マイ・ケミカル・ロマンス来日目前特集 TOP INTERVIEW編

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──『ザ・ブラック・パレード』のタイトルはどこから?

ジェラルド:これは新作のタイトルであると同時に、このアルバムでの僕たちの別の姿でもあるんだ。アルバム作りは本当に苦労した。すごくダークな時期もあったから。お互いをサポートしなくてはならなかったし、新しいバンドになる必要があったんだ。このアルバムでの別の人格がザ・ブラック・パレードなんだ。死は自分が望む方法で僕たちの元にやってくると僕は思う。自分の中にある最も強烈な思い出がそのベースになるんだ。このアルバムのキャラクターであるザ・ペイシェント(患者)の一番の思い出は、子供の頃に父親に連れて行ってもらったパレードなんだ。だから彼の所にはザ・ブラック・パレードとして死が訪れるんだよ。

──新しいアルバムのサウンドはどんな感じ?

ジェラルド:叙事詩的で、劇的で、オーケストラのように大々的でビッグ・サウンドであると同時に、起承転結のあるストーリーが入ったコンセプト・アルバムなんだ。聴き込んでもらうと、ストーリーがどんどん展開し、最後には死というこの作品のコンセプトにたどり着くんだ。僕たちの死についてね。

レイ:リスナーに伝えたいストーリーがはっきりしていたから、色々と試してみたんだ。ピアノを含め、新しい楽器に挑戦したし、ピアノを使ったことによって違う角度から曲作りに取り組むことができた。すごく交響曲的なサウンドになったんだ。オーケストレーションがしっかりとしているし、今までやったことがないぐらい、僕たち5人がタイトにプレイしているんだ。

ジェラルド:そうだね。自分たちを押さえる必要がないんだって気持ちになれる段階に到達したんだ。別に今まで何かを我慢していたわけじゃないけど、全てが可能になったんだ。ロブ・カヴァロ(プロデューサー)に“好きなことを何でもやれ”って背中を押されたから、僕たちはクレイジーになったね。

──なぜジェラルドは金髪にしたんですか? ビデオやアルバムに関係しているんですか?

ジェラルド:ああ、そうなんだ。周りの人間を驚かせたかったんだ。僕たちは変わったから、それを表現したかったんだよ。昔の、あの真っ黒で前髪を横に流していたヘア・スタイルに嫌気が差して、坊主にしようと考えたこともあったぐらい。別の人格をこのアルバムのために形成しようと決めた時、まずは外見から変えることにしたんだ。その後に衣装を替えた。このアルバムのキャラクターである“患者”みたいになるために、短い金髪にする事にしたんだ。僕が頭に描いたこのキャラクターのイメージはすごく苦しい病と闘ってきた男。放射線治療を受けるぐらい重度な病を患った男をイメージしたし、イメージ・チェンジした直後はまさに病でやつれた患者のような風貌だった。そのヴァイヴをヴォーカルで表現することができたんだ。だから外見を変えたのはあらゆる面で良い結果を生み出した。

──ある記事で読んだのですが、一時アルバム・タイトルを『THE RISE AND FALL…』にする予定だったとか。本当ですか?

ジェラルド:ほんの一瞬だけ頭を過ぎったアイディアだよ。自分たちでは意識していなかったけど、無意識のレベルでのヒントだったね。もちろんこれはデヴィッド・ボウイの『THERISE AND FALL OF ZIGGY STARDUST AND THE SPIDERRS FROM MARS』から取ったタイトルなんだけどね。僕は早い段階で、自己陶酔したアルバムは作りたくないって心に決めていた。だけどこのタイトルはすごく自己陶酔している。このタイトルにしていたら名声や成功についてのアルバムになっていたと思う。けど、僕はそんなのはイヤだった。名声なんて僕たちのキャラクターじゃない。成功したからすごいんじゃないんだ。僕たち自身が、そして僕たちがやっていることがこのバンドを特別な存在にしているんだ。例え観客が20人でも200人でも2,000人でも僕たちの核にあるものは変わらない。

──音楽キャリアにおいて、最もあなたに影響を与えた人を一人挙げるとしたら誰ですか?

ジェラルド:インスピレーションという面では僕とマイキーはおばあちゃんに最も刺激されたし、未だに刺激され続けているよ。新作にライザ・ミネリがゲスト参加しているのは、おばあちゃんの影響なんだ。おばあちゃんに『キャバレー』や『コーラスライン』等の素晴らしいミュージカルを教えてもらったんだ。そういう要素を僕たちはこのバンドに取り入れようとしているし。

フランク:僕のおじいちゃんと親父はミュージシャンだから、彼らのおかげで常に音楽に携わってくることができたんだ。週末になると親父たちに会いに、演奏するのを毎週末観に行ってた。未成年は本当は立ち入り禁止だから、親父たちは僕をバーの後ろに隠していたけど、僕は常にショウを見に行っていたし、昔から音楽をやりたくて仕方がなかったんだ。家族には常に音楽があったから、音楽的インスピレーションは彼らから受けたね。

レイ:僕は兄貴だな。彼の影響でギターを始めたし、兄貴はずっと僕のことを応援し続けてくれているんだ。初めてのギターを買ってくれたのは兄貴だし、兄貴のギター雑紙を貸してもらってギターを覚えたんだ。寝室で一緒にジャムして、兄貴に色んなことを教わったいい思い出がたくさんあるよ。彼がいなかったら今の僕は存在しないね。

ボブ:僕は他のミュージシャンたちだな。色んなドラマーがいるけど…2人挙げよう。おそらくニール・パールとデイヴ・ワコーだな。彼らのプレイを見るだけで刺激になった。個人的に知っているわけじゃないけど、彼らのビデオを見ながら一緒に叩いて、彼らみたいに上手くなりたいと思い続けたんだ。最も影響を受けたのは彼らだね。

──バンドをスタートしようとしている人へのアドバイスは?

ジェラルド:動機が大切。ちゃんとした動機が必要だし、それは名声でも金でもないんだ。自分の中に存在するもの、心から訴えかけたいものっていうのが一番重要なんだ。そして変化をもたらせたいと思う気持ち。人の考えを変えたい、人に影響を与えたい、世の中をより良い場所にしたいっていうのはどれもバンドをスタートする正しい動機だね。その動機さえあれば、あとはひたすら努力すればいいんだ。

フランク:ああ。コードをいくつか弾けたら、後はハートを込めてぶつかればいいんだよ。

ジェラルド:ああ。そしてヴァンに飛び乗って後戻りしない。地元になんて帰っちゃいけないんだ。まるで海外の戦地で戦ってきた兵士と同じ気分で、地元に戻ったって元の生活に戻ることはできないんだよ。

──昨年の夏に怪我でショウをキャンセルしましたが、交通事故ですか? それともビデオ撮影?

ジェラルド:素晴らしき監督のサム・ベイヤーと2本のビデオを立て続けに2日間で撮影した。彼は強烈な男でさ、今まで仕事をしてきた人間の中で彼ほど強烈なエネルギーを持った奴はいないね。最初のビデオの撮影が終った段階ですでに僕たちは全てのエネルギーを使い切っていて、ボロボロに疲れていた。でも次のビデオの撮影で、自分たちの全てを出して、最初のビデオよりもいい演奏をする必要があったんだ。3時間で撮り終えたんだけど、サミエルが作った中で最も短時間で撮影が終わり、最も強烈なビデオになったんだ。

──そして、撮影中に怪我をしてしまった。

ジェラルド:セットの雰囲気、曲のエモーション、エネルギーと撮影現場での状況全てが重ね合って、まるで僕たちの人生の頂点がこのビデオのためにあったって気持ちになったんだ。僕たちにとって初の、最初から最後まで演奏シーンのみのビデオになったんだ。だから僕たちは気が狂ったようになってしまった。その結果、ケガをしてしまったわけ。僕は足の筋をおかしくしてしまったんだけど、あまりにもひどかったから骨を折ったかと思ったぐらいさ。でも僕たちは演奏を続けたんだ。みんな怪我したよ。顔は切り傷だらけだった。ビデオの最後のシーンでのボブはすごかった。セットの火でひどい火傷を足に負ったにもかかわらず、シーンを撮り終えるために彼はドラムを叩き続けた。その結果、左足のふくらはぎに重傷の火傷を負ったんだ。

フランク:僕たちはボブより炎から10フィートは離れていたのに、それでもホント熱かったよ!「もう剃る必要はないな」ってぐらい、毛もこげついたね。

ジェラルド:で、日本(SUMMER SONIC 06)に行った。それとサンディエゴのみんなに謝らなくちゃな。サンディエゴのショウをキャンセルしなくちゃならなかったんだ。

──この仕事の一番いいところは何ですか?

フランク:毎晩の演奏時間。

ジェラルド:ああ! 一緒に演奏するあの1時間。その場にいる人間全員に僕たちの姿を見せることができるのが、この仕事の一番いいところだね。この仕事には他にも利点があるよ。親友と世界を旅して、クレイジーな事を見られるところだね。でも、後で振り返って「え?そんなこと、マジで僕たちはやったのかい?狂ってる!」って思うこともあるね。

──音楽はあなたたちの肉体と精神をどのように変えましたか?

ジェラルド:ツアーに出ていると、成長し、歳を取るペースがすごく早いんだ。色んなことを体験するからツアーが終わる頃にはスタートした時と顔つきが変わっているぐらいさ。でも最も変わるのは精神面だね。精神年齢が急激に高くなるし、より良い人間になる。このバンドはあらゆる意味で僕たちの精神面を支えてくれたし、僕達を助けてくれたんだ。

フランク:ああ、大きな開放感でもあるね。フラストレーションやクリエイティブな要素を発散できる場なんだ。いいことも、悪いことも全て吐き出すことができるし、ある意味これは、みんなに読んで、聴いてもらう日記のようなものだよ。僕たちにとって音楽は親友。時には敵にもなるけど。何かあった時に相談し、全てを注ぎこむことができるのが音楽さ。


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