【インタビュー】ジミー・ベイン、ラスト・インタビュー《前編》

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レインボー、ディオ、ワイルド・ホーシズなど、ブリティッシュ・ロックに冠たる名バンドの数々でプレイしてきたベーシスト、ジミー・ベインが2016年1月23日、68歳で亡くなった。死因は肺癌と発表されている。

彼は初期ディオのメンバー達が集結した“古くて新しい”新バンド、ラスト・イン・ラインに参加。2013年の<ラウド・パーク13>フェスでの日本公演には参戦できなかったが、アルバム『ヘヴィ・クラウン』での新たな出陣に熱意を見せていた。

このインタビューは2015年12月17日にジミーに行った、日本のメディアに向けてのラスト・インタビューである。ジミーは独特のちょっとヨレた口調で、ラスト・イン・ラインでの活動に加えて、レインボー、シン・リジィ、ワイルド・ホーシズ、ゲイリー・ムーア、スコーピオンズなどとの交流について語ってくれた。

前後編となるインタビュー、まず前編はラスト・イン・ライン、そしてアルバム『ヘヴィ・クラウン』について訊いてみよう。



──ラスト・イン・ラインはどのように始まったのですか?

ジミー・ベイン:数年前、ある日突然、ヴィヴィアンから連絡があったんだ。久しぶりだったし、「元気だった?どうしてる?」って楽しく会話をしたよ。「また一緒にやろうよ」って、話が盛り上がったんだ。彼はディオを解雇になって、後味の悪い別れ方だったからね。あのときディオというバンドは終わったと俺は考えている。俺自身はまったくネガティヴな感情はなかったし、ヴィヴィアンと俺、そしてヴィニー・アピスというラインアップは最高だと思ってきた。それが崩れた後、俺はしばらくバンドに留まったけど、マジックは失われていたよ。だから当時の曲をまたプレイしようと彼が言い出したとき、あの続きができるなんて最高のアイディアだと思った。ディオの最初の3枚のアルバムは、ロニーのものであるのと同じぐらい、我々のものだったんだ。

──ヴィヴィアンと知り合ったのはいつのことですか?

ジミー・ベイン:彼が北アイルランドのベルファストでスウィート・サヴェイジというバンドをやっているときに知り合った。若くてエネルギーに満ちたギタリストで、いつか一緒にやりたいと思った。それでロニー(ジェイムズ・ディオ)が新バンドを結成するとき、紹介することにしたんだ。ロニーは他の若手ギタリストを数人候補に挙げていたけど、ヴィヴィアンの才能に目を見張っていたよ。

──ラスト・イン・ラインのシンガー、アンドリュー・フリーマンはどのようにバンドに融け込んでいますか?

ジミー・ベイン:ロニーが歌った曲を歌うんだから、当然最高にパワフルなシンガーでなければならなかった。それだけでも難しかったけど、それと同じぐらい重要だったのは、ロニーと異なったタイプのシンガーが欲しかったんだ。アンドリューはそんな条件にピッタリだった。彼はロニーをコピーするのではなく、オリジナルを生かしながら新しいコンセプトを加えてくれたんだ。

──あなたはアルバムの曲作りにどのように貢献していますか?

ジミー・ベイン:俺は自分の人生を取り戻すためにリハビリ施設に入っていたんだ。音楽への情熱を失ったことはなかったから、ベースと小さなリハーサル用のヘッドフォン・アンプを持っていって、一人で弾いていた。そのとき幾つものアイディアが生まれて、『ヘヴィ・クラウン』でも使っている。「マーター」や「ブレイム・イット・オン・ミー」がその例だよ。アルバムの他の曲でも自分なりのインプットを加えているけど、最初のアイディアを出したのは、この2曲だ。

──ヴィニー・アピスとはディオ、ワールド・ウォーIII、3レゲッド・ドッグと長い付き合いですが、彼との関係はどんなものですか?

ジミー・ベイン:ヴィニーとは音楽的にも友人としても気が合うんだ。何も言わなくても、お互いの気持ちが読めるんだよ。ロック・バンドにおいて、ベーシストとドラマーには特別なコミュニケーションが必要だ。だから俺が新しいバンドを始めるとき、まず最初に頭に浮かぶのはヴィニーだし、彼も真っ先に俺に声をかけてくれる。初めてヴィニーがプレイするのを見たのは1980年代初め、彼がブラック・サバスでやっているときだった。ロンドンのハマースミス・オデオンだったと記憶している。とてつもないドラマーだ!と思ったね。初めて彼とプレイしたのは1983年、ディオを結成するにあたって、ロンドンのスタジオで会ったんだ。ヴィヴィアンも一緒だった。

──ヴィヴィアンがバンドを去ったときに「ディオが終わった」とさっき言っていましたが、あなたは2回バンドに復帰しています。それは何故ですか?

ジミー・ベイン:ロニーは世界一のロック・シンガーだし、俺と険悪な関係ではなかったから、戻ることに障壁はなかったよ。『マジカ』(2000)のとき、声がかかったんだ。俺は1年ぐらい音楽を止めていたから、バンドをやりたかった。渡りに船だったんだ。それからまた脱退したけど、次のアルバム『キリング・ザ・ドラゴン』(2002)を作るときにまた呼び戻された。このアルバムでは曲作りにより深く関わっているし、ダグ・アルドリッチとプレイすることができた。ダグとはもっと一緒にやりたかったけど、残念ながら彼はホワイトスネイクに引き抜かれてしまったんだ。ロニーが「クレイグ・ゴールディーを戻す」と言ったとき、ディオには情熱を失ってしまったよ。クレイグのことを悪く言うつもりはないけど、彼がバンドに良い要素をもたらしたとは言えないからね。ロニーはクレイグのことを気に入っていたし、何度も復帰させていたけど、残念ながらクレイグと俺の間からは、これだ!というコンビネーションは生まれなかった。

──ジェフ・ピルソンはディオにあなたの後任ベーシストとして加入して、彼の脱退後にあなたが再加入して、『ヘヴィ・クラウン』のプロデュースを手がけていますが、ジェフとの関係はどんなものですか?

ジミー・ベイン:ジェフはグレイトでファンタスティックな奴だ。最高のベーシストで素晴らしいシンガー、そして才能に溢れるプロデューサーだよ。彼はベーシストとして俺に敬意を払ってくれたし、ベストな部分を引き出してくれた。それに比較的キャリアの浅いアンドリューのヴォーカルの実力を伸ばして、アルバムに収めてくれた。ジェフは既にミュージシャンとしてはロック界でその位置を確立しているけど、これからプロデューサーとしても成功するだろうね。


──ラスト・イン・ラインとしてのライヴ活動について教えて下さい。

ジミー・ベイン:4月にイタリアで<フロンティアーズ・ロック・フェスティバル>に出ることが決まっている。あとはメンバー全員のスケジュール次第だ。ヴィヴィアンはデフ・レパードがあるし、スケジュールを確保するのが難しいけど、このバンドにもすごい情熱を抱いているし、これからも活動を続けることになる。俺は人生、長期的なプランは立てないようにしているんだ。だいたい予想どおりにはならないものだからね(苦笑)。

──ラスト・イン・ラインのショーはどんなものになるでしょうか?

ジミー・ベイン:最高にエキサイティングなものになるよ。クラシックスはもちろん演奏するし、レアな曲もプレイする。ディオのライヴではレインボーやブラック・サバスの曲もプレイしていたから、演奏されなかったディオの曲も多かった。「インヴィジブル」のように、当時ほとんどプレイしなかった曲をラスト・イン・ラインで演奏するのは楽しいよ。

──ラスト・イン・ラインは長期的なバンドと考えてもよいでしょうか?

ジミー・ベイン:俺はそう考えているよ。『ヘヴィ・クラウン』は俺の長いキャリアでも作っていて最も楽しいアルバムの1枚だった。気の合う仲間たちと一緒にステージに立つのも楽しい。ぜひ今回のツアーでは日本でもプレイしたいね。もう何度日本に行ったか、自分でもわからないぐらいだ。レインボー、ワイルド・ホーシズ、ディオ…いつだってファンは暖かく迎えてくれたし、何度でも行きたい国だよ。ラスト・イン・ラインの<ラウド・パーク13>でのショーに参加できなかったのは残念だけど、人間はみんな運命に導かれているんだ。それに逆らうことはできない。でも次回は必ず日本でプレイするから、待っていて欲しい。

──67歳(当時)という決して若くない年齢でハードなロックをプレイするのは、どんな気分ですか?

ジミー・ベイン:最高だよ。ファンタスティックだ。若い頃、俺はパーティー・アニマルと呼ばれたんだ。でもこの歳になると、パーティーは控えめにして、体調を整えている。俺にとっては、パーティーよりも音楽が大事なんだ。

残念ながらジミーの「必ず日本でプレイする」という約束は果たされることがなく、彼は我々の前を去ってしまった。そのベースが鳴り響くことはもうないが、我々は彼のプレイを収めた作品の数々によって、彼に再会することができる。

後編ではジミーがリッチー・ブラックモア、フィル・ライノット、ゲイリー・ムーア、スコーピオンズらについて語った歴史的な証言をお届けする。

(後編に続く)


取材・文 山崎智之
Photo by Ross Halfin

【メンバー】
ヴィヴィアン・キャンベル(ギター)
ジミー・ベイン(ベース)
ヴィニー・アピス(ドラムス)
アンドリュー・フリーマン(ヴォーカル)

ラスト・イン・ライン『ヘヴィ・クラウン』

【初回限定盤CD+DVD/日本盤限定ボーナストラック追加収録/歌詞対訳付/日本語解説書封入】3,800円+税
【通常盤CD/日本盤限定ボーナストラック追加収録/歌詞対訳付/日本語解説書封入】2,700円+税
1.デヴィル・イン・ミー
2.マーター
3.スターメーカー
4.バーン・ディス・ハウス・ダウン
5.アイ・アム・レヴォリューション
6.ブレイム・イット・オン・ミー
7.イン・フレイムス(ボーナス・トラック)
8.オールレディ・デッド
9.カース・ザ・デイ
10.オレンジ・グロウ
11.ヘヴィ・クラウン
12.ザ・シックネス
13.ヘヴィ・クラウン(アコースティック・リミックス)*日本盤限定ボーナス・トラック
【DVD収録内容】*日本語字幕付き
・ザ・ラスト・イン・ライン・ストーリー
・ザ・ソングス
・72987537
・「デヴィル・イン・ミー」ビデオクリップ
・「スターメーカー」ビデオクリップ

◆ラスト・イン・ライン『ヘヴィ・クラウン』オフィシャルページ
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