来日直前!これまでの作品と新作での変化を克明に語るスペシャル・インタビュー

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全米ナンバー1アルバム『Under Rug Swept』を引っ提げ来日直前!
これまでの作品と新作での変化を克明に語るスペシャル・インタビュー

今やすっかりLAUNCHでもお馴染となった感のあるAlanis Morissetteだが、先ごろLAUNCHのL.A.スタジオへの3度目の訪問が実現、今回はインタヴューに応じて聡明な女性に成長したようすを披露してくれた。完全なセルフ・プロデュースのニューアルバム『Under Rug Swept』から数曲を演奏した後、グラミー賞に輝いた歌姫はその制作過程を克明に語るとともに、28歳という若さにもかかわらず経験した数多くの出来事を明らかにしたのである。

 

プロデュースは大きな試練だったけど、いい経験だったし、後悔はしてないわ

最新アルバム

UNDER RUG SWEPT
WEA 2002年2月20日発売
WPCR-11110  2,520 (tax in)

1 21 Things I Want In A Lover
2 Narcissus
3 Hands Clean
4 Flinch
5 So Unsexy
6 Precious Illusions
7 That Particular Time
8 A Man
9 You Owe Me Nothing
10 Surrendering
11 Utopia
12 Sister Blister
13 Sorry 2 Myself


■アラニス・モリセット 日本公演

10/2(水) 宮城県民会館
10/3(木) 日本武道館
10/4(金) 日本武道館
10/6(日) パシフィコ横浜
10/8(火) 大阪城ホール
10/9(水) 名古屋センチュリーホール
10/10(木) 福岡サンパレス

問い合わせ ウドー音楽事務所
03-3402-5999
最近は自身の人間関係にもっと注意を払うようになった

――『Under Rug Swept』からのファーストシングル「Hands Clean」について聞かせてください。

ALANIS:「Hands Clean」は私が若かったころに一緒に仕事をして恋愛関係にもあった人物について書かれた曲で、ヴァース(Aメロ)とBセクションは過去の時制から彼が私に語りかけていて、コーラス(サビ)とブリッジでは私が現在形で返答しているという、いわばヴァーチャルな対話形式になってるの。

――私がすっかり気に入ってしまった「Utopia」はどうですか? あなたがこれまでに録音した中でも最も美しい曲のひとつだと思うのですが。

ALANIS:自分の気持ちの中で何を目指してるか分かってる場合以外は、特に目的もなく手探りをしながら作ることも多いの。だから、それはある種の地図のようなもので、とりわけ細かいこだわりがあるわけじゃないんだけれど。少なくとも作っている過程の自分の状態と関連はあるんでしょうね。つまり何て言うのか、自分の望みうる最高のヴィジョンのようなもので、毎日をそんなふうに過ごしているわけではないけど、努力はしているってところよ。

――「Precious Illusions」については?

ALANIS:ああ、「Precious Illusions」ね。自分が歳をとって成長するにつれて、ずっと若いときに真実だと思っていたことがそうだとは言えなくなってくるのよ。それは幻滅させられることで、ひとつの認識から別の認識へと移行するのには悲しみとある種の喪失感が伴う。そんなことについて歌っている曲ね。

――あなたはご自分のアルバムを“スナップショット”だと表現していましたが、この最新アルバムは何のスナップショットなんでしょう? 写真という形で見るとしたら、何が写っているんでしょうか?

ALANIS:このアルバムは、私の人間関係の探求についてのスナップショットかしら……特にロマンティックな関係のね、今まで描いてこなかったような。私のプライオリティというか、とにかく、自分を表現すること、旅行とキャリア、そしてあらゆる面での前進が最優先だったけど、最近では自身の人間関係にもっと注意を払うようになったわ。私の人間関係を見ていたって分からないことなんでしょうけど、このレコードはまさしくひとつのロマンティックな関係の終焉、次のロマンスの始まり、そして破局の繰り返しを描いたものなのよ。今の時点で自分の心の中にこの作品に関するテーマがあるとしたら、それはまさに他者とのつながりを求めること、人と人との隔たりに橋を架けたいと望むということなの。

――だけど、あなたは過去にも明らかに人間関係を扱った作品を発表していますね。新作と『Jagged Little Pill』におけるAlanis、つまりAlanisという“キャラクター”の違いを比較するとどうなるのですか?

ALANIS:受動的でなおかつ攻撃的なところは少し減ったと思うわ。良いことよ。受け身の状態があまりなくなったことで、ブチ切れることも少なくなったの。人とのコミュニケーションも前よりはとれるようになったし。以前は自分の感情のはけ口として作品に頼っていたけれども、日々の生活ではソングライティングのプロセスに使うような勇気や知恵を使うことができなかったのね。そのあたりは大きな変化だと認めざるを得ないわ。

1日に1、2曲書いて、それもデモまで作ってしまうの

――今回はアルバム全部をひとりで作曲してプロデュースされましたね。それは望んだことだったのですか? そして負担に見合う成果は得られました?

ALANIS:プロデュースと曲作りをいっぺんに行なうことは大きなチャレンジだった。私はアーティストとしてもソングライターとしても、常に外の世界からは隔離されて、ある意味では保護されてきたから。プロデューサーたちがしばしば外部のエネルギーやコメントからの緩衝材として機能してきてくれたけど、今回はずっと自分で両方の役割を担って、ミュージシャンとか技術スタッフ、実務担当者とか、あらゆる人たちと折衝することになったの。ずっと全力投球でやってきたから、自分のスイッチを切る瞬間さえなかった。大きな試練だったけど、いい経験だったし、後悔はしていないわ。今度やるときには、もっとスムースにできると思うんだけど。

――ミュージシャンの話がでましたが、今回も非常に有名な面々が何人か参加していますね。彼らは何をもたらしてくれましたか? なぜ「この曲にはChili PeppersのFleaが必要だ」って判断したんでしょう?

ALANIS:彼らがスタジオにやって来るまで特に必要だと確信していたわけじゃないんだけど、実際にやってみると素晴らしかったの。Fleaが演奏したときには彼のスウィートなスピリットがトラック中に溢れ出したし、Dean(DeLeo、Stone Temple Pilots)にしてもEric Avery(元Jane's Addictionのベーシスト)やM'eshell Ndegeocelloにしても同じことが言えるわね。つまり、彼らはみんな本当に素晴らしかったってことよ。それに私と一緒にツアーして回ったバンドメイトが全曲に参加していて、まるでひとつのコミュニティみたいになっているの。私はコミュニティを形成して、動かしていくのが大好きで、レコード作りにおける最高の楽しみのひとつと言えるくらいね。

――前の作品『Supposed Former Infatuation Junkie』はどうでしたか? 多くの人が“ちょっと難しい”とか“つかみどころがない”などと評したアルバムでしたよね。その経験から何かを学んで、今回のアルバム制作に活かされたのでしょうか?

ALANIS:素晴らしい質問ね。『Jagged Little Pill』の後で『Supposed』を作るのは、私にとって何も考えずに、つまり新作の曲作りにまつわる膨大なプレッシャーを無視して、ただもうベストを尽くして曲を書くというプロセスだったの。だから曲の構成そのものを放棄したくなったとき(何度もなったけど)は実際に放棄したし、あの作品では自分の奥底にあるものに従っただけなのよ。そのおかげで自分の直感に耳を傾けることができるようになったし、直感的なプロセスで制作するということができるようになったから、それからはずっとそのやり方を続けているわ。

――商業的な観点からすれば、大成功した1stアルバムの次の作品というのは、明らかに最も制作が難しいものと思われるのですが。2ndアルバムに関して現在どのように考えていますか?

ALANIS:あのアルバムはとっても気に入っているわ。聴き返すたびに、数週間前もフィジーで聴いたんだけど、好きになるの。3年後に日記を読み返すようなもので、自分がすっかり忘れていたようなことで、驚いたり惹きつけられたりするのよ。それも悪くないことね。あの時代の素晴らしいスナップショットといったところかしら、いろんなことを語りかけてくれるわ。

――さらに伺いますが、『Jagged Little Pill』はどうですか? あなたにとって勲章ですか、それとも悩みのタネ? どちらでしょう。

ALANIS:どっちでもないわね。『Jagged Little Pill』について考えたり聴き返したりするときに思うのは、やっぱり私の人生におけるひとつの時代のスナップショットということよ。つまり、'95年に撮影した自分の写真を取りだして「うわぁ、あの頃やってたことや考えてたことを全部思い出すわ」って思うようなものね。あのレコードを見たり、その時代の映像を見たりしただけでも、深い共感を覚えるの。だって私にとっては疾風怒涛の時期だったわけだし。

――資料によれば2ndアルバムに収録するつもりだった曲で、今回の『Under Rug Swept』からも漏れたトラックがいくつかあるそうですが、そのような状況は今も続いているのですか?

ALANIS:2ndに入れようとしたかどうかはわからないけど、新作に収録できなかった曲はEPか何かでリリースされる可能性はあるわね。うまくはまらなくてアルバムに入れられなかったけど、取っておきたいくらい気に入った曲がいくつかあることは確かだから。

――曲を作ったり録音したりするときは、いつも多作なほうですか?

ALANIS:そうね、たいていのプロセスは速いわ。例えば曲を作ってるときには、1日に1、2曲書いてデモまで作ってしまうの。それがもしも骨の折れるプロセスだったら、諦めてしまうでしょう。何か細切れに作っておいて後からまとめ上げるというのでは、あまりインスピレーションが感じられないし、私にとってはクリエイティヴとは言えないのよ。

私が好きなのはとても個人的な表現を通じて伝えること

――おそらく聞き飽きた質問でしょうが、いわゆる“ロック界における女性”の問題について伺います。あなたにこれを尋ねるのは、あなたや何人かのアーティストが台頭したころ……あなたにすべてを代弁させるつもりはありませんが、つまり'90年代の半ばには「Lilith Fair」とかいろいろと盛り上がっていたのに、現在、音楽的な面で振り返って見るとまったく無に帰してしまったように思えるからです。現時点でのロック界における女性の地位についてどのように考えていますか?

ALANIS:特定の数年間が男性優位であったり女性優位であったりしたとしても、時代の振り子は常に揺れているわけで、とりわけこの振り子は振幅が大きいのよ。現在は男性優位の時代かもしれないけど、また女性優位の方向へと揺り戻しつつあるように思えるわ。最終的には振り子が真ん中で静止してくれるといいんだけど、音楽そのものにはあんまり関係ない話という気もするわね。

――あなたは常に政治的なことに関わっていますよね。作品にすべてを語らせるという姿勢を取られているような印象も受けます。歌詞そのものが公然と政治的というわけではないけれども、政治性は内包されていると感じます。

ALANIS:そうね、私は個人的で小宇宙的なささやかなストーリーが、同時に政治的で普遍的かつグローバルなものって信じているの。だから国家間や宗教間の対立と解決策、あるいはその欠如という問題も、私自身と他の誰かとの対立に引きつけて考えることができれば、そんなに大差はないということがわかるのよ。これらはみんな同じような問題だけど、ずっと誇張された形で起こっているわけ。政治的な問題であれ何であれ、私が好きなコミュニケーション手段は、とっても個人的な表現を通じて伝えることなの。もちろん私は両方を実行してきたけど、好みで言えば間違いなくパーソナルな表現を選ぶわね。

――政治的なイべントに参加するのは自分の責任だと考えますか? あなたがそうした活動を求める原動力は何でしょう?

ALANIS:自分の“責任”だとは思っていないわ。それは私の情熱だと思う。それが私自身であり、私の信念だと考えているのよ。だから毎朝、目を覚ますたびに私が真っ先に考えることのひとつは、“自分自身のことと何かに奉仕すること、その間でうまく折り合いがつけられるかしら?”ってこと。つまり基本的には毎朝そんなことを念頭において暮らしているのね。

――先ほど旅行のことを挙げていましたね。あなたがL.A.のMuseum Of Toleranceに来たとき、私はそれを取材していました。つまり、あれはちょっと驚くような経験だったんです。あなたは現代の大きな問題となっているような世界の地域をいくつか見ています。戦争や今まさに世界で起こっている様々な出来事に関するあなたの意見を聞かせてください。

ALANIS:私たちの意識というものが本来あるべきところにまで高められていないという症状の現れだと感じてる。人間って意識という面では、その可能性のわずか0.011%程度しか活用してないの。だから世界の様々な問題は、そうした根源的な原因が症状として現れだと思う。現在の状況や症状に対処しようとしているのはわかるけど、根本的なところにあるのは私たちの意識レベルや精神的な空白の問題、あるいは認識不足といったもので、それらが現実の兆候として現れている。それで私は、治すべきところがあれば何であれ治療には大賛成で、つまりあなたが血を流しているのならば包帯を使うことをもちろん支持する。けど、私が常に心掛けているのはまず最初に傷口の原因となったことに立ち戻るという作業なの。それこそが私の取るべき立場でしょう。

――少なくとも旅行の話ということでは同じ流れの質問になるのですが、そうしたはるか遠方の土地での経験は新作に反映されているのでしょうか?

ALANIS:わからない。旅行は私にかなり大きなレベルで影響を与えていると思うし、おそらくは自然と歌の中にも要素として入り込んでくるでしょうね。人と人とのつながりを信じていることや精神的なレベルでの互いの連係といったもの、そうしたテーマが私が書く曲に何らかの形で自然と現れてくると思うのよ。だから答えはイエス、旅行は私に影響を与えたわ。でも、私がどんな人物であるかということが、私が旅したいと思う場所の選択に影響を与えているわけだから、両方が相互に影響しあっていると言えるわね。

――現在アルバムのプロモーションのために米国をツアーされていますね。世界中を旅した後で、例えばダラスで演奏するのはクロアチアで演奏するのと比べて、同じようにエキサイトできることなんでしょうか?

ALANIS:うーん、私にとって全然違いはないわ。アメリカで演奏しようが、オーストラリアであれアジアであれ、どこでもみんな人間に変わりはないもの。私にとって重要なのは人々とのつながりであって、それはちょうど会話みたいなものよ。舞台に上がるとそこにいる観客によって自分が恩恵を受けているように感じる。彼らが同じように感じてくれているといいんだけどね。

――今後の公式な予定について教えてください。'02年の残りの日々はあなたにとってどのようなものになるのでしょう?

ALANIS:今のところ旅行とツアーだけね。音楽を聴衆と共有するの。これまでと同じような規模で世界中を回りたいかどうかは、現時点では大いに疑問なんだけど。だって私としては他にもやってみたい表現やクリエイティヴな形態もあるし、ツアーがあるとハプニングでそうした活動がストップしてしまう可能性があるから。

――他のクリエイティヴな形態や表現活動というのは何ですか? 少し教えてもらえます?

ALANIS:私は気持ちとしては作家のつもりなので、本やシナリオを書いてみたいの。みんなに聞いてほしいストーリーが心の中にあって、あとは書く時間を作るだけという状況なのよ。'02年中にできるか、'06年になってしまうのか、今のところわからない。でも、いずれどこかの時点で決断するでしょう。

――また演技に取り組む計画はありますか?

ALANIS:今のところないけど、映画の内容に自分が合っていると思えた場合は、もちろん可能性はあるわ。

――あなたは音楽著作権やアーティストの権利に関して非常に活発に活動していますね。その面で今年はかなりの転換期だったと思います。どのように展開すれば良いと思いますか? 理想の世界があったとして、望ましい変化の形とはどのようなものでしょう?

ALANIS:変化へ向けての動きはすでに始まっていると思うけど、現在の音楽業界に関する私の理想は、グラウンドの地ならしをちゃんとして、ミュージシャンやアーティストが自分たちの利益について、特にワシントンでもっと発言できるようにするということよ。彼らをRIAA(全米レコード工業会)やレコード会社、それにデジタル企業と同じように交渉のテーブルに来られるようにするの。連中はロビイストを大いに活用して、自分たちの意見をうまく代弁させてるじゃない? だからNoah Stoneが提唱して始めたRACという連合は素晴らしいアイデアだと思うわ。自分たちのロビイストを雇うための資金を集めて、我々の利益を代弁してもらうという計画なのよ。それからご存知のようにインターネット向けに作られている新たなモデルが脚光を浴びている一方で、アナログレコードに関する企業とアーティストの契約も注目を集めているの。こうした動きをさらに深めていったり、もっとパートナーシップ的な考え方を取り入れていったりするのが、たぶん私の理想とするところでしょうね。つまり双方が満足のいく形というか、両者にとって利益となる形でなければ契約は結ばれないということ。それが私の理想よ。

By Neal Weiss (C)LAUNCH.com

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