【インタビュー】フラチナリズム・モリナオフミに「最近どう?」って聞いてみた

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──そもそもの話なんですが、いつから人前で歌っているんですか?

モリ:15歳ですね。高校生のときに友達に誘われてバンドを始めて、300人キャパの高知のキャラバンサライっていうハコで。ハードコアバンドのボーカルでした。FISTっていうバンド名。こぶし……だっさ(笑)。

──初めて曲を作ったのは?

モリ:詞を初めて書いたのは小学校5年生のときです。

──きっかけは?

モリ:小2のときにB’zを聴いて歌を歌い始めたんですけど、そっから稲葉さんの書いた歌詞をノートに書き写すっていうのが俺の趣味になったんですよ。書いてるうちに自分でも書けるんじゃないかなって思って、小5のときに歌詞ノートみたいなやつを買って書き始めましたね。

──曲にはなったんですか?

モリ:中学校2年生とか3年生くらいかな。「森へ行こう」っていう曲で、アコースティックギターで作りました。


──このインタビューにあたって、いろいろ調べていたらフラチナリズムの前身バンド・マニフォルシェイク(のちのマニシェ)のライブを観ていた方のブログを発見したんです。10年前ぐらいのもので、「ボーカルは日によってかっこよかったり気持ち悪かったりする」って書いてあって笑いました。

モリ:ははは!(笑)それは今も一緒っすね。そのとおりだと思います。日によってかっこよかったりそうじゃなかったりで。

──先日、ライブを拝見したとき、すごくクールに1曲目の「いきなりステキ」が始まって、イケメン俳優ばりの表情をしていたので「モリさんがカッコいい……どういうこと?」って驚いたんです。雰囲気が全然違った。そのあとにいつものモリさんに戻ってましたけど。

モリ:自分って一体何者なのかが、まったく理解できていなくて。こないだ大衆演劇やったんですが、女形をやったら俺もう女なんですよ。あとから映像で見たら「こいつ誰! しなやかー!」ってビビって。今から歌う曲とか、髪型ひとつでキャラクターが変わる。多分、完全憑依型なんですよね。「いきなりステキ」のときも意識的にやっていたんじゃなくて、曲がそうだからそうなっちゃってたんだと思うんです。いいことか悪いことかわかんないんですけど、ある意味、自分というものが無いんですね。アルバムを作るときもそうですけど、この曲に一番合う歌い方をしようって心がけてるんで、「モリナオフミじゃなくてもいいな」って同時に思ってます。

──だからモノマネもお上手なんですね。

モリ:そうだと思います。入り込んじゃうんですよね。


──改めて、フラチナリズムにとっての「売れる」の定義を教えてください。

モリ:やっぱり「認知されること」。CDが売れるとか、ライブに人がいっぱいいるとかじゃなくて、たくさんの人が知ってくれているっていうのが俺にとっての「売れる」だなって。もちろんセールスとか動員は大事ですけどね。

──ちなみに、2017年9月のコラムでは「日本国民の半分がフラチナリズムを知っていること」って書いていました。

モリ:「日本で一番有名な芸能人は誰だ」っていう企画を以前テレビで見たんですけど、一番はタモリさんで、98%くらいは知ってるんですよ。バンドで50%知られてたら相当ですよね。全年齢が知ってくれている、「あの兄ちゃん達でしょ」っていう存在になることがフラチナリズムにとっての売れるってことだと思いますね。

──武道館でのワンマンライブを観せてもらえるまでは死ねないので、よろしくお願いします。

モリ:ほんとだよ、全員でボロ泣きしよう。24時間テレビみたいに、静岡辺りからメンバーの誰か走らせよう。ライブに全然間に合わへんってやつやるわ(笑)。あと、武道館でやるなら、<売れフェス>で一緒にがんばったやつらも全員バックコーラスで入れて「武道館立てたな!」って言いたい。

──期待して待ってます。

モリ:最近、周りのアーティストがバタバタ辞めていくんです。一週間に1回、二週間に1回、「モリさん、話したいことがあるんで飲みに行きましょう」って連絡が来て、大体が解散、活休、卒業。そんななかで、こいつらがおらんかったら俺はバンドを辞めてたっていう存在でもある大切なバンドが8月で解散するんですよ。解散の発表ツイートのリツイート数を見てたら、彼らが今までに出したツイートのなによりも、メジャーデビューの発表のときよりもリツイート数が多い。日本って生まれてくる瞬間より死ぬ瞬間の方が伸びる文化なんや、死ぬことがひとつのエンターテインメントになるんやなって思ったけど、俺はそれが好きじゃなくて。生まれるものを喜びたいんです。

──たしかに解散、活休、卒業はニュースで取り扱いがちですね……。

モリ:最近甥っ子が生まれたんですけど、めっちゃかわいいんです。生後2週間くらいのときに会いに行って初めて抱っこした瞬間、このために生きてた気がするって思った。Instagramに甥っ子の写真をあげたらイイネ数が今年一番で、生への感謝ってやっぱりあるなって感じましたね。ミュージシャンにとって曲は子どもみたいなものですから、それもみんなで同じように喜べたらもっとハッピーになるし、音楽業界もハッピーになれると思うので、そういうことも発信していきたいです。そして、「辞めたやつら全員見とけ、俺は死ぬまで辞めんぞ」って見せつけたい。売れずに辞めていったアーティストたちも、「フラチナリズムはがんばれ」って言ってくれてるやつらばっかりなんで、そいつらにも武道館観せてやりたいし、BARKSにも観せてやりたい。絶対行きますよ、約束します。


取材・文◎高橋ひとみ(BARKS)

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