の1stアルバムにしたところ、うまくいって、1400万枚もの大ヒットになりました。
    ところが1998年に、ポップが35歳で急逝しまして、その後はマーティンが音作りの中心になります。1999年4月発売のシングル「I Want It That Way」はマーティンがソングライティングとプロデュースを、スウェーデンの仲間と共同で担当していますが、全米6位ながら25カ国以上で1位となるメガヒット。その後25曲もの全米1位曲にソングライティングやプロデュースで関わっていく彼の、初めての大ヒット曲になりました。
    カウベルはブリッジなどに4分打ちでしっかり入ってきます。

  • ⑬Santana「Just in Time to See the Sun(栄光の夜明け)」

    “サンタナ”と言えばパーカッションだらけなんで、当然カウベルもいっぱい入ってるでしょう、と思ったらそうでもないんですね。この4thアルバム『Caravanserai』では10曲中3曲だけです。このアルバムA面は6曲が全部つながっていて、1つの組曲みたいになっているので、4曲目「Just in Time to See the Sun(栄光の夜明け)」も、だんだん盛り上がる流れの一部分って感じで、2分ちょっとという短さだけどカッコいい。カウベルのリズムもかなり複雑です。

  • ⑭Azteca「Someday We'll Get by(いつか、よくなる時が)」

    サンタナの3rdアルバム『Santana Ⅲ』に参加したパーカッション奏者、コーク・エスコヴィードがその兄のピート・エスコヴィードとともに1972年に結成したラテンロック・バンドが“Azteca”です。15〜25人とメンバーはある程度流動的だったみたいですが、Neal Schon (g)、Paul Jackson (b)、Lenny White (dr)らが参加していました。
    パーカッション奏者のシエラ・E (Sheila E.)はピートの娘で、彼女の最初の音楽活動もAztecaでした。
    アルバムを2枚出して解散してしまいましたが、1973年発売、2ndアルバム『Pyramid of the Moon(月に立つピラミッド)』収録の「Someday We'll Get by(いつか、よくなる時が)」に、カウベルが入っています。シンプルに4分打ちです。

  • ⑮Average White Band「The Jugglers」

    「平均的白人バンド」と言いながら、白人離れしたファンク・サウンドを聴かせてくれる“AWB”。1973年、エリック・クラプトンのツアーで前座を務めて注目され、その年の9月にアルバム『Show Your Hand』でデビューしました。そして、彼らに惚れ込んだクラプトンのツアーマネージャー、ブルース・マッカスキル(Bruce McCaskill)がマネージメントを買って出ます。彼は借金をして彼らを米国に連れていき、Atlanticとの契約も成立させました。バンドはLAへ移住し、敏腕プロデューサーArif Mardinの下で制作した2ndアルバム『AWB』が全米1位、と絵に描いたようなトントン拍子で売れていきました。当初はチャートインできなかった1stアルバムも『Put It Where You Want It』とタイトルを替え、ジャケットも替えて75年に再発すると、全米39位までいきました。
    私はその2つを違うものだと思って、両方LPで買ってしまうという失策をやらかしていますが、なぜか、1曲目だけ曲が違うんです。「The Jugglers」は『Show Your Hand』のみに収録されています。カウベルはイントロからAメロに入っていて16ビートのリズムです。音程の違う2つのカウベルを使っているようです。

  • ⑯Chicago Transit Authority「Listen」

    Chicagoの1stアルバムですが、この時はバンド名もアルバムタイトルも「Chicago Transit Authority」でした。意味は「シカゴ交通局」。で、デビューアルバムにして2枚組。よほど期待されていたんだなと思いきや、全然そんな状況ではありませんでした。
    プロデューサーのジェイムズ・ウィリアム・ゲルシオはこのアルバムの前に、同じColumbiaでBS&Tの2ndアルバム『Blood, Sweat & Tears』(1968年12月)をプロデュースして、全米1位にしているんですが、これは自分への信頼確保と、Chicagoと契約してもらうためでした。そもそもColumbiaはBS&Tがいるから、もうブラスロック・バンドは要らないという態度でした。
    無事に契約してからも、いろいろ厳しく言われまして、レコーディング時間はベーシック5日、オーバーダビング5日で録音しなければならなかったし、2枚組はもちろん反対されましたが、印税なしという条件でなんとか承諾してもらったのです。
    ようやく69年4月に発売を果たしても、しばらくはなかなか売れませんでした。年を越してからFMオンエアが増えて、シングルが売れ始め、71年になってようやく全米17位まで到達しました。その代わり超ロングセールスになって、171週間チャートインし続けました。
    発売後すぐに来たのは、シカゴ交通局からのクレームで、裁判沙汰にすると言われて、「Chicago」に短縮しました。
    「Listen」のカウベルは、わざわざクレジットしてあるので、ジェイムズ・パンコウが叩いているみたいです。途中から左右に動きます。

  • ⑰Led Zeppelin「Good Times Bad Times」

    デビューアルバムが続きます。今度は“Led Zeppelin”の1st。1969年1月発売です。冒頭の「Good Times Bad Times」から、若き日の私はそのドラムのカッコよさに度肝を抜かれましたが、カウベルも入っていました。これはJohn Bonhamがドラムといっしょに叩いていると思われます。
    英国以外ではシングルカットもされました。

  • ⑱The Beatles「A Hard Day’s Night」

    ラストです。2000年までは「ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!」という邦題だった「A Hard Day’s Night」。その邦題は当時日本ユナイト映画の社員で、その後映画評論家になった水野晴郎さんがつけたそうです。
    収録アルバムはもちろんビートルズの3rdアルバム『A Hard Day’s Night』ですが、その発売が1964年7月10日。米国ではそれより2週間早く、6月26日にOSTとしてリリースされました。
    で、「A Hard Day’s Night」というタイトル、訳すと「ある大変な日の夜」で、特に変じゃないですが、英語的には変だそうです。「day」には「1日」と「昼」の両方の意味があって、ほんとの直訳は「ある大変な昼の夜」になるみたいで。
    これはリンゴ・スターが、あるとても忙しかった日の終わりに「It’s been a hard day」とつぶやいたら、もう夜だったことに気づいて、「…’s night!」と言い足した。リンゴはそういう変な言い回しを、ウケ狙いではなくてやっていたそうです。とにかく、それをみんな覚えてて、完成しつつ合った初めての主演映画のタイトルをどうしようという時に、「あれがいいんじゃない?」ということになり、さらに、だったらこのタイトルで主題歌をつくろうとなり、ジョンが翌朝にはこの曲を書いて持ってきた、そうです。
    サビのカウベルはもちろんリンゴが叩いています。

次回の爆音アワーは・・・

                        
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