【コラム】「この世界の片隅で -color-codeの奇跡-」第6話(最終回)

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第6話「The march」


color-codeはオーディションで集められた3人で結成した。同じ経緯だけど最近話題のNiziUと違うところといえば、「どんなことをするかが決まってないまま集められた」というところだ。

オーディションの段階では、ダンスボーカルなのかアイドルなのか歌うだけなのかそもそも何人組なのか、全て未定だった。とにかく審査員であるプロデューサーのお眼鏡に叶う人材を発掘する!という企画だったから、わたしたちがダンスボーカルグループになったのはたまたま合格後に3人ともダンスをやっていたとわかったからで、もしこれが3人ともお茶を習っていたら「抹茶ガールズ」として世界中を飛び回っていたかもしれない。

わたしたちが受かったオーディションで落ちてしまったひとの中には、いま別のグループで圧倒的人気を博すようになった人もいる。落ちた人の方が先に売れた。なんとも"人生"という感じがする。テレビで彼女を見かけると、「2000分の3で受かったはずのわたしたちがなぜこんなことになってるんだろう?」という惨めさは、嫌でも浮かんできた。そんな時も、どこかで誰かに言われた「時間をかけて売れたら、その分人気も長く続くから」という言葉をよすがにしてきた部分は、いまでもある。


最初の頃は、他の大手事務所からデビューしている他のダンスボーカルの子たちみたいに、めいっぱいおしゃれして、インスタ映えなランチやスタバの新作ドリンクを飲んで見せていた。芸能人へ憧れる側から紙一枚を隔てて芸能人側に入ったばかりのわたしたちは、どういう芸能人が憧れられる存在なのか、ついこの間までそればっかり考えていたからよく分かった。

わたしたちは、「高い服とかお洒落なブランド物の洋服を着て、いつもピカピカにメイクしてお肌もツルッツルでよくわからんエステだのロハスだのロカボだのを、汗水垂らして工事現場で働くでもなく、上司に媚び諂うでもなく、"パフォーマンス"だけで稼いだお金でやっててカッコいい」という視点で見ているのだ。

謎のインスタグラマーがフォロワーを増やすのも、「一体どこから出ている金でそんな聞いたこともない南国の島へ行っているんだ?てかその写真誰が撮ってるんだ?」というミステリアス感、そこに痺れる憧れるゥ、となるからだろう。わたしたちもそのミステリアス感、手の届かない存在感に憧れて、見様見真似で2000円くらいのサラダばかり食べてた時期があった。

だが、現実は違う。パフォーマンスで収益を立てられていないわたしたちは、2000円のサラダを食べてる場合では全然なかった。

デビュー当時はその夢の大きさにかまけて、「もうまもなく売れるから」と言う期待が家族にもスタッフにも周りにも自分にもあったから、短期ならということで仕送りでやりくりしていた。一丁前のアーティストかのように、マネージャーからバイトも禁止されていた。

その期間が1年過ぎ、2年過ぎ、徐々にわたしたちは現実を見つめなければいけなくなった。なんせ、このままでは生活ができない。かといって、メンバーは大阪に帰るわけにもいかない。歳は30歳も目前、同級生は結婚して子供を産んでいたり、会社で要職についたり、事業を立ち上げたりして、つまりはみんな自分で自分の身を立てていて当たり前の年齢だった。

わたしたちは、バイトをはじめた。はじめるしかなかった。


他のメンバーの仕事は一応伏せるが、わたしは平日の昼はとある会社でテレオペと事務をしている。始めてからもうそろそろで2年になり、バイトの中では1番の古株になった。もう目を瞑ってもお客様対応ができる。今年で27歳だ。昼はお客様対応、夜はお客さんの前で歌を歌ってきた。

これが、現実。
わたしたちのrealだ。

さいたまスーパーアリーナでメジャーデビューステージを踏んでも、6年後にはバイトリーダーをしながら、踊って、歌を歌っている。

夢がない、と思うだろうか?
そう思う人も、いるだろう。

だが、世界は変わってきているのだ。芸能界は、浜崎あゆみ、安室奈美恵、さらに遡れば山口百恵、松田聖子、そういうカリスマだけが夢を売っていた世界ではなくなった。今や、一般の人は知らないしテレビにも全然出ていないアーティストが武道館ライブを満員にし、それだけでご飯を食べられる。マニアックで限られた層にバカ受けするアーティスト、広く浅くではなく狭く深く刺さるアーティストが爆発的に増えている。その分、"売れている"と"売れていない"の狭間で、コアなファンを抱えて夢を追うアーティストが、爆発的に増えていると思う。

できることならバイトなどせずに、すべての時間を自分の練習やライブやプロモーションに使いたい。夢は諦めたくない。でも、生活のために、別の仕事も、しなければいけない。そういう現実に立たされているアーティストやアイドルは、もはやcolor-codeだけではないのだ。

わたしたちが飛び込んだ世界は、それまで思い描いていたような、華やかでキラキラした世界ではなかったけど、だからといってわたしたちの夢が無くなったわけじゃない。

だったら、今の芸能界の形に合わせて順応して、夢を追っていくだけだ。そう思った。

でも実際、会社で働いてみて、学んだことやタメになったことはたくさんある。お金を稼ぐことの難しさも、そうやって稼いだお金でライブを見にきてくれるお客さんのありがたさも、自分が働いてみてやっと身に染みて理解できた。働かないでみんなにチヤホヤされるだけでステージに立ってたら、お客さんへの感謝は薄れていき、傲慢に踏ん反り返っていたに違いない。むしろ働いていてよかったと、何ひとつ無駄なことなんてなかったと、今は思える。


夢は諦めない。アラサーはネガティブなワードにしない。
わたしたちは、「自由に、生きる」のだ。
color-codeは、この不自由な日本で、自由に生きる女性たちの一人として歌を歌おうと思う。

アイドルだから恋愛禁止?

女だから女らしくいろ?

男だから男らしくしろ?

女だから、30歳で売れてなかったらダメ?

誰かがいつか決めた古のルールに縛られるのはもうやめよう。不必要なタブーだのマナーだのに傷付けられるのはバカらしい。そういうのは、私たちの代で終わりにしよう。人を縛る枠やしきたり、暗黙のルールは、それらが差別を含んでいたり誰かを傷付けるものである限り、それらと闘うべきだとおもうから。

そしてcolor-codeは、個人が自由に生きることを尊重したい。もともと持っていた色を消して新しい色を塗るんじゃなくて、持っている色を生かしてカラフルに彩っていきたい。それぞれが自分の色でキラキラ輝いて、そのみんなで集合すれば、きっと眩しいくらいの光がつくれるから。

そして何より、楽しかった。この3人でやるすべてのことが面白くて、楽しかった。だから、ここまでこれたというのはある。なんでも、楽しくないとやってけないじゃん?


女性だって、何歳だって、夢を追っていい。楽しいことしていい。別の仕事をしたって、結婚したって、子供を産んだって、それが、夢を諦める理由にはならない。自由に、自分を愛して生きていきたい。

そして、同じ思いの人たちを先導して自由の行進"The march"を歩み、前例を作っていきたい。

それが、この6年かけてやっと見つけた、color-codeのかたちです。いろいろなものを削ぎ落として、やっと、realな自分たちで闘えるようになりました。辛いこともあったけど、いまは笑って話せるし、こうやって文字におこしたりできるようになったし、color-codeがいまのかたちになるために必要な6年間でした。


そして昨日、「Re∂l」という1stアルバムがリリースされました。color-codeがいかにして「Re∂l」になったか。全六話かけて紐解いていきました。拙い文章でしたが、読んでいただいて、本当にありがとうございました。
良かったら、これからのcolor-codeも見守っていてください。みなさんの心をグッと支えられるアーティストに、必ずやなります。

これからもよろしくお願い致します。


1st Album『Re∂l』

2020年9月16日(水)発売
FAFP-001 ¥3,000+税
Faith, Inc. / FUJIPACIFIC MUSIC INC.
1.THE MARCH
2.this city
3.keep it one love
4.parallel world
5.I GOT LOVE
6.Re start(Album ver.)
7.Over The Dream
8.KAGEROU
9.Star
10.サンカク
11.風が強く吹いている

◆MARISAコラム「この世界の片隅で -color-codeの奇跡-」まとめページ
◆color-codeオフィシャルサイト
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